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10/24/2014

タンパク質の摂取タイミングの効果についてのメタ解析研究

The effect of protein timing on muscle strength and hypertrophy: a meta-analysis
http://www.jissn.com/content/10/1/53

タンパク質の摂取タイミングが筋力向上と筋肥大にどのような影響を与えるのか、既存の複数の研究結果をメタ解析した論文。私は統計学について無知なためここで用いられている手法を理解できているわけではないが、Alan Albert Aragon も Brad Jon Schoenfeld も現場知識があって誠実に科学研究を行う信頼できる研究者だと思うので、以下抄訳してみる。


★今回の論文で解析対象とした研究
- 実験群はレジスタンストレーニング実施の前後1時間以内に6g以上の必須アミノ酸(or相当のタンパク質)を摂取し、対照群は前後2時間以内にタンパク質を摂取しなかった研究。
- レジスタンストレーニングプロトコルを少なくとも6週間継続した研究。


★結果
共変量をコントロールしなかった単純な解析では、タンパク質摂取タイミングは筋肥大に有意差ありで、筋力に有意差無しという結果になった。筋肥大への影響量は、小さい~中程度といったレベル。しかし、共変量をコントロールした解析ではタンパク質摂取タイミングは筋肥大に影響なしという結果になり、サブ解析ではトータルのタンパク質摂取量が、摂取タイミング研究で示された筋肥大の差の大部分を説明するという結果が出た。これらの結果は、トレーニングの直前・直後にタンパク質を摂取することが筋トレ効果を高めるのに非常に重要であるという一般的な考えを否定するように見える。

タンパク質のトータルの摂取量を揃えていない摂取タイミング研究での平均のタンパク質摂取量は、対照群が1.33 g/kg/dayで、実験群が1.66 g/kg/dayだった。レジスタンストレーニングの効果を最大に得るためには初心者は少なくとも1.6 g/kg/dayのタンパク質摂取が推奨されていることを考慮すると、これらの研究での筋肥大の差はタンパク質摂取量の違いによるものである可能性が高い。

タンパク質のトータルの摂取量を揃えた摂取タイミング研究では、対照群が1.81 g/kg/dayで、実験群が1.91 g/kg/dayだった。トータルの摂取量を揃えた研究はわずかに3つあり、2つは結果に差が無し。残り一つは摂取タイミングが筋力と除脂肪体重の増加に有意差をもたらしたという結果なのだが、データ不足により今回の解析対象の基準を満たせず除外された。

このメタ解析研究の強みは、
- 解析対象に含める研究の基準を高く設定し、質の高い研究を集め、バイアスが入る可能性を減らしたこと。
- それなりのサンプル数を確保できたこと。実験数23で、筋力については被験者数478名、筋肥大については被験者数525名。
- 良い解析手法。

このメタ解析研究の限界は、
- 対照群の食事タイミングが研究によってバラバラ。ある研究では運動後2時間でタンパク質摂取で、他の研究では何時間もタンパク質摂取を遅らせた。
- 大半の研究がレジスタンストレーニング初心者を被験者としている。トレーニング歴のある人と初心者とでは反応が異なるのは良く知られている。今回の研究でのサブ解析では、筋力についても筋肥大についても、トレーニング歴とタンパク質摂取タイミングの間に交互作用効果は示されなかったが、トレーニング歴のある被験者数を対象とした研究が4つだけなので、この解析結果は強くはない。
- サンプル数を大きくするため、筋断面積と除脂肪体重のデータを筋肥大のデータとして扱った。除脂肪体重の増加は大部分が筋繊維の肥大によるものであるが、レジスタンストレーニングでは骨や結合組織も増加することが知られている。筋断面積と除脂肪体重のデータを分けて解析もしてみたが、結果はほぼ同じだった。
- トータルのタンパク質摂取量を揃えた研究がわずかしかない。


★結論
既存のエビデンスは、ワークアウト前後1時間以内のタンパク質摂取が、レジスタンストレーニングの効果(筋力と筋肥大)を大きく高めるという主張をサポートしないようだ。もしワークアウト前後にアナボリックウィンドウが存在するのなら、それは前後1時間よりも長いものだろう。

ただ、今回の解析からは因果関係は直接には導けないため、タンパク質摂取タイミングが実際にはトレーニング効果の違いをもたらし、タンパク質摂取量の増加はそれに偶然に一致した可能性を排除できない。今後、タンパク質摂取量を揃えて摂取タイミングの影響を調べる研究、またトレーニング歴のある人を対象にした研究が多く行われることが期待される。



関連記事:
ゴールデンタイムはあるのか?

9/24/2014

ゴールデンタイムはあるのか?

Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window?
http://www.jissn.com/content/10/1/5

Alan Albert Aragonの関わった論文。2013年のもの。栄養摂取に関するこれまでの研究のレビュー論文。

巷間では、ワークアウト直後の短い時間に栄養摂取をしないとウェイトトレーニングの効果が低くなると言われている。いわゆるゴールデンタイム。英語だと anabolic window と言われる。そんなに摂取タイミングにシビアになる必要があるのか?という論文内容になっています。以下、抄訳。

★グリコーゲン回復
- 筋グリコーゲンレベルが高いとアナボリックになりやすく、筋グリコーゲンレベルが低いとカタボリックになりやすい(AMPKなどが関係する)。
- 筋グリコーゲンは運動直後の炭水化物摂取で回復が速い。炭水化物摂取が遅れるとその後の数時間は筋グリコーゲン回復速度が遅くなる。
- だが一日に複数回の激しい運動をするのでない限り、次のワークアウトまでにはグリコーゲン回復時間が十分になるので、神経質にならなくても良い。

★筋分解
- 運動後の栄養摂取は、運動後のカタボリックを防ぐ効果。インスリンレベルの上昇によってカタボリックが防がれる。運動後に絶食が続くとカタボリックが優勢になり、筋肉のタンパク質のネットバランスがマイナスになる。
- インスリンの抗カタボリック効果は空腹時の3-4倍程度のインスリンレベルでプラトーに達する。実験によると、このインスリンレベルは通常の固形物の食事やホエイプロテインパウダー(45g)のみで十分に達成可能。
- そもそも通常の食事の消化吸収には時間がかかるので、運動前に十分に栄養摂取してない場合にのみ、運動直後に速やかにインスリンレベルを上げたほうがよいということになる。
- また運動後の筋合成/筋分解でネットバランスに寄与するのは筋合成の方が大きく、筋分解抑制による寄与は小さい。従って、カタボリックを防ぐために運動後に慌ててインスリンレベルをスパイクさせることにどれだけ効果があるかは疑問。

★筋合成
- 運動と血中アミノ酸濃度の上昇を組み合わせることで筋合成が大きく上昇する。炭水化物の摂取が筋合成を上昇させるかについては、効果ありという研究と無しという研究とがある。
- 摂取タイミングを数時間遅らせたケースに対しての、運動直後のアミノ酸(タンパク質)摂取の優位性は一貫して示されてはいない。ありなし両方の研究がある。ありの方も、持久運動だったり実験デザインに欠陥があったりで強固なエビデンスとは言いがたい。
- また被験者がトレーニング歴があるか初心者かによる違いもある。
- そもそもこれらのacute研究で調べられている運動後数時間の筋合成/筋分解によるネットバランス変化が、長期の筋肥大にそのままつながるかは不明である。

★長期での筋肥大
- 研究の数が少ないし、実験結果がまちまち。運動前後の栄養摂取が効果ありという研究もあれば無しという研究もある。それに加えて実験デザインにより解釈に注意が必要。
- タンパク質vsプラシーボの場合、一日トータルのタンパク質摂取量に違いがでるので、筋肥大の結果の違いが摂取タイミングによるものかトータルのタンパク質摂取量によるものかわからない。
- 運動前と運動後の両方にタンパク質摂取している研究が多く、運動後摂取による効果の切り分けができない。
- 期間が短いと測定方法の性能限界により、筋肥大に差が出ているかわからない。

★ディスカッション
- 運動直後にすぐに栄養摂取することは、長期の筋肥大を最大化するのに非常に重要であるという主張を裏付ける決定的なエビデンスは今のところ無い。
- 空腹状態で運動をした場合は、その直後に栄養摂取をすることは効果的であろう。例えば、朝起きて何も食べずにワークアウトを行った場合は、直後の栄養摂取が推奨される。
- 実際に多くの人が行うトレーニング/栄養摂取プログラムを考えると、運動の1-2時間前にしっかりした食事を摂取すれば、運動後まで消化吸収は続いているので、運動前中後に渡って身体には栄養供給が行われていることになる。また運動直前の20gのホエイプロテイン摂取でも運動後3時間まで筋合成レベルが上昇していたという研究もある。このように運動前に栄養摂取を行った場合は、運動直後に再び栄養摂取を行うのはリダンダントであろう。通常の食事間隔で次の食事を摂れば、栄養摂取は十分だろう。
- 前の食事から運動まで3-4時間以上空く場合は、運動直前か運動直後の栄養摂取が推奨されるだろう。
- これまでの研究結果からは運動直後の栄養摂取の効果については曖昧な答えしか出ないが、シビアな結果を求めるアスリートは、あるかもしれない効果に賭けて運動直後に栄養摂取するのも良いだろう。効果がなかった場合でもコストは低い。

★実践
- タイミングは運動直前直後に拘らず、運動前と後の両方に0.4-0.5g/除脂肪体重kgのタンパク質を含む食事の摂取が、シンプルでフェールセーフなガイドラインだろう。この運動前と運動後の食事の間隔は3-4時間以上空けない方がよいだろう。ただ、食事の量が多い場合は5-6時間空けるのも良い。
- 例えば、運動前食事→90分休み→運動を60分間→90分休み→運動後食事だと、食事の間隔は4時間となりガイドラインに沿ったものになる。個人の好みやライフスタイルによって食事と運動の間隔はフレキシブルに調整可能である(図1参照)。もちろん一日のトータルのタンパク質摂取量は重要である(※)。
- 炭水化物の摂取タイミングについては、はっきりとした推奨方法を示すには一貫したデータを欠いている。一日のトータルの摂取量を決めて、それを守れば、タイミングはあまり気にしなくて良いのではないだろうか。





※筋肥大を目指してウェイトトレーニングを行う人の一日のトータルのタンパク質摂取量についての私の追記コメント。専門家によって推奨している数字が違うんだけど、維持カロリー以上摂取しているなら1日トータルで2g/体重kgの摂取で十分だと思われる。これでも一般的な推奨値よりも多め。多めでも食費がかかる以外には特にデメリット無いし。基本的には、カロリー不足、運動強度が高い、初心者、といった要因があると必要なタンパク質摂取量は増える。


関連記事:
タンパク質の摂取タイミングの効果についてのメタ解析研究

5/15/2014

タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響




タンパク質(プロテイン)の種類によって消化吸収の速度に差が出るというのは広く知られるようになってきていて、サプリメントメーカーもホエイとカゼインを混ぜたファストとスローの両面アプローチを謳う製品を出したりしている。(余談だけど、日本のメーカーのカゼインプロテインパウダーは多くがカゼイネートを使っている。カゼインプロテインの消化吸収の遅さを示す研究で使われるのはミセラーカゼイン。カゼイネートの消化吸収速度はどのくらいだろう? あとで調べた→カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度

この研究は、タンパク質の消化吸収速度の違いによって、体内でのタンパク質の利用のされかたがどう変わってくるかを調べている。

Hydrolyzed dietary casein as compared with the intact protein reduces postprandial peripheral, but not whole-body, uptake of nitrogen in humans
http://ajcn.nutrition.org/content/90/4/1011.full

比較したタンパク質は以下の2種類。

・IC(intact casein): 未加工カゼインプロテイン(ミセラーカゼイン)
・HC(hydrolyzed casein): 加水分解されたカゼインプロテイン。消化吸収が速い。

摂取の仕方は、カゼインプロテイン(IC/HC)+カーボ(マルトデキストリンとスクロース)+大豆油

上の一つ目の画像は摂取後の血清アミノ酸濃度の変化。加水分解されたカゼインプロテインは消化吸収が速いのでアミノ酸濃度がすぐ上がってすぐ下がる。

それで、今回の目玉が2つめの画像のデータ(TABLE 3)。

- Splanchnic retention : 内臓部分に回されるタンパク質量。
- Peripheral uptake : 周縁部分・・・つまり主に骨格筋に摂取されるタンパク質量。

未加工カゼインプロテインのほうが Peripheral uptake が多い。従って、骨格筋にタンパク質を送り込みたいなら、消化吸収が遅いタンパク質を摂取した方が有利。

この研究は食事直後の身体変化を調べたもの。それではレジスタンストレーニングをしながら長期間に渡って違う種類のタンパク質を摂取した場合は筋肥大に差が出るのだろうか。

これについては、ミルク(ホエイ2割+カゼイン8割)とソイプロテイン(消化吸収が速い)の摂取を比較した研究があって、ミルクの方がより筋肥大したという結果になっている。

Consumption of fat-free fluid milk after resistance exercise promotes greater lean mass accretion than does consumption of soy or carbohydrate in young, novice, male weightlifters1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/86/2/373.long


細かいことを言うと、ミルクとソイプロテインではミルクの方がアミノ酸組成が骨格筋の合成に有利な気がするので、吸収速度のみがファクターになっていないと思うけど、タンパク質摂取量とカロリーは等しくしてあるし、筋肥大に結構差が出てるから吸収速度の影響が大きいのだろう。

レジスタンストレーニング後のミルクとソイの摂取による筋合成反応の違いの研究(acute研究)もあって、アミノ酸供給が続いていた方が筋合成に有利だという結果になっている。

Consumption of fluid skim milk promotes greater muscle protein accretion after resistance exercise than does consumption of an isonitrogenous and isoenergetic soy-protein beverage1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/85/4/1031.full


以上よりタンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響をまとめると、

・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方が骨格筋により多くのアミノ酸を届けられる。
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方がより長い時間アミノ酸を身体に供給でき、筋合成を長く続けることができる。


消化吸収が速いタンパク質(ホエイやソイプロテインパウダー)のみを摂取する場合は、3時間おきくらいに多めに摂取するといった方法にすれば、レジスタンストレーニングによる筋肥大効果を十分に享受することが出来るだろう。食事回数を増やしたくない人は、固形物の食事かカゼインプロテインパウダーを摂取すると良い。

あと、骨格筋へのデリバリー効率を考えると、タンパク質単価(g/円)だけでは高たんぱく質食品やプロテインパウダーのコスパは決まらないなあと思った。


関連記事: タンパク質について

2/08/2014

筋肉についてのこれまでの研究を総括した論文

レファレンス集としても便利

Exercise training and protein metabolism: influences of contraction, protein intake, and sex-based differences
http://jap.physiology.org/content/106/5/1692.long

トレーニング後に筋合成・分解の続く時間



一つめのグラフは、トレーニング未経験者対象でデータは空腹時に測定。レジスタンストレーニング後の筋合成・筋分解の速度の推移。上が筋合成、下が筋分解。筋分解の方が通常レベルに戻るのが早い。(空腹時なのでネットではマイナスになる。食事すれば筋合成が上回る)


二つめのグラフは、コンスタントに栄養注入した状態で測定(30分毎にMRP摂取) 。トレーニング経験前、経験後の筋肉における筋合成の推移を調べている。トレーニングを経た筋肉は、筋合成のピークが早まる。


なるべく体脂肪を増やさず筋肥大させたい場合・・・
カロリー摂取の配分は、トレーニング前に筋グリコーゲンレベルを高めておいて、トレーニング後はあまり時間が経っていないうちに多めに配分して筋合成にエネルギーを使えるようにした方が良さそう。タンパク質はトレーニング後やや多めくらいにして(筋合成速度には上限があるから必要以上に摂取しても筋合成に使われない)、半日~一日経ったらカロリーは抑えつつアミノ酸供給が途切れないように消化の遅いタンパク質を摂取していく。体脂肪の増加を厭わず最速で筋肥大させたい場合は、常にオーバーカロリーを心がける。トレーニング初心者で体脂肪率が低い場合も、常にオーバーカロリーさせた方が良いかも。

ちなみに、トレーニング経験前と経験後では、筋原線維以外の筋肉合成に差が出るという結果。トレーニング経験前(つまり初心者)は筋原線維以外の合成が盛んになっている。筋肥大に主にかかわるのは筋原線維。

Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans
http://ajpendo.physiology.org/content/273/1/E99

Resistance training alters the response of fed state mixed muscle protein synthesis in young men
http://ajpregu.physiology.org/content/294/1/R172

1/31/2014

トレーニング前の栄養摂取


Fasted Training Boosts Muscle Growth?
http://www.leangains.com/2009/12/fasted-training-boosts-muscle-growth.html
炭水化物メインの食事を摂った場合と、絶食状態の場合で、レジスタンストレーニングをして、その後のタンパク質・炭水化物補給時における筋合成の度合いを比較した研究。 絶食時の方がアナボリックが高まった。絶食時の方がトレーニング中のカタボリックも盛んだろうから、長期的に見て筋肉が増えるのかは不明。

Pre-Workout Protein Boosts Metabolism
http://www.leangains.com/2009/12/pre-workout-protein-boosts-metabolism.html
トレーニング前のタンパク質(ホエイ)摂取と、炭水化物摂取を比較した研究。 タンパク質摂取したグループの方がEPOCが大きい。おそらく筋合成の差。

このブログの筆者(リーンゲインズの主唱者)は、「絶食+トレーニング前のアミノ酸もしくはタンパク質摂取+トレーニング後にメインの食事」でアナボリック効果を大きく出来るのではと言っている。絶食といっても、リーンゲインズでは2時間くらいまえに軽い食事を摂るプログラムもOKと言っているので、トレーニング時にインスリンの影響を排除できれば良いと考えている模様。