2/26/2014

The Ultimate Diet 2.0 メモ

★Ultimate Diet 2.0(UD2.0)について
- アスリートやボディビルダーと違って、遺伝的に恵まれているわけでもなく、薬物も使わない人向けのプロトコル。遺伝的に恵まれていない人が、いかに筋肉を残しながら(できれば少し増やしながら)低い体脂肪率を実現するか。
- このプロトコルの対象は体脂肪率12-15%くらいの人(女性はこれに+7%くらいを基準として考える)。このくらいの体脂肪率までは、オーソドックスなダイエットで落とせる。このへんから下は、筋肉を残しながら体脂肪を落とすのが難しくなってくる。


★内分泌系と体脂肪の基礎知識
- インスリンは貯蔵ホルモン。エネルギーを貯蔵する。筋肉のインスリン感受性が高いと、糖質が筋肉に送り込まれやすい。体脂肪のインスリン感受性が高いと脂質が貯蔵されやすい。
- 体脂肪の分解。トリグリセリドとグリセロールにする。分解速度の鍵は hormone sensitive lipase (HSL).
- インスリン(炭水化物摂取でもタンパク質摂取でも出る)も、血中トリグリセリドもHSLの活動を抑制する。つまり何を食べても体脂肪の分解は抑制される。
- カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)がHSLを活性化する。正確にはcAMPがHSLの活動を決定、インスリンやカテコールアミンはcAMPに影響。
- インスリンとカテコールアミンのレベルが同時に上ったら(例えば運動中にカーボ摂取するとか)、インスリンの影響が勝つ(脂肪分解が抑制される)
- アドレナリンレセプター:alpha-2が脂肪分解抑制。beta-2が脂肪分解促進。 
- アンドロゲンと甲状腺ホルモンはbeta-2の感度を上げる
- 頑固な脂肪エリアは血行も良くないので、脂肪が分解されたとしてもそれを燃焼させる組織へなかなか運ばれず再合成されてしまう。
- ファスティングで脂肪細胞への血行がよくなる。ファスティングを続けると筋肉も落ちるので、低炭水化物・ケトジェニックダイエットでそれに近い状態にする。
- 甲状腺ホルモンレベルが高いと脂肪細胞への血行が良くなりやすい。
- エクササイズでも脂肪細胞への血行が良くなりやすい。
- 肝臓や筋肉に分解された脂肪が運ばれ燃焼される。肝臓・筋肉のグリコーゲンレベルが低いと燃焼されやすい。


★筋肥大の基礎知識
・主に二種類の筋肥大:筋原線維と筋小胞体
- 筋原線維の肥大→繊維のサイズとタンパク質量の増加。ホルモンなど様々な要因と、繊維への強いテンションが肥大を開始させるシグナルになる。
- 筋小胞体の肥大→繊維以外(グリコーゲン、水、ミネラルなど)のサイズと量の増加。高レップのトレーニングを続けると、毛細血管の密度やミトコンドリアの密度や他の筋収縮以外のサイズアップに貢献する要素が増加する。あまり顕著に肥大しない。

・普通は筋原線維の肥大を目的とする
- 筋原線維の肥大のプロセスは、高負荷のテンションが繊維にかかる(ダメージも付随)→細胞内の核がmRNAを生成→リボゾームに入り→リボゾームがアミノ酸を掴んで→それをくっつけて新たな収縮用タンパク質を作り出し→既存の筋繊維に統合する。
- 細胞のエネルギーレベルが低いと(グリコーゲンが枯渇していたりクレアチンリン酸のレベルが低かったり)、タンパク質合成はあまり起こらない。mRNAが続く時間は36時間程度。リボゾームの活動レベルが筋合成速度の鍵。アンドロゲンはリボゾームを活発にする。


★三種類のトレーニング
・Volume Training
- 高レップ・多セット・短インターバル(パンプトレーニングともいう)。
- 筋グリコーゲンを枯渇させる。普通の人(遺伝的に恵まれておらず、薬物も使用していない人)は、トレーニング後の栄養補給では、筋グリコーゲンの再充填が筋合成よりも優先され、筋合成が効率的に起こらない。だからUD2.0では、筋肉の成長を目的としてはこのトレーニングを行わない。
- このトレーニングの目的は以下の通り。
- グリコーゲン枯渇させてからのグリコーゲン超回復。
- グリコーゲンを枯渇させることで、脂肪の分解燃焼を促す。
- 乳酸レベルを上げて成長ホルモンの分泌を促す。成長ホルモンは脂肪分解に関わる。
- カテコールアミンなどのホルモン反応が脂肪分解を促す。
- カロリー消費が大きい。トレーニング後のカロリー消費は脂質の燃焼で賄われる割合が高い。
- いつも高負荷のトレーニングだと関節にダメージがたまる。高レップトレで関節に休息を与える。また血行や乳酸レベルの上昇が関節強化にも繋がる。
- UD2.0では低炭水化物・低カロリーのフェーズでこのトレーニングを行う(めちゃくちゃキツイとのこと)

・Tension training
- 6-12レップ インターバルは1.5-2分
- 基本は、重いウェイトを使って限界(付近)までやる。
- リスクは、怪我と神経系の疲労。
- 筋肉と神経系の疲労と回復のタイミング。神経系に大きな疲労が残ると、筋肉は次の刺激を受け入れられる状況になっても、神経系の回復に時間がかかってトレーニングできず非効率。
- UD2.0ではカーボロードスタートの際に行ってグリコーゲン超回復とリボゾーム増加を促して、パワートレーニングの効果を高める。

・Power training
- 3-5レップ 3-10セット 3-5分休憩
- ATP/クレアチンリン酸を主に使うので筋グリコーゲンをあまり消費しない。筋肥大に有利。
- UD2.0ではグリコーゲンを十分に充填した状態で行って筋肥大を目指す。


★体脂肪を減らすには。
- 低カーボでインスリンを抑える。カテコールアミンレベルが上がる。ウェイトトレーニングと有酸素運動でもカテコールアミンレベルが上がる。
- ファスティングか低カーボケ・トジェニックで脂肪細胞への血行が良くなる。有酸素運動でも良くなる。
- alpha-2 receptorsを抑制するにはどうするか。ヨヒンビンがその効果があるが・・・
- 血中の脂肪酸濃度を上げるとalpha-2 receptorsが抑制される。カーボをトータルカロリーの20%以下にすると、血中の脂肪酸濃度が上がる。ついでにエクササイズへのカテコールアミンの反応も上がる。
- 3-4日間、血中の脂肪酸へさらされるとalpha-2受容体が抑制される。低カーボをこのくらいの期間続けると良い。
- グリコーゲンを枯渇させることで、筋肉と肝臓での脂肪酸燃焼を促進。


★ケトーシスとは
- 脂肪酸燃焼が増えて肝臓がそれ以上エネルギーとして使えなくなると起こる。絶食、低カーボ、長時間の持久運動で起こる。脂肪酸が部分的に酸化され、余ったacetyl-CoAがケトンに転換される。ケトンの濃度がある一定レベルを越えると、身体がケトーシス状態であると言う。ケトーシスが起こり、血糖レベルが低いと、ケトンは多くの組織で優先的に燃料になる。
- 太ってる人なら、ケトーシスでエネルギーを賄うことでタンパク質(筋肉)分解を抑えられる。痩せている人は体脂肪分解が難しくなってくるので、ケトーシスでタンパク質分解を抑えるのは無理。
- ケトンは同量の脂質よりもややエネルギー効率が低い。変換ロス?
- 痩せている人にとっては、ケトーシスは脂肪燃焼を手早く行うことに伴う副作用と考えた方が良い。ケトーシス自体を目的とはしない。


★UD2.0を始めるにあたって
- 体脂肪を減らすフェーズでは筋肉の減少は避けられない。
- 週末に2-3日のリフィードを行う。グリコーゲン枯渇とテンショントレーニングで筋肉のインスリン感受性が高まっているので、摂取した炭水化物は筋グリコーゲンとして蓄えられる。内分泌系・神経系もある程度回復する。
- それまで別のダイエットをしていたら、UD2.0を始める前に2週間の維持期を入れる。
- 高炭水化物・低脂質のダイエットをしていたら、炭水化物と脂質を適度に摂る2週間の期間を挟む。
- UD2.0の実行は6-8週間以内にすること。続けたかったら2週間の維持期を入れる。


★UD2.0の具体的プロセス。一週間で一サイクル。
・月曜と火曜:低カーボの食事。高レップ短インターバルのトレーニング実施。
- 脂肪減少を最大にしたい場合は、維持カロリーの半分の摂取カロリーにする。ただし1200kcal/day以下にはしないこと。タンパク質と微量栄養素の摂取量が確保できない。
- カロリー不足を大きくしたい場合は、有酸素運動を行う。
- 体脂肪を増やさない筋肥大が目的の場合は、維持カロリーから10-25%減らす。
- 炭水化物の摂取は総カロリーの20%以下にすること。一日あたり65-70グラム程度以内。
- 除脂肪体重1ポンドあたり1-1.5gのタンパク質摂取。
- 残りのカロリーは脂質で調整。オメガ3脂肪酸は摂取すること。
- 筋分解が増えない程度までグリコーゲンを枯渇させる。各部位あたり10-12セット(種目を変えていろんな方向から筋肉を動かした方が良い)。60% 1RMの重量。15-20レップ。60-90秒インターバル。吐き気やめまいやバーン感が出るレベルまでやること。トレーニングを月曜火曜の二日に分ける(部位で分けても、全身のセット数半々で分けても良い)。

・水曜:月曜火曜と同じ低カーボの食事。ウェイトトレーニングはやらない。やりたければ有酸素運動を。

・木曜:(一日4食として)最初の3食は低カーボの食事。夜のトレーニングの30-60分前に25-30グラムの炭水化物と15グラムのホエイを摂取。
- テンショントレーニング各部位2-4セット、6-12レップ(70-85% 1RM)。二日後のパワートレーニングに支障が出ないように限界一歩手前まで。全身をトレーニングすることで、全身の筋肉にグリコーゲンを一気に送り込む。
- 強度の高いトレーニングと適切な炭水化物の摂取で、24時間以内にグリコーゲンを100%まで回復させられる。
- 正しくグリコーゲン枯渇させてたとして。除脂肪体重1kgあたり12-16グラムの炭水化物を木曜夜から金曜夜までに摂取。それと1ポンドあたり1グラムのタンパク質と、総カロリーの15%の脂質。合わせると総カロリーは維持カロリーの2倍くらいになる。グリコーゲンの再貯蔵に優先的に回されるため、脂肪貯蔵されにくく、グリコーゲン貯蔵中は脂肪燃焼が続きやすい。
- 筋グリコーゲン補充のために、フルクトースは大量に摂取しない。肝臓で代謝されるので。ただ50グラム程度(スクロースなら100グラム)摂取するとカーボロードが効果的になるようだ。
- グリコーゲン合成速度に上限があるだろうから、24時間で8-10回に分けて摂取。1000グラムを10回に分けると一回100グラム。
- 水も十分に飲むこと。1グラムのグリコーゲンあたり3-4グラムの水が蓄えられる。
- クレアチンを併用するのも効果的。
- カフェインは控える。

・金曜:木曜夜の続きで、夜までひたすら食べて休む。

・土曜:パワートレーニングの日
- トレーニングの2-3時間前にほどほどの炭水化物とタンパク質の食事。30分前に30グラムの炭水化物と15グラムのホエイを摂取。
- 各部位につき、3-6セット、3-6レップ。
- 2-4秒掛けて下ろして、全力で挙げる。
- 3-5分のインターバルを取る。
- この日のトータルの栄養摂取は、除脂肪体重1kgあたり4-5グラムの炭水化物、2gのタンパク質、40-50グラム程度の脂質。だいたい維持カロリーくらいになる。減量重視の場合は10-20%炭水化物減らす。

・日曜
- 筋肥大を重視する場合は維持カロリーくらい。
- 減量を進める場合は除脂肪体重1kgあたり2-3gの炭水化物。
- 朝のうちは複合炭水化物を食べても良い。午後は低GIの野菜中心。


★なるべく体脂肪を増やさず筋肥大をさせたい場合のUD2.0の応用
- 低カーボの日(月曜~木曜午前)は、維持カロリーかマイナス10-25%程度のカロリー摂取、炭水化物を100g以内にして、高レップのテンショントレーニングを行う(ボリュームトレーニングより重量をやや上げて、レップ数とセット数を減らす)。
- 週末のカーボロードとトレーニングは同じ。
- 土日は維持カロリーかプラス10%程度のカロリー摂取。


参考: The Ultimate Diet 2.0 / Lyle McDonald

2 件のコメント:

  1. 木曜日の蛋白質摂取量は体重1ポンドあたり1gですか?
    それとも除脂肪体重1ポンドあたり1gですか?

    また、金曜日の蛋白質摂取量は木曜日と同じでいいのですか?

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  2. 細かく言えばタンパク質摂取量は除脂肪体重に比例しますが、タンパク質体脂肪率が低い人向けの方法なので、タンパク質摂取量は体重をもとに計算して良いです。体脂肪率10%だと計算結果に1割程度しか差がでませんし、タンパク質摂取量を正確に計ることも困難なので。女性の場合は体脂肪率が高めで必要タンパク質摂取量も男性よりやや少なめになるので、除脂肪体重で計算して良いと思います。
    タンパク質摂取量は、このプログラム例だと木曜夜にリフィード開始なので、木曜夜~金曜夜までの24時間でタンパク質を1g/体重1ポンド摂取になります。

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