10/22/2014

[書籍] The Ketogenic Diet

Lyle McDonald の The Ketogenic Diet を読んでのメモ。自分用のメモなのであまりわかりやすいようには書いてないです。

糖質制限ダイエットに興味がある人には参考になる情報が多くあると思います。出版1998年なので一部outdatedな情報もあるかも。本の後半は運動生理学の教科書的な内容なので割愛して、前半部分だけメモしてます。

Lyle McDonald の本は amazon.comでも買えますが、Lyle McDonald のサイトから買った方が安いです。購入を考えている人には、amazonのレビューが参考になるかも。



★基礎知識
人間の身体のエネルギー源:グルコース、タンパク質、遊離脂肪酸、ケトン
どのエネルギー源を使うかは、炭水化物の可用性(ホルモンレベルに影響)、肝グリコーゲンの状態、ある種の酵素のレベル、次第。

エネルギーの身体内の貯蔵量は、脂質>>タンパク質>炭水化物

一般的に、身体の組織は血液中濃度の比率に沿ったエネルギー源を使う。例えば血中のグルコースが増えれば、それを優先的に使う。逆に炭水化物の可用性を低下させることで、脂質を優先的に使うようにできる。

炭水化物が不足すると、タンパク質が糖新生で使われる。炭水化物を多く取れば糖新生は起こりにくくなるけど、同様に脂質もエネルギー源になりにくくなる。

炭水化物不足の状態の初期は糖新生が起こりやすいので、身体のタンパク質が分解されないようタンパク質の摂取量を増やす必要がある。身体がケトーシスに適応すると脂質とケトンでエネルギーを賄うようになり、タンパク質が分解されにくくなる。

ほとんどの身体組織は遊離脂肪酸をエネルギー源に出来るが、脳、赤血球、腎髄質、骨髄、TypeⅡ骨格筋は遊離脂肪酸を使えない。

ケトーシス適応後は、脳は消費エネルギーの75%までをケトンでまかなうことが出来る。残りはグルコース。

ほとんどの身体組織はケトンをエネルギーとして利用できる。例外は肝臓で遊離脂肪酸を利用。

ケトーシスの三日目にはタンパク質以外のエネルギー源は全て遊離脂肪酸とケトンになる。ケトーシスが進むにつれて、脳以外の組織はケトンを利用しなくなっていき、3週間後以降は遊離脂肪酸を主にエネルギー源とするようになる。ケトンを脳に使わせるため。

身体組織による遊離脂肪酸の利用が高まるとケトンも増えて利用されるようになる。

遊離脂肪酸をエネルギー源として利用できるようになれば、それだけグルコースの必要量も減少する。


★エネルギー利用に影響を与えるファクター
・摂取栄養素の質: グルコースを多く摂取するとグルコースの利用が増える(少ないと減る)。タンパク質の摂取を増やすとある程度はタンパク質の酸化が増える(少ないと減る)。脂質は摂取量を増やしてもエネルギー源としての利用割合が顕著に増えるわけではない。炭水化物とアルコールの摂取が増えると、脂質のエネルギー利用は低下する。筋グリコーゲンのレベルが筋肉での脂質の利用を調整する。運動か炭水化物制限により、筋グリコーゲンと肝グリコーゲンのレベルを低くすると、脂質の利用が増える。

・ホルモンレベル: インスリンは貯蔵ホルモンで、血中のグルコースは筋肉か肝臓に貯蔵され、脂質の合成・貯蔵も刺激される。脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出は、わずかなインスリンでも抑制される。インスリンの主な役割は血糖レベルを一定のレンジに保つこと。炭水化物の摂取でインスリンレベルは大きく上昇するが、タンパク質の摂取でも上昇する(一部のアミノ酸がグルコースに転換されるため)。遊離脂肪酸もわずかにインスリンレベルを上昇させる。血糖値が下がるとインスリンレベルも低下し、グルカゴンなどの他のホルモンレベルが上昇し、貯蔵されたエネルギーが血中に放出される。脂肪細胞から遊離脂肪酸とグリセロールが、筋肉などのタンパク質組織からアミノ酸が、肝グリコーゲンからグルコースが放出される。グルカゴンはインスリンの逆の役割で、通常レベルでは肝グリコーゲンの分解を促進、炭水化物制限や運動によりインスリンレベルが非常に低くなると、筋グリコーゲンや脂肪細胞内の脂質の分解放出も。肝臓でのケトン体の生成にも関わる。絶対レベルよりも、インスリンとグルカゴンの比率が重要。他のホルモンは、GH、IGF-1、甲状腺ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、カテコールアミン。

・肝グリコーゲン: 肝グリコーゲンのレベルは、身体全体の栄養貯蔵or分解の傾向を決定する主要因。

・酵素のレベル: 摂取する栄養とホルモンレベルによって決まる。

以上まとめると、炭水化物の摂取が多いと炭水化物がエネルギーとして利用され貯蔵され脂質はあまり使われない。炭水化物の摂取が少ないとその逆。


★ケトン生成
インスリンレベルが高いと脂肪分解が抑制される。
カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)は脂肪分解を促進。グルカゴンや成長ホルモンやコルチゾールも脂肪分解効果があるが効果は小さい。まれなケースではなるが、インスリンレベルが高いと、カテコールアミンレベルが高くても脂肪分解は抑制される。普通は運動といったカテコールアミンの分泌を促す刺激は、同時にインスリンレベルを低下させる。

脂肪細胞のトリグリセリドが分解されると、グリセロールと遊離脂肪酸になる。遊離脂肪酸は血液中を流れていき身体の組織でエネルギーとして利用される。大量の遊離脂肪酸があって、肝臓が準備ができていると、ケトン体に変換され、それが血液に放出される。

ケトンは通常でも微量作られて身体で利用されている。肝グリコーゲンが枯渇すると肝臓はケトジェニックモードになりケトン体をどんどん生成するようになる。この状態では遊離脂肪酸のアベイラビリティがケトン生成レートを決定する。カーボカットしてから12-16時間程度で肝グリコーゲンは枯渇する。カーボカットしてから三日後に肝臓はケトン・フル生産体制になる。


★ケトーシスとケトアシドーシス
ケトーシスとは、グルコースベースの代謝から脂質ベースの代謝に完全移行すること。絶食や高脂質食や運動直後に起きる。タイプⅠ糖尿病やアルコール依存症でのケトアシドーシスは命に関わる。通常のケトーシスとケトアシドーシスの主な違いは血中のケトン濃度。絶食や低炭水化物高脂質食では身体システムにフィードバックループが存在するので危険なレベルまではいかない。
血中のケトン濃度が0.2 mmol/dlを超えるとケトーシス
血中のケトン濃度が7 mmol/dlを超えるとケトアシドーシス
ケトニミア(血中のケトン濃度が高まっていく)
ケトヌリア(尿中のケトン濃度が高まっていく)


★ケトーシスへの適応
ケトーシスは、絶食(飢餓状態)の研究で色々と調べられている。ケトジェニックダイエットは、身体の適応の面では飢餓状態と大まかに同じである。タンパク質と脂質の摂取により、飢餓状態で失われる分のタンパク質と脂質の減少が抑えられる。

飢餓への適応(5段階)
1. 絶食開始後8時間は最後の食事の消化吸収。10時間以内に身体のエネルギー消費の半分が遊離脂肪酸から。
2. 1,2日で遊離脂肪酸と肝グリコーゲンの分解に頼るようになる。12-16時間で肝グリコーゲンは枯渇する。
3. 最初の1週間は、身体はタンパク質や乳酸塩などからのグルコース生成を増やす。脳以外の組織はグルコースの使用量を減らし遊離脂肪酸とケトンの使用を増やす。
4. 3,4日後からケトーシスが始まり、脳はケトンを利用するようになる。
5. 2週目から糖新生が減る。3週間でケトン濃度はプラトーに達する。

絶食後三日目までにエネルギー消費の90%が遊離脂肪酸とケトンで賄われる。3週間後には93%。
3週間後以降は脳以外のほとんどの組織はケトンを使わず遊離脂肪酸をエネルギーとして使うようになる。脳にケトンを回すため。脳は絶食開始直後はケトン利用に適応していないが、じきに適応する。

脳と中枢神経は一日に約100gのグルコースを使うが、飢餓に適応すると、エネルギー消費の75%までをケトンで賄うようになる。残りはグルコースで。

絶食時(炭水化物ゼロ)だと12-16時間で肝グリコーゲンが枯渇。肝臓は糖新生により、グリセロール、乳酸塩、ピルビン酸塩、アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)からグルコースを生成する。絶食が続くと腎臓もグルコースを生成するようになる。グリセロールは脂肪細胞のトリグリセリドを分解して得られる。乳酸塩とピルビン酸塩はグリコーゲンとグルコースを分解して得られる。アミノ酸は筋肉から。アラニンは肝臓で糖新生、グルタミン酸は腎臓で糖新生。


★タンパク質の分解
絶食1週間は尿に一日に12gの窒素、75gのタンパク質が75gのグルコースを作るのに使用されたことを示す。1週間を過ぎるとタンパク質の分解は抑制されてくる。3週間後には3-4gの窒素損失、約20gのタンパク質。

トリグリセリドの質量の約1割がグルコースに(グリセロールを糖新生)。150ポンドの人だと一日におおよそ160-180gの脂肪を分解、そこから16-18gのグルコースを生成。

ケトジェニックに脳が適応するまでは1日100gのグルコースが必要。最初の1週間は、タンパク質由来と脂肪由来で合わせて約100gのグルコースを生成。

3週間で脳がケトン利用に対応し最大75%のエネルギーをケトンで賄う、残りを脂肪由来とタンパク質由来のグルコースで賄う。従ってタンパク質の分解が抑制される。


★ケトーシスとタンパク質消費節約
ケトーシスがタンパク質の消費を抑える4つのメカニズム
- 身体のグルコース必要量を低下させる
- 腎臓での窒素排出を減少させる
- ケトン自体がアンチカタボリックの効果の可能性
- 甲状腺ホルモンT3のレベルが急低下することでタンパク質分解が抑制される。


★甲状腺ホルモンの変化と甲状腺機能について
甲状腺機能に関する以下の2つの症状は区別される必要がある。
・甲状腺機能低下症(hypothyroidism):通常より高いレベルのTSHと、低いレベルのT3、T4。症状は倦怠感と代謝低下。
・甲状腺機能正常性ストレス症候群(euthyroid stress syndrome):T3レベルの低下と、通常レベルのT4、TSH。ケトジェニックダイエットで見られる症状。甲状腺機能低下症で見られる代謝撹乱とは異なる。ここでのT3レベルの低下はケトジェニックダイエットで見られる代謝低下とリンクしていない。他の要因で代謝低下が起きる。(ここでは書かれてないけどレプチンかな)。


★各栄養素のケトジェニックダイエットへの影響
- 炭水化物は100%ケトジェニック阻害効果。1日あたり100g以下の炭水化物だとケトジェニックダイエットになる
- タンパク質は摂取し過ぎるとグルコース転換によりケトジェニックダイエットを阻害。一方でタンパク質はグルカゴンの分泌効果がありケトジェニックダイエットを促進。それと身体のタンパク質分解を防ぐ効果。
- 脂質は利用されたトリグリセリドの10%分がグルコース転換されるので、部分的にケトジェニック阻害効果。


★protein sparing modified fast (PSMF)
除脂肪体重1kgあたり1.5gのタンパク質とビタミンミネラルのみ摂取。かなり過激で身体へのリスクも高いので、病的な肥満の人向け。


★ケトジェニックダイエットと、カーボを取るバランス型ダイエットの体組成変化への影響
- ケトジェニックダイエットは水分が抜けやすい。
- 水分が抜けたあとの体重減少は両方のダイエットで同じ程度だろう
- 体組成(除脂肪体重と体脂肪)の変化への影響についての研究は、結果がまちまち。タンパク質摂取量が不十分だったり、カロリー摂取が低すぎたりで、現実のダイエットでどうなるのかよくわからない。カーボ摂取量が減るにつれて脂肪減・除脂肪体重維持の傾向がでる研究もあるが・・・。個人差もあるしケトジェニックダイエットが有利とははっきりとは言い切れない。研究では運動もしてないし。

ダイエットの種類によって体脂肪の変化や食欲への影響に個人差があるので、自分に向いているのをやればいいだろう。消費カロリー>摂取カロリーにすることが大原則。


★ケトジェニックダイエットの諸々の影響
・幼児のてんかん患者の治療としてのケトジェニックダイエットはよく研究されてる。最大3年間。副作用は、血中脂質の上昇、便秘、水溶性ビタミンの欠乏、腎結石リスクの増加、成長抑制、病気時の酸血症。この本で提案されているケトジェニックダイエットのやり方とは同一ではないので、そのまま当てはめることはできない。ただ、この本で提案されているやり方を長期間続けた場合の影響についてはまったくわかっていないので、ずっと続けることは推奨されない。

・インスリン抵抗性
- ケトジェニックが続いたあとカーボを入れるとインスリン抵抗性が増す傾向。酵素の働きが変化することが要因で、数時間から数日で身体は再びカーボのある状況に適応する。カーボの入れ始めは肝臓が適応しておらず血中にグルコースをリリースし筋グリコーゲンが補充される傾向。

・食欲抑制
- ケトジェニックダイエットは食欲が抑制される傾向。

・コレストロールレベル
- 体重減少だとコレストロールレベルが低下する傾向。体重維持だと上昇する傾向。動脈硬化には長期間のコレストロールレベルの上昇が必要なので、ケトジェニックダイエットで一時的にコレストロールレベルが上昇してもすぐさま動脈硬化になることはないだろうけど、念のためコレストロール測定しておいて、悪い反応が出たら対処する。

・エネルギーレベルの低下
- だるさや立ちくらみが起こる。ナトリウムを十分に摂取(4-5g/day).どうしても合わない場合は少量カーボ摂取か中止

・脳への影響
- てんかん患者の研究では認知能力の低下は見られない。開始数週間は疲労感がある傾向がある。個人差もある。

・尿酸レベル
- ケトンと尿酸は腎臓での処理プロセスが競合。ケトン処理が多いと、血中の尿酸レベルが高まる。ケトジェニックダイエット開始後数週間で元のレベルに戻る。遺伝的に痛風リスクの高い人は、トータルカロリーの5%のカーボ摂取するか、ケトジェニックダイエットは行わないことを推奨。

・腎臓結石と腎臓へのダメージ
- 短期の実験では腎臓への影響なし。てんかん患者で結石リスクがやや高まったのは脱水気味だったのが要因かもしれない。ただ、長期間の影響は不明である。

・肝臓へのダメージ
- 短期での研究では影響なし。長期間は不明。

・便秘
- 食物繊維の摂取量が減るので便秘気味に。カーボの少ない野菜を沢山食べるか繊維サプリを摂取するかしたほうが良い。

・ビタミンミネラル
- カロリー制限するとどうしてもビタミンミネラルの摂取は不足してくる。マルチビタミン剤の摂取を推奨。それと厳しくカーボ制限すると野菜をあまり食べられなくなるので、長期間はやらない方が良いだろう。

・電解質
- ケトジェニックダイエットでは脱水&電解質不足の傾向。食物に含まれる分に加えて、ナトリウム3-5g、カリウム1g、マグネシウム300mgの摂取を推奨。

・カルシウム損失・骨粗しょう症
- カルシウムを十分に摂取すること。特に精製されたプロテインパウダーを飲む場合は。

・リバウンド
- ケトジェニックダイエットの特徴として、水分とグリコーゲンの変化による体重変動が激しいので、炭水化物を再び入れた時の体重増加に落胆しないようにする。体重変動と体組成変動を分けて考えること

・免疫システム
- 維持カロリーでのケトジェニックダイエットだと免疫システムへの影響は見られない。アンダーカロリーかタンパク質不足だと免疫システムに悪影響だろう。

・視神経症
- ビタミンミネラル不足が要因

・抜け毛・爪の変化
- 要因はわからないが・・・タンパク質・ビタミン・ミネラルの不足では。抜け毛((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


★カロリー設定
- 1日の摂取カロリーが1000kcal以下になると代謝が急低下する。
- 推奨は、食事制限・運動により維持カロリーから10-20%のカロリー不足を作り出す。一般的に12-13 calories/lb程度。
- このカロリー設定で週に1-1.5ポンド体脂肪を減らせる。減少が週に1ポンド以下なら摂取カロリーを減らすか運動を増やす。- 週に2ポンド以上減ると筋肉減少リスクが高まるので摂取カロリーを増やすか運動を減らす。
- 代謝低下をあまり起こさずに体脂肪減できるカロリー不足量は1日1000kcal。体重が軽い人はそれ以内。
- 増量は維持カロリー+20%が目安


★The Standard Ketogenic Diet(skd)
炭水化物カットをずっと続けるスタンダードなケトジェニックダイエット。

炭水化物は食べない・タンパク質と脂質は好きなだけ食べて良いというダイエットををすると、多くの人は自動的に摂取カロリーを減らし、結果として減量できるケースが多い。もちろんカロリーオーバーすれば太る。

炭水化物一日100g以下でケトジェニックになるはずだけど、実際は一日30g以下にしないと目立ってケトーシス状態にならない。タンパク質摂取量や運動量によって個人差があるが。

最初の数週間は炭水化物30g以下で、身体が適応したらある程度は炭水化物摂取量を増やせる。

インスリンリリースをなるべく抑えてケトーシスを続けるために、炭水化物はGI値の低い食べ物から摂取、つまり野菜。デンプンはだめ。

・タンパク質摂取量
ケトーシスに適応するまでの最初の3週間は、0.8g/lb か 150g の多い方。体重が軽いと150gになる。これは運動しない場合。運動する場合は0.9g/lb
どれくらい多くのタンパク質摂取でケトーシスが止まるかは個人差がある。筋グリコーゲンのレベルによるのかもしれない。筋グリコーゲンが枯渇してると、入ってきたグルコースは筋グリコーゲンとして補充される。
タンパク質は動物性のものが基本。

脂質はケトーシスにニュートラル。摂取カロリーが低すぎると代謝低下や除脂肪体重の減少が起きやすくなるので、脂質の摂取量でカロリー調整を行う。
普段低脂質の食事をしている人は、急に脂質の多いケトジェニックダイエットを始めると胃に違和感が出たり吐き気がしたりすることがあるので、徐々に脂質の摂取量を増やしていく移行期をもうける。繊維質を多く摂取するのも良い。
必須脂肪酸は摂取すること。必須脂肪酸の多く含まれるオイルの摂取が体脂肪減につながりやすいという報告例も。


★他の飲食物のケトーシスへの影響
水: 健康のため十分に飲むこと。理屈の上では血中のケトン濃度が高くなるすぎるのを防ぐことで脂肪分解を妨げない効果が考えられるがエビデンスは無い。

アルコール: ケトーシス状態になった後はアルコールはケトーシスを深める傾向があるが、アルコール自体のカロリーがあるので、アルコールを飲むとその分の脂肪分解が減る。アルコールもケトンに転換される。

カフェイン: アドレナリンとノルアドレナリンと遊離脂肪酸の血中レベルを上げる。アドレナリンとノルアドレナリンのレベルが上昇することで肝グリコーゲンの分解を促し血中のグルコース濃度を上げてインスリンレベルが上がる。ケトーシス確立後は肝グリコーゲン空っぽなのでインスリンレベルは上がらない。

アスパルテーム クエン酸: クエン酸はケトーシスを阻害する可能性

繊維質: 炭水化物に分類されるけど消化できないのでケトーシスに影響なし。摂取してOK。炭水化物の摂取量にはカウントしない。


★炭水化物とケトジェニックダイエット
ウェイトトレーニングを行わなずにダイエットをすると、体脂肪だけじゃなく除脂肪体重もかなり減るので、除脂肪体重を維持したい場合はウェイトトレーニングが必須。

強度の高いウェイトトレーニングをするには炭水化物を摂取する必要がある。

ある程度筋グリコーゲンレベルが下がると脂肪燃焼しやすい。各ダイエットでのグリコーゲンレベルは図参照(p121)

運動後に炭水化物を摂取しないと筋グリコーゲンはわずかしか回復しない(乳酸塩由来のグルコースでわずかに回復する)
運動前に炭水化物を摂取しておくと、運動後に筋グリコーゲンはかなり回復する。


★The Targeted Ketogenic Diet (TKD)
トレーニングに合わせて炭水化物を摂取する。

TKDは、SKDとCKDの間の妥協策。CKDは強度とボリュームが高くて上級者向け。

トレーニング前のカーボ摂取。なぜトレーニング前の摂取がパフォーマンスを上げるのかよくわかっていない(グリコーゲン充填には時間がかかるし)。血糖値の上昇が筋繊維の動員率を上げるのかも。持久運動にもトレーニング前中のカーボ摂取は有効。

トレーニング30分前に25-50gのカーボ摂取。カーボの種類は問わない。自分に合うのを試そう。
トレーニングボリュームが多くて50g以上摂取する場合は、30分前と直前に分割摂取。

トレーニング後のカーボ摂取はケトーシスを長い時間中断させやすいので、25-50g必要があれば摂取する。その場合はフルクトースが入ってるのは避ける。肝グリコーゲンが補充されやすくケトーシス中断が長引くので。

トレーニング後のプロテイン摂取推奨

トレーニング後の脂質の摂取は推奨されない。タンパク質・炭水化物の消化吸収を遅らせるのと、インスリンレベルが高い時に脂質摂取すると脂肪貯蔵されやすいので(アンダーカロリーなら長期的にはネットで脂肪減になると思うけど・・・まあ頑固な脂肪は分解がボトルネックになるが)


★The Cyclical Ketogenic Diet (CKD)
(後に The Ultimate Diet 2.0 としてブラッシュアップされてるので、やり方についてはあまり詳しくメモしていないです)

CKDは1-2日の高炭水化物摂取フェーズを取り入れる。いったんグリコーゲンを枯渇させるので、高ボリュームのトレーニングが出来ない人には無理。上級者向け。ケトジェニックフェーズはSKDと同じやり方。

週の前半はそこそこグリコーゲン減らして週の後半に枯渇させてからカーボいれてグリコーゲン超回復してウェイトトレーニング。

筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード開始24時間以内に通常レベルまで筋グリコーゲンは回復。36時間で超回復。運動後6時間がグリコーゲン合成速度が高い。

24時間で2時間おきに50gのカーボでグリコーゲン合成最大化、体重70kgの人の場合。24時間で8-10g/除脂肪体重kg。睡眠などで食事間隔が空く場合はまとめて摂取でもOK。その後の24時間はグリコーゲン合成速度は低下し、多くの人にとって体脂肪増加のリスクに見合わない。

カーボの種類はグルコースベースかスクロースを推奨。フルクトースは筋グリコーゲンの回復が鈍い。最初の24時間はGI高めの方が良い傾向、その後の24時間は低GIの方が良い。

トレーニング直後にカーボとプロテイン摂取。トレーニング前中から摂取しても良い。

摂取カロリーはケトジェニックフェーズでの摂取カロリーの2倍。カロリーの70%が炭水化物、タンパク質と脂質が15%ずつ。タンパク質は1g/lbで十分

筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード局面24時間は、炭水化物をたくさんとってもそれはグリコーゲン補充とエネルギー消費に使われ、また体脂肪の燃焼も続き脂質が蓄積されにくい。その後の24時間は脂質が体脂肪として蓄積されやすい。


★カーボロードとケトーシスへの適応
CKDでリフィード局面を入れると、ケトーシスへの適応がやや遅れるようだ(エビデンスなし、経験ベース)。


★カーボロードとアナボリック
生物学的な意味においては、アナボリックとは小さな物質から大きな物質を構築することである。

全身のアナボリック/カタボリックを司るのは肝臓。肝臓のグルコース代謝の酵素レベルが通常に戻るまで5時間かかる。なのでカーボロード前の最後のワークアウトの5時間前に25-50gのカーボ摂取。

肝グリコーゲンのレベルも重要。マウス実験だと肝グリコーゲンの補充にはグルコースとフルクトース合わせたのが有効だった。最後のワークアウト2時間前に摂取。

ここで示されているのはあくまでガイドライン。色々と試して自分の身体で良い結果が出るパターンを探す。


★ケトジェニックダイエットでの停滞期の越え方
- 飽和脂肪酸ではなくて不飽和脂肪酸を多く摂取する。熱としてカロリーが消費されやすくなる。
- 一日のトータルカロリーは同じで、食事回数を減らす。食事と食事の間に体脂肪が燃焼されやすくなるかも。
- 一週間維持カロリーに戻す。ケトジェニックのままでもカーボ入れてもOK。4-6週間ごとに1-2週間のブレークが多くの人にワークするようだ。
- 低カロリーと高カロリーの日を作る。平均して設定した摂取カロリーになるようにする。

CKDの場合
- リフィードの時間を24時間に減らす
- リフィードで食べる食事の質を良くする。ジャンクフードや甘いものを減らす。
- リフィード日の翌朝に有酸素運動してケトーシス開始を早める。
- 10日サイクル(うち1日リフィード)にしてケトーシス期間を長くする。

できれば一度に一つだけの戦略を使って、効くか効かないか判断する。


★ケトジェニックダイエットの終わらせ方
減量を終えて体重維持を続ける際は、運動を習慣にすると体重維持しやすい。

長期でのケトジェニックの影響はわかっていないので、この本ではケトジェニックの食生活を永続することを推奨しない。

炭水化物を再び摂取する際の注意点
- グリコーゲンと水による体重増加を体脂肪増加と混同しない。
- インスリン抵抗性による血糖値の乱高下と高インスリン血症。長期間炭水化物の摂取を制限すると、グルコース燃焼に関係する酵素の働きが低下。また血中の遊離脂肪酸濃度が高いとグルコース運搬を阻害。リフィード開始後、肝臓では5時間、筋肉では24-48時間でグルコース処理の働きが回復する。

・SKD/TKDの終わらせ方の推奨方法
炭水化物を再び摂取するようにする場合は、徐々に量を増やしていく、野菜も同時に摂取する(消化吸収を遅らせるため)、といった方法をとると移行がスムーズ。

・CKDの終わらせ方の推奨方法
- 炭水化物多めのバランス型食事に移行する。これがお薦め。
- CKDのサイクルを続けつつ、摂取カロリー増やす、カーボロードの時間を伸ばすといったやり方で、体重維持・増量フェーズにすることもできるが、長期でのCKDの健康への影響はわからないので、CKDをずっと続けることはこの本では推奨されない。


★検討と選択
ダイエットが有効であるためには、身体面だけではなく精神面でもその人に合ったものでないといけない。ダイエットを続けられないと、どんなダイエット方法も有効にはならない。

・ケトジェニックダイエットをバランス型ダイエットと比較
- 食材の制限: 食事の楽しみといったメンタル面に影響。個人差があって、食事の選択が楽になるという人もいる。あと野菜や果物が制限されるので、それらにのみ含まれる微量栄養素が不足する。CKDなら問題をだいぶ回避できるが、リフィード期間に抑制無く食べまくるタイプの人は食習慣にも健康にも良く無いだろう。
- 体組成変化: 体脂肪を多く減らし、筋肉の減少を抑えるというケトジェニックダイエットのセールスポイントは、強固なエビデンスがあるわけではない。経験ベースは、バランスダイエットに比べて体脂肪が減りやすく筋肉が残りやすいという多くの報告があり、とりわけボディビルダーにそういうケースが多いようだ。

・どのタイプのケトジェニックダイエットを選ぶか
- standard ketogenic diet (SKD): 運動をしない、もしくは低中強度の有酸素運動のみする人向け。
- cyclical ketogenic diet (CKD): 高い強度とボリュームのトレーニングをこなせる上級者向け。健康上の理由(高インスリン血症や高血圧)でケトジェニックダイエットをしている人はリフィード期間の高炭水化物摂取が健康上の問題を引き起こる恐れがあるので向いていない。
- targeted ketogenic diet (TKD): ほとんどの人に有効

・ケトジェニックダイエットを避けた方が良いケース
- 腎結石が出来易い人
- タイプ1糖尿病の人はインスリン必要量が変わるので医師と相談。タイプ2糖尿病で高インスリン血症・低血糖の人は血糖値が下がり過ぎるのに注意。それとタイプ2糖尿病や肥満の人はケトーシス状態を確立しにくい傾向がある。
- 冠状動脈の疾病・高コレステロールの人は血中脂質レベルの推移をチェックして、ケトジェニックダイエットがネガティブな影響を及ぼすようであれば中止する。
- 痛風の人。
- 妊娠中の人。
- てんかん患者。子供のてんかん患者治療に用いられるケトジェニックダイエットはここでのやり方とは異なるし、医師の監督の下に行われないといけない。
- 青年期の人。

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