5/24/2025
カフェインガムのスクワット・ベンチプレス1RM向上効果
チューイングガムの形態でカフェインを摂取すると、吸収経路が錠剤とは異なることから、カフェインの副作用を抑えられます。また、運動のタイミングに血中カフェイン濃度のピークを合わせやすいため、パワー・ストレングス系競技でパフォーマンスを上げやすくなる可能性があります。
9/22/2022
電子書籍「BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方」リリース!
スクワット、ベンチプレス、デッドリフトを中心としたトレーニングプログラムの組み方について書きました。BIG3のプログラムを説明したものだと、世界最高の出来栄えと言って良いでしょう(自画自賛)。
BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BG1VQ2SF
トレーニングプログラム関連の解説だと、推しの自作プログラムや販売プログラムを持つ人が書いていることが多いので、そのプログラム中心の考えになりがちなのですが、私は特に推しプログラムはないので、フラットな視点で書いています。
本書ではプログラムの考え方を中心に書いているのですが、中級者向けのオーソドックスな4種類のプログラム
・ブロック・ピリオダイゼーション
・リニア・ピリオダイゼーション
・レイヤー型プログラム
・DUP型プログラム
については、具体的なメニュー構成と変数設定を含んだサンプルプログラムを載せているので、そのまま使うことも出来ます。
元のブログ記事の時点でかなり練って書いたので、わりとそのまま使っているところも多いです。内容を修正したところもあります。全体のうち、8割がブログ記事がベースで、2割が加筆といった感じです。なのでまあ、ブログ記事を読めばある程度は事足ります・・・。
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方1回目:3つのモデル
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方2回目:実際のトレーニングプログラム
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方3回目:トレーニング変数の調整
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方4回目:PDCA
想定ターゲットは、初心者~中級者くらいの人で、BIG3を中心にトレーニングをしている人です。
スマホのKindleアプリで読みやすいように調整しているので、パソコンやタブレットで読むと図表がやや大きいかもしれません。
なにか質問があればコメント欄にお願いします!
参考までに目次を。
4/14/2022
BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方4回目:PDCA
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方1回目:3つのモデル
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方2回目:実際のトレーニングプログラム
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方3回目:トレーニング変数の調整初心者のプログラムは、1回目の記事に書いたように、リニアプログレッション(緩やかなリニアプログレッション含む)でシンプルにやっていくのが良いと思います。
ここでは中級者向けのプログラムをどう作り、実行していくかを書いていきます。
望ましいトレーニングプログラム
望ましいトレーニングプログラムがどのような要素を含むか。
・重量とボリュームの漸進的過負荷筋肥大と筋力アップを続けようとするなら、長期的(数ヶ月~数年単位)に見て重量とボリュームを少しずつ増やしていくのが必須になります。
既存のプログラムは3,4週間といった短期でも、リニア型やウェーブ型で重量やボリュームをアップさせていくものが多いです。短期で重量やボリュームを増やしていくことが、筋肥大と筋力アップにどこまで効果があるのかわからないですが、実際にプログラムを実施することを考えると、単純に右肩上がりで強弱をつけるとプログラムがシンプルになりますし、疲労管理もやりやすくなります。
・回復
回復を入れないと適応が起こらないので、プログラムに回復を組み込むのは必須です。
・目的とする適応の種類の明確化
漫然とトレーニングを行うのではなく、どの適応(筋力、筋肥大、ワークキャパシティ)を目的としてトレーニングを行うのか明確にしたほうが効果が出やすくなります。
・新たな刺激を与え続ける
重量、ボリューム、レップレンジ、種目のバリエーションなど、同じトレーニングを続けていると同じところに留まり続けます。
・高強度×高ボリュームはNG
85%1RM以上といった高強度の重量で、高ボリュームのトレーニングを行うと、多くの人は回復が追いつかなくなります。また関節への負担も大きく、怪我をしやすいです。高強度なら低ボリュームにしたほうが良いですし、高ボリュームなら低強度にしたほうが良いです。
・キツイ週をずっと続けない
高強度の週をずっと続けない、高ボリュームの週をずっと続けない。回復のキャパシティを超えやすくなったり、同じことを続けることで停滞しやすくなります。
3/04/2022
BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方3回目:トレーニング変数の調整
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方1回目:3つのモデル
関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方2回目:実際のトレーニングプログラム
初心者・中級者の定義
初心者と中級者で変数調整の目安が変わってくるので、初心者と中級者の定義を書いておきます。
初心者は、リニアプログレッション(緩やかなリニアプログレッションを含む)で伸びる人。
中級者は、リニアプログレッションでは伸びなくなった人。
体重比の挙上重量で、初心者、中級者を分けるやり方もありますが、筋力の個人差は非常に大きいです。
筋力が弱い体質で、挙上重量が中級者レベルに達してなくてもリニアプログレッションで伸びなくなったら、中級者向けのプログラムに切り替えたほうが良いです。そうしないといつまでも停滞したままです。
逆に、筋力が強い体質で、中級者レベルの挙上重量になっても低ボリュームのリニアプログレッションで伸び続けるなら、リニアプログレッションをやり続けたほうがいいです。
例えばこの記事で、Greg Nuckolsが自分の経験について書いているのですが、本格的にバーベルトレーニングを開始した時点で、ベンチプレス125kg、デッドリフト192.5kgでした。体重は77kgより少し下くらい。年齢は14歳か15歳だと思います。体重比の挙上重量だと上級者レベルですが、経験値や伸びしろは初心者です。
2/09/2022
BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方2回目:実際のトレーニングプログラム
前回の記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方1回目:3つのモデル
実際のトレーニングプログラムを例に挙げながら、シンプルなプログラムから複雑なプログラムへの移行を説明します。
リニア・プログレッション
初心者向けのプログラムで、トレーニングセッションごとに重量を少しずつ増やし、直線的に負荷を上げていくトレーニングプログラムです。直線的に(リニア)、進歩(プログレッション)していくという意味です。リニア・ピリオダイゼーションと混同しやすいので注意です。ピリオダイゼーションは、期分けという意味です。
トレーニング初心者は小さい刺激で大きな反応を得られるため、毎回のように重量を増やしていくことが可能です。実際のトレーニングプログラムを見ていきます。
◆The Starting Strength Novice Program◆
週3回トレーニングで、トレーニング間隔を最低1日は空けます(例えば月水金)。毎回スクワットとベンチプレス(もしくはOHP:オーバーヘッドプレス)を5レップ×3セット実施。デッドリフトは5レップ×1セットで、最初は毎回ですが、回復を確保するため途中から頻度を下げていきます。重量は毎回増やします。
The Starting Strength Program
https://startingstrength.com/get-started/programs
◆StrongLifts 5×5◆
週3回トレーニングで、トレーニング間隔を最低1日は空けます(例えば月水金)。ワークアウトAとBを交互に実施。重量は毎回増やします。
StrongLifts 5×5: Get Stronger Lifting Weights 3×/Week
https://stronglifts.com/5x5/
◆GreySkull LP◆
上の2つのプログラムと同様に5レップのセットが基本ですが、限界まで行うセットが含まれているのと、重量の伸びが止まったら重量を下げて再スタートするのが特徴です。
GreySkull LP Isn’t Good, It’s Great
https://www.powerliftingtowin.com/greyskull-lp/
ここからが長いです。
↓
1/27/2022
BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方1回目:3つのモデル
トレーニングプログラムとトレーニングメニューの違いについては、私のイメージだと
トレーニングプログラム:何らかの目標に向かって、強度(%RM)、セット数、レップ数、追い込み度などのトレーニング変数を調整していくもの。
トレーニングメニュー:トレーニング種目の組み合わせ。
なのですが、プログラムを組むのにもメニューを組むのにも、相互の影響を考慮しないといけないので、プログラムとメニューの境界を明確にするのは難しいと思います。とりあえずこの記事では、上記の定義のイメージで、プログラムとメニューという単語を使っていきたいと思います。
9/11/2021
ベンチプレスのバーの握り方とブリッジ
前回の記事の続きです。
関連記事:ベンチプレスでの肩甲骨の動き
今回は、バーの握り方とブリッジについて。
バーを握る手幅と握り方
バーの握り方の基本は、手首を寝かせて、指の付け根から被せるように握ります。指先で握ると肩を怒らせる力の入れ方になりやすいですし、バーを手の甲側に押し込むことになるので、手首に負担がかかります。指の付け根を曲げて握ると、手の甲側にバーが転がりにくくなるので、手首を寝かせても手首を痛めにくくなります。
上級者の人がバーは強く握り込まないと言っている場合もありますが、ピンポイントで前腕骨に荷重を載せられるのが前提なので、慣れないうちは親指以外の指(特に小指)をしっかり握って、バーがズレないようにするのも良いと思います。指の付け根から強く握ろうとしても、わしづかみのようにはならないので困ったことにはなりにくいです。
親指に力を入れると、拇指球のあたり(親指の付け根付近)が固く盛り上がって、バーを乗せにくくなるので、親指には力は入れないほうが良いです。拇指球付近の肉厚な部分を柔らかくしておいて、そこにバーを「むにゅっ」と押し付けると安定します。
6/05/2021
スターティングストレングスの正しさの範囲
私がモヤモヤするのは、「パワーリフティング基準でのBIG3は安全で効果的。正しいフォームでやれば怪我リスクの低いトレーニング方法だ」といった主張に対してです。YouTubeにたくさんある「正しい〇〇のやり方」といった動画にも、モヤモヤしたものを感じます。それは誰にとって正しいのか?と。(「宇宙一正しいスクワット」という動画は勢い良すぎてクスッとしました)
昔の私のような準備の出来ていない初心者がバーベルトレーニングで怪我をしたり、経験の浅いトレーナーがスターティングストレングスに傾倒して正しさの範囲を意識せずにクライアントに適用したり・・・そういったことを少しでも減らしたいです。そこら辺をつっついていく記事です。
バーベルトレーニングは筋肉量やストレングスの向上にとても効果的だ、という点には強く同意します。BIG3を否定したいわけではなく、多くの人が安全に効果的にトレーニングできるよう問題点を洗い出して改善していきませんか、という問題提起がしたいです。
5/15/2021
パワーリフティングのケガ率/BIG3の調整
過去のパワーリフティングのケガ率の研究で、パワーリフティングのケガ率は低いというものがあります。同じようにウェイトリフティング(五輪の重量挙げ)のケガ率が低いという研究もあり、マッチョ寄りのフィットネス業界ではそれらの研究をもとに「バーベルを使ったウェイトトレーニングは、正しく行えばケガ率が低く安全である」と言われることが多いです。
しかし、それらの研究での怪我は、トレーニングや試合出場を中断せざるを得ないレベルの怪我のことでした。今回紹介する研究では、怪我を「痛みと、トレーニングに影響を与える機能障害」と定義し、記録上位25%のエリートレベルを除くパワーリフターにアンケートを送って、現在の怪我、過去12ヶ月の怪我について回答を集めています。調査はスウェーデンで行われました。
Prevalence and Consequences of Injuries in Powerlifting: A Cross-sectional Study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5954586/
バーベルを使って趣味でBIG3をする場合、パワーリフティング系、特にRippetoeのスターティング・ストレングスのやり方をする人も多いと思います。このブログの過去記事にもスターティング・ストレングスのやり方は紹介していますし、自分もそのやり方をやっていました。
ただ、趣味でBIG3をやるなら、パワーリフティング系のやり方から何箇所か調整したほうが、怪我リスクを下げられます。
今回のパワーリフティングの怪我リスクの研究をもとに、BIG3で怪我をしやすい部位、原因、趣味でやる場合の調整方法などを考察していきます。
(今回はパワーリフティングについての研究なのでパワーリフティングのみ取り上げていますが、ウェイトリフティングのケガ率も似たようなものだと思います。トレーニングや試合出場を中断せざるを得ないレベルの怪我は少ないが、痛みを抱えるケースは多いでしょう)
10/25/2019
パワーリフターの骨格
パワーリフターの骨格について調べている3つの研究が見つかったので、順に見ていく。全身の筋肉量や腕・脚の周径のデータもあるけど、標準体型に比べて筋肉量は多く、腕や脚は太いという当たり前の結果なのでそこは省いて、骨についてのデータを見ていく。
★予備知識 Zp-scoreについて
身体が大きければ、それだけ骨は太くて長くなる。背の高い人と背の低い人の身体測定の絶対値を比べてもあまり意味はない。従って、標準的なバランスの体型と比べて、身体測定の各項目がどれだけ逸脱しているかを示す、Zp-scoreという指標を使って見ていく。
多くの人の身体測定データから作ったPhantomという男女合わせた人間の標準体型みたいなデータがあって、それと比較してどうなのかを示したのがZp-score。Z-scoreのPhantom参照という意味。
身長の影響を考慮していて、例えばAさんの身長が160cmで大腿骨の太さが10cm、Bさんの身長が176cmで大腿骨の太さが11cmだった場合、二人の大腿骨のZp-scoreは同じになる。
Zp-scoreは0が平均で、標準偏差が1。数字が大きくなるほど平均を上回ることを示す。数字がマイナスだと平均を下回ることを示す。正規分布に従う場合、出現確率はZp-scoreが1以上が上位16%、2以上が上位2.3%、3以上が上位0.13%、4以上が上位0.0032%となる。
偏差値に例えて書くと、偏差値は平均が50で標準偏差が10なので、Zp-score0が偏差値50、1が偏差値60、2が偏差値70、3が偏差値80、4が偏差値90となる。
測定方法の一例。大腿骨の幅は以下のように測定。膝のすぐ上の骨の幅。
動画:Epicondylar Femur Width (Breadth) Measurement
https://www.youtube.com/watch?v=gLSniqEX3n8
上腕骨の幅は以下のように測定。肘のすぐ上の骨の幅。
動画:Epicondylar Humerus Width (Breadth) Measurement
https://www.youtube.com/watch?v=lyjVA9d6hQ8
測定箇所のPhantomデータがあれば、Zp-scoreを計算できる。計算方法は、Phantom身長とその人の身長の比で測定箇所の数値を調整して、Phantom平均で引いてから、Phantom標準偏差で割る。

★研究1
(1)Anthropometric dimension of male powerlifters of varying body mass
https://www.researchgate.net/publication/6053231_Anthropometric_dimension_of_male_powerlifters_of_varying_body_mass
被験者はニュージーランドでの国際大会とニュージーランドの全国大会の参加者で全て男性。
各階級の被験者を軽量級(Lightweights)、中量級(Middleweights)、重量級(Heavyweights)の3つにグループ分けして分析。
軽量級:75kg級以下
中量級:82.5kg級、90kg級、100kg級
重量級:110kg級以上
軽量級平均:身長163.0cm、体重68.9kg
中量級平均:身長174.7cm、体重87.7kg
重量級平均:身長174.7cm、体重121.9kg
被験者は非常に高いレベルのパワーリフター
- 世界大会出場経験者が6名
- オセアニア大会出場経験者が35名
- ニュージーランド全国大会出場経験者が10名
- ニュージーランド地区大会出場経験者が3名
以下の図は、骨の太さと腕・脚の長さのZp-score。正規分布に従うなら、Zp-scoreが2で100人に2人くらいの出現確率。Zp-scoreが4だと10万人に3人といったレベルなので、重量級の選手は規格外の骨格の太さや厚みを持っている。
★研究2
(2)To what extent does sexual dimorphism exist in competitive powerlifters?
https://www.researchgate.net/publication/5577046_To_what_extent_does_sexual_dimorphism_exist_in_competitive_powerlifters
(1)の研究と同じ研究者によるもの。被験者はオーストラリアの全国大会とニュージーランドでの国際大会の参加者。男女分けて分析。女性14名、男性54名。
女性被験者平均:身長159.9cm、体重65.1kg
男性被験者平均:身長172.9cm、体重94.2kg
★研究3
(3)Anthropometric profile of powerlifters: Differences as a function of bodyweight class and competitive success
https://www.researchgate.net/publication/271331626_Anthropometric_profile_of_powerlifters_Differences_as_a_function_of_bodyweight_class_and_competitive_success
被験者はアルゼンチンの全国大会の参加者で全て男性。階級は56kg級から125kg超級まで。
各階級の勝者(Winners)と、それ以外(Non-winners)でデータを分けて分析している。
★パワーリフターの骨格の特徴
3つの研究の結果をまとめると、
・男性重量級は骨格の太さ・幅が規格外。
・男性中量級・軽量級と女性選手は骨の太さと幅が似通っている。ただ上腕骨の幅と肩幅は男性中量級・軽量級のほうが太い。
・胸の厚みは男性選手も女性選手もかなり厚みがある。
・男性重量級以外は、大腿骨の太さはそれほど太くはない。常人離れしたスクワット重量を考えると意外。
・腕や脚の長さは、重量級も軽量級も、男性選手も女性選手も標準体型のバランスに近い。パワーリフターは腕や脚が短いわけではない。むしろ前腕は長め。
★考察
<骨の太さ>
パワーリフターの骨は太い。特に上半身が太くて幅がある。骨が太いとパワーリフティングで有利な点は、まず筋肉量の遺伝的限界が高いこと。遺伝的限界まで鍛え続けた場合、多くの男性は、「筋肉:骨=5:1(重量比)」になる(女性は4:1)。骨が太くて骨量が多ければ、それだけ筋肉を多く付けることが出来る。筋繊維の単位面積当たりの筋力には個人差があるが、筋肉が太ければそれだけ強い筋力を出せる。
(3)の研究のデータを見ると、75kg級~100kg級では筋肉と骨の比率(Muscle to Bone ratio)は5.0付近になっている。この辺の階級の選手は、生まれ持ったポテンシャルの限界近くまで筋肉を発達させていると考えられる。重量級は選手数が少なく、また測定精度の問題もあって、数値がばらついている。軽量級は、競技歴が短く筋肉が発達しきっていないのか、意図的に筋肉量を抑えて階級を下げているのかわからないが、筋肉と骨の比率は低めになっている。
骨が太いとパワーリフティングで有利になるもう一つの点は、腱の付着点が関節の回転軸から遠くなりやすいので、レバレッジ(てこ比)の点で強い筋力を発揮しやすいこと。レバレッジには、骨の長さと骨の太さの両方が関係する。詳しくは以下の記事を参考に。
参考記事:力持ちの身体的特徴
胸の厚みがかなりあるのは、ベンチプレスで有利になるからだろう。挙上距離が短くなるだけでなく、強い筋力を発揮しやすいレンジで動作を行うことが出来る。
男性選手の上腕骨はかなり太い。上腕骨が太くてベンチプレスが有利になるのと、大腿骨が太くてスクワットが有利になるのとでは、後者のほうがトータルの記録は伸びそうな気がするのだがそうはなっていない。テープで周径を測ったデータ(筋肉の太さも含まれる)でも、大腿部の太さが極端に太いわけではない。
男性重量級を除けば、男女とも大腿骨はそれほど太くはない。脚が極端に太くないのは、脚の筋力ももちろん大事だけど、ロウバースクワットとデッドリフトだと股関節の筋力と背中が耐えられるかどうかが重要だからかもしれない。また脚の骨が太くなるとそれだけ体重が重くなるので、体重制限がある場合は、このくらいの大腿骨の太さがもっともパフォーマンスがよくなるのかもしれない。
もしくは、男女の骨格差は上半身で顕著なので、内分泌系かなにかわからないけど骨格の発達に影響する因子が極めて男性型の人は、上半身の骨格全体が太く厚みのあるものになるが、下半身の骨格にはあまり影響が無いのかもしれない。
<腕と脚の長さ>
パワーリフターの腕や脚の長さは、標準体型のバランスに近く、前腕が長めの傾向がある。体重が重くても軽くても、女性でも男性でも、同じような腕と脚の長さのバランスになっている。
各種目に有利な腕と脚の長さを考えてみると、
・スクワット:太腿が短いほうが股関節とバーベルの水平距離が短くなるので有利。脛の長さはたぶん関係ない。
・ベンチプレス:上腕が短いほうが肩関節と手の距離が短くなるので有利。前腕が短いほうが挙上距離が短くなるので有利。
・デッドリフト:上腕も前腕も長いほうが有利。太腿が短いほうが股関節とバーベルの水平距離が短くなるので有利。コンベンショナルでは脛が長いほうが股関節の位置が高くなり、股関節とバーベルの水平距離が短くなり、また膝関節をより伸ばした状態でスタート出来るので有利。それと股関節の位置が高いと、スタート時にハムストリングスと広背筋が適度に伸ばされて力が入れやすくて有利だと思う。スモウも太腿が短いほうが有利。スモウの脛は・・・ちょっとよくわからない。横から見た場合、スモウは脛が垂直に近くなるので、この場合は脛が短いほうが有利かもしれない。
各種目で有利になる腕や脚の長さは違っているので、3種目トータルで記録を出せる人は、ほぼ標準体型のバランスの腕と脚の長さになるのだろう。前腕が長めなのは、ベンチプレスで少し不利になってもデッドリフトでの有利さが勝るのだと思う。上腕が長くなるとベンチプレスはレバレッジが不利になるが、前腕なら挙上距離が少し長くなるだけでデメリットが小さい。太腿は短くてもデメリットは無いと思うが、(1)と(2)の研究では太腿は短くなっていない。各部位全てで都合の良いパラメータを引くのは確率的に非常に稀だということだろうか。
デッドリフトがコンベンショナルとして、3種目で記録を出すのに力学的に理想の体型は、「上腕が短くて前腕が長い、太腿が短くて脛が長い」だと思う。(3)の勝者グループがまさにこの体型になっている。
ちなみにこのようなことを調べて何の役に立つのかと言うと、まず第一に競技に向いている人の発掘で、論文にも研究実施の背景として書かれている。あとは、中量級と重量級の中間ぐらいの体重の人が、どの階級で競技を行うか判断する際にも役立つかもしれない。骨格を調べて重量級で戦えるくらいの太さなら、重量級を選ぶと良いだろう。
★他の競技の骨格データ
競技によって骨格が様々で興味深い。ただ多くのスポーツは要求される要素が多くて、チームスポーツだったら、ポジション毎に特徴が異なるだろうし、筋肉の質(持久力・瞬発力)、全身持久力、速さの質(スピード、クイックネス、アジリティ)、動体視力、空間認識能力、ボールの軌道をシミュレートする能力など、競技によって様々な能力が必要になると思われ、骨格のみで才能を発掘することは難しいだろう。
ブラジリアン柔術:Anthropometric Characteristics of Top-Class Brazilian Jiu Jitsu Athletes: Role of Fighting Style
http://www.intjmorphol.com/wp-content/uploads/2015/06/art_48_323.pdf
水球:Anthropometric changes in elite male water polo players: Survey in 1980 and 1995
https://www.researchgate.net/publication/8600662_Anthropometric_changes_in_elite_male_water_polo_players_Survey_in_1980_and_1995
合気道:Anthropometric Characteristics and Body Composition in Aikido Practitioners
https://scielo.conicyt.cl/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0717-95022016000200001
ボディビルダー:Body composition, somatotype and proporcionality of elite bodybuilders in Brazil*
http://www.scielo.br/scielo.php?pid=S1517-86922003000600005&script=sci_arttext&tlng=en
2/05/2017
デッドリフトのやり方
ネタ元
↓
How to Deadlift: The Definitive Guide
http://www.strongerbyscience.com/how-to-deadlift/
Deconstructing the Deadlift
https://www.t-nation.com/training/deconstructing-the-deadlift
当記事でのデッドリフトは、コンベンショナルデッドリフトのこと。スモウについては、こちらの記事が参考になります。
★股関節の使い方の学習とデッドリフト実施までのステップ
動かすのは股関節。腰椎は動かさない。身体動作の訓練をしていない人は、床から物を持ち上げようとすると、膝関節と腰椎と腕を使って持ち上げるケースが多い。これをやると腰を痛めやすい。
・股関節の使い方の学習
1) 壁を背にして10cm程度離れて立つ。足幅は腰幅から肩幅くらい。背中を伸ばしたまま、膝をわずかに曲げ、尻を後ろに出す。臀筋に負荷を感じながら行う。重心は踵寄りの方がやりやすい。壁にタッチしたら元の直立姿勢に戻る。数cm前方に移動してまた尻を後ろに出して壁タッチ。また数センチ前に移動して・・・これを距離の問題でできなくなるまで繰り返す。
2) 慣れたら軽いダンベルなどを持って同じ尻壁タッチを繰り返す。
3) ダンベルを床に縦に置いて、両手でダンベルの片側を持ち股関節を使ってダンベルを床から持ち上げる。
4) ダンベルに慣れたら、バーベルでルーマニアンデッドリフト(RDL)を行う。
動画:RDL
5) RDLで60kgを10レップ程度行うのが余裕になって、股関節の可動域も十分なら、20kgプレートをバーにつけて床からデッドリフトを行う。
★背中の姿勢の作り方
・肩甲骨の位置
肩甲骨は下げて(下制)、前傾させない。内転外転については、特に内側に寄せたりはせずニュートラルな位置。肩を上げ下げして肩甲骨が下にカポッとはまる位置を確認する。胸を上げると、肩甲骨は自然に下制され、前傾しなくなる。胸を張るのではなくて、胸を上げる。
・背中の固め方
- 肩甲骨をカポッとはめてその位置をキープ。背骨はニュートラルのS字をキープ。
- 広背筋に力を入れて、腕を胴体にひきつける(肩を伸展する)。臀筋にも力をいれる。広背筋と臀筋に力を入れるのはとても重要。
- 脊柱起立筋群は負荷がかかれば受動的に力がはいるので特に意識しなくて良い。意識して収縮させると腰が反りすぎる恐れがある。
- 広背筋に力を入れる感覚は、腕を伸ばしてのプルダウン、もしくは軽いダンベルを持って、バタフライで腕を水面から抜く時みたいな動きをする。
動画:Elastic lat set deadlift pattern
★メカニクス
デッドリフトを行うのに必要な4箇所の力
・バーを握る力
・背中の姿勢を維持する力
・股関節を伸展する力
・膝関節を伸展する力
股関節の伸展については、
股関節の伸展に必要なトルク=「バーベルと上半身の体重の合成重心と股関節との水平距離」×「バーベルと上半身の重量の合計」
合成重心はだいたい足の真上。バーベルが重くなるにつれて、バーベルの重心≒合成重心に近づいていく。尻を必要以上に後ろに引くか、バーベルを前に出すかすると、合成重心と股関節との水平距離が増して、股関節の伸展に必要なトルクが増える。バーベルと股関節をなるべく近づけると、股関節の筋肉が発揮する力が同じでも、より重い重量を持ち上げることができる。従って、挙上の際にはバーを脛と腿に沿って持ち上げつつ、股関節をバーベルに近づけていく。
膝関節の伸展については、
膝関節の伸展に必要なトルク=「バーベルと膝から上の体重の合成重心と膝関節との水平距離」×「バーベルと膝から上の重量の合計」
合成重心はだいたい足の真上なので、脛が地面に対して垂直に近い場合、水平距離はゼロに近くなり、膝関節の伸展に必要なトルクはとても小さくなる。大腿四頭筋は主に、股関節の伸展に伴うハムストリングス(二関節筋)の収縮による膝関節の屈曲を相殺するために力を発揮する。膝関節を伸展する力が弱くてバーベルが持ち上がらないケースは稀で、スクワットやレッグプレスなどを行っていれば、デッドリフトに必要な膝関節の伸展力は備わっている。
従ってデッドリフトでバーベルが持ち上がらない時にボトルネックになる部分は、一般的には背中の姿勢を維持する強さと股関節を伸展する強さ。競技として行うのでなければ、バーが把持できなければストラップかパワーグリップをつけて握れば良い。
★アプローチ(バーベルの前に立ちバーを握る)
・足幅
目安になるのは、垂直跳びをしてみて、もっともジャンプしやすい足幅。普通は腰幅と同じくらい。そこから少し開いたり閉じたりして、しっくりくる足幅を見つける
・つま先の角度
やりやすい角度で行う。経験則では、つま先が開き気味だと挙上開始時に力が入りやすいようだ。つま先が平行だとロックアウトの時に力が入りやすいようだ。
・直立時のバーと脛の距離
2,3センチ程度。
・バーを握る手幅
手幅は、脚の動きを邪魔しない程度に狭く握る。狭すぎると、脚と腕がぶつかってしまう。逆に広く握ると肩とバーまでの距離が小さくなる(実質的に腕が短くなる)ので、背中の傾きが増し、背中の姿勢キープに必要な力が大きくなる。また、股関節の伸筋がよりストレッチされた状態になり力を発揮しにくくなる。
・バーの握り方
両手とも順手握りは、把持力がボトルネックになる場合はストラップを着用。ストラップを使わない場合はオルタネイト(ミックス)グリップ。発達の左右差が気になる場合は、セットごとに順手逆手を交代して行う。個人的にはオルタネイトグリップは胸椎の捻じれが起こる気がするので、交互に持ち替えてやった方が良いと思う。ウェイトルームでは大した影響はなくても、日常生活やスポーツで悪影響が出るかもしれない。あと逆手側の腕の上腕二頭筋が断裂するケースが稀にあるので、高重量を腕で引かないよう注意する。
・腹圧
下半身が生み出した力は、胴体を固くしないと上半身に伝わらない。腹圧を高くすると胴体が固くなる。一般的にはバーベルを握ってから息を吸い込んで腹圧を高めるが、バーを握ってからだと深く息を吸いこみにくい人は、立っている時に吸いこんでからバーを握る。腹圧と体幹については以下の記事を参考に。
関連記事:筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方
・息継ぎ
息継ぎは、床にバーベルを置いている時か直立している時に行う。上体が傾いて背骨にせん断力がかかっている時に息継ぎをすると危険。
★セットアップ
いくつかやり方がある。自分がしっくりくるやり方をするのが良い。以下はポピュラーな順。
1) バーの前に立つ。ハムストリングスにテンションを感じながら尻を後ろに押し出し、膝をあまり曲げず背中を曲げてバーを握る。息を深く吸い込み腹圧をかける。ハムストリングスのテンションを維持しながら、尻を後方と下方向に動かし背中を伸ばす。引き絞った弓の弦のようにハムストリングスにテンションをかけるイメージで行う(挙上開始で力を解き放つ)。胸を上げ、視線を固定する。このセットアップ方法は、腕と脚が長く腰高フォームで股関節メインでデッドリフトを行う人に向いている。
動画:Tight Hamstrings, Pull Yourself Down to Bar
2) バーの前に立つ。まず背中を伸ばし胸を上げる。股関節を曲げ、バーを掴めるまで膝を曲げていく。息を深く吸い込み腹圧を高める。背中を伸ばしたまま、尻を下ろしていく。バネを縮めるように脚に力を溜めるイメージで行う(挙上開始で力を解き放つ)。視線を固定する。このセットアップ方法は、腕と脚が短くて、大腿四頭筋の関与が大きめの人に向いている。
動画:Tight back, then pull hips down
3) バーの前に立つ。背中を伸ばし胸を上げ、股関節を曲げ、肩をバーよりも大きく前に出してつま先の方に重心を乗せながら、バーを掴めるまで膝を曲げていく。息を深く吸い込み腹圧をかける。身体を揺らして尻を後ろに動かし、重心が足の中心にくるようにする。視線を固定する。
動画:Set up over the bar, rock hips into position
4) バーを握り背中を伸ばしたまま体重を後ろにかけてスクワットのようにしゃがむ。息を深く吸い込み腹圧をかける。脚で床を押して挙上開始。ウェイトリフティングの経験がある人向け。
動画:Clean pull style
5) おもむろにバーに向かって歩いていき、深く息を吸い込み、バーにむかってかがみ、握ってすぐ挙げる。フォームが完璧に身についている人向け。
動画:John Haack: 629x2x2 Deadlift at 187lbs bodyweight
6) バーよりもかなり後ろに立ち、バーを握り、息を深く吸い込み、バーベルを自分の脛に向けて転がしながら背中を伸ばして尻を下げ、ポジションまで来たらすぐ挙げる。
動画:Rolling the bar
★セットアップ時の脛の角度
垂直かやや膝を前に出して角度をつけるか。バーベルが床から離れれば、どのみち脛はほぼ垂直になるので、好みでどちらにしても良い。一般的には、股関節メインの人は脛が垂直に近い方がやりやすい。腕と脚が短くて膝関節の関与が大きい人は膝をやや前に出した方がやりやすいようだ。
★バランス
挙上中は前後のバランスが崩れないように注意する。足裏の重心位置は、バーベルが軽いうちは足の真ん中のミッドフットがやりやすくて、バーベルが自分の体重より重たくなるくらいからは、踵寄り重心(下の画像)がやりやすいと思います。重心とバーの軌道については、関連記事に詳しく書いてあります。
・うまくバランスが取れない場合のドリル
数cmだけバーベルを持ち上げて、その状態で止めて、バランスを確認する。これで上手くいくようなら、デッドリフトのトレーニングの前にこのドリルを行い、バランスを確認してからデッドリフトのトレーニングを行う。
動画:One inch pull to find balance
・上手くいかない場合のさらなる対策
1. 1.25gプレートの上に立ってデッドリフトを行う。重心がずれると足の裏の圧力変化ですぐにわかる。
2. 床から数センチ挙げたところで一旦止めてバランスを確認、次に膝下まで挙げたところでまた止めてバランスを確認。
動画:Double-paused deadlift
この途中で止めてバランスを確認するデッドリフトは、ウォームアップとして数レップ数セット行うのも良い。慣れたらゆっくりと上げ下げしながらバランスを確認する。慣れるに従い、バランスを維持しながら挙上スピードを上げていく。
★挙上動作
バーベルを床から持ち上げる前に、全力で身体を固める。バーを強く握り、広背筋と臀筋に力を入れ、腹圧を高めて、脚に力をこめる。緩みがあるとバーベルの重さで崩れる。
腕は下にブランと垂らすのではなくて、広背筋を使って胴体に引きつける。個人的にはショベルカーのイメージ 背中・腕・手を一体化させて、バーを広背筋でガシッと掴む。
セットアップが完了していざ挙上となったら、バーを腕力で持ち上げてやろうと考えないこと。腕で持ち上げようとするとフォームが崩れてしまう。
デッドリフトの挙上は、簡単に言えば、背中の姿勢を保ったまま、膝関節と股関節を伸ばして直立姿勢になること。
1) 挙上開始は、腹圧をこめて脚で床を思いっきり押し下げ、同時に胸を上げるイメージ。胸が上がらないと、尻だけ上がってしまう。尻だけ上がるのは失敗。
2) バーがだいたい膝の高さまで上がったら、肩を後ろに、尻を前に。広背筋は収縮したままバーと股関節を近づけていく。
もしくは腕・胴体・大腿で囲まれた三角形を潰すイメージ。
または胴体の中央を軸に回転するイメージ。実際は股関節を軸に胴体が回転しているけど、おそらくそのイメージで行うと上半身が後ろに残って股関節をロックアウトしにくくなると思う。
肩を後ろにする感覚がよくわからない場合は、グッドモーニングを行う。
動画:How To Perform Good Mornings - Exercise Tutorial
尻を前に出す感覚を掴むのには、ヒップスラストが良い。
参考記事:ヒップスラストのやり方
★ロックアウト
臀筋をしっかり使って股関節をロックアウトする。臀筋が使えてないと、代わりに腰とハムストリングスに過度の負担がかかり、怪我をしやすくなる。
(良い例) 臀筋を使って股関節をロックアウト。
(悪い例1) 重心が前に行き過ぎ、ハムストリングスと腰で持ち上げていて、臀筋が使えていない。
(悪い例2) 大腿四頭筋と腰で持ち上げて、臀筋が使えていない。
★挙上速度
フォームを身につけるまではゆっくりと。良いフォームが身について重量を伸ばすフェーズになったら、毎レップなるべく速く挙上するのを意識する。そうした方が重量が伸びやすい。
★バーを下ろす
背中の姿勢を保ったまま、バーをコントロールしながら下ろす。エキセントリック動作をしっかりやると筋肥大効果が高まるし、ドシンと下ろして周囲に迷惑をかけることもない。普通は3秒くらいかけて下ろす。10秒とかだと長すぎて、トータルのトレーニングボリュームが低下して筋肥大面ではマイナスかもしれない。
★ウィークポイント
通常は、股関節の伸展が弱いか、背中の姿勢保持が弱いか。
弱点が股関節なのか背中なのか判別するには、
1) 膝下までバーが上がってそこでギブアップ
両方とも弱い。股関節も背中も鍛える。
2) バーが床からほとんど動かない
自分が扱える重量よりも遥かに大きな重量だったら、動かないのは当たり前。扱える重量よりも少し重いだけなのに全く動かなくなる場合は、以下の要領で切り分け。
パワーラックなどを使って高重量のエキセントリックのみやってみる。1RMの100%超えの重量を背中の姿勢を維持したままエキセントリックで下ろせるなら、股関節の伸展が弱い。通常はエキセントリックの方がコンセントリックよりも高重量を扱える。1RMの100%未満の重量で下ろせなくなるなら背中が弱い。
股関節が弱いならRDLやリバースハイパーやヒップスラストで股関節の伸展の筋肉を鍛える。背中は広背筋や脊柱起立筋群や肩甲骨の制御を行う筋肉を鍛える。ローイングやスターナム懸垂やラックプルやバックエクステンション系など。
3) ロックアウト
股関節は伸びてるけど猫背気味で背中が伸びない→高い位置からのラックプルなどで脊柱起立筋群の上の方(胸椎伸ばすあたり)を鍛える
背中は伸びてるけど股関節が伸びない→ヒップスラストなどで股関節の伸展を鍛える
★デッドリフトのトレーニングプログラム
デッドリフトの向上に効果的なトレーニングプログラムは、スクワットやベンチプレスに比べて個人差がかなり大きい。
大まかな傾向としては、
1. スクワットのトレーニングボリュームの1/2-2/3程度のボリュームでまずは始めてみるのが良い。
2. 股関節の伸展のトレーニングは高い頻度で行い、実際にデッドリフトを行う頻度は低めにすると向上しやすい。 Greg Nuckolsの経験によると、デッドリフトの実施頻度は、50%の人が週に一回、25%の人が週に二回、15%の人が週に一回以下(例えば3週間に二回など)、10%の人が週に三回以上のペースで行い、それに加えて股関節の伸展のトレーニング(RDLなど)を少なくとも週に三回行うと、速く向上しやすい。デッドリフトによる全身疲労の蓄積に妨げられず、動作に必要な筋肉を鍛えられるため。
3. 腕が長くてデッドリフト向きの体型の人やスモウデッドリフトを行う人は、デッドリフトをより高頻度・高ボリュームでトレーニングできる。
4. 背中が弱くて姿勢の維持がボトルネックになる人は、高ボリュームや高強度のデッドリフトのトレーニングを行うとぐったりと疲れやすい。 バックエクステンションやローイングなどで背中を鍛えると、デッドリフトのトレーニングボリュームを増やすことができる。
5. 挙上テクニックが洗練されるにつれ、より多くのトレーニングボリュームを扱えるようになる。
6. スクワットでは尻や脚が多少疲れていても、充実したトレーニングを実施することができるが、デッドリフトでは尻や背中が疲れている場合はその日はパスし、1日か2日先延ばしにしてトレーニングを行った方が良い。
★フォームの個人差
胴体、腕、脛、大腿の長さによって、適切な背中の傾きや尻の高さは異なってくる。それぞれの骨格に合った効率的で安全なフォームで行うのが重要。
★背骨の曲がり
トップクラスのリフターのデッドリフトだと背骨(主に胸椎)が曲がっていることがある。これは股関節をバーに近づけることでより重い重量を挙げられるようにするテクニック。趣味でトレーニングを行う人は真似しない方が良い。趣味のトレーニングなら背骨は常にニュートラルの姿勢を保つこと。
★股関節の可動域、背骨の姿勢
股関節の可動域が足りないと、バーを床に下ろす時、また床のバーを掴む時に、背中を丸めてバーに手を届かそうとする。股関節の可動域はストレッチやウォームアップで確保する必要がある。
関連記事:股関節のストレッチ・ウォームアップ
股関節を深く曲げようとすると背中のニュートラルポジションが保ちにくい場合はラックやブロックなどを使い、床よりも高い位置にバーベルを置いてデッドリフトを行う。背中の姿勢を保ったまま股関節を動かせる範囲で動作を行う。股関節のストレッチなどを続けつつ、慣れてきたら徐々にバーベルの位置を下げていく。
動画:Block pull
股関節の可動域を広げても、股関節の骨の噛み合わせの問題で可動域が床からのデッドリフトに足りない人もいる。骨の問題は生まれつきなのでどうしようもない。その場合はラックプルやRDLを行って鍛えるのが良い。バーの高さは単にプレートの半径で決まってるだけで、特に意味がある数値になっているわけではない。
また猫背で胸椎が過度に屈曲しているケースもある。フォームローラーなどで姿勢を矯正して、良い背中の姿勢を作れるようにする。
姿勢の矯正について詳しくは以下を参考に。
★TIPS
・レップ間の仕切りの有無
2レップ目以降は、床にバーベルを置いて一旦仕切り直すべきか、床にバーベルがタッチしたらすぐに次のレップにいくべきか。
高重量の1レップ目のフォームが安定しない人は、レップごとに仕切り直してバーベルが止まった状態から良いフォームで引けるように練習する。1レップ目も2レップ目も良いフォームで引ける人は、好みでタッチアンドゴー。
レップごとに仕切り直すと疲れが溜まるにつれて体幹が緩んでしまう人は、仕切り直さずタッチアンドゴーにした方が姿勢を維持できて良いかもしれない。
いずれにせよ、良いフォームで質の高いトレーニングを行える方法を選ぶのが良いだろう。
・視線の向き
頭を上げて前を見るか、下を見るか。首を反らしすぎるとわずかだが怪我のリスクが上がるかもしれない。安全に動く範囲で好みの方法で。
・ベルト
ベルトを着用した方がしっくりして力が入るならベルトを着用。ベルト無しの方がやりやすいならベルトなし。好きなほうで。
・脛の保護
脛にバーが当たって痛い場合は、デッドリフト用の脛当てを使うのがベスト。米Amazonで「shin guards deadlift」で検索して、日本に発送可能なリーズナブルな価格の商品を買うのがおすすめです(Ships to Japan と書かれているのが日本に発送可能なもの。送料は10ドルくらい)。
関連記事:デッドリフト時の脛の保護(脛当て)
・ストラップ・パワーグリップ
筋トレ目的なら積極的に使おう。手のひらの保護になるし、把持力がトレーニングの制約にならない。

Amazonの販売ページ:図解デッドリフト
9/24/2016
デッドリフトにおける広背筋の重要性
参考サイト
Cueing Lat Activation For a Deadlift, or pretty much anything that needs lats
http://deansomerset.com/cueing-lat-activation-deadlift-pretty-much-anything-needs-lats/
Cueing Lat Activation For a Deadlift, or pretty much anything that needs lats
http://deansomerset.com/the-most-important-low-back-muscle/
The Importance of the Lats in the Deadlift
http://strengtheory.com/lats-in-the-deadlift/
★基礎知識
- 背骨の伸展(extension)は、背中を反らす方向の動き
- 背中の屈曲(flexion)は、背中を丸める方向の動き
★広背筋のデッドリフトへの寄与
大きく分けて2つ
◇胸椎の負荷を減らし上背部の姿勢を保ちやすくする
腕を下半身の方に引き寄せ、肩甲骨を下半身の方向に押し込むことで、荷重点を股関節方向にわずかに移動させ、股関節にかかる曲げモーメントを少し減らし、胸椎にかかる曲げモーメントを大幅に減らすことが出来る。
肩甲骨を下半身の方向に押し込む動き(専門用語だと肩甲骨の下制)を意識しにくい場合は、立った状態で胸を上にクイッと上げる動きをすると良い。同時に頭をやや後ろに動かすとやりやすい。
ちなみに他のトレーニング種目でも、体幹に強い負荷がかかる種目は大体この姿勢で行う。懸垂やローイングもこの姿勢の方が広背筋に刺激が入りやすい。胸を張るのではなくて、胸を上にクイッと。
ではなぜ肩甲骨を下制し、腕を引き寄せると、胸椎の負荷が減るかというと・・・
デッドリフト時の背中は片持ち梁だと考えられる。荷重点はバーベルと上半身の合成重心の真上(バーベルが十分に重ければバーベルの位置と近似)。重力は垂直方向にかかるので、荷重点からの水平距離(モーメントアーム)と、バーベル+上半身の重さ(荷重)の積が曲げモーメントになる。荷重点から離れるほど(デッドリフトの場合は股関節に近づくほど)、曲げモーメントは大きくなる。
strengtheoryの例を使うと、肩甲骨を下制し腕を引き寄せることで荷重点を1インチ股関節に近づけた場合、股関節(重りを持ち上げるのに動かす関節)は荷重点から遠いので、例えば水平距離が20インチ→19インチになると曲げモーメントは5%減る。一方で、胸椎は荷重点から近いので例えば5インチ→4インチになると曲げモーメントは20%も減る。上の図では赤の矢印がbeforeで、緑の矢印が1インチ股関節に近づけたafter。
このため上背部の姿勢をキープしやすく、また股関節が重りに打ち勝つのに必要な力も少しだが小さくなるので、デッドリフトを効率的に行うことができる。
このメカニズムから、バーよりも肩が前に出て、腕が鉛直にならない方がデッドリフトは効率的になるのだが、バーベルが重たいとこの腕の角度をキープするのに広背筋はかなりの力が必要になる。従って高重量のデッドリフトでは腕はほぼ鉛直になる。
トップレベルになると上背部を意図的に曲げるフォームになることもあるみたいで、これも力学的にどう有利になるのか解説されているけど、技術的な難しさと怪我のリスクを考えると、趣味でトレーニングする人はあまり真似しない方が良いと思う。
◇腰椎の伸展をサポートし下背部の姿勢を保つ
広背筋は背骨の中の方から下の方や肩甲骨にくっついていて、もう片方は上腕骨にくっついている。これだけ大きい筋肉なので、下背部のS字姿勢を保つのに重要な働きをする。下の画像はWikipediaから。
★広背筋の収縮を意識する方法
背中を壁にベタッとつけ、息を吐きながら手のひらで壁を強く押す。下背部のアーチを作らずベタッと壁につける。
ストレートアームのプルダウンの動き
★広背筋に効かせやすいトレーニング
パラレルグリップでのプルダウン。股関節を伸ばした状態で、背中を伸ばし、臀筋(尻)に力をいれながらやると良い。座った状態(股関節が曲がった状態)でのラットプルダウンは広背筋を使うのが難しい。
個人的に広背筋に負荷をかけやすい種目は、デッドリフトとナローパラレルグリップでの懸垂なので、これはよくわかる。
☆コメント
Greg Nuckols(strengtheory)が言うには、「広背筋は(脊柱起立筋と違って)複数の椎骨にまたがってつながっているわけではないから、脊柱の伸展方向の力はほぼなく、また広背筋は上部胸椎にはつながっていないから胸椎の伸展には関わらない」とのことだけど・・・
私が考えるには、下背部は腰椎がS字を維持している限りは、広背筋の収縮で下背部には伸展方向の力が働き、バーベルによる曲げモーメントに抵抗するのでは。
ただし下背部が丸まると伸展の力は働かなくなり、逆にやや屈曲方向の力が働くのでは。広背筋がストレッチされて力を入れにくいが、水泳のスタートのときのように背中を丸めて広背筋に力を入れてみるとそうなると思う。
自分で背中を丸めたり伸ばしたりした状態で広背筋に力を入れて試してみたけど、たぶんこれで合ってるかと。脊椎がS字のときは広背筋の収縮で下背部を面でサポートできる感じ。脊柱起立筋だけだと線でサポートする感じになる。
なのでDean Somersetの言うとおり、広背筋は下背部に伸展方向の力を加え下背部の姿勢を保つのに非常に重要な働きをすると思う。
上背部は、肩甲骨を下制することで鎖骨を引っ張り胸椎の伸展を保つのに寄与するのではないだろうか。ただこの力は弱いかも。モーメントアーム短縮による曲げモーメントの削減の方が大きそう。
4/28/2016
力持ちの身体的特徴
走るという比較的単純な動作のパフォーマンスを左右するのは、筋肉の瞬発力や筋持久力や全身持久力なのだろうと想像できるし、アスリートのこれらの能力は一般人よりも何割か高いのだろうと納得できる。だが、重いものを持ち上げるという単純な動作で一般人とトップ選手の差が2倍以上開くのには、他にも要素があると考えられる。どのような要素があると力持ちになれるのか、以下に考察してみる。
★筋肉の出力
・神経系の適応
筋繊維の動員と発火頻度。強度の高いトレーニングを行えば容易に神経系の適応は完了する。
・瞬発型か持久型か
筋繊維のタイプ分けについてはいくつかあるけど面倒なので割愛。全体で見て筋肉の性質が瞬発型だと瞬間的に大きな力を発揮できる。生まれつきの影響が大きい。
・羽状筋の羽状角
羽状筋についてはこちらの記事を参考に。筋肉が羽状筋の場合は羽状角が出力に影響する。羽状角が大きいと筋肉の縮む速度が遅いが、大きな力を発揮できる。
短距離走者の筋肉の羽状角は、長距離走者の筋肉の羽状角よりも小さいという研究がある。羽状角が小さいほうが筋肉の縮む速度が速くスプリントに有利なのだろう。短距離走者同士でも、ベストタイムが速い選手の方が羽状角が小さいという研究もある。
羽状筋は肥大すると羽状角が大きくなるが、もともと持って生まれた羽状角に個人差があり、それにより速く動かすのが得意か、遅くても大きな力を出すのが得意かという運動能力の違いが生じていると思われる。
・太さ(断面積)
筋肉は太い方が大きな力を出せる。鍛えれば太くなる。
★骨格の違い
・骨格によるテコ比の違い
人間の身体が骨格筋を用いて外部に力を加える際には、ほとんどの場合テコの原理が働く。腱の付着箇所が力点、関節が支点、外部との接触箇所が作用点。第3種てこなので、力点に加わる筋肉の出力よりも作用点で働く力は小さくなる。
1) 上腕二頭筋を使って肘を曲げて手に持ったおもりを持ち上げる動作(アームカール)を例に図解してみると以下のようになる。
2) 骨が短いと作用点-支点の距離が小さくなり、テコ比(力点-支点の距離/作用点-支点の距離)は大きくなる。従って、筋肉の出力が同じ場合でも作用点で働く力は大きくなる。それに加えて骨が太くて関節が大きいと、力点-支点の距離が大きくなり、これもテコ比を大きくする。
3) 仮にドラえもんのビッグライトを当てて骨格と筋肉をそのまま拡大したら、テコ比は一定で筋肉が太くなるので、より大きな力を出せるようになる。格闘技の無差別級やストロングマンコンテストの選手などはこのタイプ。身長が高くて骨格がデカイ(下の図)。
4) 一方で、高身長でも腕と脚が細長く伸びた骨格だと、強い力を発揮するのは苦手になる。骨が長いとテコ比は小さくなり、筋肉の出力が同じ場合でも作用点で働く力は小さくなる。しかし、作用点は大きく動くようになり、筋肉の収縮速度が同じでも作用点の速度が速くなる。野球の投手に多いのがこのタイプ。腕が長い方が速い球を投げられるので有利になる(下の図)。
・筋肉が力を発揮しやすい範囲で動作ができるか
筋肉は伸びすぎても縮みすぎても最大の力を発揮できない。腕や脚が短い方がスクワットやベンチプレスでは力の出る範囲で動作が行える。デッドリフト(コンベンショナル)は脚が長めの方が膝関節の角度が開いて力が入りやすいようだ。これについては以前書いたので参考まで(骨格によるフォームの違い)。
★まとめ
骨格と筋肉の性質により競技の向き不向きがある。ベンチプレス300kg挙げる人が野球の球を投げる練習をしても大してスピードは出ないだろうし、160km/hの豪速球を投げるピッチャーがベンチプレスをやりこんでも重い重量は上がらないだろう。
従って、挙上重量で中級者か上級者かを判断するのはナンセンス。その人の遺伝的限界に対してどの程度達しているかで判断するべきだろう。また他の人と挙上重量を比べて得意になったり落ち込んだりする必要もない。過去の自分を上回れるかが大事だと思う。
1/17/2016
骨格によるフォームの違い
★ベンチプレス
ネガティブ局面で過度に伸張されることによる大胸筋の筋肉・腱の断裂が多い。
・腕が長い、特に前腕が長い人
- 肘が深く下がり、大胸筋が過度に伸張され怪我しやすい。
・胸板が厚い人
- バーがあまり下がらないので怪我しにくい。
・腕が長い人の対策
- 手幅を狭める(クロースグリップ)と肘があまり下がらなくなり大胸筋の伸張が抑えられる。
- バーを胸まで降ろさない
★スクワット
・脚が短い人
- 胴体があまり前傾しない
- 大腿四頭筋の負荷が大きい
・脚が長い人
- 胴体が前傾することで、ハムストリング、大内転筋、薄筋に過度のテンションがかかり痛めやすい。
- 大殿筋、脊柱起立筋群への負荷が大きい。
- 胴体が前傾しているため、腰にかかるせん断力が大きい。後背部の姿勢と力の維持を崩すと危ないので気をつける
- 大腿四頭筋に負荷がかかりにくいので、大腿四頭筋はスクワット以外で鍛えたほうが良い。(ハックスクワットが勧められている。フロントスクワットは脚が長い人は胴体が前傾してバーの保持が困難)
・足首の柔軟性
足首が固いと膝が前に出ず胴体が前傾する。ハムストリング、大内転筋、薄筋に過度のテンションがかかり痛めやすい。
・胴体の前傾対策
- リフティングシューズのような踵の高い靴を履く、こうすることで膝が前に出て胴体の前傾がゆるくなる。
★デッドリフト
・腕・脚が短い人
- 太腿が水平に近くなり主に大腿四頭筋の関与が大きくなる。
・腕・脚が長い人
- 膝関節の角度が鈍角で力が入りやすく重い重量を挙げやすい。
★コメント
ネタ元は Strength Training Anatomy 3rd Edition
このようなスケスケのお姉さんの絵が満載の本。
邦訳は「目でみる筋力トレーニングの解剖学」だけど、これは多分 1st edition の訳で、今回の記事で参考にした怪我などの記述は載っていないかも。
踵の高いリフティングシューズは値段が結構する。私はSuperfeetという中敷きを買って使ってみたが、踵が上がって腿の裏側への負担が減って良い感じになった。あと私は扁平足なのでアーチサポートも効いて踏ん張りやすい。
脚が長い、足首が固い、扁平足の人にはSuperfeetはおすすめです。私はAmazonで買ってうまくフィットしたけど、個人差が大きそうなので、できればスポーツ用品店や登山用品店でフィッティングした方が良いと思う。
脚が短い人はスクワットとデッドリフトでは身体の後ろ側の筋肉(脊柱起立筋群、臀筋群、ハムストリングなど)が鍛えにくそうなので、ルーマニアンデッドリフトをやると良さそう。
Youtubeでパワーリフティングの選手が高重量を挙上している動画はたくさんあるけど、スクワットとベンチプレスが強い人は腕・脚が短くて胴体が樽状の体型の人が多く、また挙上距離を短くするテクニックを使っているので、違う体型の人がBIG3のフォームを学ぶ上ではあまり参考にならない。
動画を見た感じではデッドリフト(コンベンショナル)が強い人は腕と脚が長めの人が多いけど、上背部を曲げるテクニックを使ってることがあるのでそれは真似しないほうが良いと思う。上背部を曲げると股関節までのモーメントアームが小さくなる、膝関節と股関節が鈍角になるといったメリットがある。ただし胸椎の怪我リスクも上がる。
関連記事:
スクワットの基本ポイント
自重での膝を前に出さないスクワット
デッドリフトの基本ポイント
挙上重量によるデッドリフトのフォームの違い
ベンチプレスの基本ポイント
1/31/2015
ベルトをすべきか
ライル・マクドナルドのサイトにリンクがあったブログを読んでて見つけた面白そうな記事を紹介。書いているのはパワーリフティングの世界記録持ってた人とのこと。いくつか記事を読んでみたけど、他にもリフティングや身体のメカニズムについての面白い記事がある。
Should you wear a belt or not? Study write-up
http://www.strengtheory.com/should-you-wear-a-belt-or-not-study-write-up/
スクワットの際のベルトの着用の有無がどのような差をもたらすのかを調べた研究をもとに記事を書いている。内容を抄訳すると、
・研究結果
- ベルト着用の有無で、外腹斜筋、脊柱起立筋の筋活動に違いは見られなかった。
- 大腿四頭筋には違いが見られ、ベルト着用の方がより筋活動が高かった(特にスティッキングポイント通過時)。
- ハムストリングスはベルト着用の方が、セットを通じて筋活動が高かった(ベルト着用しないとセット開始時は同じ程度でレップを重ねると筋活動が低下していく)。
- ベルトをした方が腹圧が高まった。
・結果から得られるインプリケーション
- ベルトをした方が同じ重量でも容易に上がるようになるが、筋活動は大腿四頭筋とハムストリングスはベルトをした方が高く、脊柱起立筋と外腹斜筋については同程度という結果になった。ベルトをすることで筋肉の負荷が低下するわけではなく、より大きな力を引き出すことが出来る。
- 脊柱起立筋は、しゃがむ局面と立ち上がる局面で同じ程度の筋活動だった。外腹斜筋は立ち上がる局面の方が筋活動が高い。スクワットのボトムで重量に負けて背中が丸まるのは、脊柱起立筋の問題ではなくて腹筋側が弱いためだと思われる(脊柱起立筋の弱さが問題ならラックアップしてしゃがむ局面で背中が丸まるだろう)。
なぜ大腿四頭筋とハムストリングスがより強い力を発揮できるようになるのかよくわからないけど、結論としてはベルトを着用した方がより効果的にトレーニングが出来そうなのでそうしよう。
4/23/2014
[書籍] Starting Strength: Basic Barbell Training
著者: Mark Rippetoe
バーベルトレーニングを直接習う環境になく、独学で学びたい人にお薦めの本。1種目あたりのページ数が多く、とても詳しく説明されている。英語に抵抗がないなら、非常にお薦め。和訳は出ていないと思う。私は紙の本を米アマゾンから購入したけど、キンドル版はかなり安く手に入る。
内容は以下のとおり
★スクワット 67ページ
関連記事:スクワットの基本ポイント
★プレス 25ページ
関連記事: プレスの基本ポイント
★デッドリフト 49ページ
関連記事: デッドリフトの基本ポイント
★ベンチプレス 33ページ
関連記事: ベンチプレスの基本ポイント
★パワークリーン 55ページ
関連記事: パワークリーンの基本ポイント
★補助種目
- パーシャルのデッドリフト/スクワット/プレス/ベンチプレス
- オリンピックスクワット、フロントスクワット
- クロースグリップ/ワイドグリップでのベンチプレス、インクラインベンチプレス
- ルーマニアンデッドリフト、スティッフレッグドデッドリフト
- グッドモーニング
- プッシュプレス
- 順手/逆手懸垂
- ディップス
- バーベルロウ(地面からバーベルをローイングする)
- バックエクステンション、グルートハムレイズ
- バーベルカール
- トライセップスエクステンション
★トレーニングプログラムの組み方
- 別の著書にトレーニングプログラムの組み方は詳しく書いてあるとのこと。ここでは簡単に例を紹介。
- 具体的には、5レップ3セット程度を推奨。週三回のトレーニング日、スクワットは毎回、プレスとベンチプレスを交互、デッドリフトとパワークリーンを交互など(下背部の疲労管理のためデッドリフトは1セットにする)。例えばSL5X5もこの系統なので、ネットで調べてみたい人はこのサイトなどを参考に。
3/20/2014
スクワットの基本ポイント
ここで解説するスクワットは、ロウバー(low bar)パラレルスクワット。膝をあまり前に出さず、股関節伸展を主動力とするスクワット。
★基本的な考え方
- 重心の位置が足の中心の真上にくるようにする。バーベルを担いだ人間の重心位置は、身体とバーベルから合成される。バーベルが重くなると重心はバーベルの位置に近づき、足の中心のほぼ真上にバーベルが来るようになる。以下の記述では簡便のため、バーベル位置=重心位置とする。
- バーベルは常に足の真上に来るので、バーベルを担ぐ位置が、背中の角度および股関節・膝関節の角度を決める。バーベルを担ぐ位置が高くなれば(ハイバースクワット)、背中の角度は垂直に近くなる。
- パラレルスクワットは、膝頭より股関節が下になるまでしゃがみ込む。大腿部の下側が水平になるだけでは、しゃがみ込みが足りない。
- スクワットの各フォームによる膝関節への負担の違いは、大腿部前面(四頭筋)のテンションと大腿部後面(ハムストリングス)のテンションの釣り合いの問題が大きい。パラレルスクワットはボトムに近づくにつれハムストリングスにかかるテンションが強くなることで、四頭筋のテンションと釣り合いが取れ膝関節への負担が軽くなる。ハーフスクワットやクオータースクワットだとボトムでの切り返しの時にハムストリングスにあまりテンションがかかっておらず、扱える重量が増えることも相まって膝関節の負担が大きくなる。
★まずはバーを担がずにフォーム確認
- 目安としては踵の位置が肩幅と同じくらいになるように立ち、身体を前後に通る中心線からそれぞれ30度くらいつま先を外側に開く。
- 股関節が膝頭より下にくるようにしゃがむ。体格にもよるが、だいたい膝はつま先より少し前に出るくらいの位置。
- 両手の平を合わせて、肘を膝の内側に当てて肘を外側に突き出し、膝を外側に押し出す。こうするとつま先の向きと膝の向きが揃う。
- 深くしゃがむのが難しい場合、その多くは膝が十分に外側に出ておらず、股関節が屈曲するにつれて骨盤の下側と大腿部がぶつかり、それ以上しゃがむのを邪魔するからである。ハムストリングスの柔軟性に問題があるケースは少ない。立ち幅と脚の開く角度を調整して、自分が深くしゃがめるポジションを決める。
- 背中は丸めず反らしすぎずフラットに。ボトムポジションでの地面に対する背中の角度は45度くらい。胸を張り、目線は1-1.5メートルくらい先の地面を見る。首の位置は顎にテニスボールを挟むくらいになる(実際に挟んでみるのも良い)
- 立ち上がる時は、尻を上に上げていく感じにする。そうすると各関節と筋肉が自然に連動して立ち上がれる。足をふんばろうとか膝を伸ばそうとか、一部分にフォーカスすると連動が上手くいかない可能性がある。誰か他の人に尾てい骨のあたりを手で押さえてもらいながら立ち上がると意識しやすい。
★バーを担ぐ
- 肩甲骨を寄せて背中をタイトにする。
- バーを乗せる位置は、肩甲骨の上端部より少し下の位置。後部三角筋の上、僧帽筋の下、ちょうどここに窪みができてバーが安定しやすいはず。
- 握り方はサムレスで、バーの上に手をかぶせるようにする。バーの重量は背中で受け止める。
- 肘を後ろ側に上げて、掌底がバーを押す感じにする。腕は窮屈なので自然とバーを掌底で押す方向に力がかかり、バーは背中に押し付けられて安定するようになる。肘を下げて(前腕を鉛直にして)、腕でバーベルの重量を支えようとするのは駄目。
- バーをラックから上げる。バーの位置は足の真上、足の中心部に重心を感じること。背中と胴体はタイトなまま。視線は1-1.5メートル先の地面を見る。
- しゃがみこんで、下半身の各筋肉の伸張反射(たしか原文にそう書いてあるのですが正しくは弾性エネルギー)を使いながら立ち上がる。しゃがんでから立ち上がるまでは、息を吸い込み、喉を閉めて空気を逃さないようにし、体幹の筋肉を締めて、胴体をしっかり固定する。下半身で発生させた力を、胴体を固体化することで、上半身に乗せたバーベルに効率よく伝える。
- 視線は常に1-1.5メートル先の地面を見つづける。首を仰け反らせて視線を上にしないように。首が危険だし股関節伸展の力が使いにくい。
- ボトムに近づくにつれてハムストリングスにテンションがかかって下背部が引っ張られ丸まりそうになるが、脊柱起立筋をしっかり収縮させることでこれを防ぐ。
- 常に足の中央にバーベルの重さを感じながら、しゃがんで立ち上がるを繰り返す。バーベルは垂直に上下する。
★その他
- ベルトを着用することで腹筋をより強く収縮させ、腹圧を高めることができる。体幹の筋肉の発達を妨げたりはしないので、必要だと感じたら積極的に着用しよう。
参考: Starting Strength Basic Barbel Training 3rd Edition / Mark Rippetoe
(本の説明では図と写真が多く入っていてわかりやすいです。他にはデッドリフトとプレスとベンチプレスとパワークリーンの解説があります。)
参考動画:
【肉体】正しいスクワット講座【改造】
http://www.youtube.com/watch?v=uCD4sb1kpJw
3/04/2014
デッドリフトの基本ポイント
↓
デッドリフトのやり方
★握り方
- なるべくオルタネイトで握らない。
- 握力がもたない重さはストラップ使用推奨。ストラップは輪っかのついていないタイプを推奨。
- 指の付け根付近の皮を巻き込むように握らない。マメが酷くなる。
★立ち位置
- 直立した時にバーが脛から1-1.5インチくらいの位置に立つ。足のアーチの中間位置のちょうど上くらいにバーがくる。
- 足の開く距離は8-12インチくらい(大雑把に言えば腰幅くらいのスタンスで良さそう)。つま先はやや外側に開く。
★バーを握る位置
- バーのギザギザが始まるところから1インチくらい外側を握る。デッドリフトの動作中に親指が脚をギリギリこすらないくらい。
★スタートポジションへの手順
- 腰の位置を下げず膝を曲げず前かがみになって(つまりスティッフレッグドで)、バーを握る。
- 膝を曲げていき、脛がバーに当たるポイントで停止する。バーベルを転がさないこと。
- プル開始まで、尻の位置はここから動かさない。
- 膝をやや外側に開き、膝の方向とつま先の方向が揃うようにする。すると膝が肘に当たる。これでOK。
- 背中の筋肉(主に脊柱起立筋と広背筋)を収縮させ、胸を張る。下背部は丸まらない。
- 肩甲骨は寄せない。
- 首の角度は、12-15フィート先の地面を見るくらいにする。
- スタートポジションの時、肩はバーよりも前に出ているはず。垂直線に対する腕の角度は7-10度くらいになる。
★デッドリフトの動作
- 腹圧を高め、体幹の筋肉が一体化するのをイメージする。
- 足の中心で地面を押し下げるようにしてプル開始。
- バーが脚の表面を滑るように引き上げる。身体からバーが遠くなると、バランス悪くなるし、力学的にも不利。
- バーが当たって脛が痛い場合は長ズボンや脛当てでガードする。
- バーが膝の高さにくるまでは、背中の地面に対する角度は一定にする。股関節と膝関節の角度が開いていく。
- バーが膝の高さを過ぎたら、股関節の角度をぐいっと開く。
- バーは地面から垂直に移動する。バーが前後にフラフラするのはフォームが悪いせい。
- トップポジションまで引き上げたら、胸を張って1秒ほど停止する。無理に腰を反らしたりするのはやり過ぎ。
- 下ろす時は、上げるときの手順をそのまま逆に。下ろす速度は上げる時よりも速くて良い。
- 引き上げてから下ろすまで呼吸はしない。バーが地面についている時に呼吸を行う。
- バーベルを地面でバウンドさせない。伸張反射を使わず、停止状態から引き上げる強さを鍛える。dead stopの状態から筋力を発揮する必要があるから、デッドリフトと言う。
参考: Starting Strength Basic Barbel Training 3rd Edition / Mark Rippetoe
(本の説明では図と写真が多く入っていてわかりやすいです。他にはスクワットとプレスとベンチプレスとパワークリーンの解説があります。)
参考動画:
【肉体】正しいデッドリフト講座【改造】 AF版
https://www.youtube.com/watch?v=dD7K4bZfDL4
【肉体】正しいデッドリフト講座【改造】 Omar版
http://www.youtube.com/watch?v=Z_-xIvf0iOg&feature=youtu.be
関連記事:
挙上重量によるデッドリフトのフォームの違い
2/24/2014
ベンチプレスの基本ポイント
・肩甲骨をしっかり寄せる。肩はなるべく固定し、肩でバーを前に押し出さない。
・バーを上げ下げする時はバーに焦点を合わさない。天井を見る。そうするとバーの軌道が安定する。
・サムレスグリップは絶対ダメ!
・バーの握り方は、手をやや内側に傾け、親指が横向きになるようにし、母指球の辺りでバーを受け止めて握りこむ。前腕の親指側の骨(橈骨)に荷重がかかるようにする。
・バーが胸に付く位置で前腕が垂直になる手幅で握る。
・上から見た時の胴体に対する上腕の角度(腋の開く角度)は45度~75度。
・広背筋を収縮させ胸を高く張る。バーの移動距離が短くなるし、肩関節の故障リスクが下がるし、上腕と胸の角度が狭まることで大胸筋と三角筋前部の長さが短くなり、より強い力を発揮できる。
・バーを下ろしてから上げる時は、胸に軽くタッチしてから一気に上げる。胸でバウンドさせない。
・バーを下ろしている時も一気に上げることをイメージし続ける。
・後頭部を強くベンチに押し付けない。首を痛める。後頭部の髪の毛がベンチに軽く触れるくらいのイメージ。
・脚と尻に力を入れ、上半身のアーチをキープする。
・尻はベンチから上げない。骨盤をベンチと並行くらいに。膝を曲げる角度は90度くらい。
・レップ開始の前に息をおもいっきり吸い込んで胸を高くする(ただし肩が上がらないように)。
・息継ぎは、腕を上げきったレップの間々に行う。バーを下ろして上げる間はアーチキープのために息は止める。
・ラックアップしてからレップ開始は、腕を伸ばしてバーを肩の真上でしっかり止めてから。レップ終了時も肩の真上に肘を伸ばしきるまで挙げて、それからラックに戻す。
参考: Starting Strength Basic Barbel Training 3rd Edition / Mark Rippetoe
(本の説明では図と写真が多く入っていてわかりやすいです。他にはスクワットとプレスとデッドリフトとパワークリーンの解説があります。いずれまとめます)
関連記事:









































