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5/31/2024

低炭水化物食の健康リスクを調べた研究

普通の食事よりも低炭水化物食のほうがインスリン抵抗性が増すという研究です。

(1)Low carbohydrate intake correlates with trends of insulin resistance and metabolic acidosis in healthy lean individuals
https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2023.1115333/full


横断研究で、一時点での食事調査と血液検査をして分析しています。

<実験概要>
クウェートで実施。
被験者は平均32歳の男女。
本人が糖尿病の人、家族に糖尿病の人がいる人は除外。
BMI25以下の人を募集。平均BMIは22.7kg/m2

グループ分けは、摂取カロリーに占める炭水化物の割合に基づいて行っている。
低炭水化物グループ:45%未満
中程度炭水化物グループ:45-65%
高炭水化物グループ:65%より上

11/04/2020

シクリカル・ケトジェニックダイエットの最新研究

シクリカル・ケトジェニックダイエットの最新研究が出てきたので紹介します。

(1)The Influence of Cyclical Ketogenic Reduction Diet vs. Nutritionally Balanced Reduction Diet on Body Composition, Strength, and Endurance Performance in Healthy Young Males: A Randomized Controlled Trial
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7551961/

ケトジェニックダイエットとシクリカル・ケトジェニックダイエットの説明

ケトジェニックダイエットは、炭水化物の摂取を極度に制限する食生活のことです。一日の炭水化物の摂取量を30g以下にするのが目安です。炭水化物が少ないため身体は脂質ベースの代謝に移行し、脂質と脂質から生成されるケトン体により消費エネルギーの大部分を賄うようになります。詳しく知りたい方は、関連記事を参考にしてください。

関連記事:[書籍] The Ketogenic Diet

ケトジェニックダイエットを続けると、体内のグリコーゲンが少なくなり、強度の高い運動をおこなうのが困難になります。運動能力を維持したい場合や、筋肉量を維持したい場合は、減量中も強度の高い運動をおこなっていく必要があります。

そこで考え出されたのが、炭水化物を制限するケトジェニックダイエットをベースにしつつ、定期的に炭水化物の摂取量を増やすことで高強度の運動をおこなえるようにするシクリカル・ケトジェニックダイエットです。

7/11/2017

低炭水化物食とタンパク質源の健康への影響


★低炭水化物食と死亡リスクのメタアナリシス研究
(1) Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3555979/

10年20年といった長期のスパンの観察研究を集めて、システマティックレビューとメタアナリシスを行った研究。聖路加国際病院の能登洋氏他の研究。この方の名前で検索すると、糖質制限派の方々から叩かれてる記事が出てきますね。

まあ余計なことはあまり書かず、中身を見ていきます。

摂取カロリーに占める炭水化物の割合を十分位数に区切ってスコア付け。最も炭水化物摂取量が低いグループは総摂取カロリーに占める炭水化物の割合が30-40%くらい、最も摂取量が多いグループは60-70%くらい。

最も炭水化物摂取が多いグループの全死因死亡率に対しての、最も炭水化物摂取量が少ないグループの全死因死亡率をリスクレシオとして算出。リスクレシオは約1.3となった。

つまり最も炭水化物摂取が多いグループに比べると、最も炭水化物摂取量が少ないグループは死亡リスクが1.3倍になる。炭水化物の摂取量が少ないと死にやすくなるという、糖質制限派の人にとっては受け入れられない結果になっている。

この研究の強みは、人種構成や食習慣が異なる様々な地域のデータをまとめて解析していること。弱みは、タンパク質源がどのような食品か、炭水化物源がどのような食品か、どのような脂質を摂取しているか、食物繊維などの栄養素の摂取量はどうなのかといった点が考慮されていないこと。



★植物性食品と動物性食品の影響
(2) Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: Two cohort Studies
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2989112/
(1)の解析対象にもなっている研究。アメリカの医者と看護師が対象のコホート研究。栄養と健康について普通の人よりも意識が高いと考えられる。

この研究では、年齢、運動、BMI、エネルギー摂取量、飲酒、高血圧、喫煙、マルチビタミン摂取、閉経、閉経後のホルモン療法で結果を調整している。(当記事内の他のコホート研究でもメジャーな交絡因子については調整されてる)

最も低炭水化物グループで摂取カロリーに占める炭水化物の割合が35-37%%くらい、タンパク質が動物性18%くらいで植物性4%くらい。それほど極端な低炭水化物ではないけど、各階級のリスクレシオを見ると、低炭水化物になるほど死亡リスクが上がっているので、もっと極端な低炭水化物食だとさらに死亡リスクが高まると考えられる。

ただこの研究はここからが面白くて、低炭水化物食でも動物性食品を多く摂取すると死亡リスクが高まり、植物性食品を多く摂取すると死亡リスクが低くなる(下図参照)。つまり植物性食品を積極的に食べる食生活なら、低炭水化物食になるにつれて死亡率が下がる。主なカロリー源がパンやパスタやお菓子やジュースなどの精製された炭水化物から、ナッツや豆やオリーブオイルなどに置き換わっているからだと考えられる。また植物性食品を積極的に食べる食生活のグループでも赤身肉を1日70gくらい食べている。肉はほどほどに食べ、植物性食品を多く食べるのが健康に良いのだろう。

動物性食品中心の食生活では、赤身肉の健康にネガティブな成分の摂取が増えることに加えて、食物繊維やフィトケミカルの摂取が少ないことが死亡リスクに影響していると考えられる。いきなり赤身肉を槍玉に挙げていて違和感あるかもしれないけど、赤身肉とその他の動物性食品の健康への影響についてはこれから詳しく見ていく。

アメリカ人の高炭水化物食なんてピザやフライドポテトやケーキや菓子やジュースばかりだろうけど(偏見)、それでも動物性食品よりも炭水化物中心に食べる方が死亡リスクが低い。





★赤身肉
要点:アメリカ人ばりに赤身肉をたくさん食べると死亡リスクが高まる。日本人の常識の範囲内で食べるのは問題ないだろう。赤身肉を食べなすぎても死亡リスクが高まるかもしれない。

(3) Red Meat Consumption and Mortality: Results from Two Prospective Cohort Studies
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3712342/
(2)の研究と同じ調査データを使用した研究。赤身肉の摂取量が増えると、それに比例して死亡率が高まる(下図参照)。ヘム鉄の過剰摂取、N-ニトロソ化合物、複素環アミン、多環芳香族炭化水素などの発がん性物質、加工肉のナトリウムと亜硝酸塩、これらの物質の過剰摂取が死亡率の上昇に影響を与えていると現時点では推測されている。

下のグラフでの1servingは85g。例えば一日あたり赤身肉200gを食べ続けると、死亡リスクが約1.5倍になる。BMIやカロリー摂取量など主な交絡因子に加えて、ホールグレイン・果物・野菜の摂取量でも調整済みの数字なので、体型に気をつけて太らないようにしても、野菜や果物も食べても、赤身肉をたくさん食べ続けると死亡リスクが高まる。加工肉(ハムやソーセージ)でも非加工肉でも死亡リスクは高まる(Table 2)。脂質が少なくても高まるだろう。



(4) Meat intake and cause-specific mortality: a pooled analysis of Asian prospective cohort studies.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3778858/
調査対象がアジアの研究。赤身肉を食べる量が増えると死亡率がやや下がる。上のアメリカの研究と結果が異なるのは、もともとの赤身肉の消費水準がアメリカに比べてアジアでは大幅に少ないためと思われる。アメリカみたいに赤身肉を食べすぎるのは死亡率を高める要因だけど、食べなすぎるのも健康には良くないのかもしれない。もしくはアジアでは赤身肉を食べられるということが生活水準の豊かさの指標になっていて、豊かだから医療へのアクセスなども良好で死亡率が低いということなのかもしれない。



★飽和脂肪酸
要点:赤身肉とセットで語られることの多い飽和脂肪酸もついでに。飽和脂肪酸については気にしなくて良さそうだけど、牛脂に多く含まれるフィタン酸は糖尿病リスクを高めるかもしれない。

(5) Intake of saturated and trans unsaturated fatty acids and risk of all cause mortality, cardiovascular disease, and type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of observational studies
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4532752/
飽和脂肪酸は健康に悪くないという考えが今は優勢のようだ。しかし細かく見ていくと、飽和脂肪酸にも種類があり、含まれる炭素の数が偶数(even)か奇数(odd)かで分類され、乳製品に多く含まれる種類の飽和脂肪酸(odd-chain)は糖尿病リスクを下げ、牛肉などに多く含まれる種類の飽和脂肪酸(even-chain)は糖尿病リスクを高める可能性がある。ただ、血中のeven-chain飽和脂肪酸は、食品の摂取よりも炭水化物やアルコールからの脂質合成に関連しているという見方もあるし、耐糖能に関連するodd-chain飽和脂肪酸は摂取よりも体内合成によるものという見方もある。

(6) Odd Chain Fatty Acids; New Insights of the Relationship Between the Gut Microbiota, Dietary Intake, Biosynthesis and Glucose Intolerance
https://www.nature.com/articles/srep44845
2017年の研究で、動物実験と人間での実験を組み合わせたもの。乳製品に多く含まれるodd-chain飽和脂肪酸であるC15:0は食品摂取量と血中レベルが相関するが、C17:0は相関しない。C17:0の血中レベルは体内合成次第と考えられる。フィタン酸(牛脂に多く含まれる)とC17:0の血中レベルが逆相関していて、フィタン酸がC17:0の体内合成(C18:0からのα酸化)を妨げるようだ。動物実験だとC15:0の血中レベルは耐糖能と相関なしだが、C17:0の血中レベルが耐糖能と逆相関する。つまり赤身肉の脂質が糖尿病リスクに関わるとしたら、飽和脂肪酸ではなくてフィタン酸が悪影響を与えているのかもしれない。その場合はフィタン酸の体内での代謝が直接的に、もしくはC17:0に耐糖能に関わる働きがあってフィタン酸がC17:0の血中レベルを下げることで間接的に悪影響を与えていると考えられる。
またC17:0の摂取量と血中レベルが相関しないことから、乳製品が糖尿病リスクを抑えるというのも、乳製品に多く含まれるC15:0やC17:0の効果ではなくて、その他の生物活性物質の影響なのかもしれない。



★乳製品
要点:乳製品の摂取量が多くなると、前立腺がんのリスクが高まる。乳製品の摂取量が多く、血縁者に前立腺がんを患った人がいる場合は、前立腺がんに注意したほうが良いだろう。乳製品は健康に良い面もある。トータルの健康への影響を考えた場合、前立腺がんリスクを補って余りあるかもしれない。乳製品の摂取は全死因死亡率には影響なし。

(7) Dairy products intake and cancer mortality risk: a meta-analysis of 11 population-based cohort studies.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5073921/
牛乳で男性の前立腺がんリスクが増大する以外は、ガンの死亡率に影響なし。

(8) Dairy consumption and the risk of 15-year cardiovascular disease mortality in a cohort of older Australians.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23389303
心臓血管の疾患には影響なさそう。

(9) Dairy products, calcium, and prostate cancer risk: a systematic review and meta-analysis of cohort studies.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25527754
牛乳、低脂肪牛乳、チーズでも前立腺がんリスクが上がる。乳製品の摂取を1日400g増やすごとに、前立腺がんリスクが7%上がる。

(10) Milk and dairy products: good or bad for human health? An assessment of the totality of scientific evidence.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27882862
乳製品は一部のガンを抑制したり、どっちかというと健康に良い傾向みたい。全死因死亡率には影響なし。

(11) Proliferative effect of whey from cows' milk varying in phyto-oestrogens in human breast and prostate cancer cells.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22280936
試験管内の実験だけど、ホエイ(液体)に前立腺がん細胞の増殖効果がある。ホエイが除かれているチーズでも前立腺がんリスクが上がるので、ミルク全体に含まれる何らかの生物活性物質が前立腺がんリスクを上げるようだ。ホエイプロテインパウダーでもその物質は残っているのだろうか? 前立腺がんリスクのみを気にするのなら、なるべく精製度の高いプロテインパウダーの方がリスクが低くなるかもしれない。その分、健康に良い影響を与える生物活性物質も減るので、トータルでの健康へのリスクを考えた場合、どちらが良いのかは不明。ただプロテインパウダーだとミルク換算ではかなり大量に摂取することもできるし、タンパク質源は分散させるにこしたことはないだろう。

(12) A milk protein, casein, as a proliferation promoting factor in prostate cancer cells.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25237656
こっちはカゼインを使っての試験管内での実験。カゼインでも前立腺がん細胞の増殖効果が確認された。



★魚
要点:脂質の多い魚はほどほどに食べるのが良さそう。

(13) Fish consumption and mortality in the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition cohort
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4356893/
研究対象はヨーロッパの人。魚の摂取量と全死因死亡率に相関なし。トレンドとしては脂質の多い魚を食べなすぎでも、食べ過ぎでも死亡リスクが上がる傾向(有意差は無し)。魚は水銀やダイオキシンやポリ塩化ビフェニルなどの汚染物質が含まれている可能性があって、ダイオキシンやポリ塩化ビフェニルは脂質に溜まるので、食べ過ぎでも健康に悪影響が出るのかもしれない。もしくはデンマークなどの特定の国の魚の食べ方(燻製や酢漬け)が発がん性に影響しているのかも。ただ食べなすぎでも魚の健康効果を得られなくなるので、ほどほどに食べるのが良いだろう。

他の研究では、魚の摂取量と死亡率には相関無しか、摂取量が増えると死亡率が下がるといったものも出ている。



★鶏肉
要点:鶏肉の健康への悪影響はあまり気にしなくて良さそう。

(14) Prospective investigation of poultry and fish intake in relation to cancer risk
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3208759/
アメリカ人対象。魚と鶏肉をまとめて白身肉と呼んで、赤身肉を白身肉に代替したとすると、多くのガンの発生率が下がる(一部のガンは発生率が上がる。Figure1)。赤身肉の摂取量をそのままで、鶏肉の摂取量を増やしても、ガンの発生率が全体で見て上がる感じではない(Figure2)。

(15) Red Meat Consumption and Mortality: Results from Two Prospective Cohort Studies
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3712342/
アメリカ人対象。この研究では赤身肉を鶏肉に代替したとしたら、死亡率が下がる。魚と代替した場合よりも死亡率が下がる。ナッツでも鶏肉でも魚でも低脂肪乳製品でもホールグレインでも豆でも、赤身肉と代替すると死亡率が下がる(下図参照)。

あと(4)のアジア人を対象とした研究で、鶏肉の消費量と死亡率の関係のデータもあって、これは鶏肉の消費量が増えると死亡率が下がる(Table3)。


★卵
要点:毎日1個や2個なら問題なさそう。極端に卵を多く食べるケースがあまり無いのでデータが無い感じ。そもそも卵は脂質が多いので、総摂取カロリーの面から普通はあまり多く食べないだろう。

(16) Egg Consumption and Human Cardio-Metabolic Health in People with and without Diabetes
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4586539/



★炭水化物
要点:精製度の高い炭水化物はあまり多く食べない方が良さそう。

(17) Amount, type, and sources of carbohydrates in relation to ischemic heart disease mortality in a Chinese population: a prospective cohort study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4144114/
シンガポールの中国系対象。虚血性心疾患のリスクのみだけど、トータルの炭水化物摂取量はリスクに関係ない、デンプンの摂取量が増えるとリスクが上がる、米を麺類に代替するとリスクが上がる、米を野菜や果物や全粒粉パンに代替するとリスクが下がる。ただ米と一緒に食べられることが多い食べ物が疾患リスクに影響を与えている可能性があって、デンプンの過剰摂取が問題なのか、一緒に食べられることの多い食べ物が問題なのか切り分けるのは困難とのこと。

(18) Dietary Glycemic Load and Index and Risk of Coronary Heart Disease in a Large Italian Cohort
http://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/225342
イタリア人対象。精製度の高い炭水化物をたくさん食べると、女性は冠動脈心疾患リスクが高まる。男性は有意差なし。

(19) High carbohydrate intake from starchy foods is positively associated with metabolic disorders: a Cohort Study from a Chinese population
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4652281/
中国人対象。デンプン摂取量とメタボになるリスクは相関、デンプン以外の炭水化物摂取量とメタボリスクは相関無し。



★長期的な糖質制限食について
以上の知見を元に、長期的な糖質制限食についての個人的なコメントを書いておきます。

a) カロリーオーバーになっているので、一日のうち一食はお米を抜くといったライトな糖質制限。
→おすすめ。カロリーオーバーは万病の元。炭水化物を抜くなら朝か昼がおすすめ。

参考:ダイエットでは夜に炭水化物を集中的に食べよう

参考:インスリンにまつわる迷信と事実

b) 胚芽米、雑穀米、全粒粉など精製度の低い穀物や豆類やイモ類やナッツなどから主にカロリーを摂取し、タンパク質源として肉、魚、乳製品、卵をバランス良く食べ、野菜もしっかり食べる常識的に考えて健康的な食生活。
→非常におすすめ。手間とお金がかかるけど・・・。

c) 米やパンなど糖質源となる食品はなるべく食べず、そのかわりに赤身肉をたくさん食べる食生活。
→おすすめしない。

d) 糖質を多く含む食品はすべて悪者として、米やパンだけでなくイモや豆類や根菜や果物まで拒否する食生活。
→おすすめしない。

e) ケトジェニックダイエット
→特定の疾患の人と、極度に低い体脂肪率を目指す人が短期的に行う以外は、おすすめしない。

参考:女性の糖質制限

参考:高タンパク質/低炭水化物食がメンタルに及ぼす影響



以上は、運動習慣は平均レベル、カロリーオーバーにならず普通体型を維持するのが条件。運動量が多い人は精製された炭水化物の摂取量を増やしても良いと思う。運動には心臓血管系やインスリン感受性への好影響がある。それに精製度が低くて食物繊維たっぷりのヘルシー食生活で、運動量が多い人が必要な摂取カロリーを食べようとすると消化能力が追いつかなくなってしまう。摂取カロリー1000kcalあたり食物繊維10g程度を目安に食べると良いと思う。運動量が多いとタンパク質の摂取量も増やす必要があるので、タンパク質源は分散させよう。

今回の記事は、健康を主眼として考えた場合の話で、多少リスクが上がってもいいから好きなものをたくさん食べるというのも選択肢の一つ。その場合も、色んな食べ物を分散して食べ、適度な運動を行うと健康を害するリスクを抑えることが出来るだろう。

大切なのは、「○○という食品は健康に良い」「□□という食品は健康に悪い」「△△のカテゴリの食品は避け○○のカテゴリの食品はいくらでも食べて良い」といった善悪二元論みたいなアプローチは止めること。

現時点の科学で解明できていることなんてごく僅かだし、部分最適は全体最適を意味しない。細胞レベルの挙動や特定の健康指標に関する短期の実験結果が、数十年のトータルでの健康への影響を説明するわけではない。現状わかっている部分的なことだけ見て、それを元に「最高の食生活」を組み立てるのは浅知恵だろう。特定の食品ばかり食べず、特定のカテゴリの食品を排除せず、なるべく多くの食品をバランス良く食べリスク分散することが最も良い方法だと思う。

またアップサイドとダウンサイドのリスクを考えても、ケトジェニックダイエットのような特殊な食生活はうまみがない。例えば若い時の株式投資だったら、少数銘柄に集中投資するのも一つの選択肢になる。上手くいったときのリターンが大きいし、失敗してもお金が無くなるだけで若ければやり直せる。でも特殊で極端な食生活は、仮に上手くいったとしても寿命が大幅に伸びるわけではないし、何十年も続けて失敗したらもうやり直せない。アップサイドが限定的で、ダウンサイドがどれだけあるかわからず、やり直しがきかない。うまみの無い賭け。

あと、「人類の歴史を考えると農耕が始まったのはごく最近で、それ以前の人間の生活では○○の食材はほとんど食べてない。人間の身体はその当時のような食生活に適応しているから、現代でもそういう食生活をすると健康で長生きできる」といったストーリーを極端な食生活の論拠にするのを見かけるけど、この考え方は根本的に間違っている。進化による適応はその性質をもたらす遺伝子が繁栄したからであって、個体が健康で長生きしたからではない。個体は遺伝子の使い捨ての乗り物であり、基本的には繁殖を終えるまで元気に動けばよく、それ以降も丈夫で長持ちする個体になっても無駄にコストがかかるので遺伝子拡散競争で不利になる。

ただ人間は子孫の繁栄を助けることで遺伝子の拡散を後押しできるから、生殖・子育てを終えたあとも個体が健康で長生きしたほうが有利な面がある。しかしそれを考慮しても、狩猟採集時代の平均寿命は死亡率の高い幼少期を生き延びたとしても30年や40年だろうから、現代人の中高年以降の健康と長生きには選択圧はかかっていないと考えられる。従って狩猟採集時代の食生活が、80年生きる現代人の健康と長寿に良いか悪いかは、前述のストーリーからは何も言えない。


9/17/2016

女性の糖質制限

てんかん患者の治療にケトジェニックダイエット(厳格な糖質制限食)が使われていて、てんかん患者を対象とした研究が結構ある。どれも1日の炭水化物摂取量が100gを大幅に下回る食生活にしている。

個人差はあるがケトジェニックダイエットはてんかんの発作の抑制に効果的なのだけど、副作用がいくつかあって、これは疾患の無い人がケトジェニックダイエットを行った場合にも起こると思われる。特に女性は高い確率で月経異常になるので注意が必要。


◇The Ketogenic Diet: Adolescents Can Do It, Too
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1528-1157.2003.57002.x/full

被験者:てんかん患者の思春期の男女。開始時点の平均年齢は約14歳。

45%(9名)の女性に月経異常が起こった。うち6名が無月経、3名が思春期の遅れ。9名のうち4名が体重減少(残り5名は体重減少していない)。1名は月経を起こすためにホルモン治療を受けた。8名はケトジェニックダイエットの終了後は月経は正常に戻った。1名はケトジェニックダイエット終了後に月経過多になった。


◇The Ketogenic Diet for Intractable  Epilepsy in Adults: Preliminary Results
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1528-1157.1999.tb01589.x/pdf

被験者:男性2名 女性9名。年齢19-45歳。

女性9名全員が月経異常になった。男女11名中5名が体重減少したが、カロリーを増やすことでこれに対処した(それ以降は体重減少無し)。ケトジェニックダイエットの終了後は全員が月経は正常に戻った。


◇Long-term use of the ketogenic diet in the treatment of epilepsy
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-8749.2006.tb01269.x/pdf

ケトジェニックダイエットは、他には便秘や骨が脆くなることや腎結石になりやすいといった副作用がある。



★コメント
女性は体重を維持するだけのカロリーを摂取していても、厳格な糖質制限食を行うと非常に高い確率で月経異常になる。

厳格な糖質制限食では、身体は飢餓時に発動する緊急システムを使うことになる(詳しくは関連記事の[書籍] The Ketogenic Diet を参考)。健康の維持にはある程度のストレスが必要なので、たまにケトジェニックダイエットやファスティングをするのは健康に良いかもしれない。また極度に低い体脂肪率にするために、炭水化物の摂取をサイクルさせ一時的にケトーシスを起こすダイエットは、数ヶ月といった短い間ならそれほど問題にはならないだろう。だけど飢餓時の緊急システムをずっと使い続けるのは、健康に良いとは思えない。

個人的には、厳格な糖質制限食は、特定の疾患を持つ人以外には勧めません。体重を維持するだけのカロリーを摂取する場合でもそうです。最低でも1日100-150gの炭水化物を摂取した方が良い。

1日100-150gの炭水化物の摂取を糖質制限と呼ぶ人も見かけるけど、例えば1日1500kcalのダイエットをするとして、炭水化物125g(500kcal)、タンパク質100g(400kcal)、残りの600kcalを脂質で摂取するとしたら、これは糖質制限ではなくて単なるバランス型ダイエットになる。

炭水化物でも脂質でも摂り過ぎて体内で余剰が出れば、健康に害を及ぼす。バランスの取れた食生活をして、適度に運動をするのが最も健康に良いだろう。

糖質制限は、頭を使わずに摂取カロリーを抑えつつタンパク質の摂取量を確保できるので、その点は優れていると思う。ダイエットで重要なのは摂取カロリーが消費カロリーを下回るようにし、タンパク質を十分に摂ること。でも糖質制限で痩せると考える人は、体重の増減のメカニズムを間違って理解するケースが大半だろうから(糖質でインスリンが出るから太る云々)、壁にぶつかるとどうしようもなくなる。またダイエットの際はウェイトトレーニングを行うと筋肉を維持増強できるので、ウェイトトレーニングは出来るならやったほうが良い。ウェイトトレーニングを行うには炭水化物を摂取した方が楽だし効果的。

減量の効果の観点からは、厳格な糖質制限食は男性なら体脂肪率10%程度、女性なら17%程度を下回ってさらに減量したい場合には意味があると思うけど、それ以上の体脂肪率の人がやってもバランス型ダイエットに比べて効果的かというと恐らく意味がない。



関連記事:
[書籍] The Ketogenic Diet

炭水化物の摂取をサイクルさせるダイエット

1/27/2016

高タンパク質/低炭水化物食がメンタルに及ぼす影響

Lyle McDonaldの記事から

Anxiety Low-Carbohydrates Whey and BCAA

Carbohydrate Intake and Depression – Q&A


★セロトニン
セロトニンは抑制作用を持つ。抑うつ傾向がある人は、脳のセロトニンレベルが十分高ければ、その傾向が抑制される。セロトニンレベルが低下すると抑うつの症状が表に現れる。同様に不安神経症や躁病の傾向がある人にも、セロトニンのレベルが影響する。


★トリプトファン
トリプトファンはセロトニンの前駆体。

複数のアミノ酸が同一の輸送体を使用。輸送体をめぐっての競合が発生する。

BCAA、チロシン、フェニルアラニン、そしてトリプトファンはLNAA輸送体を使用。BCAAやチロシンやフェニルアラニンの量が多いと、脳に輸送されるトリプトファンが減り脳のセロトニンレベルが低くなる。

多くのタンパク質はトリプトファンよりも他の競合アミノ酸を多く含んでいる。例外はα-ラクトアルブミンでトリプトファンの含有率が高い。

トリプトファンの競合アミノ酸(特にBCAA)は、インスリンレベルが上昇すると細胞に取り込まれる。その結果血中の競合アミノ酸濃度が低下し、トリプトファンが脳へ輸送されやすくなる。

高タンパク質/低炭水化物食では、
- 高タンパク質食により競合アミノ酸が多く供給される。
- 低炭水化物食でのインスリンレベルの低下により、血中の競合アミノ酸濃度が高いままになる。
- ダイエットによる血中のトリプトファンレベルへの影響もある。

これらが合わさって脳のセロトニンレベルが低下し、メンタルに問題を抱える人にはリスクになる。

逆に極端な低タンパク質/高炭水化物食では、血中のトリプトファンレベルが上昇しセロトニンレベルが上昇する。抑うつの症状がある人が、このタイプの食生活を求めることがあるのは、自らを治療しようとしているのかもしれない。


★対策
- タンパク質の摂取量を減らし、炭水化物の摂取量を増やす。炭水化物摂取量1日100g以下は問題が起こりやすい。
- α-ラクトアルブミンを摂取する。夜に摂取すると睡眠の質が良くなる。同じ理由で夜にタンパク質の摂取量を減らし炭水化物の摂取量を増やすのも良い。
- L-トリプトファンや5-HTP(セロトニンの前駆体)を摂取する。
- 摂取カロリーと炭水化物摂取量を上げるダイエット休憩を入れる。2ヶ月毎に2週間が目安。



個人的な感想
- 厳格な糖質制限ダイエットは万人向けじゃないよなあ・・・。特に医師が勧めるのはどうかと思う。
- 対策で挙げられている方法は、メンタルに問題がない人でも減量時の睡眠の質の改善に使える。

9/12/2015

インスリンにまつわる迷信と事実

インスリンの話。ネタ元へのリンクは記事の最後に。


★基礎知識
インスリンは血液中の糖(グルコース)のレベルをコントロールするホルモン。食事を行い血液中のグルコースレベルが上昇すると膵臓がそれを感知しインスリンを放出する。インスリンは肝臓や筋細胞や脂肪細胞がグルコースを取り込むのを促進する。血糖レベルが下がるとインスリンレベルも下がる。このサイクルは一日を通して起こっている。

インスリンは筋肉がタンパク質を新たに合成するのを刺激したり、脂肪分解を抑制し脂肪合成を刺激するといった働きもある。この脂肪合成・分解に関わる働きが、インスリンの悪い評判をもたらし、炭水化物が悪者扱いされるようになっている要因である。この炭水化物悪者説のロジックを簡潔に書くと、

高炭水化物の食事をする→インスリンがドバドバ分泌→脂肪合成が盛んになり脂肪分解が抑制される→肥満になる

逆に、

低炭水化物の食事をする→インスリンがあまり出ない→脂肪合成が抑制され脂肪分解が盛んになる→体脂肪が減る

しかしこの2つのロジックは多くの迷信に基づいている。


★多くの迷信と事実

迷信1:高炭水化物の食事は、慢性的な高いインスリンレベルをもたらす。
事実:健康な人においてはインスリンレベルは食後のみ上昇する。

健康な人においてはインスリンレベルは食後のみ上昇し、その時間帯は脂肪合成が脂肪分解を上回り、差し引きで体脂肪が増える。消化吸収を終えた後、次の食事までの時間帯は、脂肪分解が脂肪合成を上回り差し引きで体脂肪が減る。トータルの摂取カロリーと消費カロリーが同じなら、24時間での体脂肪の増減は差し引きゼロになる。


迷信2:炭水化物がインスリンレベルを上昇させ、それが脂肪を貯蔵させる。
事実:身体はインスリンレベルが低くくても脂肪を合成し貯蔵することが出来る。

例えば、hormone-sensitive lipase (HSL)という酵素は脂肪分解を促進し、インスリンはHSLの活動を抑制するが、脂質もHSLの活動を抑制する。従ってカロリー収支がプラスになれば、炭水化物を摂取しなくても体脂肪は増加する。
(そもそも脂質だけ摂取した場合でも迅速に貯蔵場所に送り込まれるシステムを用意しておかないと、消化吸収された脂質は長時間血中に残り続け健康に害をなすことになる。人体がそんな欠陥システムだったらとっくに進化の過程で滅びてる)。


迷信3:インスリンによって空腹になる。
事実:インスリンは食欲を抑制する。


迷信4:炭水化物のみがインスリンレベルを上昇させる。
事実:タンパク質もインスリンの分泌を促進する。

低タンパク質・高炭水化物と高タンパク質・低炭水化物の等カロリーの食事をそれぞれ摂取した場合、高タンパク質・低炭水化物の方がインスリンレベルが上昇した。

他の研究で高タンパク質・低炭水化物の食事を摂取した場合、インスリンレベルは大きく上昇し、それは血糖レベルの変動とは無関係だった。様々な食材を等カロリー摂取した場合のインスリンレベルの上昇を調べた研究では、炭水化物が含まれていない牛肉や魚を摂取した場合も、インスリンレベルは上昇している。

アミノ酸はグルコースへの変換なしに、ダイレクトに膵臓からのインスリン分泌を促進する。つまりタンパク質摂取によるインスリンレベルの上昇は、糖新生によるものではない。

タンパク質の摂取はグルカゴンの分泌を促進し、グルカゴンが脂肪分解を増やすという説があるが、グルカゴンが人体において脂肪分解を増やすというのは否定されている。タンパク質を摂取するとグルカゴンレベルが上昇するのは、タンパク質摂取でインスリンレベルが上昇しそれにより血糖値が下がり過ぎるのを防ぐため。グルカゴンは肝臓がグルコースを生成するのを促進する。


迷信5:インスリンレベルの急上昇は悪である。
事実:インスリンレベルの急上昇は、ノーマルで重要な生理学的機能に資する。

インスリンが分泌される段階は主に二つある。第一段階では、膵臓が血糖の上昇を感知し、蓄えていたインスリンを1-2分以内に放出、10分以内に終わる。この機能は耐糖能異常の人において損なわれていて、2型糖尿病の人においては完全に機能停止している。第二段階では蓄えの放出と新たな生成を、血糖レベルが上昇している間続ける。

もしインスリンが分泌されないとどうなるか、後ほど糖尿病患者のケースで述べる。


迷信6:インスリン注射をする糖尿病患者は体重が増える、つまりインスリンは健康な人にとっても体重増加の原因になる。
事実:健康な人においては、アミリンがインスリンと同時に分泌される。アミリンは食欲を抑制し脂肪分解を促進する効果を持つ。

アミリンは膵臓からインスリンと同時に分泌されるホルモンで、食欲を抑制し脂肪分解を促進する。1型糖尿病患者はアミリンを生成できず、2型糖尿病患者は機能が損なわれている。Pramlintideという薬はアミリンの機能を模倣するが、この薬は糖尿病患者において体重減少を生じさせることが知られている。

従って、糖尿病患者のインスリン注射は、健康な人の体内でのインスリンレベルの変化による効果とは比べられない。


迷信7:インスリンレベルを下げることは食欲コントロールを改善させる。
事実:インスリンは満腹感にとって重要な多くのホルモンのうちの一つである。


迷信8:ここまで書かれた情報は健康な人に適用される。
事実:肥満や糖尿病の人にも適用される。

血糖コントロールとインスリンコントロールを混同してはいけない。血糖コントロール自体が、以下の食生活が健康に良いことの部分的な理由である、低GI炭水化物を摂取したり炭水化物の摂取量を減らすこと、タンパク質摂取を増やすこと、食物繊維を摂取すること、果物や野菜を摂取すること、加工食品よりもホールフードを摂取すること。

インスリン感受性の改善と血糖値の急変動を避けることによって、インスリンレベルは結果としてコントロールされる。


★乳製品とインスリン

よくある俗説:炭水化物はインスリンレベルを上昇させるので脂肪を蓄積させる

これまで説明してきたように、タンパク質もインスリンレベルを上昇させるし、長期的な体重増減はカロリー収支の問題である。

乳製品は血糖レベルをさほど上げないが、インスリンレベルを大きく上昇させる。実験では、精白パンと同等かそれ以上のインスリン反応を示した。

なぜ乳製品がインスリンレベルを大きく上げるのか。
・BCAAレベルの上昇とインスリン反応が相関。ロイシンは膵臓からのインスリン分泌を直接刺激。乳製品のタンパク質はBCAAの含有率が高い。
・乳製品は、glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)の生成を増加させる、GIPはインクレチンでインスリン分泌を促進する。血中に送り込まれる前の消化吸収段階でもインスリン分泌が刺激される。

研究では乳製品の摂取と体重増加の相関は示されていない。コントロール実験でも同様。むしろ乳製品を摂取した方が太りにくいという結果も出ている。もちろん高脂質の乳製品を大量に食べればカロリーオーバーするので太る。


★インスリンが欠如するとどうなるか

「インスリンが無いと高血糖になるのは、グルコースが細胞に取り込まれないため」というのは間違い。

グルコースは輸送体(transporter)によって細胞内に入る。筋細胞と脂肪細胞における第一の輸送体はGLUT-4で、インスリンはGLUT-4が細胞の中から細胞の表面に移動するのを刺激する。細胞の表面でグルコースはGLUT-4輸送体と結合し、細胞内に入る。しかしグルコースの輸送体はGLUT-4以外にも多くある。インスリンなしでも細胞のエネルギー需要を満たすグルコースを十分に取り込める輸送体が細胞内に存在する。

マウス実験で、筋細胞と脂肪細胞のインスリン受容体をノックアウトし、脳や肝臓のインスリン受容体は正常なままにしたら、マウスは糖尿病にはならず正常な血糖レベルを保った。

1型糖尿病の人にインスリン投与を行わないと、血糖値は急上昇する。しかしこれはグルコースが細胞内に取り込まれないためではない。血糖レベルには、血中に放出されるグルコース量と、血中から取り除かれるグルコース量の両方が影響する。絶食時(fasted:食べ物の消化吸収を行っていない状態)のインスリン無し糖尿病患者の体内では、グルコースは肝臓から血中に放出される。肝臓はアミノ酸等からグルコースを生成(糖新生)するか、肝グリコーゲンからグルコースを生成するかしてこれを行う。インスリンはこの肝臓のグルコース生成を抑制する働きをするが、インスリンが欠如していると、身体の状態関係なく肝臓はひたすらグルコースを生成し続けることになる。

またインスリンは肝臓でのケトン生成を抑制する働きもするので、インスリンが欠如していると肝臓は脂肪酸からひたすらケトンを生成し続ける。糖尿病性ケトアシドーシスである。インスリンが欠如していると筋肉と脂肪の分解も抑制されないので、肝臓にアミノ酸と脂肪酸がどんどん供給され、肝臓はグルコースとケトンをどんどん生成し血中に放出する。これが高血糖とケトアシドーシスが同時に起こるメカニズムである。

このようにインスリンは交通整理を行う警官や信号機に似た役割を果たす。交通警官や信号機によって交通の流れが制御されないと交通事故が起きるように、人体でインスリンが欠如するとグルコース生成とケトン生成のサイクルが暴走し死に至る。

2型糖尿病の人の場合、肝臓のインスリン抵抗性と細胞のインスリン抵抗性により、肝臓でのグルコース過剰生成と細胞でのグルコース取り込み不足が起こり高血糖になる。食後の高血糖は過剰生成と取り込み不足の両方が原因で、前者の影響の方が大きい模様。絶食時の高血糖は過剰生成の影響が支配的。


参考記事:
Insulin…an Undeserved Bad Reputation
http://weightology.net/weightologyweekly/index.php/free-content/free-content/volume-1-issue-7-insulin-and-thinking-better/insulin-an-undeserved-bad-reputation/

Insulin: An Undeserved Bad Reputation, Part 2
http://weightology.net/weightologyweekly/index.php/free-content/free-content/volume-1-issue-10-insulin-physical-activity-and-weight-regain/insulin-an-undeserved-bad-reputation-part-2/

Insulin: An Undeserved Bad Reputation, Part 3…MOOOOO!!!!
http://weightology.net/weightologyweekly/index.php/free-content/free-content/volume-1-issue-12-insulin-dairy-products-and-eat-slow-to-eat-less/insulin-an-undeserved-bad-reputation-part-3-mooooo/

Insulin: An Undeserved Bad Reputation, Part 4: The Biggest Insulin Myth of Them All
http://weightology.net/weightologyweekly/index.php/free-content/free-content/volume-1-issue-13-insulins-biggest-myth-and-ad-hominems/insulin-an-undeserved-bad-reputation-part-4-the-biggest-insulin-myth-of-them-all/

Insulin: An Undeserved Bad Reputation, Part 5: Addressing the Critics
http://weightology.net/weightologyweekly/index.php/free-content/free-content/volume-1-issue-18-insulin-an-undeserved-bad-reputation-addressing-the-critics/insulin-an-undeserved-bad-reputation-part-5-addressing-the-critics/

Insulin, an Undeserved Bad Reputation: The Biggest Insulin Myth, Continued…
http://weightology.net/weightologyweekly/index.php/free-content/free-content/volume-1-issue-19-insulin-an-undeserved-bad-reputation-the-final-chapter/insulin-an-undeserved-bad-reputation-the-biggest-insulin-myth-continued/


関連:
カルシウム・乳製品が体組成変化に与える影響

栄養素の貯蔵と引き出し

10/22/2014

[書籍] The Ketogenic Diet

Lyle McDonald の The Ketogenic Diet を読んでのメモ。自分用のメモなのであまりわかりやすいようには書いてないです。

糖質制限ダイエットに興味がある人には参考になる情報が多くあると思います。出版1998年なので一部outdatedな情報もあるかも。本の後半は運動生理学の教科書的な内容なので割愛して、前半部分だけメモしてます。

Lyle McDonald の本は amazon.comでも買えますが、Lyle McDonald のサイトから買った方が安いです。購入を考えている人には、amazonのレビューが参考になるかも。



★基礎知識
人間の身体のエネルギー源:グルコース、タンパク質、遊離脂肪酸、ケトン
どのエネルギー源を使うかは、炭水化物の可用性(ホルモンレベルに影響)、肝グリコーゲンの状態、ある種の酵素のレベル、次第。

エネルギーの身体内の貯蔵量は、脂質>>タンパク質>炭水化物

一般的に、身体の組織は血液中濃度の比率に沿ったエネルギー源を使う。例えば血中のグルコースが増えれば、それを優先的に使う。逆に炭水化物の可用性を低下させることで、脂質を優先的に使うようにできる。

炭水化物が不足すると、タンパク質が糖新生で使われる。炭水化物を多く取れば糖新生は起こりにくくなるけど、同様に脂質もエネルギー源になりにくくなる。

炭水化物不足の状態の初期は糖新生が起こりやすいので、身体のタンパク質が分解されないようタンパク質の摂取量を増やす必要がある。身体がケトーシスに適応すると脂質とケトンでエネルギーを賄うようになり、タンパク質が分解されにくくなる。

ほとんどの身体組織は遊離脂肪酸をエネルギー源に出来るが、脳、赤血球、腎髄質、骨髄、TypeⅡ骨格筋は遊離脂肪酸を使えない。

ケトーシス適応後は、脳は消費エネルギーの75%までをケトンでまかなうことが出来る。残りはグルコース。

ほとんどの身体組織はケトンをエネルギーとして利用できる。例外は肝臓で遊離脂肪酸を利用。

ケトーシスの三日目にはタンパク質以外のエネルギー源は全て遊離脂肪酸とケトンになる。ケトーシスが進むにつれて、脳以外の組織はケトンを利用しなくなっていき、3週間後以降は遊離脂肪酸を主にエネルギー源とするようになる。ケトンを脳に使わせるため。

身体組織による遊離脂肪酸の利用が高まるとケトンも増えて利用されるようになる。

遊離脂肪酸をエネルギー源として利用できるようになれば、それだけグルコースの必要量も減少する。


★エネルギー利用に影響を与えるファクター
・摂取栄養素の質: グルコースを多く摂取するとグルコースの利用が増える(少ないと減る)。タンパク質の摂取を増やすとある程度はタンパク質の酸化が増える(少ないと減る)。脂質は摂取量を増やしてもエネルギー源としての利用割合が顕著に増えるわけではない。炭水化物とアルコールの摂取が増えると、脂質のエネルギー利用は低下する。筋グリコーゲンのレベルが筋肉での脂質の利用を調整する。運動か炭水化物制限により、筋グリコーゲンと肝グリコーゲンのレベルを低くすると、脂質の利用が増える。

・ホルモンレベル: インスリンは貯蔵ホルモンで、血中のグルコースは筋肉か肝臓に貯蔵され、脂質の合成・貯蔵も刺激される。脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出は、わずかなインスリンでも抑制される。インスリンの主な役割は血糖レベルを一定のレンジに保つこと。炭水化物の摂取でインスリンレベルは大きく上昇するが、タンパク質の摂取でも上昇する(一部のアミノ酸がグルコースに転換されるため)。遊離脂肪酸もわずかにインスリンレベルを上昇させる。血糖値が下がるとインスリンレベルも低下し、グルカゴンなどの他のホルモンレベルが上昇し、貯蔵されたエネルギーが血中に放出される。脂肪細胞から遊離脂肪酸とグリセロールが、筋肉などのタンパク質組織からアミノ酸が、肝グリコーゲンからグルコースが放出される。グルカゴンはインスリンの逆の役割で、通常レベルでは肝グリコーゲンの分解を促進、炭水化物制限や運動によりインスリンレベルが非常に低くなると、筋グリコーゲンや脂肪細胞内の脂質の分解放出も。肝臓でのケトン体の生成にも関わる。絶対レベルよりも、インスリンとグルカゴンの比率が重要。他のホルモンは、GH、IGF-1、甲状腺ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、カテコールアミン。

・肝グリコーゲン: 肝グリコーゲンのレベルは、身体全体の栄養貯蔵or分解の傾向を決定する主要因。

・酵素のレベル: 摂取する栄養とホルモンレベルによって決まる。

以上まとめると、炭水化物の摂取が多いと炭水化物がエネルギーとして利用され貯蔵され脂質はあまり使われない。炭水化物の摂取が少ないとその逆。


★ケトン生成
インスリンレベルが高いと脂肪分解が抑制される。
カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)は脂肪分解を促進。グルカゴンや成長ホルモンやコルチゾールも脂肪分解効果があるが効果は小さい。まれなケースではなるが、インスリンレベルが高いと、カテコールアミンレベルが高くても脂肪分解は抑制される。普通は運動といったカテコールアミンの分泌を促す刺激は、同時にインスリンレベルを低下させる。

脂肪細胞のトリグリセリドが分解されると、グリセロールと遊離脂肪酸になる。遊離脂肪酸は血液中を流れていき身体の組織でエネルギーとして利用される。大量の遊離脂肪酸があって、肝臓が準備ができていると、ケトン体に変換され、それが血液に放出される。

ケトンは通常でも微量作られて身体で利用されている。肝グリコーゲンが枯渇すると肝臓はケトジェニックモードになりケトン体をどんどん生成するようになる。この状態では遊離脂肪酸のアベイラビリティがケトン生成レートを決定する。カーボカットしてから12-16時間程度で肝グリコーゲンは枯渇する。カーボカットしてから三日後に肝臓はケトン・フル生産体制になる。


★ケトーシスとケトアシドーシス
ケトーシスとは、グルコースベースの代謝から脂質ベースの代謝に完全移行すること。絶食や高脂質食や運動直後に起きる。タイプⅠ糖尿病やアルコール依存症でのケトアシドーシスは命に関わる。通常のケトーシスとケトアシドーシスの主な違いは血中のケトン濃度。絶食や低炭水化物高脂質食では身体システムにフィードバックループが存在するので危険なレベルまではいかない。
血中のケトン濃度が0.2 mmol/dlを超えるとケトーシス
血中のケトン濃度が7 mmol/dlを超えるとケトアシドーシス
ケトニミア(血中のケトン濃度が高まっていく)
ケトヌリア(尿中のケトン濃度が高まっていく)


★ケトーシスへの適応
ケトーシスは、絶食(飢餓状態)の研究で色々と調べられている。ケトジェニックダイエットは、身体の適応の面では飢餓状態と大まかに同じである。タンパク質と脂質の摂取により、飢餓状態で失われる分のタンパク質と脂質の減少が抑えられる。

飢餓への適応(5段階)
1. 絶食開始後8時間は最後の食事の消化吸収。10時間以内に身体のエネルギー消費の半分が遊離脂肪酸から。
2. 1,2日で遊離脂肪酸と肝グリコーゲンの分解に頼るようになる。12-16時間で肝グリコーゲンは枯渇する。
3. 最初の1週間は、身体はタンパク質や乳酸塩などからのグルコース生成を増やす。脳以外の組織はグルコースの使用量を減らし遊離脂肪酸とケトンの使用を増やす。
4. 3,4日後からケトーシスが始まり、脳はケトンを利用するようになる。
5. 2週目から糖新生が減る。3週間でケトン濃度はプラトーに達する。

絶食後三日目までにエネルギー消費の90%が遊離脂肪酸とケトンで賄われる。3週間後には93%。
3週間後以降は脳以外のほとんどの組織はケトンを使わず遊離脂肪酸をエネルギーとして使うようになる。脳にケトンを回すため。脳は絶食開始直後はケトン利用に適応していないが、じきに適応する。

脳と中枢神経は一日に約100gのグルコースを使うが、飢餓に適応すると、エネルギー消費の75%までをケトンで賄うようになる。残りはグルコースで。

絶食時(炭水化物ゼロ)だと12-16時間で肝グリコーゲンが枯渇。肝臓は糖新生により、グリセロール、乳酸塩、ピルビン酸塩、アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)からグルコースを生成する。絶食が続くと腎臓もグルコースを生成するようになる。グリセロールは脂肪細胞のトリグリセリドを分解して得られる。乳酸塩とピルビン酸塩はグリコーゲンとグルコースを分解して得られる。アミノ酸は筋肉から。アラニンは肝臓で糖新生、グルタミン酸は腎臓で糖新生。


★タンパク質の分解
絶食1週間は尿に一日に12gの窒素、75gのタンパク質が75gのグルコースを作るのに使用されたことを示す。1週間を過ぎるとタンパク質の分解は抑制されてくる。3週間後には3-4gの窒素損失、約20gのタンパク質。

トリグリセリドの質量の約1割がグルコースに(グリセロールを糖新生)。150ポンドの人だと一日におおよそ160-180gの脂肪を分解、そこから16-18gのグルコースを生成。

ケトジェニックに脳が適応するまでは1日100gのグルコースが必要。最初の1週間は、タンパク質由来と脂肪由来で合わせて約100gのグルコースを生成。

3週間で脳がケトン利用に対応し最大75%のエネルギーをケトンで賄う、残りを脂肪由来とタンパク質由来のグルコースで賄う。従ってタンパク質の分解が抑制される。


★ケトーシスとタンパク質消費節約
ケトーシスがタンパク質の消費を抑える4つのメカニズム
- 身体のグルコース必要量を低下させる
- 腎臓での窒素排出を減少させる
- ケトン自体がアンチカタボリックの効果の可能性
- 甲状腺ホルモンT3のレベルが急低下することでタンパク質分解が抑制される。


★甲状腺ホルモンの変化と甲状腺機能について
甲状腺機能に関する以下の2つの症状は区別される必要がある。
・甲状腺機能低下症(hypothyroidism):通常より高いレベルのTSHと、低いレベルのT3、T4。症状は倦怠感と代謝低下。
・甲状腺機能正常性ストレス症候群(euthyroid stress syndrome):T3レベルの低下と、通常レベルのT4、TSH。ケトジェニックダイエットで見られる症状。甲状腺機能低下症で見られる代謝撹乱とは異なる。ここでのT3レベルの低下はケトジェニックダイエットで見られる代謝低下とリンクしていない。他の要因で代謝低下が起きる。(ここでは書かれてないけどレプチンかな)。


★各栄養素のケトジェニックダイエットへの影響
- 炭水化物は100%ケトジェニック阻害効果。1日あたり100g以下の炭水化物だとケトジェニックダイエットになる
- タンパク質は摂取し過ぎるとグルコース転換によりケトジェニックダイエットを阻害。一方でタンパク質はグルカゴンの分泌効果がありケトジェニックダイエットを促進。それと身体のタンパク質分解を防ぐ効果。
- 脂質は利用されたトリグリセリドの10%分がグルコース転換されるので、部分的にケトジェニック阻害効果。


★protein sparing modified fast (PSMF)
除脂肪体重1kgあたり1.5gのタンパク質とビタミンミネラルのみ摂取。かなり過激で身体へのリスクも高いので、病的な肥満の人向け。


★ケトジェニックダイエットと、カーボを取るバランス型ダイエットの体組成変化への影響
- ケトジェニックダイエットは水分が抜けやすい。
- 水分が抜けたあとの体重減少は両方のダイエットで同じ程度だろう
- 体組成(除脂肪体重と体脂肪)の変化への影響についての研究は、結果がまちまち。タンパク質摂取量が不十分だったり、カロリー摂取が低すぎたりで、現実のダイエットでどうなるのかよくわからない。カーボ摂取量が減るにつれて脂肪減・除脂肪体重維持の傾向がでる研究もあるが・・・。個人差もあるしケトジェニックダイエットが有利とははっきりとは言い切れない。研究では運動もしてないし。

ダイエットの種類によって体脂肪の変化や食欲への影響に個人差があるので、自分に向いているのをやればいいだろう。消費カロリー>摂取カロリーにすることが大原則。


★ケトジェニックダイエットの諸々の影響
・幼児のてんかん患者の治療としてのケトジェニックダイエットはよく研究されてる。最大3年間。副作用は、血中脂質の上昇、便秘、水溶性ビタミンの欠乏、腎結石リスクの増加、成長抑制、病気時の酸血症。この本で提案されているケトジェニックダイエットのやり方とは同一ではないので、そのまま当てはめることはできない。ただ、この本で提案されているやり方を長期間続けた場合の影響についてはまったくわかっていないので、ずっと続けることは推奨されない。

・インスリン抵抗性
- ケトジェニックが続いたあとカーボを入れるとインスリン抵抗性が増す傾向。酵素の働きが変化することが要因で、数時間から数日で身体は再びカーボのある状況に適応する。カーボの入れ始めは肝臓が適応しておらず血中にグルコースをリリースし筋グリコーゲンが補充される傾向。

・食欲抑制
- ケトジェニックダイエットは食欲が抑制される傾向。

・コレストロールレベル
- 体重減少だとコレストロールレベルが低下する傾向。体重維持だと上昇する傾向。動脈硬化には長期間のコレストロールレベルの上昇が必要なので、ケトジェニックダイエットで一時的にコレストロールレベルが上昇してもすぐさま動脈硬化になることはないだろうけど、念のためコレストロール測定しておいて、悪い反応が出たら対処する。

・エネルギーレベルの低下
- だるさや立ちくらみが起こる。ナトリウムを十分に摂取(4-5g/day).どうしても合わない場合は少量カーボ摂取か中止

・脳への影響
- てんかん患者の研究では認知能力の低下は見られない。開始数週間は疲労感がある傾向がある。個人差もある。

・尿酸レベル
- ケトンと尿酸は腎臓での処理プロセスが競合。ケトン処理が多いと、血中の尿酸レベルが高まる。ケトジェニックダイエット開始後数週間で元のレベルに戻る。遺伝的に痛風リスクの高い人は、トータルカロリーの5%のカーボ摂取するか、ケトジェニックダイエットは行わないことを推奨。

・腎臓結石と腎臓へのダメージ
- 短期の実験では腎臓への影響なし。てんかん患者で結石リスクがやや高まったのは脱水気味だったのが要因かもしれない。ただ、長期間の影響は不明である。

・肝臓へのダメージ
- 短期での研究では影響なし。長期間は不明。

・便秘
- 食物繊維の摂取量が減るので便秘気味に。カーボの少ない野菜を沢山食べるか繊維サプリを摂取するかしたほうが良い。

・ビタミンミネラル
- カロリー制限するとどうしてもビタミンミネラルの摂取は不足してくる。マルチビタミン剤の摂取を推奨。それと厳しくカーボ制限すると野菜をあまり食べられなくなるので、長期間はやらない方が良いだろう。

・電解質
- ケトジェニックダイエットでは脱水&電解質不足の傾向。食物に含まれる分に加えて、ナトリウム3-5g、カリウム1g、マグネシウム300mgの摂取を推奨。

・カルシウム損失・骨粗しょう症
- カルシウムを十分に摂取すること。特に精製されたプロテインパウダーを飲む場合は。

・リバウンド
- ケトジェニックダイエットの特徴として、水分とグリコーゲンの変化による体重変動が激しいので、炭水化物を再び入れた時の体重増加に落胆しないようにする。体重変動と体組成変動を分けて考えること

・免疫システム
- 維持カロリーでのケトジェニックダイエットだと免疫システムへの影響は見られない。アンダーカロリーかタンパク質不足だと免疫システムに悪影響だろう。

・視神経症
- ビタミンミネラル不足が要因

・抜け毛・爪の変化
- 要因はわからないが・・・タンパク質・ビタミン・ミネラルの不足では。抜け毛((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


★カロリー設定
- 1日の摂取カロリーが1000kcal以下になると代謝が急低下する。
- 推奨は、食事制限・運動により維持カロリーから10-20%のカロリー不足を作り出す。一般的に12-13 calories/lb程度。
- このカロリー設定で週に1-1.5ポンド体脂肪を減らせる。減少が週に1ポンド以下なら摂取カロリーを減らすか運動を増やす。- 週に2ポンド以上減ると筋肉減少リスクが高まるので摂取カロリーを増やすか運動を減らす。
- 代謝低下をあまり起こさずに体脂肪減できるカロリー不足量は1日1000kcal。体重が軽い人はそれ以内。
- 増量は維持カロリー+20%が目安


★The Standard Ketogenic Diet(skd)
炭水化物カットをずっと続けるスタンダードなケトジェニックダイエット。

炭水化物は食べない・タンパク質と脂質は好きなだけ食べて良いというダイエットををすると、多くの人は自動的に摂取カロリーを減らし、結果として減量できるケースが多い。もちろんカロリーオーバーすれば太る。

炭水化物一日100g以下でケトジェニックになるはずだけど、実際は一日30g以下にしないと目立ってケトーシス状態にならない。タンパク質摂取量や運動量によって個人差があるが。

最初の数週間は炭水化物30g以下で、身体が適応したらある程度は炭水化物摂取量を増やせる。

インスリンリリースをなるべく抑えてケトーシスを続けるために、炭水化物はGI値の低い食べ物から摂取、つまり野菜。デンプンはだめ。

・タンパク質摂取量
ケトーシスに適応するまでの最初の3週間は、0.8g/lb か 150g の多い方。体重が軽いと150gになる。これは運動しない場合。運動する場合は0.9g/lb
どれくらい多くのタンパク質摂取でケトーシスが止まるかは個人差がある。筋グリコーゲンのレベルによるのかもしれない。筋グリコーゲンが枯渇してると、入ってきたグルコースは筋グリコーゲンとして補充される。
タンパク質は動物性のものが基本。

脂質はケトーシスにニュートラル。摂取カロリーが低すぎると代謝低下や除脂肪体重の減少が起きやすくなるので、脂質の摂取量でカロリー調整を行う。
普段低脂質の食事をしている人は、急に脂質の多いケトジェニックダイエットを始めると胃に違和感が出たり吐き気がしたりすることがあるので、徐々に脂質の摂取量を増やしていく移行期をもうける。繊維質を多く摂取するのも良い。
必須脂肪酸は摂取すること。必須脂肪酸の多く含まれるオイルの摂取が体脂肪減につながりやすいという報告例も。


★他の飲食物のケトーシスへの影響
水: 健康のため十分に飲むこと。理屈の上では血中のケトン濃度が高くなるすぎるのを防ぐことで脂肪分解を妨げない効果が考えられるがエビデンスは無い。

アルコール: ケトーシス状態になった後はアルコールはケトーシスを深める傾向があるが、アルコール自体のカロリーがあるので、アルコールを飲むとその分の脂肪分解が減る。アルコールもケトンに転換される。

カフェイン: アドレナリンとノルアドレナリンと遊離脂肪酸の血中レベルを上げる。アドレナリンとノルアドレナリンのレベルが上昇することで肝グリコーゲンの分解を促し血中のグルコース濃度を上げてインスリンレベルが上がる。ケトーシス確立後は肝グリコーゲン空っぽなのでインスリンレベルは上がらない。

アスパルテーム クエン酸: クエン酸はケトーシスを阻害する可能性

繊維質: 炭水化物に分類されるけど消化できないのでケトーシスに影響なし。摂取してOK。炭水化物の摂取量にはカウントしない。


★炭水化物とケトジェニックダイエット
ウェイトトレーニングを行わなずにダイエットをすると、体脂肪だけじゃなく除脂肪体重もかなり減るので、除脂肪体重を維持したい場合はウェイトトレーニングが必須。

強度の高いウェイトトレーニングをするには炭水化物を摂取する必要がある。

ある程度筋グリコーゲンレベルが下がると脂肪燃焼しやすい。各ダイエットでのグリコーゲンレベルは図参照(p121)

運動後に炭水化物を摂取しないと筋グリコーゲンはわずかしか回復しない(乳酸塩由来のグルコースでわずかに回復する)
運動前に炭水化物を摂取しておくと、運動後に筋グリコーゲンはかなり回復する。


★The Targeted Ketogenic Diet (TKD)
トレーニングに合わせて炭水化物を摂取する。

TKDは、SKDとCKDの間の妥協策。CKDは強度とボリュームが高くて上級者向け。

トレーニング前のカーボ摂取。なぜトレーニング前の摂取がパフォーマンスを上げるのかよくわかっていない(グリコーゲン充填には時間がかかるし)。血糖値の上昇が筋繊維の動員率を上げるのかも。持久運動にもトレーニング前中のカーボ摂取は有効。

トレーニング30分前に25-50gのカーボ摂取。カーボの種類は問わない。自分に合うのを試そう。
トレーニングボリュームが多くて50g以上摂取する場合は、30分前と直前に分割摂取。

トレーニング後のカーボ摂取はケトーシスを長い時間中断させやすいので、25-50g必要があれば摂取する。その場合はフルクトースが入ってるのは避ける。肝グリコーゲンが補充されやすくケトーシス中断が長引くので。

トレーニング後のプロテイン摂取推奨

トレーニング後の脂質の摂取は推奨されない。タンパク質・炭水化物の消化吸収を遅らせるのと、インスリンレベルが高い時に脂質摂取すると脂肪貯蔵されやすいので(アンダーカロリーなら長期的にはネットで脂肪減になると思うけど・・・まあ頑固な脂肪は分解がボトルネックになるが)


★The Cyclical Ketogenic Diet (CKD)
(後に The Ultimate Diet 2.0 としてブラッシュアップされてるので、やり方についてはあまり詳しくメモしていないです)

CKDは1-2日の高炭水化物摂取フェーズを取り入れる。いったんグリコーゲンを枯渇させるので、高ボリュームのトレーニングが出来ない人には無理。上級者向け。ケトジェニックフェーズはSKDと同じやり方。

週の前半はそこそこグリコーゲン減らして週の後半に枯渇させてからカーボいれてグリコーゲン超回復してウェイトトレーニング。

筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード開始24時間以内に通常レベルまで筋グリコーゲンは回復。36時間で超回復。運動後6時間がグリコーゲン合成速度が高い。

24時間で2時間おきに50gのカーボでグリコーゲン合成最大化、体重70kgの人の場合。24時間で8-10g/除脂肪体重kg。睡眠などで食事間隔が空く場合はまとめて摂取でもOK。その後の24時間はグリコーゲン合成速度は低下し、多くの人にとって体脂肪増加のリスクに見合わない。

カーボの種類はグルコースベースかスクロースを推奨。フルクトースは筋グリコーゲンの回復が鈍い。最初の24時間はGI高めの方が良い傾向、その後の24時間は低GIの方が良い。

トレーニング直後にカーボとプロテイン摂取。トレーニング前中から摂取しても良い。

摂取カロリーはケトジェニックフェーズでの摂取カロリーの2倍。カロリーの70%が炭水化物、タンパク質と脂質が15%ずつ。タンパク質は1g/lbで十分

筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード局面24時間は、炭水化物をたくさんとってもそれはグリコーゲン補充とエネルギー消費に使われ、また体脂肪の燃焼も続き脂質が蓄積されにくい。その後の24時間は脂質が体脂肪として蓄積されやすい。


★カーボロードとケトーシスへの適応
CKDでリフィード局面を入れると、ケトーシスへの適応がやや遅れるようだ(エビデンスなし、経験ベース)。


★カーボロードとアナボリック
生物学的な意味においては、アナボリックとは小さな物質から大きな物質を構築することである。

全身のアナボリック/カタボリックを司るのは肝臓。肝臓のグルコース代謝の酵素レベルが通常に戻るまで5時間かかる。なのでカーボロード前の最後のワークアウトの5時間前に25-50gのカーボ摂取。

肝グリコーゲンのレベルも重要。マウス実験だと肝グリコーゲンの補充にはグルコースとフルクトース合わせたのが有効だった。最後のワークアウト2時間前に摂取。

ここで示されているのはあくまでガイドライン。色々と試して自分の身体で良い結果が出るパターンを探す。


★ケトジェニックダイエットでの停滞期の越え方
- 飽和脂肪酸ではなくて不飽和脂肪酸を多く摂取する。熱としてカロリーが消費されやすくなる。
- 一日のトータルカロリーは同じで、食事回数を減らす。食事と食事の間に体脂肪が燃焼されやすくなるかも。
- 一週間維持カロリーに戻す。ケトジェニックのままでもカーボ入れてもOK。4-6週間ごとに1-2週間のブレークが多くの人にワークするようだ。
- 低カロリーと高カロリーの日を作る。平均して設定した摂取カロリーになるようにする。

CKDの場合
- リフィードの時間を24時間に減らす
- リフィードで食べる食事の質を良くする。ジャンクフードや甘いものを減らす。
- リフィード日の翌朝に有酸素運動してケトーシス開始を早める。
- 10日サイクル(うち1日リフィード)にしてケトーシス期間を長くする。

できれば一度に一つだけの戦略を使って、効くか効かないか判断する。


★ケトジェニックダイエットの終わらせ方
減量を終えて体重維持を続ける際は、運動を習慣にすると体重維持しやすい。

長期でのケトジェニックの影響はわかっていないので、この本ではケトジェニックの食生活を永続することを推奨しない。

炭水化物を再び摂取する際の注意点
- グリコーゲンと水による体重増加を体脂肪増加と混同しない。
- インスリン抵抗性による血糖値の乱高下と高インスリン血症。長期間炭水化物の摂取を制限すると、グルコース燃焼に関係する酵素の働きが低下。また血中の遊離脂肪酸濃度が高いとグルコース運搬を阻害。リフィード開始後、肝臓では5時間、筋肉では24-48時間でグルコース処理の働きが回復する。

・SKD/TKDの終わらせ方の推奨方法
炭水化物を再び摂取するようにする場合は、徐々に量を増やしていく、野菜も同時に摂取する(消化吸収を遅らせるため)、といった方法をとると移行がスムーズ。

・CKDの終わらせ方の推奨方法
- 炭水化物多めのバランス型食事に移行する。これがお薦め。
- CKDのサイクルを続けつつ、摂取カロリー増やす、カーボロードの時間を伸ばすといったやり方で、体重維持・増量フェーズにすることもできるが、長期でのCKDの健康への影響はわからないので、CKDをずっと続けることはこの本では推奨されない。


★検討と選択
ダイエットが有効であるためには、身体面だけではなく精神面でもその人に合ったものでないといけない。ダイエットを続けられないと、どんなダイエット方法も有効にはならない。

・ケトジェニックダイエットをバランス型ダイエットと比較
- 食材の制限: 食事の楽しみといったメンタル面に影響。個人差があって、食事の選択が楽になるという人もいる。あと野菜や果物が制限されるので、それらにのみ含まれる微量栄養素が不足する。CKDなら問題をだいぶ回避できるが、リフィード期間に抑制無く食べまくるタイプの人は食習慣にも健康にも良く無いだろう。
- 体組成変化: 体脂肪を多く減らし、筋肉の減少を抑えるというケトジェニックダイエットのセールスポイントは、強固なエビデンスがあるわけではない。経験ベースは、バランスダイエットに比べて体脂肪が減りやすく筋肉が残りやすいという多くの報告があり、とりわけボディビルダーにそういうケースが多いようだ。

・どのタイプのケトジェニックダイエットを選ぶか
- standard ketogenic diet (SKD): 運動をしない、もしくは低中強度の有酸素運動のみする人向け。
- cyclical ketogenic diet (CKD): 高い強度とボリュームのトレーニングをこなせる上級者向け。健康上の理由(高インスリン血症や高血圧)でケトジェニックダイエットをしている人はリフィード期間の高炭水化物摂取が健康上の問題を引き起こる恐れがあるので向いていない。
- targeted ketogenic diet (TKD): ほとんどの人に有効

・ケトジェニックダイエットを避けた方が良いケース
- 腎結石が出来易い人
- タイプ1糖尿病の人はインスリン必要量が変わるので医師と相談。タイプ2糖尿病で高インスリン血症・低血糖の人は血糖値が下がり過ぎるのに注意。それとタイプ2糖尿病や肥満の人はケトーシス状態を確立しにくい傾向がある。
- 冠状動脈の疾病・高コレステロールの人は血中脂質レベルの推移をチェックして、ケトジェニックダイエットがネガティブな影響を及ぼすようであれば中止する。
- 痛風の人。
- 妊娠中の人。
- てんかん患者。子供のてんかん患者治療に用いられるケトジェニックダイエットはここでのやり方とは異なるし、医師の監督の下に行われないといけない。
- 青年期の人。

2/20/2014

糖質制限ダイエットについて

★糖質制限ダイエットのメリット
カロリー不足の状態ではタンパク質の必要摂取量が増加する。高タンパク高脂質の食品は多いけど、高タンパク高炭水化物の食品はほぼ無いため、糖質制限ダイエットは結果としてタンパク質の摂取量が確保しやすい。それと単品を抜けばいいので、栄養についての知識が無い人でも頭を使わず実行できる。

一食分のご飯(米)を抜くといったレベルでこのダイエットを行うなら、タンパク質の摂取量を確保し、カロリー収支をマイナスにするための手軽な手段としてお薦め出来る。

次に、厳しく糖質を制限したダイエットについて。炭水化物依存症みたいになっていて、少し炭水化物を摂取すると、食欲に歯止めが効かなくなる体質の人にも向いている。それと、体脂肪率一桁でさらに体脂肪を減らしたい人も、極度に低い体脂肪率だと体脂肪の分解がボトルネックになるので、体脂肪分解を促進するテクニックとして有効。

通常からぽっちゃり程度の体脂肪率の人で、炭水化物摂取に対して悪い反応が起きない人は、過度に炭水化物を制限せずそれなりに炭水化物を摂るダイエットにした方が良い。レプチンレベルの低下をなるべく抑えるのにも炭水化物を摂取したほうが良い


★糖質制限ダイエットに関する誤った認識
糖質は中性脂肪に合成されやすいというのは間違いで、人間においては、糖質から脂質への変換(DNL)は、糖質を過剰摂取してオーバーカロリーにしグリコーゲン貯蔵がだいぶ満たされてから、ようやく活発になる。通常は糖質は脂質よりも優先的に活動エネルギーとして使用され、あまった脂質が体脂肪として蓄えられる。(余剰エネルギーはグリコーゲンか体脂肪の形で蓄えられ、適宜取り出されてエネルギーになるので、普通は脂肪合成がどうとか気にする必要はない)

また、糖質を摂らなければ血糖値が上がらずインスリン分泌による体脂肪合成が起こらないというのも間違い。タンパク質摂取でもインスリンは分泌されるし、そもそも遊離脂肪酸とグリセロールから体脂肪合成を行うのはASPで、インスリンはLPLを活性化し、LPLが血中の脂質から遊離脂肪酸を取り出す役割を果たす。ちなみに脂質だけ摂取しても体脂肪は合成される。


★糖質制限ダイエットを始めるとすぐに体重が減る理由
グリコーゲンとそれに付随する水分が抜ける。それと腎臓の水分吸収に影響するインスリンのレベルの低下と、ケトン体の脱水効果によっても水分が抜ける。体重減少イコール体脂肪減少ではない。


★結局はカロリー収支の問題
減量の基本は、カロリー不足の状態を作り出すこと。糖質制限だろうが何だろうが、カロリー不足分のエネルギーが、体脂肪か除脂肪部分(主に筋肉)の分解燃焼により賄われ、(水分変動を除いての)体重が減っていく。なるべく筋肉を残したかったら、高タンパク質の食事とウェイトトレーニングを行う。ある程度の炭水化物を摂取して筋グリコーゲン補充した方が高負荷のウェイトトレーニングをやりやすい。


★補足
高炭水化物ダイエットに比べて糖質制限ダイエットの方が有利という研究があるかもしれないけど、そういうのを見かけたら、カロリー摂取量とタンパク質摂取量が同じ条件になっているか、食事内容が自己申告制ではなくコントロールされたものか、水分変動のことを考えているか、といった点をチェックしよう。


※ 文章中の糖質と炭水化物の使い分けに特に意味は無いです。世間では「糖質制限」という呼称が一般的なので、糖質制限ダイエットについて言及するときは糖質という表現を使いましたが、糖質と糖分を混同する人がいそうなのと、carbohydrateは炭水化物と訳すのが自然と思うので、なるべく炭水化物という表現を使おうとしたら、中途半端に混じった文章になりました。