4/05/2014

運動後に摂取するカーボの種類によるグリコーゲン回復の違い


An Objective Comparison of Chocolate Milk and Surge Recovery
http://www.bodyrecomposition.com/muscle-gain/an-objective-comparison-of-chocolate-milk-and-surge-recovery.html

このAlan Aragonの記事を読んで、リフィードと関係する部分があったのでメモ。

記事は、運動後のリカバリードリンクとして、Surge(商品名)とチョコレートミルクのどっちがいいかという内容。T-nationのフォーラムで、Alan AragonがT-nationのバックにいるサプリメーカーの人物に科学的研究を論拠に突っ込んでいたら、最終的に書き込み禁止になったらしい。今回はゲストとしてLyle McDonaldのサイトに寄稿している。

基礎知識としてカーボ(炭水化物)の種類を書いておくと
・グルコース: ブドウ糖。
・スクロース: ショ糖。いわゆる普通の砂糖。グルコース1つとフルクトース1つで構成される。
・フルクトース: 果糖。
・スターチ: デンプン。多数のグルコースで構成される。


★運動後のカーボ摂取の研究
グリコーゲンを消耗する激しい運動をさせた後に、違う種類のカーボを摂取させて、肝グリコーゲンと筋グリコーゲンの回復度合いを調べた研究は複数あって、

Effect of different post-exercise sugar diets on the rate of muscle glycogen synthesis.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3316904
この研究は、運動後2時間おきに3回カーボ摂取で、カーボの量と種類を変えている。グルコースは体重1kgあたり0.7gの摂取で、筋グリコーゲンの回復速度が上限に達している。また体重1kgあたり0.7gのスクロースだとグルコースよりもやや筋グリコーゲン回復速度が高いという結果になっている。フルクトースは筋グリコーゲン回復速度が遅い。

Effect of different carbohydrate drinks on whole body carbohydrate storage after exhaustive exercise.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10797108
この研究は、グルコースポリマーとスクロースの比較で、同量を摂取した場合、グルコースポリマーの方がやや筋グリコーゲン回復速度が高いという結果になっている。

Effect of carbohydrate ingestion on glycogen resynthesis in human liver and skeletal muscle, measured by (13)C MRS.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10644538
この研究は肝グリコーゲンの回復も調べていて、スクロースはグルコースの2倍くらい肝グリコーゲンを回復させている。筋グリコーゲンについては大きな違いはないという結果に。

Human muscle glycogen resynthesis after exercise: insulin-dependent and -independent phases
http://jap.physiology.org/content/76/1/104.short
グリコーゲンがスッカラカンに近くなるとグリコーゲン合成速度は上がるみたいなので、倒れそうなレベルの運動をしたらカーボ摂取量を増やしても良いかも。

以上から、運動後に摂取するカーボは、グルコースでもスクロースでもどっちでも良いと思われる。肝グリコーゲンが回復していた方が運動キャパシティにやや好影響らしいので、すぐまた運動する人はどっちかというと甘いものが良いかも。運動後は遠慮なく甘いものを食べよう。ただしグリコーゲン合成速度はわりと遅いので、消化の速いものを一度に大量に摂取してもあまり意味がなさそう。ちなみに、最近よく使われる果糖ぶどう糖液糖は、フルクトースとグルコースの割合がせいぜい6:4くらいなので、スクロースと同じようなものと見なして良いと思う。


★リフィードへの応用
問題は、リフィードではカーボ1kg程度の摂取も行う場合があること。スクロースを摂取していくと肝グリコーゲンがどんどん回復していくが、肝グリコーゲンの容量は100g程度と小さいので、「肝グリコーゲンは満タンに近いけど筋グリコーゲンはまだ足りない」、という状況になると思われる。憶測だけど、この状況ではグルコースのみを入れていった方が筋グリコーゲンの回復には効率的なんじゃないかな。肝グリコーゲンが満タンに近いと、スクロースのうちのフルクトースがDNL変換(糖質→脂質)されやすくなるのでは。

De novo lipogenesis during controlled overfeeding with sucrose or glucose in lean and obese women.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11722954
これはスクロースとグルコースの過食時のDNL変換についての研究で、結果はどっちも変わらんということなんだけど、この場合は、「肝グリコーゲンも筋グリコーゲンも満タンに近い状況」なので、そりゃどんな糖質を摂取しても貯蔵場所が無いのだから脂質に変換される。

The role of dietary carbohydrates in muscle glycogen resynthesis after strenuous running.
http://ajcn.nutrition.org/content/34/9/1831.short
この研究では、二日間に渡ってシンプルなカーボ(グルコース/スクロース/フルクトース)と複雑なカーボ(デンプン)の二種類のリフィードによる筋グリコーゲン回復を比較している。カーボ摂取量は最初の24時間が648gで、次の24時間が415g。食事回数は24時間で2回。PFCは1:2:7。筋グリコーゲンの回復は、最初の24時間はほぼ同じで、次の24時間はデンプンの方がより回復した。食事回数を7回に増やした実験もしていて、7回でも2回より筋グリコーゲン回復が高まるわけではないという結果に。ディスカッションでは、インスリンレベル(スパイクかコンスタントかの違い)が影響?と推測している。





★結論
まあメカニズムはよくわからないけど、リフィード初期は甘いものでもデンプンでも良い、リフィード中盤以降はデンプン主体が良さそう。フルクトース単糖は筋グリコーゲンの回復に向いていないけど、フルクトース単糖の食品は滅多にないだろうから、甘いものという大雑把な考え方で良いと思う。食事頻度については、タンパク質や脂質も同時に摂取すれば、それほど細かく食べなくてもいいのかも。ただ、Lyle McDonaldはUD2.0で、リフィードは2-3時間おきに摂取と書いている。個人的には、色々混ざった普通の食事は消化に時間かかるから、グリコーゲン回復についても筋合成についても、トータルの摂取量が同じなら5-6時間くらい間隔空いても大丈夫では・・・ドカ食いすれば10時間くらいは大丈夫では・・・という考えです。


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