1/20/2017

トレーニング効果の個人差

ネタ元
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Individual Differences: The Most Important Consideration for Your Fitness Results that Science Doesn’t Tell You
https://bretcontreras.com/individual-differences-important-consideration-fitness-results-science-doesnt-tell/

James Krieger と Bret Contreras が書いた記事。

個人差の話。

トレーニング効果やダイエット効果や健康効果などを扱う研究は大量にあるが、それらの科学研究が示すデータはほとんどが平均値であって、ある特定の個人への効果を保証するものではない。そしてこれらの効果には大きな個人差があることが示されている。

個人差が出る原因としては、遺伝子による差もあるし、年齢や性別による差もあるし、その時の環境(栄養状態やストレス状況)の影響もある。



★有酸素運動
有酸素運動の継続による有酸素運動能力の向上やインスリン感受性の改善にも個人差があるが、ここでは体脂肪減少を目的とした場合の有酸素運動の効果の個人差を見ていく。

・食欲への影響
有酸素運動を50分間行い、その後のカロリー摂取への影響を調べた研究がある。低強度の有酸素運動をするとお腹が減ってそのあとたくさん食べることで、運動で消費したカロリーは埋め合わされてしまうのか。それともそれほど食べずに、トータルではカロリー不足の状態になるのか。

下のグラフがその結果で、破線が有酸素運動で消費した分のカロリー。この破線より上のカロリー摂取の人は運動で消費した以上に食べたことになる。破線より下の人は運動で消費したカロリーほど食べなかったことになる。0.00の線より下の人は運動後に普段よりも食べなかったことになる。被験者は全員女性。

有酸素運動後に食欲が増して、もしくは運動でカロリー消費したからたくさん食べでもいいだろうと考えて、運動した以上に食べてしまう人は、ダイエット目的では無理に有酸素運動を行わない方が良いだろう。研究では、食べ過ぎてしまう人は、高脂質で甘い食べ物を好み、そういった食べ物を食べると快楽を感じる傾向があることが示されている。ケーキやソフトクリームが大好きな人は、有酸素運動後の暴食に注意した方が良いだろう。有酸素運動で食欲が増す場合は、インターバルトレーニングなど他のタイプの運動でカロリー消費をするのも選択肢になる。有酸素運動をしても食べ過ぎず、ダイエットが順調に行く人は、そのまま怪我をしない範囲で有酸素運動を続けるのが良いだろう。

(記事では最大心拍数の50%の低強度有酸素運動と書かれているけど、リンク先の論文のアブストラクトでは最大心拍数の70%の高強度運動と書かれている。論文の本文を読めないので記事の記述が間違いなのか、リンク貼り間違いなのか確認ができない。ただ運動後の食欲への反応の個人差があるのは事実なので、運動後の自分の食欲反応に注意するのが良いだろう)


・NEATへの影響
摂取カロリーの増減によるNEATの変動には大きな個人差があって、例えばカロリーオーバーの食事を続けてもその大部分をNEATの増加(無意識に無駄に動くようになる)で相殺してあまり太らない浪費型の体質の人もいれば、食べすぎた分はしっかり体脂肪として蓄える倹約型の体質の人もいる。

運動によるNEATの変動にも個人差がある。

運動をすると身体活動によるトータルのカロリー消費が増える人もいるけど、逆に自発的な動き(NEAT)が少なくなり身体活動によるトータルのカロリー消費が減る人がいる。以下のグラフは閉経後の女性が運動(早足で歩く)を生活に取り入れた際の、身体活動による消費カロリー(運動+NEAT)を調べたもの。


運動後に疲れて座りっぱなしになったり、寝っ転がったりし続ける人は、無理にその運動しなくてもいいかもしれない。ただ体力の問題なのか遺伝子レベル(倹約型遺伝子か浪費型遺伝子か)の問題なのかわからない。体力の問題なら、続けていれば体力がついて運動後もアクティブな生活を送れる可能性がある。運動の種類を変えてみるという選択肢もある。


・睡眠への影響
一般的に運動は睡眠に良い影響を与えるが、強度の高い運動をすると睡眠に悪影響が出る人もいる。運動の強度が高いほど、また眠りにつく直前に運動するほど悪影響が出やすい。

睡眠の質と量を確保できないと健康に様々な悪影響が出るし、筋肥大もしにくい。睡眠に悪影響が出ている場合は運動内容を見直したほうが良い。寝る前にストレッチやマッサージや瞑想などを行って神経を落ち着かせるのも良いだろう。


・レジスタンストレーニングへの影響
レジスタンストレーニングのパフォーマンスに悪影響が出る場合は、有酸素運動の強度を落とすのが良い(レジスタンストレーニングの方が優先度が高い場合)。


・自制心への影響
メンタルに負荷がかかると、自制心は削られていく。自制心のキャパシティは有限。自制心が削られると、暴飲暴食したりする人もいる。運動を楽しく行えて、普段の生活でも快活に過ごせるなら良いが、運動が辛くてメンタルに負荷がかかって自制心が削られる人は、無理にその運動をしない方が良いだろう。運動の種類を変えたり、運動する時間や曜日を変えるのも選択肢。



★レジスタンストレーニング
同じトレーニング内容を続けても、筋肥大とストレングスの伸びには大きな個人差がある。

・筋肥大の個人差
トレーニング歴無しの若い男性が、4セット10レップのレッグエクステンションを週3回を9週間続けた研究。大腿四頭筋の生理学的断面積変化の被験者ごとの結果。なんと減少する人もいた。右端のバーが平均。点線はたぶん標準偏差。



・ストレングスの個人差
トレーニング歴無しの中高年男女が、ストレングストレーニングを週2回、21週間続けた研究。レッグエクステンションのアイソメトリックで発揮できる力の伸びの被験者ごとの結果。





★関節の可動域
下半身のエクササイズ種目は、健全な股関節の可動域を必要とするものが多いが、股関節の可動域には個人差がある。可動域限界までいってさらに曲げようとすると、骨盤が後継し腰が丸まり怪我をしやすい(いわゆるbutt wink)。肩関節も可動域に大きな個人差がある。

可動域が足りないのに正しいとされるフォームで完遂しようとすると、怪我をするリスクが高くなる。自分が無理なく関節を動かせる範囲でトレーニングを行う必要がある。



★筋肉のダメージ
筋肉のダメージ(筋肉痛)の回復には個人差がある。腱や靭帯の怪我のしやすさにも個人差がある。

筋肉痛が長期間残る場合は、トレーニング日あたりのボリュームを減らしたり、追い込み度を下げたり、筋肉が伸ばされた状態で強い負荷がかかる種目を避けたりする。



★まとめ
今後も色々と個人差の研究が出てくるだろう。

平均を示すエビデンスは叩き台としては使えるけど、結局自分に何が合っているかは試行錯誤して反応を見ていかないといけない。また初心者→中級者→上級者と向上していくに従い、その時の自分に合うトレーニングプログラムは変わってくる。

ちなみに遺伝子検査はあまり意味がないと思う。運動能力に影響を与える遺伝子は、それぞれの能力に対して数十か数百か、もしくはそれ以上存在するだろう。そして現時点ではごく一部しかわかっていない。



関連記事:遺伝的な要因による筋トレ効果の違い

1/11/2017

股関節の前側(腿の前側の付け根)の痛み


トレーニングをしていると股関節の前側が痛いときがある、またその痛みを予防したい人向けの記事。慢性的な痛みが続いていたり、歩くだけで痛いといった場合は病院に行った方が良い。

股関節の前側の痛みの原因には、いくつかの候補がある。トレーニングを行う人によく見られる痛みの原因とその対処法を書いていく。


1) 股関節の屈筋の問題(腸腰筋、大腿直筋)
日々の生活で座っている時間が長くて股関節の屈筋が固く縮こまっていると、それ自体で屈筋が痛む場合があるし、股関節のボールとソケットが動くスペースが狭まることで衝突が起き痛みが起こる場合もある。また股関節の屈筋が固く縮こまっていると腰痛も起こりやすい。股関節の屈筋が縮こまっていると骨盤が前傾して腰椎が過度に伸展しやすく、大腰筋が縮こまっていると腰椎が直接引っ張られて過度に伸展しやすい。左右差があると腰椎に捻じれも起こる。

それとウェイトトレーニングでは少ないと思うけど、股関節の屈筋が繰り返し伸ばされて炎症を起こしたり、急激に伸ばされて怪我をするケースもある。

股関節の屈筋が固いかどうかはトーマステストで調べられる。

動画:Thomas Flexor Stretch | hip flexor self test

固い場合はストレッチを行う。股関節の屈筋をストレッチする時は、同時に臀筋を強く収縮させると良い。


2) 骨の問題
大腿骨頭と、それが嵌まる骨盤のソケット部分のかみ合わせがあまり良くないと、股関節で衝突が起きる。スクワットで深くしゃがもうとすると股関節の前側が痛みそれ以上しゃがめない場合はこの可能性がある。深くしゃがむスクワットを止め、他の種目に切り替えて、痛みがなくなるか観察する。

参考サイト:股関節インピンジメント


3) 股関節の伸展をする時に臀筋をあまり使わずハムストリングスを主に使っている
臀筋をあまり使わずハムストリングスを主に使って股関節の伸展を行うと、大腿骨が前方に押し出され、股関節の前側で摩擦が起きたりする。ハムストリングスだけでなく臀筋もしっかり使って股関節の伸展を行うと、大腿骨頭がソケットにうまく嵌ってスムーズに動く。

この画像の上図が臀筋を使って股関節の伸展を行う様子。下図がハムストリングスを主に使って股関節の伸展を行う様子で、大腿骨頭が身体の前方に押し出されている。

このケースでは、痛みはあるけどスクワットで深くしゃがめる。また、ハムストリングスや内転筋が固く張っていたり、腰が痛む(腰が過度に反ることでの痛み)といった症状を伴うことがある。

スクワットとデッドリフトで臀筋をしっかり使っておらず股関節のロックアウトが出来ていない例を出すと、

スクワットはこんな感じ
動画:Bad Squat Finish: Incomplete Hip Extension

デッドリフトはこんな感じ。ちゃんと見てないけどたぶん言ってることは正しい。
動画:Deadlifting 315 lbs. with BAD FORM To Prove A Point

デッドリフトの動画から画像キャプチャして例を出すと、

1.ハムストリングスと腰で持ち上げて、臀筋が使えていない。

2.大腿四頭筋と腰で持ち上げて、臀筋が使えていない。

3.臀筋を使って股関節をロックアウト(良い例)。

上に挙げたような悪いフォームでトレーニングを行っている人は、股関節の前側やハムストリングスや腰を痛めるリスクが高いので注意した方が良い。臀筋を使って股関節の伸展を行うやり方を覚えるには、ヒップスラストをやるのが良いと思う。臀筋も集中的に鍛えられる。

参考記事:ヒップスラストのやり方

下の動画の1:30あたりから正しい股関節の使い方の実演がある。ヒップスラストもデッドリフトもスクワットも、ロックアウトの時の股関節の使い方は同じ。
動画:Proper Hip Thrust Form

臀筋を鍛えるには、アイソメトリックで臀筋を強く収縮させるのも良い。
動画:Half Kneeling Glute Posterior Tilt Hard Brace


4) 体幹が弱い
レッグレイズやデッドバグなど脚を上げ下げして腹筋を鍛える運動をする際、特に脚を下ろす時に股関節の前側が痛くなる場合。このケースでは体幹の筋肉が弱くて、代償として大腿直筋や縫工筋や腸腰筋といった股関節の屈筋が過度に働いている。

対処法は、腹筋下部と腹斜筋に強く力を入れる。ドローインしながらやるとやりやすい。これでも良くならない場合は、膝を曲げながら脚の上げ下げを行うと良い。



★まとめ
ウェイトトレーニングを行っている人に多いケースは、1)と3)の組み合わせだろう。対処法は、股関節の屈筋のストレッチと臀筋の強化を行い、股関節の正しい使い方を覚える。デッドバグやプランクで腹筋下部の強化も行った方が良い(参考記事:骨盤の前傾の矯正)。3)だけなら股関節の屈筋のストレッチは行わないほうが良いだろう。


参考サイト:
Troubleshooting Anterior Hip Pain
http://deansomerset.com/troubleshooting-anterior-hip-pain/

Hip Pain In Athletes: Understanding Femoral Anterior Glide Syndrome
http://ericcressey.com/newsletter150html

How Should I Treat My Sore, Tight Hip Flexors?
https://www.girlsgonestrong.com/blog/injury-prevention/ask-ann-how-should-i-treat-my-sore-and-tight-hip-flexor/

Squats and Hip Dysfunction: 2 Common Problems and How to Fix Them
https://breakingmuscle.com/learn/squats-and-hip-dysfunction-2-common-problems-and-how-to-fix-them

1/03/2017

胸椎の姿勢矯正

胸椎の姿勢矯正と可動域の確保の話。


★胸椎とは
胸椎は背骨の胸のあたり。下の背骨の画像の青い部分。

胸椎はニュートラル姿勢でもやや曲がっているが、過度に曲がっていたり(猫背)、可動域に問題があると、生活に支障がでる。ウェイトトレーニングの観点からは、ショルダープレスなどの肩のトレーニングが良いフォームで行えず、怪我をしやすくなる。BIG3も良いフォームで行えない。

座っている時間が長い生活をしていると猫背になりやすい。歳をとるほど悪い姿勢による歪みが蓄積されていき、また老化により自然に可動域が狭くなる。


★胸椎の役割
・胸椎の機能的役割は以下の三つ
- 肋骨の接合点
- 肩甲骨の接合点
- 可動性(曲がる・捻る)

・肋骨は肋間筋で相互接続されている。また斜角筋、横隔膜、腹直筋など呼吸に関係する筋肉の影響を受ける。

・呼吸は上半身の運動機能において重要な役割を果たす。
- 肋間筋が縮こまっていて横隔膜が圧迫されていると、背中が丸まって伸ばせなくなる。肩の動きや首の姿勢に問題も出る。
- 肋間筋が縮こまったままだと呼吸において役割を果たせなくなり、横隔膜のみで呼吸を行うようになる。この状態だと呼吸で腹部のみが動く。
- 深く息を吸って吐く際には、機能が正常なら肋骨の上部と下部、腹部が大きく膨らんでもとに戻る。
- 胸椎が伸ばせないと、肩甲骨の動きが制限され、肩の働きに問題がでる。
- 座っている時間が長いと、胸椎が過度に曲がった状態で固定され、また呼吸も正常に行えなくなる。
- 胸椎の可動性が足りないと、背中の曲げ伸ばしが他の部分、例えば腰椎で行われる


★可動性チェック
・胸椎の横方向の曲がり
背骨の一箇所が曲がるのではなくて全体的に均等に曲がるのが良い。年齢にもよるが左右とも45度くらい曲がるのが目安。
動画:Lateral flexion spinal assessment

・胸椎の捻り
動画:3-point T-spine rotations

・胸椎の伸展
動画:T-spine extension

・肩甲骨の可動性
腕を真っすぐ伸ばして行う。上腕二頭筋が耳をこするのをイメージ。
動画:Supine Shoulder Flexion

。胸椎の伸展と捻り
動画:1-arm Overhead squat

これらの動作は矯正エクササイズとしても有効。


★矯正エクササイズ
・呼吸
- 背筋を伸ばして座って最大限に息を吸い込む。

- ゴムチューブを胸に巻いてチューブが伸びるように息を吸い込む。
動画:Banded Breathing

- 腕を頭の上にあげる時に息を大きく吸い込む。
動画:Supine Shoulder Flexion

- 胸椎の伸展と捻り。ランジの姿勢で腕を上げる 動画
動画:Box lunge & rotate

・胸椎の伸展と首の位置の矯正

動画:Sun Dogs

動画:Cable Face Pulls

・捻りの可動性確保
胸椎の捻りはウェイトトレーニング種目ではほとんど使わないけど、スポーツや日常動作(歩行や腕を前に伸ばして物を取る動きなど)ではとても重要。以下の捻りエクササイズでは、腰椎や肩関節を捻るのではなくて、胸椎を捻ることを意識する。

動画:bent over rotations

動画:Side Lying Extension Rotation

・肩後部の強化
水平方向のプル動作。留意点は、
- 胸を前に押しだすイメージで行うと胸椎が伸展されやすく、上背部の筋肉も動員しやすい。
- 顎を引く
動画:chin tuck hanging rows

・色々角度での肩後部の安定性。ベンチにうつ伏せに寝てダンベルを使うのも良いと思う。
動画:Cable wide arm altered Pollof Press



参考サイト:
All Things Thoracic Spine Part 1: Functional Anatomy
http://deansomerset.com/all-things-thoracic-spine-part-1-functional-anatomy/

All Things Thoracic Spine Part Two: Assessments and Figuring it All Out
http://deansomerset.com/all-things-thoracic-spine-part-two-assessments-and-figuring-it-all-out/

All Things Thoracic Spine Part 3: Corrective Strategies
http://deansomerset.com/all-things-thoracic-spine-part-3-corrective-strategies/