The effect of protein timing on muscle strength and hypertrophy: a meta-analysis
http://www.jissn.com/content/10/1/53
タンパク質の摂取タイミングが筋力向上と筋肥大にどのような影響を与えるのか、既存の複数の研究結果をメタ解析した論文。私は統計学について無知なためここで用いられている手法を理解できているわけではないが、Alan Albert Aragon も Brad Jon Schoenfeld も現場知識があって誠実に科学研究を行う信頼できる研究者だと思うので、以下抄訳してみる。
★今回の論文で解析対象とした研究
- 実験群はレジスタンストレーニング実施の前後1時間以内に6g以上の必須アミノ酸(or相当のタンパク質)を摂取し、対照群は前後2時間以内にタンパク質を摂取しなかった研究。
- レジスタンストレーニングプロトコルを少なくとも6週間継続した研究。
★結果
共変量をコントロールしなかった単純な解析では、タンパク質摂取タイミングは筋肥大に有意差ありで、筋力に有意差無しという結果になった。筋肥大への影響量は、小さい~中程度といったレベル。しかし、共変量をコントロールした解析ではタンパク質摂取タイミングは筋肥大に影響なしという結果になり、サブ解析ではトータルのタンパク質摂取量が、摂取タイミング研究で示された筋肥大の差の大部分を説明するという結果が出た。これらの結果は、トレーニングの直前・直後にタンパク質を摂取することが筋トレ効果を高めるのに非常に重要であるという一般的な考えを否定するように見える。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えていない摂取タイミング研究での平均のタンパク質摂取量は、対照群が1.33 g/kg/dayで、実験群が1.66 g/kg/dayだった。レジスタンストレーニングの効果を最大に得るためには初心者は少なくとも1.6 g/kg/dayのタンパク質摂取が推奨されていることを考慮すると、これらの研究での筋肥大の差はタンパク質摂取量の違いによるものである可能性が高い。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えた摂取タイミング研究では、対照群が1.81 g/kg/dayで、実験群が1.91 g/kg/dayだった。トータルの摂取量を揃えた研究はわずかに3つあり、2つは結果に差が無し。残り一つは摂取タイミングが筋力と除脂肪体重の増加に有意差をもたらしたという結果なのだが、データ不足により今回の解析対象の基準を満たせず除外された。
このメタ解析研究の強みは、
- 解析対象に含める研究の基準を高く設定し、質の高い研究を集め、バイアスが入る可能性を減らしたこと。
- それなりのサンプル数を確保できたこと。実験数23で、筋力については被験者数478名、筋肥大については被験者数525名。
- 良い解析手法。
このメタ解析研究の限界は、
- 対照群の食事タイミングが研究によってバラバラ。ある研究では運動後2時間でタンパク質摂取で、他の研究では何時間もタンパク質摂取を遅らせた。
- 大半の研究がレジスタンストレーニング初心者を被験者としている。トレーニング歴のある人と初心者とでは反応が異なるのは良く知られている。今回の研究でのサブ解析では、筋力についても筋肥大についても、トレーニング歴とタンパク質摂取タイミングの間に交互作用効果は示されなかったが、トレーニング歴のある被験者数を対象とした研究が4つだけなので、この解析結果は強くはない。
- サンプル数を大きくするため、筋断面積と除脂肪体重のデータを筋肥大のデータとして扱った。除脂肪体重の増加は大部分が筋繊維の肥大によるものであるが、レジスタンストレーニングでは骨や結合組織も増加することが知られている。筋断面積と除脂肪体重のデータを分けて解析もしてみたが、結果はほぼ同じだった。
- トータルのタンパク質摂取量を揃えた研究がわずかしかない。
★結論
既存のエビデンスは、ワークアウト前後1時間以内のタンパク質摂取が、レジスタンストレーニングの効果(筋力と筋肥大)を大きく高めるという主張をサポートしないようだ。もしワークアウト前後にアナボリックウィンドウが存在するのなら、それは前後1時間よりも長いものだろう。
ただ、今回の解析からは因果関係は直接には導けないため、タンパク質摂取タイミングが実際にはトレーニング効果の違いをもたらし、タンパク質摂取量の増加はそれに偶然に一致した可能性を排除できない。今後、タンパク質摂取量を揃えて摂取タイミングの影響を調べる研究、またトレーニング歴のある人を対象にした研究が多く行われることが期待される。
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