5/30/2014

オーバーカロリー時のグルコース・フルクトース摂取の影響






1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースを10週間にわたって摂取した場合の、体組成および脂質代謝異常やインスリン感受性に関する各指標への影響を調べた研究。結論を先に書いておくと、オーバーカロリーの状態でフルクトースを大量に摂取すると、腹部内臓脂肪が増加しやすく、脂質代謝異常のリスクが高まり、耐糖能が低下し、インスリン感受性が低下する。


★基礎知識
グルコース: ブドウ糖
フルクトース: 果糖
スクロース: グルコース分子1つとフルクトース分子1つが結合したもの。いわゆる普通の砂糖。

普通の食べ物で甘いものにはだいたいフルクトースが含まれている(麦芽糖や人工甘味料を除く)。


★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康(肥満で中性脂肪などの各指標は良くはないけど現状では特に病気無し)
性別: 男性・女性
人数: 32名
年齢: 45-72歳
BMI: 25-35
運動: 被験者選びの段階で週の運動時間が3.5時間以上の人は除外。実験期間中も運動指導はなし。

<期間>
3段階の実験フェーズで構成されている。
a) 研究センター内での2週間。維持カロリーの食事。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物。
b) 研究センター外での8週間。自由な食事に加えて、1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取。糖ドリンクは3度の食事の時にそれぞれ一緒に摂取。これ以外は糖分の含まれる飲み物を飲まないよう指導。
c) 研究センター内での2週間。1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取しつつ、トータルで維持カロリーになるように食事管理。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物30%と、グルコースもしくはフルクトース25%。


★結果
- 研究センター外の8週間の体重・体脂肪量・ウェストサイズの増加は、グルコース・フルクトース群とも同じくらい。(Table 3 参照)
- フルクトース群は、腹部の体脂肪、特に内臓脂肪の増加が多かった。グルコース群は腹部内臓脂肪はほとんど増えなかった。(Figure 1 と Table 3 を参照 / SAT=皮下脂肪 VAT=内臓脂肪)
- 男性は腹部内臓脂肪の増加が女性よりも顕著だった。(Table S3 の最下段参照)
- 血中の脂質とリポタンパクの各指標は、全般的にフルクトース群の方が大幅に増加。(Table 4 参照)
- 食後のDNL(糖質→脂質)変換はフルクトース群で大幅に増加。(Table 4 参照)
- 耐糖能は、グルコース群では変わらなかったが、フルクトース群では低下。(Table 5 参照)
- インスリン感受性は、グルコース群では男性が上昇、女性は低下、フルクトース群では男女とも低下し女性の方が低下率が大きい。(Table 5 参照)


★個人的な感想
この実験とボディメイクでの意図的な増量では、運動の有無と、実験の被験者がすでにかなりの肥満であるという点が異なる。まあ増量時は甘いものを大量に食べない方が、比較的健康的に増量できるだろう。摂取する炭水化物は、米やパスタなど複合炭水化物を主体にするのが良いだろう。デザートやおやつに適度に甘いものを食べるのはさして影響ないと思う。

ちなみにこの研究で摂取したフルクトースと同レベルのフルクトースを摂取しようとしたら、成人男性(1日の必要摂取カロリー2400kcalと想定)で毎日2.5リットルのコーラを飲む必要がある。砂糖なら300グラム。ただ、フルクトースに加えてほぼ同量のグルコースも摂取することになるのでこの実験デザインと等しくはならない。


参考:
Consuming fructose-sweetened, not glucose-sweetened, beverages increases visceral adiposity and lipids and decreases insulin sensitivity in overweight/obese humans
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19381015

関連記事:
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響

砂糖と糖尿病

果糖ぶどう糖液糖と肥満

0 件のコメント:

コメントを投稿