9/26/2015

プロテインパウダーの選択


プロテインパウダー 消化吸収 価格 BCAA含有率 その他
ホエイ   速い 普通 高い カルシウム摂取できる
カゼイン カゼイネート やや遅い やや高い やや高い カルシウム摂取できる
  ミセラーカゼイン 遅い 高い やや高い  
ソイ   速い 安い 普通 イソフラボン過剰摂取に注意


プロテインパウダーは、いわゆる「プロテイン」のこと。乳製品や大豆のタンパク質を粉末にしたもの。

★プロテインパウダーの特徴
・プロテインパウダーの長所
- ものによっては通常の食品よりもタンパク質1gあたりの価格が安い。
- 脂質と炭水化物が少ないのでカロリーコントロールしやすい。
- 保存期間が長い。
- 栄養摂取量の管理が容易。
- 運動前・運動中に摂取しても高い強度の運動が可能(カゼインはキツイかも)。
- 運動直後の食欲が無い状態でも摂取しやすい。
- 食欲や消化能力の問題で運動量に見合うだけの食事を取るのが困難な場合に栄養摂取補助に使える。

・プロテインパウダーの短所
- 精製度の高い食品に共通の問題だが、微量栄養素が少ない。そのため食事の大半を占めるようにはしないほうが良い。

・プロテインパウダーの消化吸収速度
消化吸収が速いとエネルギーとして使われやすくなる(酸化される)ので、筋肉の餌という観点では無駄が増える。絶食を続けてから運動をした場合、例えば寝起きに何も食べずにトレーニングした後などはたぶん消化吸収が速い方が良いが、わざわざそんなことをせず運動前に摂取しておけば良いし、通常の食事は消化吸収に5時間くらいはかかるので、普通に生活していれば体内の栄養供給がすっからかんの状態でトレーニングすることにはならない。従って、消化吸収が速いプロテインパウダーはトレーニング直前やトレーニング中に摂取しても胃にもたれにくく高強度の運動ができるという点以外にはあまりメリットは無い。ペプチドとかは無駄に高価で無駄に酸化されるだけ。

・BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)
タンパク質は消化吸収過程でアミノ酸に分解され小腸と肝臓を経由してから血液に放出され、それから筋肉にたどり着く。小腸ではアミノ酸は一時的に蓄えられたり身体内で使われるタンパク質やホルモンの材料になったりする。肝臓では酸化されたり分解されて他の物質の材料になったりする。そのため食べたタンパク質のアミノ酸組成がそのまま血液中に放出されて、筋肉にたどり着くわけではない。BCAAは肝臓で代謝されにくくそのまま血液中に放出されやすい。またロイシンは筋合成のシグナルに関わってたりする。従って筋合成の観点ではBCAA含有率は大事で、プロテインパウダーのコストパフォーマンス(タンパク質1gあたりの価格)を考える場合は、BCAA含有率も加味した方が良いだろう。ちなみに肉や魚などのタンパク質のBCAA含有率は15-20%程度。


★ホエイ
BCAA含有率23-25%程度。消化吸収が速い。糖質や繊維質や脂質と一緒に摂取すると消化吸収が遅くなるので、維持期・増量期に通常の食事と同時に摂取する場合は消化吸収の速さは気にしなくて良い。ホエイ単体だとかなり速いので減量期に単体で使う場合は注意。BCAA含有率と価格と手に入れやすさと飲みやすさを考えると、維持期・増量期はホエイでタンパク質摂取量を底上げするのが便利。

ホエイとカゼインのプロテインパウダーはそれなりにカルシウムが含まれているのも良い。カルシウムが不足するとおそらく太りやすくなる。


★カゼイン
BCAA含有率20%程度。カゼインのプロテインパウダーには、ミセラーカゼインとカゼイネートがある。原材料にカゼインカルシウムやカゼインナトリウムと書かれているものがカゼイネート。カゼイネートは精製度が高く、消化吸収速度がミセラーカゼインより速い。ホエイよりは遅いが、BCAA含有率はホエイより低く、消化吸収速度はミセラーカゼインより速く、尖ったところが無いので使いにくい。価格はミセラーカゼインより安価。

ミセラーカゼインは減量時や、LeangainsのようなIntermittent Fastingで食事間隔を空ける時に使うと良い。日本メーカーのカゼインプロテインパウダーはほとんどがカゼイネート。ミセラーカゼインは海外製のを利用するのが良いと思う。私はオプティマムのナチュラルシリーズのカゼインを使ってます。

維持期・増量期でカロリーの摂取枠に余裕があるならスキムミルクも良い。ミルクタンパク質はホエイが20%で、カゼインが80%。精製度が低いので微量栄養素はプロテインパウダーより優れているし、価格もミセラーカゼインより安価だろう


★ソイ(大豆)
BCAA含有率17%程度。消化吸収が速い。男性は植物エストロゲン(イソフラボン)の摂り過ぎによるテストステロンレベル低下リスクが警告されるが、議論は決着してない模様。経験則では昔のボディビルダーはソイプロテインを大量に摂取していたがネガティブな効果は報告はされていない。

ソイは価格面以外では特にメリットが無いので、ベジタリアンや乳製品アレルギーでソイ以外に選択肢が無い人以外は、ソイにこだわる必要は無いだろう。目安としてはプロテインパウダー以外の豆製品も含めて大豆タンパク質は1日50g程度を上限に。食べ物全般に言えることだが、特定の食べ物を偏って大量摂取はせず、色んな食材を満遍なく食べることで、リスク分散および微量栄養素の相乗効果を狙うのが良い。

※追記:ソイプロテインパウダーの摂取で筋肉のダメージが軽減される可能性がある。
Soy Beverage Consumption by Young Men
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1300/J133v03n01_03?journalCode=ijds19

Four Weeks of Supplementation With Isolated Soy Protein Attenuates Exercise-Induced Muscle Damage and Enhances Muscle Recovery in Well Trained Athletes: A Randomized Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5098124/




[参考書籍]
The Protein Book / Lyle McDonald


関連記事:
タンパク質摂取量の目安

ゴールデンタイムはあるのか? 

カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度

カルシウム・乳製品が体組成変化に与える影響 

低炭水化物食とタンパク質源の健康への影響

7 件のコメント:

  1. 現在、ホエイプロテインを使っていて、これが終わったらカゼインを買おうか迷ってます。
    ホエイプロテインに何か混ぜて吸収速度を遅くすればいいだけじゃないかとも考えているのですが、例えば牛乳と一緒に飲む程度ではあまり変わらないでしょうか。

    返信削除
  2. 多少は吸収速度が遅くなると思います。
    近い状況の研究がないかちょっと調べてみましたが、ホエイとカゼインを1対1の割合&乳糖を摂取しているものが見つかりました。他の研究で確認できるホエイ単体の吸収速度よりもホエイの吸収速度が遅くなっています。
    http://ajpendo.physiology.org/content/303/1/E152.long

    ホエイ+牛乳の使い方ですが、
    維持・増量期の場合:
    この手の実験では一晩の絶食で消化吸収が終わってから摂取→測定しています。普通に食べてる生活では、たいていは前回の食事の消化吸収が続いていて、そこに追加する形になるので、ホエイ単体でも牛乳と併せてでもあまり変わらないかもしれません。一日のトータルの摂取量が最も大事で、摂取タイミングは気にしなくても良いでしょう。
    減量期の場合:
    カロリーコントロールの面でも消化吸収速度の面でも、カゼイン単体の方が良いと思います。

    返信削除
  3. ありがとうございます。現在、減量期なので素直にカゼインを買って、減量後にホエイを消費しようと思います。増量期ですとホエイが他に比べて便利なように見えますがNGTNさんは使い分けたりしていますか?

    返信削除
  4. 私は増量期はほぼホエイですね。飲みやすい、消化が楽、BCAA含有率が高い、安価、とメリットが多いです。夕食が早めの時間で翌朝まで何も食べない場合は、カゼインを使うこともあります。
    カゼインは海外のミセラーカゼインを個人輸入すると良いと思います。今ちょうどbodybuilding.comで20%オフのセールやってますね!

    返信削除
  5. 今後も質問することがあると思いますので、よろしくお願いします。

    返信削除
  6. 初めまして。
    プロテインを摂取する場合、プロテインのカロリー分を計算に入れた方がよいでしょうか?
    今までトレーニングで増量や減量を繰りかえしてきましたが、プロテインを0キロカロリーで計算しています。その理由として増量した場合に維持カロリー(炭水化物+肉300グラム+野菜)+プロテイン60から90グラム(タンパク質総摂取量体重×2)を摂取しても体重が増えないこと、プロビルダーからホエイプロテインは内臓で消化する際にカロリーを消費するので計算に入れなくてもよいとのアドバイスもあったからです。この考え方は正しいのでしょうか?

    返信削除
  7. Unknownさん、
    はじめまして。
    タンパク質のカロリーは1gあたり4kcalとされていますが、タンパク質は食事誘発性熱産生が20-30%程度あるので、消化の過程でその分のカロリーが消費されます。従って、実質的には1gあたり3kcal程度のカロリーになります。カロリーはあるので、摂取しすぎればカロリーオーバーになります。
    人間の消費カロリーは一定ではなく、アンダーカロリー(減量時)では消費カロリーは低下し、オーバーカロリー(増量時)では消費カロリーは増加します(基礎代謝やNEATや動作の効率性が変動します)。そして摂取カロリーに反応しての消費カロリーの変動は、個人差が非常に大きいです。増量時に体重が増えないとのことですが、おそらく太りにくい体質で、オーバーカロリーで消費カロリーが増えやすいと考えられます。増量したい場合は、タンパク質摂取量を確保しつつ、炭水化物か脂質を徐々に足していって、体重が増えるようにするのが良いと思います。

    返信削除