6/22/2016

レップ数による筋トレ効果の違い

Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men
http://jap.physiology.org/content/early/2016/05/09/japplphysiol.00154.2016

読みにくいけど全文のPDF。図表は最後の方に付いている。
http://jap.physiology.org/content/jap/early/2016/05/09/japplphysiol.00154.2016.full.pdf


8-12レップと20-25レップのレジスタンストレーニングを比較して、効果に違いがあるか調べた研究。以前にも同様の研究があるけど、この研究のデザインが良いのと、結果から新たな知見が得られたので紹介。今年の5月に出た研究。

この研究の強みは、トレーニング歴有りの人を対象していて、被験者数が多いこと。レジスタンストレーニングに対する筋肥大の反応は個人差が大きいので、被験者数が少ないと単なる個人差が比較グループ間の結果に反映される可能性が高まる。

それとこの研究では、1RM、筋繊維のタイプ別の肥大、DXAによる除脂肪体重変動、テストステロンや成長ホルモンやIGF-1などの各種ホルモンと筋肥大・筋力との相関と包括的に調べている。


★被験者
若い男性 平均は年齢23歳、体重86kg、身長181cm
計49名
トレーニング歴有り


★グループ分け
低レップ高負荷グループ
- 8-12レップ×3セット
- 重量 75-90% 1RM
- 各セット限界まで行う
高レップ低負荷グループ
- 20-25レップ×3セット
- 重量 30-50% 1RM
- 各セット限界まで行う


★トレーニングプログラム
週4回 12週間

月曜と木曜
- インクライン・レッグプレス&シーテッドロウ(1分休憩で交互に)
- バーベルベンチプレス&レッグカール(1分休憩で交互に)
- プランク
火曜と金曜
- マシン・ショルダープレス&アームカール(1分休憩で交互に)
- トライセップスエクステンション&ワイドグリッププルダウン(1分休憩で交互に)
- マシン・ニーエクステンション


★1RM測定種目
インクライン・レッグプレス
バーベルベンチプレス
マシン・ニーエクステンション
マシン・ショルダープレス


★栄養
- ホエイプロテインパウダー30gを1日2回摂取。トレーニング日はトレーニング直後と寝る前に。休養日は朝と寝る前。
- あとの食事は各自自由にだけど、自己報告ベースではマクロ栄養素とカロリーバランスは両グループに有意差なし


★筋繊維分析
- 外側広筋から採取
- 筋繊維のタイプ別割合と断面積を測定


★除脂肪体重
- DXAで測定


★血中ホルモン
- 運動前と運動後0,15,30,60分の血液採取
- 分析対象のホルモンは、テストステロン、遊離テストステロン、コルチゾール、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、黄体形成ホルモン、IGF-1、遊離IGF-1、乳酸塩、成長ホルモン


★結果
1RMは両グループとも全種目で伸びた。インクライン・レッグプレス、マシン・ニーエクステンション、マシン・ショルダープレスは両グループで伸びに有意差なし。バーベルベンチプレスは低レップの方が伸び、それぞれ平均+14kgと+9kg。

筋繊維タイプ別の肥大は、グループ間で有意差なし。またタイプⅠタイプⅡで肥大の程度に有意差なし。タイプⅡxからタイプⅡaへのシフトがわずかに起こっている。4%くらい。

除脂肪体重は1kg強増加で両グループに有意差なし。

運動後の血中の各種ホルモンの一時的な上昇は筋肥大と筋力に影響なし。

セッション当たりのトレーニングボリューム(レップ数×重量の合計)は、低レップ高負荷グループの方が大幅に少ない。高レップ低負荷グループの6割ぐらいのボリューム。


★結論
各セットを限界までやれば、重量が軽くても、重い重量と同程度に肥大する。筋力の伸びもベンチプレス以外は同程度。ベンチプレス1RMの違いは神経系の適応の問題と思われる。運動後の一時なホルモンレベルの上昇は、筋肥大と筋力の面では気にしなくて良い。これは過去の研究結果とも一致している。



☆コメント
論旨とは関係ないがちょっと気になったのが、低レップ高負荷グループの上限重量90%1RM。これだと8レップも出来ないと思うが・・・1RM測定がうまくいかなかった人がいたのだろうか。実験では各セットのレップ数が常に8-12になるように重量を調整したと書かれているので最低8レップこなしたのは間違いないが。80%のミスタイプかと思ったけど、論文中の全箇所で90%と書かれているのでミスタイプでは無いようだ。

筋繊維のタイプ別の肥大は、タイプⅠとタイプⅡが両グループで同程度肥大した。高レップ低負荷でも遅筋が優先的に肥大しないという結果になった。レップレンジと筋繊維タイプ別の肥大は研究によって結果がまちまちで、高レップ低負荷で遅筋が優先的に肥大したという研究もある。現時点でははっきりとした結論は出ないと思うけど、とりあえず肥大目的ではレップレンジはあまり気にせず、色々なレップレンジでやってみるのが良いと思う。競技パフォーマンスについては、そのレップレンジへの適応により大きな差が出るので、持久力目的なら高レップ、ストレングス目的なら低レップ(5レップ以下)が良いだろう。

1RM測定種目で唯一のフリーウェイトであるベンチプレスの伸びが、低レップ高負荷グループの方が良かった。これは高レップ低負荷ではバーの保持や姿勢の維持に使う細かい筋肉が先に疲労して、メインターゲットの筋肉を追い込めなかったからだと思う。

以前のSchoenfeld他の研究(低負荷トレーニングと高負荷トレーニング)でも、スクワットとベンチプレスの伸びに差があって、これは神経系の適応の違いによるものだろう思われていた。しかし今回の研究ではマシン種目の1RMは低レップと高レップで伸びが変わらなかったので、神経系の適応の問題ではなく、実際にはフリーウェイトのコンパウンド種目では筋肥大に差が出ていて、測定精度の問題で筋肥大測定ではその差を検出できていない可能性がある。

今回の研究では脚部の筋繊維を採取して肥大を調べているけど、他の部分はDXAで除脂肪体重の変動しか調べていない。大胸筋や上腕三頭筋の肥大に差が出ている可能性がある。論文では神経系の適応の違いによりベンチプレスの1RMに差がでたと推測しているけど、私の推測では高レップのベンチプレスではバーの保持や姿勢の維持に使う細かい筋肉が先に疲労して、大胸筋や上腕三頭筋を追い込めていなかったためこれらの筋肉の肥大に差がでた。

この実験では3週間おきに1RMの測定を行ったのも、ベンチプレスの1RMの差が神経系の適応によるものではないと考える根拠になる。 1RMの測定では低い負荷から徐々に重さを上げていき、どこで挙がらなくなるのか測定するので、80% 1RM以上の挙上を数回行うことになる。3週間おきにこの強度の挙上を行っていたなら、両グループ間の神経系の適応にはほぼ差がなくなっていてもおかしくない。


☆レップレンジの推奨
ターゲットの筋肉を安全に追い込むことができ、かつ十分なボリュームを行えるレップレンジが良い。一般的には、スクワットやベンチプレスなどフリーウェイトのコンパウンド種目は6-12レップがやりやすいと思う。大筋群のマシン、レッグプレスなどもこのくらいがやりやすいだろう。高レップ低負荷は精神的にも肉体的にも苦しいので、効果が同程度なら楽な方をやる。細かい筋肉のアイソレートは個人差と種目差があるだろうし、やりやすいレップレンジで。例えば私はサイドレイズは15-20レップくらいがやりやすいです。

トレーニングボリュームについては、以前の記事の数字(筋肥大トレの推奨ボリューム)「1部位1セッションあたり合計40-70レップ」は、1セット6-12レップくらいのレップレンジが前提になっている。従って、高レップをやる場合は、1セット6-12レップでやった場合にこのボリュームを達成するために何セット必要か決めてから、そのセット数で高レップをやると良い。例えば、ベンチプレス10レップ×3セットとトライセップスエクステンション10レップ×3セットで上腕三頭筋が目標ボリュームの範囲内になり、トライセップスエクステンションを高レップにする場合は20-25レップ×3セットにする。

1-5レップのレップレンジは、筋肥大目的だとボリューム達成のためにセット数が多くなって時間がかかるし、怪我のリスクも上がるので、メインのトレーニングにはしない方が良いと思う。ただ、神経系の適応で高重量に慣れておくと6-12レップでも重量が伸びやすくなり、より強度の高いトレーニングを行えるので、週に1回1-5レップの日を入れたり、セットの最初に1-5レップをやってリバースピラミッドにしたり、ピリオダイゼーションで1-5レップ期間を入れたりすると良いと思う。

あと別のテーマになるけど、限界(ウェイトが挙がらなくなる)までやらず、限界から1レップか2レップ手前でも十分な効果は得られる。むしろ全トレーニン グ日で全セット限界までやるとそのトレーニングセッション中の疲労も、長期的な疲労もキツくなり、トータルのトレーニングボリュームが減って逆効果になる と思う。

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