6/03/2016

筋力と筋量の維持に必要なトレーニング量

忙しかったりストレスがきつかったりでトレーニングが思うように行えない時がある。そのような場合は、どの程度のトレーニングを行えば筋力と筋量を維持できるのか。

筋肉の維持に必要なトレーニング量の研究はいくつかあるけど、この研究は年齢の影響、筋力(1RM)、筋肥大(生体組織診断による筋繊維断面積とDXAによる筋肉量測定)と包括的に調べていて、かつ被験者数が多く実験期間が長い。

Exercise Dosing to Retain Resistance Training Adaptations in Young and Older Adults


★被験者
60-75歳グループと20-35歳グループで計70名(実験を完遂したのは56名)。肥満ではない。過去5年にトレーニング歴無し。


★実験方法
・第一段階
全員が以下のレジスタンストレーニングプログラムを16週間実施。
- トレーニング日は週3回。
- トレーニング種目はニーエクステンション、レッグプレス、スクワット。
- 各トレーニング日に上記3種目を重量75-80%1RMで8-12レップ×3セット。

・第二段階
高齢者グループと若者グループをそれぞれ以下の3グループに分ける。期間は32週間。
1) トレーニング無し
2) トレーニングボリューム1/3:トレーニング日を週に1回に減らす。トレーニング日の内容は第一段階と同じ。
3) トレーニングボリューム1/9:トレーニング日を週に1回に減らす。各種目1セットに減らす。


★測定項目
- 1RM
- TLM(Thigh lean mass)。体脂肪と骨を除いた太腿の質量。DXAで測定。
- 外側広筋の筋繊維のタイプ別の断面積と構成割合


★結果
・第一段階
高齢者グループも若者グループも、筋力の向上と筋肥大が見られた。若者グループの方がより筋肥大し、それは主にタイプⅡ筋繊維の肥大によるものだった。タイプⅡ筋繊維の割合はグループ間で差はなく、割合変化(タイプⅡx→タイプⅡaへのシフト)も差がなかった。

・第二段階
高齢者グループ
- トレーニング無し:筋量はトレーニング前のレベルに戻った。筋力は維持。
- トレーニングボリューム1/9:筋量低下。筋力は維持。
- トレーニングボリューム1/3:筋量低下。筋力は維持。

若者グループ
- トレーニング無し:筋量はトレーニング前のレベルに戻った。筋力は維持。
- トレーニングボリューム1/9:筋量は概ね維持。筋力は上昇。
- トレーニングボリューム1/3:緩やかではあるが筋肥大と筋力の上昇が続いた。

※他の研究でもレジスタンストレーニングで獲得した筋力(神経系の適応などによる)は、何もしなくても数ヶ月間は維持されることが示されている。ただ、この研究では4-8週間ごとに行った1RM測定が筋力の維持に寄与した可能性もある。



レジスタンストレーニングへの適応として起こるタイプⅡ筋繊維の割合(ⅡaとⅡx)の変化は、高齢者グループと若者グループで同じ。
- トレーニング無し:割合は元に戻った。
- トレーニングボリューム1/9:割合はややリバーサルした。
- トレーニングボリューム1/3:割合は維持。


★結論
若い人はトレーニングボリュームを1/3に減らしても筋量と筋力を数ヶ月は維持・向上できるようだ。高齢になるとボリューム1/3でも筋量の維持には足りないが、筋力の維持はできる。高齢者の筋力の維持は転倒予防につながる。筋量は糖や脂質の代謝などに影響するので、筋量もなるべく維持した方が健康には良い。


☆コメント
筋肥大に必要なトレーニングボリュームに比べて、筋量と筋力の維持はかなり少ないボリュームで可能。各人の状況によって必要なトレーニングボリュームは変わってくると思われる。自分の身体の反応を見ながら調整するのが良いだろう。筋力の維持よりも筋量の維持の方が必要ボリュームが多いようなので、筋量を維持したい場合は、筋力をギリギリ維持できるボリュームよりも多くした方が良いだろう。
- 年齢が高くなると維持に必要なトレーニングボリュームは多くなる。
- 減量時(カロリー収支マイナス)には維持に必要なトレーニングボリュームは多くなるだろう。
- 体脂肪率が極度に低い場合は維持に必要なトレーニングボリュームは多くなるだろう。
- 筋量の水準の影響はどうだろう。筋量が増えればそれだけさらなる筋肥大に必要なボリュームは増えるので維持に必要な絶対的なトレーニングボリュームも増えるはずだが、相対的には筋量が少ない場合と同じなのだろうか。

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