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5/15/2025

スクワットのテンポが筋力、筋肥大、瞬発力に与える影響

スクワットのテンポをどのように設定すれば良いのか。

論文を5つ紹介してから、最後に目的別のまとめを書いてあります。


9/20/2023

Bスタンス・スクワット/デッドリフト

スクワット、デッドリフトの補助種目として優秀なBスタンス・スクワット/デッドリフトのやり方を紹介します。

Bスタンス・スクワット/デッドリフトは、脚を前後に少しずらして、前側の脚に負荷をかけてトレーニングする片脚種目です。バランスに気を使う必要がなく、バーベルスクワット・デッドリフトに非常に近い動きで片脚のトレーニングを行える優秀な種目です。


1/18/2022

スクワットのしゃがみの練習方法

自重スクワットやゴブレットスクワットだとスムーズにしゃがめるけど、バーベルを肩に担いでバックスクワットをすると、スムーズにしゃがめなかったり、バットウィンクが起きやすかったりする場合の練習方法です。

普段から身体を動かしていて、股関節のモビリティが十分な人向けの内容なので、股関節のモビリティが足りなくてしゃがむのが苦手な場合は、関連記事を参考にしてください。

関連記事:股関節のストレッチ・ウォームアップ

練習は大きく分けて2つあって、体幹を固める練習、しゃがみの練習です。


1/12/2022

スクワットのバーの担ぎ方再考

私は、ロウバースクワットは肩甲骨を強く寄せて、背中をガチガチに固めて担ぐものだと思っていて、以前は自分でもそうやっていました。下の画像が実例で、Mark Rippetoe のスターティングストレングスに書かれているようなやり方です。ただこのやり方は肩周りが窮屈で肘や肩に負担がかかる感じがするので、ここ数年はずっとハイバーでスクワットしています。


動画:筋トレ:スターティングストレングス・プログラムによるローバースクワット
https://www.youtube.com/watch?v=4nXeRHYVHGo


ハイバーに変えてから、姿勢のことなど色々と学んでいって、上のようなロウバーのフォームで肩甲骨を強く寄せて胸椎を伸展しながらスクワットすることは機能的な身体動作なのだろうか? と疑問が燻ってしました。ハイバーだと肩甲骨を強く寄せる必要はないですし、胸椎を伸展する必要もないです。ゴブレットスクワットや、セーフティスクワットバーでのスクワットでも同様です。

最近、ロウバーの担ぎ方を調べ直して、ロウバースクワットのパワーリフターでも肩甲骨を強く寄せず、胸椎も伸展しないフォームの人がいるのがわかって、ロウバーもハイバーと同じ姿勢でやっていいとスッキリしたので、今回の記事を書くことにしました。体幹、姿勢、身体機能の基本モデルが、ハイバーでもロウバーでも共通で使えるのがスッキリポイントです。


1/07/2022

スクワットやデッドリフトでの視線について

スクワットやデッドリフトの時に見る方向(視線)は、体幹の姿勢を崩さなければやりやすい方向でOKです。一般的には水平くらいか、やや斜め下が多いと思います。あまり首を反らして上を見ると、体幹の姿勢が崩れやすいですし、首に負担がかかりやすくなるので、極端に反らすのはやめたほうがいいかなと思います。視線を斜め下にすると重心が前に移動して前のめりになりやすい場合は、首を少しだけ反らしたり、目だけ上に動かすと良いと思います(上目遣い)。

首は体幹の背骨部分(胸椎と腰椎)ほどシビアなコントロールは要求されないので、ニュートラルを中心にある程度は動かしても大丈夫でしょう。デッドリフトだとかなり目線を上にする人もいます(逆に視線をかなり下にする人もいます)。


本題は、どこを見るかではなく、どうやって見るかです。ジムではパワーラックの前に鏡が置いていることが多いと思いますが、スクワットやデッドリフトの際に、鏡越しに自分の身体の一点やフォームを凝視したりせず、ぼーっと前を見て動作をすると、意識が身体の内部に向かい、身体をどう動かしているかを感じやすくなり、フォームやバランスが安定します。

パワーリフターの動画を見ると、遠い目をしながらスクワットやデッドリフトをしていますが、あんな感じの目です。

動画:Russel Orhii - 1st Place 841kg *WR Total* - 83kg Class 2021 IPF World Open Classic
https://www.youtube.com/watch?v=Kf03kexddpw


動画:John Haack 5 Weeks Out from Hybrid Showdown Meet
https://www.youtube.com/watch?v=AvpexkeFlnY


視覚情報に頼りがちな人は、目を瞑ってゆっくりと自重スクワットやゴブレットスクワットをしてみると、身体の内部の感覚を使いやすくなります。

ベンチプレスについては、視線は真上か、そこからやや足元寄りくらいが基本ですが、これもバーを凝視せず、天井をぼーっと見ると良いでしょう。


12/25/2021

スクワット時のヒップシフト(尻の横移動)の対処事例

スクワット時のヒップシフト(尻の横移動)の対処方法です。実際にパーソナルトレーニングを受けていただいた方の事例に基づいているので、ヒップシフトの方向、モビリティと筋力の左右差が違うパターンの人の場合は、そのまま適用すると悪化するケースもあるのでご注意ください。


今回のお客様の特徴


<動きや筋力の左右差>

・スクワットで立ち上がる時、きつくなってくると右方向へのヒップシフトが起こる。
・ヒップシフトと同時にバーが反時計回りに回旋する。
・デッドリフトでも左に重心が乗る感じがする。
・左脚に比べて右脚が細い。
・左側の尻と左下背部が発達している。
・ブルガリアンスクワットで右脚がきつい。
・椅子に座って脚を組む場合、右脚を上にしたほうが楽に組める。
・足首の柔軟性の左右差や、捻挫歴はなし。
・野球歴がある
・右投げ右打ち


<立位と寝た状態での姿勢>

・アラインメントと可動域は、リラックスした状態での左右差はあまり無い。
・股関節は両側とも外旋の可動域が広め。


<左右差の起こるポイントの確認>

・足や足首には問題無し。(足裏のアーチが潰れないか、足首のアラインメントはまっすぐか)
・股関節の筋肉は左側が強く、右側が弱い。そのため骨盤の横方向への移動や回旋が起きやすい。
・立った状態での骨盤の高低差は無し。ただランジなどの片脚種目だと、尻の内側と外側の筋力差のため骨盤が安定せず、骨盤が傾きやすい。
・上半身(胸椎・肋骨・肩甲骨)が反時計回りへの回旋が得意で、時計回りへの回旋が苦手。


6/12/2021

スクワットとデッドリフトのバーの軌道と足裏の重心

スクワットの深さの記事を書いていて気付いたバーの軌道と足裏の重心について書いていきます。

スターティングストレングスの影響なのか、スクワットとデッドリフトでは、重心は常に足の真ん中(ミッドフット)、バーの軌道はミッドフットライン上を垂直(鉛直)に上下すると解説しているところが多いです。バーや重心の位置を不必要にグラグラと動かさないためにそういった意識を持つことは必要だとは思いますが、実際にはバーの軌道は常に垂直ではないですし、足裏の重心も常にミッドフットではないです。そして垂直軌道とミッドフット重心を厳格に守ろうとすると、フォームが破綻します。


「身体の質量があるため、バックスクワットでバーベルが軽いとバーの軌道は垂直にならない」

これは気づいている人もいて、私も認識していました。


「スクワットで尻を後ろに出す時と、ある程度の重さ以上のコンベンショナルデッドリフトでは、足裏の重心はミッドフットから踵寄りに数cm移動している」

これは新たに認識しました。自分で試した感じでもそうなっていますし、バーの軌道分析でもそうなっていることが示唆されます。

はじめに明確にしておくと、踵寄りに重心が移動するといっても、踵の骨までは移動しません。足裏の三点荷重を維持できる範囲で移動します。つま先が浮くくらいまで踵に重心を移動するのは、スクワットでもデッドリフトでも望ましくないフォームです。

ミッドフット:足の真ん中。アーチの高い部分。三点荷重になる(下の絵)。

踵寄り重心:ミッドフットから数cmほど踵寄りの位置。脛の骨の前端の真下あたりから、くるぶりの下あたり。バーベルの重さの影響や、身体の使い方の個人差がありそうで、おそらく点ではなくてレンジ。前側(母指球・小趾球)の踏み圧は弱まるが、つま先は浮かず足裏の三点荷重は維持可能。

踵重心:踵の骨に重心を乗せる。つま先が浮き、三点荷重が維持できない。この重心でスクワットやデッドリフトをやるのは望ましくない。


5/28/2021

スクワットの深さ/推奨のスクワット方法

 

スクワットの分類 

<フルボトム/フル/ATG>

腰が曲がらない範囲でなるべく深く、腿の裏側とふくらはぎが接触するまでしゃがむスクワット。膝の屈曲角度は約130-150°。日本語だと、パラレルより少し下の深さをフルスクワットと呼ぶことがありますが、研究だとフルスクワットは出来るだけ深くしゃがむスクワットのことを意味することが多いので、この記事ではフルボトムもフルもATGも同じものとします。

<パラレル>

太腿が床と平行になるまでしゃがむスクワット。膝の屈曲角度は骨格やフォームによって違いますが、だいたい110-130°くらい。

<ハーフ>

膝の屈曲角度が約90°になるまでしゃがむスクワット。

<クォーター>

膝の屈曲角度が50-60°になるまでしゃがむスクワット。

 

5/15/2021

パワーリフティングのケガ率/BIG3の調整

過去のパワーリフティングのケガ率の研究で、パワーリフティングのケガ率は低いというものがあります。同じようにウェイトリフティング(五輪の重量挙げ)のケガ率が低いという研究もあり、マッチョ寄りのフィットネス業界ではそれらの研究をもとに「バーベルを使ったウェイトトレーニングは、正しく行えばケガ率が低く安全である」と言われることが多いです。

しかし、それらの研究での怪我は、トレーニングや試合出場を中断せざるを得ないレベルの怪我のことでした。今回紹介する研究では、怪我を「痛みと、トレーニングに影響を与える機能障害」と定義し、記録上位25%のエリートレベルを除くパワーリフターにアンケートを送って、現在の怪我、過去12ヶ月の怪我について回答を集めています。調査はスウェーデンで行われました。

Prevalence and Consequences of Injuries in Powerlifting: A Cross-sectional Study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5954586/

バーベルを使って趣味でBIG3をする場合、パワーリフティング系、特にRippetoeのスターティング・ストレングスのやり方をする人も多いと思います。このブログの過去記事にもスターティング・ストレングスのやり方は紹介していますし、自分もそのやり方をやっていました。

ただ、趣味でBIG3をやるなら、パワーリフティング系のやり方から何箇所か調整したほうが、怪我リスクを下げられます。

今回のパワーリフティングの怪我リスクの研究をもとに、BIG3で怪我をしやすい部位、原因、趣味でやる場合の調整方法などを考察していきます。

(今回はパワーリフティングについての研究なのでパワーリフティングのみ取り上げていますが、ウェイトリフティングのケガ率も似たようなものだと思います。トレーニングや試合出場を中断せざるを得ないレベルの怪我は少ないが、痛みを抱えるケースは多いでしょう)

4/24/2021

ピンスクワット

MASSでGreg Nuckolsが「ピンスクワット、めっちゃええで!(意訳)」と書いていたので、自分でも試したのですが、めっちゃ良かったです。スクワットのフォームが安定しました。

ピンスクワットは、スクワットのデッドリフト版で、セーフティバーにバーベルを置いて、エキセントリックフェーズなしに、しゃがんだ状態から立ち上がるスクワットです。

動画:Pin Squats - How To Increase Squat With Supramaximal Load
https://www.youtube.com/watch?v=j_zAoI_Gyuw


似た種目に、立った状態からしゃがんでボトムで数秒間停止するポーズドスクワットがあります。

ピンスクワットもポーズドスクワットも期待される効果は似ていて、

・ボトム付近で体幹をしっかり固めて、力強く踏ん張り立ち上がるスキルを高める。

・スクワットのフォームを良くする。

個人的には、ピンスクワットのほうがポーズドスクワットよりもメニューに組み込みやすいと感じました。私はスクワットを筋肥大目的でやっていて、ストレングス目的ではやっていないのですが、ポーズドスクワットは体力の消費が激しくてボリュームを積みにくく、メニューに組み込むのが難しかったです。その点、ピンスクワットは体力の消費がマイルドなのでメニューに組み込みやすいです。

ポーズドスクワットは、ボトム付近で体幹を固めて立ち上がるスキルを高める効果が高いので、スクワットにストレングスを求める人に向いていると思います。

3/20/2021

ニースリーブのすすめ



ニースリーブとは

ニースリーブは膝にはめて使う筒状のサポーターです。上の画像はニースリーブを着用した状態です。似たものにニーラップがありますが、ニーラップは帯状のもので、ぐるぐると膝の周りに巻いて使います(ベンチプレスの時に手首に巻くリストラップの膝用みたいなものです)。

最近、ニースリーブを使い始めて、これはいいものだと思ったので紹介記事を書きます。



自分の使用感

私は膝が弱くて、スクワットを頑張ると膝に違和感が出やすく負荷をかけにくかったのですが、ニースリーブ着用で膝の不安が無くなり、楽しくスクワットが出来るようになりました。

体感では、「すごいなニースリーブ!」って感じなのですが、エビデンスだとどうなのかも書いていきます。

1/06/2021

筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方

腹圧は腹腔内圧のことで、胴体の横隔膜より下にある内臓などが詰まってる部分(腹腔)の圧力です。正確には、骨盤内部の部分は骨盤腔になりますが、腹腔と骨盤腔の間に仕切りがあるわけではないので、腹腔と骨盤腔をまとめて大きな水風船みたいなものだと考えるとわかりやすいです。下図のピンク色の部分がそれにあたります。
筋トレではよく、腹圧を高めることで体幹を固め、腰の怪我を防ぐと言われますが、これはどういうことなのか説明していきます。


3/29/2020

背中の伸展ポジションからの脱却

スクワットやデッドリフトで、背中の筋肉(主に脊柱起立筋群)で体幹を支える力の入れ方の問題点について書いていきたい。だいたいが背骨、特に腰椎がニュートラルポジションより反って(伸展して)、骨盤が前傾して、顎が上がっている。こういうやり方をしている人が多いので問題点を色々と書いていく



★背中の伸展ポジションの問題点
背中を伸展させて動作を行う問題点を羅列していくと、
- 骨盤前傾により股関節の屈曲が制限されるので、股関節を深く曲げにくい。
- 骨盤前傾でしゃがむと鼠径部で骨がゴリゴリ当たることがあり気持ちよくしゃがみにくい。
- 床引きデッドリフトは股関節の屈曲が足りないと、背中を丸めて無理に届かせることになるので腰に危険な負荷がかかる。
- 体幹がコントロールできていないのでスクワットでbutt winkしやすい。
- デッドリフトではハムストリングが伸びた状態で強い負荷をかけることになるので、ハムストリングを痛めやすい。
- 腰を反りすぎてトレーニング中に痛めるケースはあまりないとは思うが、脊柱起立筋群が緊張しっぱなしで常に腰が反ったポジションにあることで慢性的な腰の痛みになりやすい。

身体機能面で言えば、背中の筋肉に力をいれて背中を反って体幹を支える問題点は、矢状面のプル方向(デッドリフトやスクワット)でのみ辛うじてスタビリティを得られるが、矢状面のプッシュ方向(ベアクロールやプランク)、そして横断面、前額面では全くスタビリティが得られないこと。



多くのスポーツの動作だけでなく、普通に歩くことでさえも、矢状面だけでなく横断面や前額面での複雑な動作が必要なので、背中を反って体幹を支える癖をつけると、他のことに全く使えない身体の使い方を覚えてしまう。

もちろん背中の筋肉は体幹を支えるのに重要な筋肉だけど、胴体周り360度で体幹を固める身体の使い方を覚えると、機能的に身体を動かせるようになるし、スポーツにも応用が効くし、怪我しにくい。




★背中の伸展対策トレーニング
基本の体幹の固め方は以下参照

関連記事:体幹トレーニング

背中のストレッチのストレッチをして背中の反りを緩和しておくと良い

関連記事:背中のストレッチ

体幹の前側の筋肉を動員して体幹を固める練習でやりたいエクササイズは、デッドバグ系、ベアクロール系。肋骨を締めて体幹を固めるのを意識するのだけど、同時に腕と脚が体幹の前側の筋肉とリンクするようにすると良い。体幹の前側の筋肉は腹直筋だけじゃなく腹斜筋などお腹周り全体。手の平と足の裏が地面や重りに接していると良い(特に母指球・母趾球に負荷を感じると良い)。

デッドバグ系やベアクロール系の基本は、骨盤後傾で腰椎フラットにする。息を吐ききると肋骨を締めやすい。腕は強く突き出す。

ベアクロールはこんな感じで姿勢を作って前後左右に適当に這い回る。ジムで這い回るのが恥ずかしい場合は、「右手左足を浮かせる→左手右足を浮かせる」を交互にやると良いと思う。

動画:HighPerformanceHandbook.com: Dead Bug
https://www.youtube.com/watch?v=rbemelnkHag
デッドバグ。腰椎フラットで腰が床に付くように。肋骨が上がらないように。


動画:3 Month PNF Patterns with Bottoms Up Kettlebell Hold
https://www.youtube.com/watch?v=G7pneju5wIg
手が膝に近づく時に息を吸い、腕を伸ばす時に息を吐く。重りを持った腕は高く突き上げるイメージで。腰が反らず、胸が開かないよう注意する。


動画:Reverse Inch Worm
https://www.youtube.com/watch?v=RoM-81TFuLM
身体を曲げる時に息を吸って、伸ばす時に息を吐く。腰が反らず、胸が開かないよう注意する。


あと最近気づいたのですが、空手の三戦がいいんじゃないかと。
空手エアプですが、見様見真似で三戦の姿勢を取ってみると体幹を固めやすく、腕と脚と体幹がリンクしている感覚がある。足裏は床にべったりつけて、踵の骨の内側の接地を意識、脚、臀筋、体幹に力が入り、肘を内側に絞ることで腹斜筋のあたりが強く収縮し肋骨が締まる。呼吸はよくわからないので体幹トレーニングの記事で書いたPRIの呼吸法を使って、口から息を吐ききって肋骨を締めて腹回りの緊張を保ったまま鼻から息を吸ってバルサルバで息を止めて腹圧を高めてみた。


★デッドリフト
腕と脚と体幹のリンクができたら、デッドリフトをやってみる。バックスクワットよりもデッドリフトのほうが体幹の前側の筋肉に力を入れての動作がやりやすい。

(今後また変わるかもしれないけど今現在)個人的にやりやすいやり方を書いていくと、

バーベルの前に立ち、直立した状態で腕をキョンシーみたいに前に突き出し、口から息を吐ききってお腹周りの筋肉が収縮し肋骨が締まるのを感じる。お腹周りの筋肉の緊張を解かずに鼻から息を吸って適当なところで息を止める。

そのまま屈んでいき、体幹と尻に緊張を感じながらバーを握る。足の裏は母趾球と踵の骨のやや内側が地面に接しているのを意識する。アシンメトリーがある人は、重心が乗りにくい側の足の踵の内側接地を特に意識すると良い。

バーを軽く握ったら親指を内側に折り曲げる。母指球を押し出しながらバーを強く握り込み手首を軽く返すように力を入れる。同時に腹圧を最高レベルに引き上げる。この時点でバーベルが少し浮くのでそのまま足の裏で床を押し、バーが膝を超えたら上体を起こしてロックアウト。こうやると、胸が開かず肩甲骨が前傾せず体幹が安定する感じがする

パワーリフティング系のデッドリフト・スクワットのやり方解説だと膝を外側に押し出す、踏み込んだ足を両側に押し開くイメージで、と解説しているところが多いのだけど、これだと背中の伸展の筋肉に力を入れやすくなるけど体幹の前側に力を入れにくくなる感じがする。スクワットもデッドリフトも、膝とつま先はもちろん外側に開くのだけど、踵の骨の内側の接地、大腿骨はどちらかというと内旋方向に力を入れる(実際に内旋はさせない)イメージでやると、腕と脚と体幹の前側の筋肉がリンクし、骨盤が安定し、体幹を固めやすい。



★空気の入れ方
胸を水平面360度膨らませて息を吸い込む。肋骨の乳首より下のあたりを、前後左右360度膨らませるイメージで行うとやりやすいと思う。息を吸い込む時に肩が上がらないよう注意する。

 バックスクワットは腕とバーのポジションの問題で、上背部に空気を入れにくいので、息を吸うときに意識して上背部に空気を入れるようにすると体幹が安定すると思う。背中のストレッチで上背部に空気を入れる練習をすると良い。



★コンディショニング
背骨ニュートラルでトレーニングを行っても、デッドリフトやスクワットを熱心にやると背中の筋肉にはどうしても強い負荷がかかる。背中のストレッチやフォームローラーころころして背中の筋肉の緊張を取ってやると良いと思う。

関連記事:背中のストレッチ

動画:背中の筋膜リリース(コア フォームローラー編)
https://www.youtube.com/watch?v=1YVUjPEQQT0

2/09/2020

股関節の骨の個人差とスクワットのスタンス

股関節は、大腿骨の先っぽの丸い部分(ボール)と骨盤の受け皿部分(ソケット)からなる関節。

筋肉などの柔軟性が制約にならなければ、股関節の可動域はこの骨と骨がぶつからない範囲になる。大腿骨の先っぽの形と、骨盤のソケットの位置や深さには個人差があり、そのため骨と骨がぶつからない範囲にも個人差がある。

股関節がどこまで曲がる(屈曲する)か、脚を大きく開いた方が曲げやすいか、あまり開かないほうが曲げやすいかは、スクワットのしゃがめる深さと適したスタンスに影響する。

股関節の骨の形には個人差があり、しゃがみやすいスタンスは人によって違うこと、また骨の形の問題でどうやっても深くしゃがむのが困難な人がいて、そういう人が無理に深いスクワットや床引きデッドリフトをやると危険なことなどをこの記事では書いていきたい。

まず最初に、大腿骨の先っぽの形と骨盤のソケットの位置の個人差を見ていく


★大腿骨の先っぽの形と骨盤のソケットの位置

(1)大腿骨の先っぽの捻じれの角度 femoral anteversion / femoral neck angle
日本語だと前捻角。上から見たときの大腿骨のシャフトに対する先っぽ部分の角度。後で紹介するCraig's testで大体の値がわかる。赤ちゃんの時は40度くらいで、成長とともにだんだん角度が小さくなっていく。

被験者グループの遺伝子や生活様式によって値は異なるけど、だいたい5-15度くらいが普通で、この程度の角度だとしゃがむ動作や歩行動作に問題が出にくい。このノーマルレンジを大幅に外れる人も一定数いる。下のグラフはインドの研究のデータ。

色々な研究での、前捻角の平均値。


(2)大腿骨の先っぽの傾き Angle of Inclination / femoral neck shaft angle
前から見た場合の(frontal planeの)、大腿骨の先っぽの角度。赤ちゃんの時は140-150度で成長とともにだんだん角度が小さくなっていく。画像のBとCはノーマルのレンジを外れたケースで、股関節を動かしやすいように赤点の部分を合わせると、X脚、O脚になる。



(3)骨盤ソケット位置(前後) acetabular anteversion
上からみた場合の(Horizontal planeの)、骨盤ソケットの向き。普通は20度程度。



(4)骨盤ソケット位置(横向きか下向きか) Center-Edge Angle / acetabular inclination
前から見た場合の(frontal planeの)、骨盤ソケットの向き。普通は35度程度。


★骨の左右差
大腿骨の先っぽの捻じれと傾きの角度、骨盤のソケットの位置は、多くの人がおおよそシンメトリーになっているが、左右差が大きい人もいる。成長過程でアシンメトリーの負荷がかかると、アシンメトリーに骨が成長するのかもしれない。骨の形の左右差が大きい場合は、スクワットの脚の開き度合いも左右で異なるようにするのが適切だろう。アラインメント異常によるアシンメトリーと、骨自体のアシンメトリーとを見分ける必要があるが・・・人間の身体は難しいですね。


★ソケットの深さと骨頭の太さ
ソケットが深くて大腿骨の先っぽが太いと可動域が狭くなる。スクワットを深くしゃがむのは困難だけど、関節の安定性が高いので長時間歩いたりするのが得意。ソケットが浅くて、大腿骨の先っぽが細いと、屈曲も伸展も可動域が広くなるけど、股関節の安定性が低くなる。


★骨の形の個人差による得手不得手
例えば、骨盤ソケット位置が前向き・横向きで、大腿骨の先っぽの角度が普通だと深くしゃがみやすい。その分、股関節伸展の可動域があまりなく、デッドリフトやヒップスラストのロックアウトがカッチリしない場合もある。その場合は、腰を反ってロックアウトしてる風にならないように注意する。

骨盤ソケット位置は、下向きよりも横向きのほうがしゃがみやすけど、そのぶんボール上部のカバー面積が小さくなるので、長時間の歩行などに不利。カバー面積が小さいため周辺組織にかかる圧力が高くなることで経年劣化が早まり、変形性股関節症になりやすい可能性がある。


★股関節の屈曲可動域チェック
骨の形の話を細かく書いても、スクワットのスタンスのために股関節をレントゲン撮影して判断する人は多分いないと思うので、手軽にできる判断の方法を紹介。

動画:Quick Hip Assessment for Squatting | Movement Fix Monday | Week 6 | Dr. Ryan DeBell
https://www.youtube.com/watch?v=b0nJpBGOml4&feature=emb_title

最初にうつ伏せになって大腿骨の内旋と外旋のレンジをチェック。このモデルの女性のように大腿骨の先っぽの捻じれがretroversionと思われる人は外旋レンジが大きく内旋レンジが小さい。

次にやっているのがCraig's test。腿の横側を触り、大腿骨を内旋・外旋して骨の出っ張りがもっとも顕著になるところで足を止める。この足を止めた時の脛の角度が、垂直から外側に5-15度くらいになるのがノーマルレンジで、スクワットのスタンスは肩幅くらいの普通の足幅で楽にしゃがめる可能性が高い。脛が内側になる場合はワイドスタンスが向いている可能性が高い。脛が15度より外側になる場合はナロースタンスが向いている可能性が高い。この角度に左右差がある場合もあるので、両脚ともチェックしたい。


Craig's testを一人でやってみたい場合は、片脚立ちして関節の角度をうつ伏せ時と同じにして、大腿骨を内旋・外旋すると良いと思う。大腿骨の出っ張りは外側広筋の付着点のすぐ上なので、チェックしたい足で床を踏んだりして外側広筋をピクピクさせると場所を把握しやすい。

次は仰向けになって、様々な角度で膝を胴体に近づけてみて、どのくらい足を開くと股関節が深く曲がるかチェックする。大腿骨の形だけでなく、骨盤のソケットの位置も股関節の可動域に影響する。股関節の可動域の確認は、骨盤がどこで動き出すかに注意する。大腿骨を動かしていって骨と骨がぶつかると、それ以上脚を動かそうとすると骨盤が動く。

動画:Hip Socket Self-Assessment
https://www.youtube.com/watch?v=81xUjrD1Wao
一人でチェックする場合はこんな感じ。


このようにチェックしていくと、股関節の骨の噛み合わせの点で、どのようなスタンスだと楽にしゃがめるのか、どこまで深くしゃがめるのかが大体分かる。骨の形の問題で深くしゃがむのが困難な人は、スクワットで無理に深くしゃがむ必要はない。人によってはナロースタンスでの床引きデッドリフトが、背骨ニュートラルのままでは無理な場合もある(ワイドスタンス向きの噛み合わせならスモウが向いている)。ワイドでもナローでも股関節を深く曲げるのが苦手な噛み合わせなら、浅いスクワット、ラックプル、もしくはヒップスラストが良いだろう。骨の形の問題で股関節が深く曲がらないのに、無理に深くスクワットしたり床引きデッドリフトをしたりすると、股関節の屈曲が足りない分を背骨を丸めることで達成しようとして危ない。

楽にフルボトムまでしゃがめる人は、股関節が繰り返し負荷に弱い可能性があるので、老後のことを考えるなら、股関節周りと脚の筋肉を鍛えて歩行やランニングの衝撃を筋肉で和らげられるようにする。また、肥満にならないように注意する(体重が重ければそれだけ股関節にかかる負荷が増える)。

ただスクワットのスタンスやしゃがめる深さには、足首の可動域や内転筋の柔軟性や身体コントロール能力なども影響する。その場合はこれらの問題に対処することで、スクワット動作が改善するので、身体全体をトータルで見ていく必要がある。


関連記事:
butt winkの話

スクワットの深さ

アシンメトリー


参考サイト:
Beyond Butt Wink: Hip Shape, Injuries, and Individual Ability Part 1
https://deansomerset.com/beyond-butt-wink-hip-shape-injuries-and-individual-ability-part-1/

Beyond Butt Wink: Part 2
https://deansomerset.com/beyond-butt-wink-part-2/

Beyond the Butt Wink: Part 3
https://deansomerset.com/beyond-the-butt-wink-part-3/

Hip
https://clinicalgate.com/hip-5/

Study Of Femoral Neck Anteversion Of Adult Dry Femora In Gujarat Region
http://njirm.pbworks.com/f/4femoral_neck_antiversion.pdf

Femoral neck shaft angles: A radiological anthropometry study
http://www.npmj.org/article.asp?issn=1117-1936;year=2016;volume=23;issue=1;spage=17;epage=20;aulast=Adekoya-Cole

Three-dimensional acetabular orientation measurement in a reliable coordinate system among one hundred Chinese
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0172297

A Novel Approach for Determining Three-Dimensional Acetabular Orientation:Results from Two Hundred Subjects
https://www.academia.edu/21070725/A_novel_approach_for_determining_three-dimensional_acetabular_orientation_Results_from_two_hundred_subjects

12/31/2019

アシンメトリー

★アシンメトリー
アシンメトリーは左右の非対称のこと。日常動作やウェイトトレーニングでは以下のような症状が出る。

・立った時に重心が片側にいきやすい。
・直立時に骨盤や肩の傾きがある。
・歩く時にどちらかの脚が接地している時はスムーズに動き、反対側の脚が接地している
時はぎこちない動きになる。
・上半身を捻りながら腕を前に伸ばすと、片方の腕は伸ばしやすくて、もう片方の腕は伸ばしにくい。
・スクワットとデッドリフトで重たい重量を持ち上げようとすると、重心が片足に乗って、お尻が横に移動する。重心が乗らない側の脚は、膝がグラグラする。
・スクワットで深くしゃがもうとすると、片側の股関節が先にひっかかり尻が横に動く。

PRI関連を少し調べてみて、アシンメトリー修正として自分の身体に適用してみたら、すごくフィットしたので紹介します。ちなみにセミナーとか受けてないので浅いところしか知らないです。

「PRIのような姿勢矯正やリハビリ系のテクニックって、歩くのも大変になってきた高齢者に使うものでしょ? ハードな筋トレをしている若い自分には関係ないよ」と思う人は、以下の動画をどうぞ。ストレングストレーニングガチ勢がPRIのテクニックを使って、スクワットの際の尻の横移動(Hip shift)を修正しようとしています。

動画:Fixing Hip Shift in the Squat-JTSstrength.com
https://www.youtube.com/watch?v=LnFyYuY2Sro

PRIの理論だと、肝臓など一つしか無い臓器の配置や横隔膜の左右の強さの違い、左右の横隔膜の背骨への付着点の違いなどで、多くの人の身体はアシンメトリー、特にLeft AIC/Right BCパターンと呼ばれる右足重心の姿勢になっている。実際にこのパターンが多いのかは知らないけど、私の身体の状況はこれとはほぼ左右逆で左足重心になっているので、利き腕、利き足(と軸足)、スポーツ歴の影響も大きいのではないかと個人的には思っている。

他のアラインメント異常の問題と同じように、アシンメトリーのアラインメントでの動作を、「日常動作の軽い負荷で何十年と続ける」もしくは「重たいバーベルやダンベルを使って強い負荷で短期間(数ヶ月~数年)続ける」と、アシンメトリーの程度にもよるけど、身体に痛みや痺れなど不具合が出てくる可能性が高くなる。

別に完璧なシンメトリーを目指す必要な無く、日常生活だったらアシンメトリーの動作でも死ぬまである程度元気に動き続ければいいし、アスリートだったら現役の間、最高のパフォーマンスを続けられれば良い。

ただ問題が出ないように、なるべくアシンメトリーを修正すると、怪我を防ぎやすいし、パフォーマンス向上も望めるかもしれないので、なにか問題を感じている場合は試してみるのも良いと思います。私はウェイトトレーニングしかやらないので、アシンメトリーであることのメリットは無く、性格が神経質なので自分の身体はなるべくシンメトリーを目指そうと思うのですが、野球の投手なんかだとある程度のアシンメトリーが最高のパフォーマンスに必要みたいなこともあるようなので、アシンメトリーをどう扱うかは競技次第ですね。

アシンメトリーの形と原因は千差万別なので、今回のやり方ですべてが解決するわけではないけど、これで解決する人も一定割合はいると思われるので、なにか問題を感じている人は試してみると良いと思います。


★アセスメント
信頼できる専門家に診てもらうのがベストだと思うけど、ここでは自分で診断できるやり方を書いてみたい。

Left AIC/Right BCパターンの人はリラックスした場合にダビデ像のような姿勢になりやすい。ちなみにアート用語でこういうアシンメトリーの人物像を contrapposto と言って、人体の自然な姿勢が表現されている。


実際の人間の写真だとこうなる。

Left AIC/Right BCパターンの特徴を見ていくと、
正面から見た場合
- 右足重心
- 左肩に比べて右肩が下がる
- 骨盤の左側が右側に比べて下がる。
- 右側の肋骨と骨盤を近づける筋肉が固くて縮んでいる(腹斜筋や腰方形筋)
- 背骨が右側に曲がる
- 右脚の内転筋が強くて固い
- 左脚の内転筋が弱くて緩い
- 右足の外転筋が弱い。
- 右側骨盤が後傾
- 左側骨盤が前傾


上から見た場合
- 骨盤が右側に回旋(骨盤の左側が前に出る)
- 胸椎のねじれにより左肩が後ろになり、右肩が前側になる。
- 左足が前に出て、つま先が外に開く。

リラックスして立っている時に、右足に重心がきてダビデ像のようなポーズになると楽な人は、Left AIC/Right BCパターンの疑いがある。あと椅子に座って脚を組むと左脚が上に来るのが楽で、床に座って立て膝をすると左脚を立てるのが楽になる。

Left AIC/Right BCパターンだと、スクワットやデッドリフトをした時に もっとも力を入れやすいスタンスが下の図のようになると思う。上が両足のつま先を外側に開くことを優先した場合。下が骨盤が正面を向くことを優先した場合。右側の内転筋と股関節伸展筋が強いので、右側に重心移動してそこをフルに使おうとする。スクワットとデッドリフトで高重量になってくると、尻が右側に移動しやすい。


私みたいにLeft AIC/Right BCパターンと左右逆の人はこうなる。

スクワットの際の尻の横移動の研究だと、股関節周りの筋肉やアラインメントの状態が、左右の方向を考えなければLeft AIC/Right BCパターンと同じような感じになっているので、PRIのアプローチで尻移動が直るケースも結構あるのではと思う。

Presence of a Lateral Hip Shift During Squatting is Associated with Altered Mobility and Neuromuscular Control
https://uncexss.wordpress.com/2015/09/21/presence-of-a-lateral-hip-shift-during-squatting-is-associated-with-altered-mobility-and-neuromuscular-control/
オーバーヘッドスクワットで尻の横移動が起きる人の身体動作を、真っ直ぐ尻を下ろせる人と比較したところ、尻が寄って重心が乗る側の脚では、大腿骨がより内旋、あまり外転せず、足首はあまり曲がらず。重心側の足首があまり曲がっていないのは足首の可動域の問題ではないと思う。重心が乗る側の脚は骨盤後傾気味で股関節がスムーズに深く曲がるので尻を下ろす際に足首をあまり曲げる必要が無い。重心が乗らない側の脚は骨盤前傾気味で、骨の噛み合わせの問題で股関節が深く曲がらなくなっている。この実験のスクワットは写真を見ると、つま先を揃えたナロースタンスなので、股関節の骨がぶつかった後は膝と足首をさらに曲げることで尻の深さを出していると思われる。重心が乗らない側の股関節が深く曲がらないからといって、ここのストレッチをしても効果がない。むしろ重心が乗らない側の股関節の内転筋やハムストリングスは弱っていて伸びているので、これらの筋肉のストレッチはしないほうがよい。重心が乗らず深くしゃがめない側の骨盤の前傾を直す必要がある。


この画像の例だとLeft AIC/Right BCとは逆に左側に重心と尻が寄っている。両足のつま先の開き具合は、Left AIC/Right BCパターンと左右逆の人のつま先と同じで、右足つま先がより外側に開いている。重心側の大腿骨は、上の研究と同じように内旋している。足首の曲がりの違いが研究と違うけど、おそらく重心が乗らない側の股関節の骨のぶつかりを、よりワイドスタンスにすることで解決しようとしている。



★関節の分解
全部の関節がLeft AIC/Right BCパターンに沿ったアラインメント異常を見せるわけではないので、三箇所に分解して考えていく。

(a) 骨盤と股関節

(b) 背骨の横方向の曲がり

(c) 背骨の捻じれ

こうすると、個別ケースに沿って矯正エクササイズを左右逆に適用したりできる。例えば私の場合は、骨盤と股関節、背骨の横方向の曲がりはLeft AIC/Right BCパターンと左右逆になっていて、左側重心で背骨が左側に曲がっているのだけど、背骨の捻じれは左肩が後ろになっていてLeft AIC/Right BCパターンと同じ。なので骨盤と股関節、背骨の横方向の曲がりについては、Left AIC/Right BC用のエクササイズを左右逆にして行い、背骨の捻じれについてはLeft AIC/Right BC用のエクササイズをそのまま行っている。



★アシンメトリー矯正エクササイズ
床に寝たり四つん這いになって行うエクササイズに共通する呼吸方法は、鼻から息を吸って、口から息を深く吐き出す。3-4秒かけて吸い込んで、5-8秒かけて吐き出して、吐ききった状態で2-3秒止める。これを1セット4-5回繰り返す。吸う息の量は適当で良いが、背骨の曲がりと捻じれの矯正エクササイズでは限界近くまで吸い込んだほうが肋骨が広がって良いと思う。以下の関連記事も読んでおくと理解が深まると思う。

関連記事:背中のストレッチ

関連記事:体幹トレーニング

アラインメントがLeft AIC/Right BCと左右逆の人は、エクササイズを左右逆にやる。そうしないと、もともと固く縮こまっている側をさらに固く縮こまらせるので悪化する。専門家の診断を受けず自己判断でやる場合、スクワットやデッドリフトで重心と尻が右側に移動しやすい人は、以下のLeft AIC/Right BC矯正エクササイズと同じやり方でやってみると良いと思う。重心と尻が左側に移動しやすい人は、左右逆にする。やってみて調子が良かったら続ける。コンディションが悪化したら中止する。


(a) 骨盤と股関節
Left AIC/Right BCだと骨盤が右回旋し、骨盤の左側が前に出る。骨盤の左側は前傾、骨盤の右側は後傾。右股関節は内転筋と股関節伸展筋が強く短縮し、右脚大腿骨は内転・内旋。外転の筋肉(殿筋外側)は弱い。左股関節は内転筋やハムストリングスが弱く、左脚大腿骨は外転。

端的に言うと、歩行サイクルにおいて、右脚接地で右脚に重心が乗っていて左脚を前方に振り出すフェーズでのアラインメントと筋肉の緊張のまま固まっている。この状態で固まっているので、歩行の際は左脚接地で右脚を前方に振り出すフェーズがぎこちなくなる。

骨盤左側が前傾しているので、深くしゃがもうとすると左側股関節の骨がぶつかってしゃがめなくなる。右は後傾しているのでしゃがみやすい。この左右の可動域の差により、深くしゃがもうとすると尻が右側に移動しやすい。それと右脚内転筋と股関節伸展筋(ハムストリングスや殿筋)が強いので、特に高重量になってくると右股関節で荷重を受けようとして、尻が右に移動しやすい。

骨盤と股関節のアラインメントを直すには、
1. 固まってる骨盤と股関節をほぐし動かす。骨盤周りはかなり固いので、自由度の高い動作で直そうとすると、他の関節での帳尻合わせ(代償)が起きやすい。まずは背中と足の裏を固定して自由度を下げたエクササイズを行い、骨盤を動かせるようにしていく。
2. 重心が乗らず弱っている方の内転筋とハムストリングスに力を入れる。重心側の外転筋を強化。
3.  骨盤が動くようになったら、片脚に負荷をかけたスクワットやデッドリフトに近いエクササイズを行い、弱っている部分を実践的な動作で鍛える。
4. 普通の両足でのスクワットやデッドリフトの動作をやり、左右対称の動きが出来るよう練習する。

骨盤と股関節周りのエクササイズに共通するやり方は、重心がかかりやすい側の骨盤を前にグイッと出す。その反対側の内転筋、ハムストリングス、殿筋に力を入れる。Left AIC/Right BCなら右側の骨盤を前に出して、左側の内転筋、ハムストリングス、殿筋に力を入れる。息を吐ききる場合は、左側の脇腹と肋骨を特に意識して締め、内腹斜筋中心に収縮させる。

動画:Postural Restoration 90/90 With Hip Shift
https://www.youtube.com/watch?v=3x2uhhcu-LA&feature=emb_title
腰椎をフラットにし背中を床にべったりつけて、左足の裏を壁につけて、右脚を上に(右膝を上に押し上げるイメージで骨盤を左旋回する)。左足の踵を特に意識し、壁につけたまま下に押す感じで力を入れる。すると左のハムストリングスと殿筋が収縮する。膝の間に5-10cm程度のボールを挟むとと内転筋にも力が入るので良い。フォームローラーを挟んでも良いと思う。この状態で鼻から息を吸って、口から息を限界まで吐く。
動画:Adductor Pullback
https://www.youtube.com/watch?v=Rz91r8EbrPk&feature=emb_title
 重心が乗りやすい側を下にして横たわる。Left AIC/Right BCなら右側が下。膝と股関節を90度にし腰を丸める。膝の間に厚手のタオルを挟むとやりやすい。両足の裏を壁につけたまま、鼻から息を吸いながら、上の脚を骨盤を回して後ろに引く。上の脚を後ろに引いた状態で、息を吐きながら上の脚の膝をタオルに力いっぱい押し付ける(下の脚は力を入れない)。上の脚の内股の筋肉が強く収縮する。息を限界まで吐ききると、左の肋骨が締り左脇腹も強く収縮する。その状態で息を2-3秒止める。再び息を吸いながら、さらに上の脚を後ろに引き、また同じように息を限界まで吐きながら上の脚で強くタオルを挟む。呼吸4-5回で1セット。

重心が乗る側の内転筋やハムストリングスが固く縮こまっているので、適当にストレッチしておく。


動画:EricCressey.com: Left-Stance Toe Touch (with Toe Lift and Med Ball)
https://www.youtube.com/watch?v=GonP-y46dwk&feature=emb_title
重心が乗りにくい側の脚を後ろに引いて、股に適当なものを挟んで、後ろに引いた脚の踵に重心をかけてRDLの動きをする。重心が乗らない側の骨盤前傾を直したいので、ハムストリングをストレッチするのではなくて、股関節の関節包の後ろ側をストレッチする。腰を丸め気味にするとやりやすい。左殿筋の上端のちょっと上あたりが伸びると効いている。


内転筋と外転筋を鍛えるエクササイズ
段差で片足を一段上に乗せて、足の裏を床につけたまま上の段の足に重心移動しながらRDLの動き。股が足の真上にくるくらいまで動く。肩とヘソが正面を向くよう注意しながら行う。段差が高いとやりにくいので、低めの段差が良いと思う。ゴブレットスクワットの要領でダンベルを持つと負荷を上げられる。弱っている外転筋(left AICなら右側)を鍛えるのには、横に寝て膝を開くエクササイズもあるのだけど、個人的には横に寝て膝開くエクササイズはやりにくくて、この段差を使ったエクササイズのほうが効いている感がある。

動画:Left AF IR Split Stance KB Deadlift
https://www.youtube.com/watch?v=cS1U9AaFHrM
 重心が乗らない側の脚(Left AIC/Right BCだったら左脚)を後ろに引いて、同側の腕にダンベルなどを持ってRDL。後ろ側の足に重心をのせ、踵と母指球にしっかり荷重を感じながら足底のアーチを作り、内転筋、殿筋に負荷をかけ、ダンベルを持ってる側の体幹(腹斜筋や広背筋)を締めて行う。デッドリフトの前にやっておくと重心が乗らない側の脚に力が入るようになって、左右のぐらつきを抑えやすい。

動画:EricCressey.com: Bowler Squats
https://www.youtube.com/watch?v=X5xW-eVRg6c
 脚は内転筋や殿筋に力が入るように、上半身は捻りが行えるように。左右両方向やったほうがよい。Left AIC/Right BCだと右脚で片足立ちの時は踏ん張りやすいけど上半身が捻りにくく、左脚で片足立ちの時は踏ん張りにくいけど上半身は捻りやすいと思う。


(b) 背骨の横方向の曲がり
Left AIC/Right BCだと背骨が右側に曲がっている。左側内腹斜筋が弱い、左股関節屈筋(腸腰筋など)が強い。

背骨を逆方向に曲げて、息を吸い込む際は普段短縮している側(エクササイズ時は伸びている側)の肺と肋骨(横と前)を大きく膨らまし、息を吐き出す際は普段伸びている側(エクササイズ時は縮んでいる側)の脇腹の筋肉が収縮するようにする。

Left AIC/Right BCなら背骨を左側に曲げて、息を吸い込みながら右側の肋骨の横と前を膨らませて、息を吐きながら左側の脇腹を締める。


(c) 背骨の捻じれ
Left AIC/Right BCだと左側背部の筋肉が固く縮こまっている。ねじれを直した状態で短縮している背部に息を吸い込み、左側背部を膨らませる。

この動画を見ると 、肋骨がどうなっているのかイメージが掴みやすい。赤丸で囲んだ部分を、胸椎を曲げながら肺を膨らませることで内側から広げる。ちなみに胸郭が歪んでいると、肩甲骨も正常に動かなくなるので、肩関節の動きにも支障がでる。
動画:Why the 90-90 With Hip Shift Also Needs Hands and Knees Breathing
https://www.youtube.com/watch?time_continue=142&v=2vxVYYg8XgA&feature=emb_title
 


動画:All Fours Left ZOA Exercise
https://www.youtube.com/watch?v=Bx2Imj_nTn0&feature=emb_title
 左膝の下に厚手のタオルを置くと骨盤のアラインメントも調整できる。関連記事の背中のストレッチのエクササイズと同じように背中を丸めて、背骨を左に曲げて、息を吸い込んで左背部(左肩甲骨の下辺り)を大きく膨らませる。背骨の横方向の曲がりの矯正エクササイズで膨らませる肋骨とは逆側の背部を膨らませる。

4/19/2019

セーフティスクワットバーとバックスクワットの比較

A Comparison of Back Squat & Safety Squat Bar on Measures of Strength, Speed, and Power in NCAA Division I Baseball Players
http://article.sapub.org/10.5923.j.sports.20180805.01.html
バックスクワットとセーフティスクワットバーでトレーニングを続けた際の運動パフォーマンスへの影響を比較した研究


★背景
スクワットは下半身の強化に効果的なトレーニング種目だが、ストレートバーでのバックスクワットは肩や肘に負担がかかる。特に野球の投手は、投球時に肩関節の水平外転+外旋でのポジションで強い負荷をかけているため、それに近いポジションでバーを握るバックスクワットは肩にさらなる負担をかけることになる。

セーフティスクワットバーは肩関節への負荷が小さいが、気になるのはバックスクワットに比べてトレーニング効果が十分にあるのかどうか。もしセーフティスクワットバーで十分なトレーニング効果を得ることが出来るのなら、バックスクワットの代わりにセーフティスクワットバーでのスクワットを行うことで肩に負担をかけずスクワットのメリットを得ることが出来る。




★被験者
大学の野球選手で男性のみ。平均年齢19歳。NCAA Division 1 と書かれているのでエリートアスリートと思われる。


★グループ分け
- バックスクワットグループ:投手以外の選手14名
- セーフティスクワットバーグループ:投手のみ14名

グループ分けがランダムではないのでエビデンスレベルは通常のRCTより低くなる。体格はセーフティスクワットバーグループのほうがやや大きい。

被験者の年齢と体格。BSがバックスクワットグループ、SSBがセーフティスクワットバーグループ。


★トレーニング期間
9週間


★トレーニング内容
- トレーニングは週2回。
- 1日目がスクワットメインの日で、グループ分けに従ってバックスクワットかセーフティスクワットバーでのスクワットを行う。あとグループ共通の補助種目。
- 2日目はルーマニアンデッドリフト・ヘックスバー(トラップバー)デッドリフトをメインに補助種目色々。グループ間で同じトレーニング内容。

主旨からは外れるけど、補助種目がアスリート向けって感じで良い。床引きデッドリフトはテクニックの習得に時間がかかるし、股関節の骨のかみ合わせの問題でどうやっても出来ない人もいるので、RDLやトラップバーを使うのは良い選択。片脚種目が多いのも良い。プッシュ・プレス系は肩甲骨を動かす種目になっているし、体幹種目はpallofプレスやメディシンボールを使っている(野球は捻り方向の負荷が体幹にかかるのでそれを鍛えている)。


★運動パフォーマンス測定
以下の3つについてパフォーマンスを測定。スクワット1RMは複数レップのマックスから推定。
- 54.86m走(60ヤード走)
- 垂直跳び
- スクワット1RM(バックスクワットグループはバックスクワットで測定、セーフティスクワットバーグループはセーフティスクワットバーで測定)


★結果
実験前後の比較では、両グループとも同程度の運動パフォーマンス向上が得られた。具体的には、垂直跳びとスクワット1RMは両グループとも実験前後で有意にパフォーマンス向上。54.86m走は両グループともタイムが縮まったが実験前後で有意差は無し(効果量は小~中程度)。

グループ間のパフォーマンス向上の比較では、垂直跳びと54.86m走は有意差なし。スクワットはセーフティスクワットバーグループのほうが有意に向上。開始時点でセーフティスクワットバーグループのほうが体重が重くてスクワット1RMが低かったので、伸びやすかったのかもしれない。


★まとめ
肩を酷使する競技を行っていたり、肩に痛みがあったり、肩関節が緩んで不安定になっている人にとって、セーフティスクワットバーは肩関節への負担を小さくしつつ、バックスクワットと遜色のないトレーニング効果を得ることのできる有用なトレーニング種目と考えられる。また関連記事でも書いたようにバックスクワットは技術的に難しいので、バックスクワットを専門にやらない人にとっては、セーフティスクワットバーを使うことでテクニックの習得にかかる時間と労力を減らすことが出来、butt winkになりにくくなることで怪我のリスクを下げられると思われる。

パワーリフティングスタイルのスクワットに慣れている人は、セーフティスクワットバーだと扱える重量が下がると思う。動作に不慣れなのと、ロウバースクワットに比べて上体が起きることで重量が落ちる(ハイバーやフロントスクワットに近い身体の使い方になる)。慣れればある程度は重量が近づくと思うけど、多くの人がロウバースクワットのほうがハイバースクワットやフロントスクワットよりも高重量を扱えるので、上体が起きている分の差は無くならないだろう。

Effects of the Safety Squat Bar on Trunk and Lower-Body Mechanics During a Back Squat.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30363042
パワーリフティングの選手を被験者にして、ストレートバーでのバックスクワットとセーフティスクワットバーでのスクワットを行い、挙上重量および各筋肉のEMG測定を行った研究。セーフティスクワットバーのほうが重量が下がり、腹直筋やハムストリングスや外側広筋の活動レベルが低下した。

競技としてスクワットをしている人はセーフティスクワットバーでのスクワットをやるかどうかは考えたほうが良さそう。それ以外の人は、セーフティスクワットバーのほうがメリットが多い。ロウバースクワットに比べると股関節伸展を行う筋肉への負荷が少し下がると考えられるが、デッドリフト系種目で補完すれば良いだろう。


関連記事:
butt winkの話

バックスクワットでのバーベルの担ぎ方

3/27/2019

バックスクワットでのバーベルの担ぎ方


バックスクワットにはハイバースクワットとロウバースクワットの2種類がある。一般的に認識されているハイバースクワットとロウバースクワットの大まかな特徴を書くと、

・ハイバースクワット
- 僧帽筋上部にバーを乗せる。高い位置にバーを担ぐので high bar。
- しゃがんた時に上体はあまり傾かず、膝が前に出る。
- 大腿四頭筋に負荷をかけやすい。

・ロウバースクワット
- 三角筋後部にバーを乗せる。低い位置にバーを担ぐので low bar。
- しゃがんだときに上体は傾き、膝はあまり前に出ない。
- 臀筋や脊柱起立筋群に負荷をかけやすい。


ただ、担ぐ位置とフォームに厳密な定義があるわけではなくて、その人の肩周りの柔軟性や骨格によって、担ぎやすい位置とフォームは少しずつ変わってくる。ハイバースクワットでもある程度上体を傾けることも出来るし、ロウバースクワットでもバーが後ろに転がり落ちない範囲で、膝を前に出してある程度上体を立てることも出来る。


★バーの担ぎかた
一般的に担ぎやすいやり方はあるけど、つまるところ安全にバーベルを担げれば何でも良い。スクワットでの膝関節と股関節と体幹の使い方と鍛えられる筋肉は、日常生活にもスポーツにも大いに役立つが、バーを担ぐテクニックはスクワットにしか役に立たないので、安全であればやりやすいやり方で良い。

一般的に安全に担ぎやすくなるポイントとしては、
- 肩甲骨を寄せ上背部を固める。
- 肘は下方向へ、内側へ。肘を脇腹に近づけるイメージでやると上背部を固めつつバーを固定しやすい。
- バーベルを握る手幅を狭くしたほうが上背部は固めやすいが、肘や手首が痛くならない範囲で行う。
- バーの負荷が首にいかないようにする。バーの負荷は胴体で受け止めること。
- バーは筋肉に乗せる。骨にゴリゴリ当たらないようにする。
- 腕力でバーベルの重さを支えない。

以下、ハイバースクワットとロウバースクワットの担ぎ方を、具体的に見ていく。



★ハイバースクワットの担ぎ方
足首の柔軟性と、胴体に対しての大腿骨の長さによって、しゃがんだ時にどれくらい上体が傾くかが違ってくる。足首の柔軟性があり大腿骨が短いと、上体の傾きは小さくなる。足首の柔軟性があまり無くて膝が前に出ず、胴体に比べて大腿骨が長いと、上体はある程度傾かざるを得ない。

◇上体がほとんど傾かない人は、僧帽筋上部の上に乗せると良い。

動画:Lu Xiaojun 🇨🇳 255kg / 562lbs x3 Squat Session 2018 World Championships Training Hall [4k]
1:25~のスクワットが僧帽筋上部の上に乗せているのがわかりやすい。
骨格と柔軟性が上体を立てたスクワットに向いているのに加えて、重量挙げ用の踵が高い靴を履いているので膝が前に出やすい。


◇上体がある程度傾く人は、僧帽筋上部の中程に乗せると良い。僧帽筋上部の上に乗せて上体を傾けると、バーベルの負荷が首に行く。あと頚椎の一番下の骨(C7)の出っ張りにバーが当たって痛いと思う。

動画:280kg/617lbs ATG Squat for a Triple! - Training with Zack Telander
2:25~のスクワットが実例。僧帽筋上部の中程に乗せているのがわかる。



いったん肩甲骨を寄せて上げると、僧帽筋上部を厚くしてクッションにしやすい(スクワット動作に入るときは肩甲骨を下げる)。僧帽筋上部を筋収縮によってどれくらい固くするかは、個人の好みでやりやすいやり方で行う。僧帽筋上部がバーの圧力で痛い場合や、筋肉量が少なくて骨に当たってしまう場合は、無理せずスクワットパッドを使うのが良いだろう。スクワットパッドを使う場合も、バーベルの負荷が首にいかないように注意する。上体が傾く場合は担ぐ位置を少し下にする。スクワットパッドの厚みのぶん、バーの重心は上に移動し、上体が傾くと首に負担が行きやすくなるので注意する。スクワットパッドを使いたくないなら、僧帽筋上部の筋肉量を増やし、筋肉が圧迫される痛みに慣れるしかない。

ハイバースクワットはロウバースクワットに比べて、肩周りの柔軟性があまり必要とされず、肘・肩・手首への負担が小さい。


★ロウバースクワットの担ぎ方
三角筋後部に乗せる。肩甲骨にバーがゴリゴリ当たらないようにする。筋肉をクッションにすれば痛みは出にくい。三角筋後部の筋肉量が少し足りない場合は、肘を後ろにグイと上げると三角筋後部の肉が盛り上がってバーを乗せやすくなる。だがそうすると胸椎が丸まりやすくなるので、肩周りの柔軟性との兼ね合いで、背骨の姿勢をニュートラルに保てる範囲で肘を後ろにグイと上げる。ロウバーでスクワットパッドを使うとバーが転がりやすくなるので使わないほうが良いと思う。

ロウバースクワットは肩周りの柔軟性が必要で、柔軟性が足りないと肘や手首や肩が痛くなることがある。手首を伸ばし、サムレスでバーを押さえる感じにすると肘や手首や肩への負担が小さくなる。

動画:Low Bar Squat : Rack Position / Shoulder Warm-Up
4:00~がサムレスでのバーの握り方の実例


肩や肘や手首が痛くなったり、三角筋後部の筋肉量が少なくてバーがうまく乗せられない場合は、ハイバースクワットをするかゴブレットスクワットをすると良いと思う。股関節の伸展動作をメインに鍛えたいなら、デッドリフト系の種目という選択肢もある。



★僧帽筋上部の上に乗せながら尻を後ろに引く
ハイバースクワットの位置でバーを担ぎながら、膝を前に出さず尻を後ろに引くと、上体が大きく傾いて首に負荷がかかりやすい。危ないのでこのやり方は避けたほうが良い。


★肩周りの柔軟性が足りない場合

以下のストレッチやエクササイズをやっておくと良いでしょう。





★バーベルの重量による違い
上体がどれだけ傾くかは、バーベルの重量も影響する。上の絵では便宜的に、足の真上にバーベルが来るように描いたが、実際にこれで重心のバランスが取れるのは、バーベルが非常に重い場合だけ。バーベルが軽いと、後ろに突き出た胴体や尻や大腿部の重さと釣り合わせるため、上体を傾けて頭部とバーベルを前に出す必要がある。

普通の人は非常に重いバーベルを担げないので、上に書いた図よりも上体は傾くことになる。ハイバーで担ぐときは首に負荷がいかないよう注意しないといけない。




★フォームに合った担ぎ方の必要性
運動歴の浅い人にパーソナルトレーナーが無理してバックスクワットをやらせているのをよく見かける(今回の記事を書くきっかけはそれが気になったから)。だいたいがへっぴり腰か、極端に広いスタンス。背中の柔軟性がある若い女性だと背中が大きく反っているケースもある。なぜそうなるのか説明していく。


◇へっぴり腰
へっぴり腰になるのはバックスクワットに慣れてないせいもあるだろうけど、ハイバーの高い位置で担ぎながら尻を後ろに引くことで上体が傾き、首に負荷がいくようになり、身体が怖がって上手くしゃがめなくなっているからだと思われる。膝を前に出さないことを意識しすぎると上体が傾く、上体が傾くとバーの負荷が首にかかる、そうすると怖くてしゃがめなくなる。


◇極端に広いスタンス
スタンスを広くすると、横から見た際の大腿骨の長さが短くなって、上体を立てることが出来る。こうすることで上体を立てながら膝を前に出さないスクワットができる。股関節の柔軟性が必要とされ、ちゃんと開脚できないと膝が内側に入って怪我しやすくなるので注意が必要。

普通のスタンスでスクワットをするのに比べると内転筋の負荷が上がる。大腿四頭筋や臀筋群が最大に発揮する筋力は、普通のスクワットと同程度と考えられるが、極端に広いスタンスだと深くしゃがむことが困難なため、動作範囲が狭くなり筋肥大効果は劣るかもしれない。ストレングスの観点からは、広いスタンスで力を発揮する必要のある競技(相撲など)を行っているなら広いスタンスでスクワットをするのも良いと思う。日常動作やスポーツへの汎用的な効果を考えるなら普通のスタンスのほうが良いだろう。

◇背中を大きく反らせる。
背中を大きく反らせればハイバーで担いでも首に負荷がいかず、なおかつ膝を前に出さない股関節メインのスクワットも出来る。butt winkの話で書いたように、背中を過度に伸展させたフォームは身体機能の面からも怪我リスクの面からもメリットが無いと思う。




★バックスクワットは難しい
スクワットの膝関節と股関節の動作は、日常で使う動作なので上手く行うのは難しくはない。バーを上背部に担ぎながらスクワットをするのが難しい。butt winkの話で書いたように、胸が開きやすいという問題点もある。負荷が足りるなら、無理してバックスクワットをするよりもゴブレットスクワットをしたほうが良い。ゴブレットスクワットだと負荷が足りず、バックスクワットしか選択肢が無い場合は、バーを担ぐ位置と上体の傾きが安全な組み合わせになるように意識してバックスクワットを行う。

(競技としてスクワットを行っている人以外が)スクワットの負荷を上げたい場合は、セーフティスクワットバーがベストだと思う。首に負荷が行きにくく、肘や肩や手首に無駄な負担がかからず、胸が開かないので体幹に力を入れやすい。ただ普通のジムにはなかなか置いてない。セーフティスクワットバーがもっと普及すると良いなと思う。


動画:How to Use a Safety Squat Bar with Steve Slater

セーフティスクワットバーは yoke bar とも呼ばれる。yoke(くびき)に似ているから。




関連記事:
butt winkの話

スクワットの深さ