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3/15/2024

拷問みたいなストレッチをすると普通に筋トレするのと同等の筋肥大効果が得られる

拷問みたいなハードなストレッチをすると、普通に筋トレするのと同等に筋肥大するという研究が出てきています。筋力(アイソメトリック)についても、普通の筋トレと同等の伸びになっています。実用性の面では疑問符が付きますが、学術的に興味深い内容なので取り上げます。

ストレッチによる筋肥大研究のこれまでの流れについては、こちらの論文が詳しいです。ざっと概略を書きます。

(1)Physiology of Stretch-Mediated Hypertrophy and Strength Increases: A Narrative Review
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10587333/ 

動物実験では、ストレッチによる筋肥大について明確な効果が示されています。ただし、重りで無理やり筋肉を引っ張るのを毎日24時間続けるといった、人間対象では不可能な方法です。

人間対象のストレッチ研究は、ストレッチで筋肥大が起きたり、起こらなかったりと結果がばらついています。

ストレッチをする時間の長さと、ストレッチの強度が重要なファクターになっていると考えられます。

一日数分程度の普通のストレッチだと、筋肥大はほぼ起こらないです。短時間のストレッチでも効果があったとする研究が一部ありますが、効果なしの研究のほうが多いです。

一日一時間といった長時間、または筋肉に非常に強いテンションがかかり、痛みを強く感じるストレッチだと、確実に筋肥大が起こりそうです。また、効果が示された研究では、整形外科的な器具を用いて、筋肉を強制的にストレッチ状態で固定しています。

ストレッチで筋肥大が起こるのは、筋肉への力学的な張力(メカニカルテンション)が主要な経路だろうと推測されていますが、詳しいメカニズムははっきりとはわかっていません。筋肉が引っ張られて薄くなることで虚血が起こり、酸欠による筋肥大が起こっている可能性もあるようです。
 

4/03/2021

タイプ別の姿勢矯正方法

姿勢が悪いまま筋トレをすると、怪我をしやすくなりますし、見た目も良くありません。以前にも姿勢矯正の記事はいくつか書いたのですが、今回の記事ではそれらをまとめています。扱うのは3タイプの悪い姿勢で、矢状面のみです。悪い姿勢には他のタイプもありますし、前額面・水平面での悪い姿勢(アシンメトリー)もあります。(姿勢矯正は難しいです。あらゆる姿勢を治せるならそれで飯が食えますから)

それぞれの姿勢パターンは、「胸椎(むね)の曲がり・反り」と、「腰椎(こし)の曲がり・反り」の組み合わせで記述できます。

(1)良い姿勢
背骨はニュートラルのS字カーブ。胸椎が適度に曲がって、腰椎が適度に反っているのがニュートラルです。

(2)猫背&反り腰
胸椎曲がり+腰椎反り。ベンチプレス偏重型のトレーニーに多い。

(3)背中全体が反り
胸椎反り+腰椎反り。背中全体の筋肉が緊張している。胸郭が開いている(リブフレア)。アスリートに多い。 

(4)背中全体が曲がり
胸椎曲がり+腰椎曲がり。運動不足のデスクワーカーに多い。デスクジョッキー(desk jockey)と呼ばれる。

ちなみに腰椎曲がり+胸椎反りだと、背中のS字カーブが失われた状態で「平背」と呼ばれます。運動不足で全身の筋力が衰えている人に多い。

3/13/2021

股関節のストレッチ・ウォームアップ

スクワットやデッドリフトの前にやると効果的な、股関節(とその周辺)のストレッチとウォームアップのやり方を書いていきます。別にこの通りやらないといけないわけではなくて、色々なやり方がありますが、自分はだいたいこんな感じでやっているのでその紹介です。トレーニング前にやっておきたい準備の考え方を理解すれば、あとは自分の身体に合ったやり方をしていくのが良いでしょう。



11/24/2020

肩周りのストレッチ(タオル使用)

肩の健康を保つためのストレッチのやり方を解説したいと思います。 

肩周りのストレッチのポイントは、

1. 肩関節の可動域の限界を攻めない

肩関節(肩甲上腕関節)はボール・ソケット型の関節で、上腕骨の骨頭(ボール)と肩甲骨の関節窩(ソケット)から構成されます。ボールとソケットと言ってもソケットにボールがすっぽりとはまっているわけではなく、実際の骨の形はゴルフボールとティーに近いです。骨の噛み合わせ自体には安定性はなく、靭帯や関節包や筋肉などの柔らかい組織で安定させています。肩関節のストレッチでグイグイと力強く動かし、可動域の限界まで攻めると、肩関節の安定性が低下して怪我をしやすくなります。肩関節については可動性よりも安定性を重視し、肩甲骨や胸椎や肋骨を動かすことを意識しながら肩周りのストレッチをおこなったほうが良いです。





12/24/2019

背中のストレッチ

ベンチプレス、デッドリフト、バックスクワット、プルやロウ。コンパウンド種目中心に本格的なウェイトトレーニングを行うと、背中が過度に反った(伸展)状態になりやすく、背中を反らせる筋肉が緊張しやすい。また肩甲骨を寄せて(内転)下げる(下制)状態になりやすい。骨盤が前傾し、腰が反り、肋骨が開きっぱなしになりやすい。




従って、背中を丸めて、肩甲骨を開いて、骨盤を後傾させて、肋骨を締めるエクササイズを行い、動作のバランスを取るとコンディションを整えやすい。

以下のストレッチをやると背中の緊張が取れ、肩甲骨の動きがスムーズになるので、熱心にウェイトトレーニングをやる人は試してみると良いと思う。ウォームアップの段階で行いアラインメント調整すると良いが、BIG3のセット間インターバルや、トレーニング後にもやると背中がリラックス出来て気持ちがいいのでおすすめです。

動画:Lift Moore Monday: All Fours Belly Lift
https://www.youtube.com/watch?v=LgpOlZpVFcQ

1. 口から息をゆっくり限界まで吐き出す。同時に背中を丸めながら、骨盤を後傾させる。恥骨と肋骨を近づけるイメージで行う。殿筋に力を入れる。息を吐ききった後はそのまま2,3秒息を止める。腕は肘を伸ばし床を押しながら(特に親指と人差し指で押す)、手で床を掴む感じをキープする。顎は引く。
2. その姿勢を維持したまま、鼻から息を吸い込む。上背部を膨らませるイメージで行う。
3. 次の吐き出すフェーズでさらに背中を丸めていく。息を吐き出すたびに少しずつ背中が丸まるよう頑張る。
4. 呼吸4,5回で1セット。これを2,3セット行う。


このエクササイズは上手くやると効果が絶大。
・背中の反りを直し、脊柱起立筋群の緊張を緩和する。
・肩甲骨が内転・下制で張り付いているのをスムーズに動かせるようにする。
・横隔膜をしっかり使って肋骨を膨らませて深く呼吸できるようにする。
・肋骨を締め強い体幹を作れるようにする。

熱心にウェイトトレーニングする人がなりやすい症状をオフセットするのに、一つだけエクササイズをするとしたらこれがベストだと思う。


他にも背中を丸めて腕を伸ばすエクササイズがあるので興味がある方は以下のサイトをどうぞ。NFLドラフト候補生のトレーニングを指導している人の記事で、ベンチプレスやデッドリフトやプルやロウを行うアスリートの身体コンディションを保つにはどうすれば良いのかという内容です。

Why You Must Reach
https://dsstrength.com/why-you-must-reach/


関連記事:プッシュとプルのバランス


10/19/2018

肩周りのストレッチ

★姿勢・アラインメント・筋力バランス
良い姿勢に骨の配列が収まっていて、筋力のバランスが取れていると肩がよく動くようになる。姿勢がニュートラルポジションから逸脱していたり、関節の安定に寄与する小さな筋肉が働かなくなって大きな筋肉で力任せに動かす癖がついていたりする場合は、姿勢の矯正をした上で正しい関節動作を身体に覚え込ませる必要がある。

段階としては、
step1. 使いすぎて固く縮こまっている筋肉を緩めて伸ばす。
step2. 弱っている小さな筋肉をアイソレートして鍛える。
step3. 大きな筋肉と小さな筋肉が連動して動作を行えるよう身体に覚え込ませる。
step4. 肩関節の健康を保つ上でバランスのとれたトレーニングを行う。

大胸筋や広背筋が固く縮こまっていて姿勢が悪く、前鋸筋やローテーターカフなど小さな筋肉が弱っている場合は、step1から順に行う。

現状で大きな問題がなければstep3と4で、小さな筋肉を動員するエクササイズをバランス良く行うことで、肩関節に不具合が起きないようにする。BIG3を中心としたウェイトトレーニングを行う場合は、大胸筋や広背筋が固く縮こまらないよう、これらの大きな筋肉のストレッチを並行して続けると良い。

今回の記事はstep1についてのみ。

step2については、弱っている代表的な小さな筋肉であるローテーターカフと前鋸筋について、それぞれエクササイズ方法を紹介するつもり。

step3については、プル・ローイング動作のやり方を書くつもり。プッシュ・プレス動作については、前鋸筋の記事にまとめて書くつもり。

step4については、プッシュ動作とプル動作のバランスのとり方について書くつもり。


★肩関節を動かしやすい良い姿勢
- 猫背にならない。胸椎はニュートラルなカーブを描き、肩甲骨が前傾しない。
- 肩甲骨が寄り過ぎたり離れ過ぎたり、上がりすぎたり(いかり肩)、下がりすぎたり(なで肩)になっていない。
- 上腕骨が前方に突き出たり、内旋したりしない。直立して腕をだらんと下ろした際に、手のひらが後ろを向くようだと上腕骨が内旋している。
- 首が前に突き出ていない。首が反っていない。

現時点でニュートラルな姿勢からどのような逸脱が起きているかは個人差がある。生活習慣や長年行っている競技によっても異なる。効果的な対処をするには、専門家による現状の正確なアセスメントが必要。

それを前提とした上で、「ウェイトトレーニングに熱心な人がどのような状態になりやすく、それにはどう対処したら良いか」について汎用的な対処法を書いていく。あくまで汎用的な方法なので、現状分析した上でのスペシャルな対処法には効果が劣るだろう。

ウェイトトレーニングに熱心な人が固く縮こまりやすい主な筋肉は、大胸筋、小胸筋、広背筋、菱形筋。


★姿勢の歪みの例
動画:EricCressey.com: Should You "Balance" Pushes and Pulls?
https://www.youtube.com/watch?v=t9XKZRIIazc
動画に出てくる最初の例は、広背筋を多く使うトレーニグにより肩甲骨が下に押し付けられて、なで肩になっている状態。デッドリフトや懸垂で広背筋は強く使うし、ベンチプレスやスクワットでも肩甲骨は下に押し付けられやすい。そのため本格的なウェイトトレーニングを行うとこの状態になりやすい。この場合は広背筋のストレッチを行うのが良いだろう。

動画の1:43~でmilitary postureと言っている例は、菱形筋が固く縮こまって肩甲骨が寄りすぎて少し上がっている状態。ベンチプレスやスクワットでは肩甲骨を寄せて固定するし、また身体を後ろに倒して肩をすくめながらローイングをやるとこうなりやすい。この場合は肩甲骨を開くストレッチをやったり、テニスボールなどでマッサージして菱形筋をほぐすと良い。

動画:Effects of bad posture on your spine: prevent with Low Pressure Fitness
https://www.youtube.com/watch?v=Obsut3Dc2Ok
大胸筋や小胸筋や広背筋が固く縮こまり、猫背巻き肩になっている例。首も前に突き出している。Youtube で bad posture で検索すると、もっとわかりやすい生身の人間の例が出てくるのだけど、対処方法がいまいちなのでここでは紹介しない。大胸筋や広背筋の使いすぎで猫背巻き肩になっている場合は、胸椎を伸ばし、大胸筋と広背筋のストレッチを行うと良い。


★使いすぎて固く縮こまっている筋肉をストレッチする
肩関節周りのストレッチを行う際に共通する注意点は、肩関節のボールとソケット部分のみを大きく曲げないこと。胸椎と肩甲骨を同時に大きくゆっくり動かすことを意識する。ボール・ソケット部分をグイグイ曲げると、肩関節の安定性が低下する恐れがある。肩甲骨と胸椎の可動性を高めることを意識してストレッチを行う。

・胸椎
丸まった胸椎を伸ばす。胸椎の捻りも重要。

TonyGentilcore.com How to Perform Thoracic Extension on Foam Roller Correctly
動画:https://www.youtube.com/watch?v=Oi9MeEGiQ-0
フォームローラーで胸椎を伸ばす時の注意点。腰椎を伸ばすのではなく、胸椎を伸ばす。グイグイと反らない。胸を開かない。首を反らない。1:00~が良いやり方の例で、腰が反らないよう体幹を締め、胸が開かないよう腕を前に伸ばしながら行う。胸椎の可動域は小さいので、少しだけ動かせば良い。

動画:HighPerformanceHandbook.com: Bench T-Spine Mobilizations
https://www.youtube.com/watch?v=qovO0ysEpuc
顎を引いて胸椎を伸ばしたまま、ゆっくりと身体を下ろしていく。下ろしきったところで息を深く吐き出す。広背筋や上腕三頭筋も同時にストレッチできる。

動画:HighPerformanceHandbook.com: Side-Lying Windmill
https://www.youtube.com/watch?v=RX21NOL61OE
腰椎は固定して捻らない(ヘソの位置が動かないよう意識するとやりやすい)。肩関節のみを回さず、胸椎を含む上背部全体を大きく回す。自分の手の動きを目で追うとやりやすい。

・大胸筋、小胸筋
グイグイとアグレッシブにストレッチしないこと。肩関節は優しく扱う。胸筋のストレッチはリラックスして鎖骨をゆっくり開くイメージでやると良い。腕だけ後ろにいって胴体が前に残ると、上腕骨のボール部分が前に押し出されて肩関節に良くない。

動画:Doorway slides
https://www.youtube.com/watch?v=b0Ccih0z7pE

動画:Corner Wall Chest Stretch
https://www.youtube.com/watch?v=Kvo7054R3fQ

動画:ShowandGoTraining.com: Pec Major & Minor Soft Tissue
https://www.youtube.com/watch?v=kOtSeKKJDmc

・広背筋
広背筋のストレッチのポイントは、腕を身体の前方に、親指は上を向く、肩甲骨も腕に合わせて動かす、胸椎は伸ばす、腰椎は丸める、伸ばしたポジションでゆっくりと息を吐いて、吐ききった状態で静止。

動画:EricCressey.com: TRX Deep Squat Breathing with Lat Stretch
https://www.youtube.com/watch?v=LENyTY-MKy4
広背筋のストレッチ。パワーラックに手を引っ掛けてやったり、床の上で土下座スタイルで腕を前に伸ばしてやっても良い。

・菱形筋
菱形筋のストレッチを調べてみたけど、腕を自分の身体に寄せて引っ張ることで肩甲骨を開いて菱形筋をストレッチするやり方が多い。このやり方だと肩関節のボールとソケット部分の角度が鋭角になって、肩関節の安定性が低下しそうなので、肩関節のボールとソケットがなるべく鋭角にならず、肩甲骨をのみを開くやり方が望ましい。

動画:Rhomboid Stretch
https://www.youtube.com/watch?v=j4NyH5YNLl4
こんな感じが望ましい

動画:How to Stretch Rhomboids
https://www.youtube.com/watch?v=ca5j-33Bn6c
この動画の後半のように腕を自分の身体に寄せて引っ張ると肩関節に悪そうな感じ

個人的には、下図のようにダンベルを片手に持って、ダンベルの重さで菱形筋を伸ばすのがやりやすい。ダンベルの重さは私は20kgくらいがちょうど良かった。軽すぎると伸びないので適度に重いのが良いと思う。胸椎の捻り方向のストレッチも同時に行える。



動画:Tennis Ball Rolling Exercises for Upper Back Pain -Missoula Chiropractor Krieg Tip
https://www.youtube.com/watch?v=bFI6hGRa-hg
菱形筋をテニスボールでほぐす。肩甲骨と背骨の間にボールを置いて行う。硬めのマットレスのベッドの上に寝て行うのも良い。

・首の突き出し、反り

首周りのエクササイズは慎重にゆっくり行うこと。グリングリンと勢いよく回したり、強い負荷をかけないこと。それとスクワットやデッドリフトで首を反って挙上するのは、首の突き出しや反りを悪化させるので止めたほうが良い。

動画:FIX Forward Head Posture! (Daily Corrective Routine)
https://www.youtube.com/watch?v=wQylqaCl8Zo
首が前に突き出ている場合の矯正方法。他の箇所の姿勢矯正と同様に、固く縮こまっている筋肉を伸ばして、弱い筋肉を鍛える。顎を引くストレッチは、立って背中を壁につけて行うのも良い。



関連記事:
肩関節の基礎知識

ローテーターカフの強化

前鋸筋の動員

ロウ・プルのやり方

プッシュとプルのバランス

ショルダープレス

懸垂のやり過ぎによる怪我リスク(肘と肩)

6/07/2017

ストレッチとウォームアップ

運動前にストレッチとウォームアップをどのように行っていけば良いのか書いていきます。

運動前の準備で行いたいことは、

高いパフォーマンスを発揮し、トレーニング効果をしっかり得られる身体の状態にもっていくこと

関節の可動域が足りなかったり、特定の筋肉が固くて姿勢が歪んでいる場合、そのコンディションでトレーニングを行っても、質の高いトレーニングを行うことは出来ず、 トレーニング効果を得にくくなります。競技を行う場合も高いパフォーマンスが発揮できません。

運動前の準備に必要な要素を2つのフェーズ分けて書くと、

<フェーズ1(主にストレッチ)>

・可動域の確保
これから行う運動に必要な関節の可動域を確保する。

・アラインメントの修正
アラインメント(身体のパーツの配列)に異常がある場合、簡単に言えば姿勢が悪い場合は、なるべく正常に近づける。

・ 筋肉・筋膜のインバランスの修正
緊張して固くなっている筋肉・筋膜を緩める。緩んで伸びている筋肉をアクティベートし、力が入るようにする。

<フェーズ2(主にウォームアップ)>

体温上昇と脈拍上昇、それと運動に必要な動作の予習(フォーム確認と力の発揮)を行う。

 

これらの要素を達成し、運動前の準備を完了するために、静的ストレッチ、動的ストレッチ、フォームローラー、全身を動かす軽い有酸素運動、競技特有のウォームアップといった手段を使います。それぞれ得意な要素、不得意な要素、また得意な関節・筋肉、不得意な関節・筋肉があるので、身体の状態に合わせて適材適所で組み合わせてコンディションを作っていきます。

例えば、アラインメントの修正や、筋肉・筋膜のインバランスの修正は、静的ストレッチやフォームローラーが適しています。可動域を広げるのは動的ストレッチでも静的ストレッチでも出来ますが、やりやすさは関節と筋肉によって異なり、例えば前腕やふくらはぎの筋肉を伸ばしたいといった場合は、動的ストレッチよりも静的ストレッチのほうが適しています。体温上昇と脈拍上昇は、動的ストレッチや軽い有酸素運動が適しています。

「運動直前の静的ストレッチは運動パフォーマンスを低下させたり、筋肥大効果を低下させたりするから、運動前には静的ストレッチをやらないほうが良い」といった主張を見ることがありますが、運動前の準備に必要な要素を理解し、ストレッチとウォームアップの目的を明確にし、各手段を使い分けていくことが重要です。

ストレッチをどう使えば良いのか理解するため、まずは静的ストレッチと動的ストレッチについての予備知識から。

 

静的ストレッチによる短期的なパフォーマンス低下

静的ストレッチを行ってすぐに運動をした場合、パワー(ジャンプ力など)、ストレングス(1RMなど)、スピード(スプリントなど)が低下することを示す研究が多くあります。

中レップ・高レップのレジスタンストレーニングをする場合でも、最大レップ数が低下しやすいです。筋トレの直前に静的ストレッチを行うと、行わなかった場合に比べてトレーニングボリュームが低下し、筋肥大効果が低くなることを示す研究もあります。

静的ストレッチの影響は実施時間や強度によっても変わり、長い時間(30-60秒以上)やったり、痛みが強くなるレベルまでハードにやると、パフォーマンスが大きく低下する傾向があります。

ただ、こういった研究は、レッグエクステンションの直前に大腿四頭筋を静的ストレッチするといった、現実にあまり関係のないデザインです。静的ストレッチをすると、筋肉-腱が緩んで直後の出力が低下するのは事実ですが、高い出力が求められる主働筋を静的ストレッチする必要があるケースはあまり無いです。上の例で言えば、ほとんどの人は大腿四頭筋のストレッチをしなくても、膝の可動域はレッグエクステンションをするのに十分です。



静的ストレッチの長期的な効果

静的ストレッチを長期的に行うと、柔軟性が向上します。長期的には、運動パフォーマンスの低下は無いとする研究が多いです。

静的ストレッチを数週間続けると筋力が向上したという研究がいくつかあります。しかしこれはエキセントリックトレーニングと似たメカニズムで筋肉に負荷がかかったためでしょう。普段から筋トレしている人にとっては、ストレッチでの負荷では過負荷にならないので、筋力向上や筋肥大は起きないと思います 。

長期的な静的ストレッチによる身体の変化を考えると、理論的には運動パフォーマンスに微妙な影響が出るかもしれません。長期的な静的ストレッチでエキセントリックトレーニングと同様に筋肉の長さがが変わる可能性があって、そうすると最も力を発揮できる筋肉の長さ(関節の角度)も変わります。実践面では、競技に必要な関節の可動域を得たら、あとはそれを維持する程度に静的ストレッチを行えば良いでしょう。


動的ストレッチの効果

動的ストレッチは可動域を拡げつつ、運動パフォーマンスを向上させます。運動パフォーマンスが向上するのは、体温上昇と脈拍上昇といったウォームアップとしての効果があるからでしょう。ただ、強度の高い運動をするなら、動的ストレッチだけではウォームアップとしては不十分だと思います。

動的ストレッチは長期的に行っても、柔軟性の向上は起こらないようです。長期的に柔軟性を向上させるには、静的ストレッチかフォームローラーが良いでしょう。


ストレッチが筋肉-腱に及ぼす影響の推定メカニズム

推定メカニズムはいくつかあるのですが、そのうちの1つだけが正しいわけではなくて複合的に効果を発揮すると思われます(かなり難しいです。間違いがあったら申し訳ないです)。

- 神経-筋肉がリラックスする説。持続時間は短期か。

- 筋肉-腱が伸ばされるときの抵抗が小さくなる説。持続時間は短期と長期か。

- 筋肉が伸ばされると身体が筋肉断裂の警告を痛みとして発するのですが、ストレッチでこの痛みに慣れることで警告が発せられるラインを引き上げる説。このメカニズムだけだと本当に筋肉が断裂する危険域は変わらないので、警告から断裂までの安全マージンが小さくなって、筋肉が伸ばされる競技だと怪我のリスクが上がるかもしれない。持続時間は短期と長期か。

- 筋肉-腱の粘弾性が低下する説。筋肉-腱が伸びたゴムみたいになる。エキセントリックからコンセントリックに移る際の弾性エネルギーの蓄積が減り、コンセントリックフェーズでの力の発揮が低下する可能性。持続時間は短期か。

- 筋節が直列に追加されて筋繊維が長くなる説(長期的な効果)。人間が行う普通のストレッチで起こるか疑問だという考察もあるが、エキセントリックトレーニングで筋束が伸びることが示されていてそれは筋節の追加によるものだと推測されているので、静的ストレッチでも筋節が追加されて伸びるのではないだろうか。2017年の研究でも長期的な静的ストレッチで筋束が伸びることが示されている。


怪我のリスク

運動前にストレッチをしても特に怪我のリスクが低下するわけではない、とする研究が多いです。

メカニズム的には、運動前に静的ストレッチをやりすぎると神経-筋肉の反応が遅れ、咄嗟の動きが鈍くなって怪我リスクが上がる可能性があります。また前述のように安全マージンが小さくなって、競技によっては筋断裂リスクが上がる可能性もあるかもしれません。



以上がストレッチについての予備知識です。次にストレッチの組み込み方を考えていきます。


運動前にやるべきこと

記事の最初のほうでも書いたように、ウォームアップ以外で運動前にやるべき準備を3つ挙げると、

(a) 可動域の確保
これから行う運動に必要な関節の可動域を確保する。

(b) アラインメントの修正
アラインメント(身体のパーツの配列)に異常がある場合、簡単に言えば姿勢が悪い場合は、なるべく正常に近づける。

(c) 筋肉・筋膜のインバランスの修正
緊張して固くなっている筋肉・筋膜を緩める。緩んで伸びている筋肉をアクティベートする(これはストレッチでは難しい)。

関節の可動域が足りないと、運動でパフォーマンスを発揮しにくくなったり、怪我をしやすくなったりします。例えば股関節の可動域が足りないままデッドリフトを行うと、背中を丸めてバーに手を届かすことになり、腰を痛めやすくなります。他には、背中が丸まって猫背になっている状態でベンチプレスをやると、肩を痛めやすいです。また、アラインメントと筋肉・筋膜のバランスが悪い状態でトレーニングすると、過度に使われている筋肉ばかりを悪い姿勢のまま使うことになり、症状が悪化してしまいます。

可動域の確保は静的ストレッチでも動的ストレッチも効果がありますが、動的ストレッチはパフォーマンス低下が起こらないので、可動域の確保のみが必要な場合は動的ストレッチを優先的に行ったほうが良いでしょう。ただ、前腕やふくらはぎなど、動的ストレッチだと伸ばしにくい関節・筋肉もあるので、そこは適材適所でやっていきます。

静的ストレッチを主に使う目的は、アラインメントの修正、筋肉・筋膜のインバランスの修正です。これらは動的ストレッチではなく、静的ストレッチで丁寧にやったほうが良いです。

フォームローラーも、可動域の確保、アラインメントの修正、筋肉・筋膜のインバランスの修正にそれぞれ効果があるので併用すると良いでしょう。フォームローラーは運動パフォーマンスの低下がないようなので、フォームローラーだけで目的を達成できる部位は静的ストレッチより優先したほうが良いかもしれません。またフォームローラーは、筋肉を伸ばしすぎるリスクが無いのもメリットです。(例えばハムストリングスをストレッチで伸ばしすぎると痛めたりするので、そういった筋肉はフォームローラーのほうが適しています)

どの部位をどのくらいストレッチすべきかは、その人のコンディションと行う運動次第になります。良いコンディションの人はウォームアップを兼ねて軽く動的ストレッチをするだけで十分な場合もあるでしょう。


ストレッチを行う具体例

運動前の静的ストレッチは、ストレッチされた筋肉のストレングスやパワーを低下させる可能性が高いです。ただ後述しますが、静的ストレッチのあとにウォームアップを行えば、静的ストレッチによるパフォーマンス低下を打ち消せるので、静的ストレッチに対してあまり神経質になる必要はありません。

筋トレのトレーニング種目を考えていきますと・・・単関節種目だと、主働筋のストレッチが必要なケースはあまり無いと思います。アームカールの前に上腕二頭筋をストレッチする必要はないですし、トライセプスエクステンションの前に上腕三頭筋をストレッチする必要はないですし、レッグカールの前にハムストリングスをストレッチする必要はないですし、レッグエクステンションの前に大腿四頭筋をストレッチする必要はないです。

ストレッチが必要になるのは、複数の関節を連動させて動かす場合です。

例えばデッドリフトで、ハムストリングが固くて股関節の可動域が足りない場合は、トレーニング実施前にハムストリングをストレッチしたり、フォームローラーでほぐしたりすると良いでしょう。セット間インターバルには、静的ストレッチはやらないほうが良いです。

骨盤が前傾している場合は、トレーニング前に股関節の屈筋を静的ストレッチしてこれらの筋肉を緩め、同時に臀筋に力をいれてアクティベートすると、骨盤の前傾を矯正できます。股関節の屈筋には大腿直筋も含まれるので、スクワットなど大腿四頭筋を主働筋とする種目の直前やセット間インターバルに、股関節屈筋の静的ストレッチをするのは避けたほうがよいでしょう。

セット間インターバルに静的ストレッチをしても問題ないケースとしては、ベンチプレスがあります。骨盤が前傾しているとベンチプレスでブリッジを組みにくいので、その場合は、ベンチプレスの直前やセット間インターバルに股関節の屈筋の静的ストレッチをしても悪影響は出ないです。

猫背・巻き肩の人は、肩のトレーニングをする前にフォームローラーなどで胸椎を伸ばし、静的ストレッチで大胸筋や広背筋を伸ばすと良いでしょう。ベンチプレスのセット間インターバルで大胸筋の張りを取りたい場合は、軽く両腕を開いて動的ストレッチをすると良いでしょう。

また長時間のデスクワークなど一定の姿勢を取り続けた後は、短縮ポジションに置かれて固くなった筋肉をストレッチすると良いです。

どういうコンディションの人が、何の運動ために、どの筋肉をストレッチするのかを考えて、適材適所でストレッチをやっていくことが重要です。


ウォームアップによるパフォーマンス低下の回復

主働筋を静的ストレッチする場合は、静的ストレッチのあとに全身ウォームアップと競技特有のウォームアップを行うことで、低下した運動パフォーマンスを元に戻せるようです。完全に戻るかどうかは、ストレッチの強度やウォームアップの程度、ストレッチからトレーニング実施までの時間間隔や、求められるパフォーマンスによります。

静的ストレッチ後の運動パフォーマンス回復についての研究を見てみると、

- 何もしなくても10-15分位である程度は運動パフォーマンスが戻る。

- 静的ストレッチの後にジョグや動的ストレッチをするとある程度戻るが動的ストレッチのみ実施した場合に劣る。

- 静的ストレッチの後に競技特有のウォームアップをすると動的ストレッチと差なしになる。

- 先にウォームアップしてから静的ストレッチをすると、静的ストレッチのパフォーマンス低下が残る。

実際の運用面では、必要があれば静的ストレッチをしたりフォームローラーを使ったりして、その後に動的ストレッチを行い、5-10分の軽い有酸素運動を行って、最後に競技特有のウォームアップを行うのが理想だと考えられます。この順序で行えば、主動筋の静的ストレッチをやったとしても、運動パフォーマンス低下は無くなっているでしょう。

運動前の静的ストレッチは一部位1セットあたり10-20秒程度を2,3セット、ゆっくりと伸ばしていき心地よい痛みを感じる程度にしておくとパフォーマンスが低下しにくいです。長期的に柔軟性を向上させたい人は、運動後や就寝前などに30秒くらいの長めの静的ストレッチをすると良いと思います。

運動にもよりますが、あまり時間がない場合は、動的ストレッチや負荷の軽い運動をすれば、有酸素運動を省いても大丈夫です(私は筋トレ前に有酸素運動はやらず、動的ストレッチと、ランジやスクワットなど自重種目で身体を温めています)

筋トレでの競技特有のウォームアップは、BIG3などコンパウンド種目のウォームアップになります。トレーニング重量の50%くらいで10レップくらい→75%くらいで5レップくらい→トレーニング重量付近もしくは90%1RMくらいで1-3レップといった一般的なやり方を参考にして、自分がやりやすい方法で行うのが良いでしょう。




参考文献:
The Effects of Stretching on Performance
http://journals.lww.com/acsm-csmr/Fulltext/2014/05000/The_Effects_of_Stretching_on_Performance.12.aspx

The Effects of Stretching on Strength Performance
https://www.researchgate.net/publication/6479273_The_Effects_of_Stretching_on_Strength_Performance

Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: a systematic review.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21659901

Effect of the flexibility training performed immediately before resistance training on muscle hypertrophy, maximum strength and flexibility.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28251401

Acute and chronic effects of a static and dynamic stretching program in the performance of young soccer athletes
http://www.scielo.br/scielo.php?pid=S1517-86922013000400003&script=sci_arttext&tlng=en

Influence of strength and flexibility training, combined or isolated, on strength and flexibility gains.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25268286

長期的なストレッチが筋力に及ぼす影響―他動ストレッチと自動ストレッチでの検討―
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0569/_article/-char/ja/

Does stretching really change muscle length?
https://www.strengthandconditioningresearch.com/2013/11/18/stretching/

Stretch training induces unequal adaptation in muscle fascicles and thickness in medial and lateral gastrocnemii
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.12822/abstract

Acute Effects of Foam Rolling, Static Stretching, and Dynamic Stretching During Warm-Ups on Muscular Flexibility and Strength in Young Adults.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27736289

THE EFFECTS OF SELF‐MYOFASCIAL RELEASE USING A FOAM ROLL OR ROLLER MASSAGER ON JOINT RANGE OF MOTION, MUSCLE RECOVERY, AND PERFORMANCE: A SYSTEMATIC REVIEW
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4637917/

Negative effect of static stretching restored when combined with a sport specific warm-up component.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18768355

Secondary warm up following stretching on vertical jumping, change of direction and straight line speed
https://www.researchgate.net/profile/Alan_Pearce/publication/232896502_Secondary_warm-up_following_stretching_on_vertical_jumping_change_of_direction_and_straight_line_speed/links/02bfe50e609bc244f3000000/Secondary-warm-up-following-stretching-on-vertical-jumping-change-of-direction-and-straight-line-speed.pdf