Metabolic adaptation to weight loss: implications for the athlete
http://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/1550-2783-11-7
減量を続けていくと体重が落ちにくくなっていく。この時、身体で起きている適応について調べたレビュー論文。
★エネルギー不足への内分泌反応
- 甲状腺ホルモン、特にT3は、代謝率の調整に重要で直接的な働きをする。甲状腺ホルモンの血中レベルが増加すると代謝率が上がり、減少すると下る。
- レプチンは短期と長期のエネルギー可用性(availability)の指標として機能する。短期的なエネルギー制限と低い体脂肪率はレプチンレベルの低下を伴う。
- 高いインスリン血中レベルはエネルギー可用性のシグナルになり、食欲抑制効果を伴う。
- グレリンは食欲促進効果がある。
- テストステロンは体脂肪生成を抑制する可能性がある。
- コルチゾールは筋分解を促進する。レプチンの活動を抑制する可能性もある。
全体としては、カロリー不足への内分泌系の反応は、空腹感を増加させ、代謝率を低下させ、除脂肪体重の維持を脅かす。減量を止め低い体脂肪率を維持しようとする際も、これらのネガティブ(飢餓回避の観点ではポジティブ)なホルモンレベルは継続する。
★体重減少と代謝率
消費カロリーの項目
- total daily energy expenditure (TDEE) 1日の総エネルギー消費量
- basal metabolic rate (BMR) 基礎代謝量
- exercise activity thermogenesis (EAT) 身体活動代謝
- non-exercise activity thermogenesis (NEAT) 非運動性活動熱産生
- thermic effect of food (TEF) 食事誘発性熱産生
減量時には総エネルギー消費量が低下する。その内訳を項目別に見ていく。
- まず体重減少のぶん基礎代謝量が減る。
- 身体活動代謝も低下。体重減少したぶん動くのに必要なエネルギーが減るが、それに加えて筋肉が効率よく働くことで消費エネルギーが低下する。
- 食事誘発性熱産生も食べる量が減るぶん低下する。摂取カロリーの10%くらいが食事誘発性熱産生になるので、例えば摂取カロリーを1000kcal減らすと食事誘発性熱産生は100kcal減る。
- NEATも減る。無駄な動きをあまりしなくなる。
減量後に体重維持モードにしても、消費エネルギーは以前よりも低下した状態になる。リバウンドしやすい。
★熱生成の減少
熱生成でエネルギーを消費する量が減る。UCP-1の発現に加えて、甲状腺ホルモン、レプチン、コルチゾールが褐色脂肪細胞での熱生成の増減に関わっている可能性。
★実践
低カロリーの食生活を続けると、体重減少を防ぎエネルギー消費を抑えるための数多くの適応が起こる。適応の度合いは、カロリー赤字の大きさに比例するようなので、カロリー赤字を大きなものにせず(急激な減量はせず)、適応を緩やかにした減量の方が良いだろう。それにカロリー赤字が大きすぎると除脂肪体重が減りやすくなる。
減量を続けると代謝の適応により消費カロリーが低下し、体重が減らなくなる。そうしたら摂取カロリーをさらに減らし、再びカロリー赤字を作り出す。これを繰り返す。
最近ではリフィードが普及。主に炭水化物の摂取量を増やし、維持カロリーよりもわずかに多いカロリーを摂取。しばしばボディビルやフィジークの競技者は24時間のリフィードを週に1,2回行う。レプチンレベルを上げる事で代謝率を上昇させるのが目的。女性を対象とした研究では短期の炭水化物メインのカロリー過剰摂取(維持カロリー+40%)によりレプチリンレベルが上昇することが確認されているが、消費カロリーの増加はそれほどでもなく、1日の総エネルギー消費量が食事誘発性熱産生を含めて7%増えた程度。
※維持カロリーを続けてからカロリー過剰摂取を行った研究なので、減量を続けて消費カロリーが低下した状態ではまた違った結果になるかもしれない。アスリートの減量と同じような状況設定の研究が望まれる。まあリフィードは代謝回復には過度な期待はせず、メンタル面の息抜きと、筋グリコーゲン回復・トレーニング強度の維持を主目的とした方が良いと思う。
減量を続けて低い体脂肪率になると、維持カロリーに戻しても代謝の適応は完全には回復しない。この状態は体脂肪が増えやすいので気をつける。減量後の回復は摂取カロリーを少しずつ増やしていくと良い。またラット実験ではあるが、減量後のカロリーオーバーでの体脂肪増加は、脂肪細胞の過形成(脂肪細胞が増える)を伴うことが確認されている。減量と回復を繰り返すと、脂肪細胞が増えて減量が難しくなっていく可能性がある。
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