4/14/2022

BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方4回目:PDCA

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初心者のプログラムは、1回目の記事に書いたように、リニアプログレッション(緩やかなリニアプログレッション含む)でシンプルにやっていくのが良いと思います。

ここでは中級者向けのプログラムをどう作り、実行していくかを書いていきます。


望ましいトレーニングプログラム

望ましいトレーニングプログラムがどのような要素を含むか。

・重量とボリュームの漸進的過負荷 
筋肥大と筋力アップを続けようとするなら、長期的(数ヶ月~数年単位)に見て重量とボリュームを少しずつ増やしていくのが必須になります。

既存のプログラムは3,4週間といった短期でも、リニア型やウェーブ型で重量やボリュームをアップさせていくものが多いです。短期で重量やボリュームを増やしていくことが、筋肥大と筋力アップにどこまで効果があるのかわからないですが、実際にプログラムを実施することを考えると、単純に右肩上がりで強弱をつけるとプログラムがシンプルになりますし、疲労管理もやりやすくなります。


・回復
回復を入れないと適応が起こらないので、プログラムに回復を組み込むのは必須です。


・目的とする適応の種類の明確化
漫然とトレーニングを行うのではなく、どの適応(筋力、筋肥大、ワークキャパシティ)を目的としてトレーニングを行うのか明確にしたほうが効果が出やすくなります。


・新たな刺激を与え続ける
重量、ボリューム、レップレンジ、種目のバリエーションなど、同じトレーニングを続けていると同じところに留まり続けます。


・高強度×高ボリュームはNG
85%1RM以上といった高強度の重量で、高ボリュームのトレーニングを行うと、多くの人は回復が追いつかなくなります。また関節への負担も大きく、怪我をしやすいです。高強度なら低ボリュームにしたほうが良いですし、高ボリュームなら低強度にしたほうが良いです。


・キツイ週をずっと続けない
高強度の週をずっと続けない、高ボリュームの週をずっと続けない。回復のキャパシティを超えやすくなったり、同じことを続けることで停滞しやすくなります。




トレーニング刺激の強弱

中級者以降のプログラムでは、トレーニング刺激に強弱をつけて適応を引き出していきます。

どのくらいの刺激の強さのトレーニングを行うか決めてから、その刺激の強さになるように、強度、セット数、レップ数などのトレーニング変数を設定していくとやりやすいです。

どのくらいのトレーニングで、どのくらいの刺激の強さになるかは人によって違います。

例えば、初心者の場合、ベンチプレス8レップ×3セット@RPE7-9で強い刺激になりますが、中級者くらいの人だとそれでは弱い刺激です。

ざっくりした中級者向けプログラムといったものは作れますし、世の中にはそういったプログラムがたくさんありますが、重要なのは、トレーニングをする人の身体にとってそのトレーニング刺激が強いか弱いかです。従って、体感的にキツイか、次のトレーニング日までにどこまで回復できるか、といった自分の感覚や反応をチェックしていくことが必要です。


<トレーニング刺激の強弱を3段階に分ける>

トレーニング刺激の強さを3段階に分けて、プログラムの雛形を書いていくとやりやすいです。もっと細かく段階を分けても良いですが、シンプルにするためにここでは3段階でいきます。


・強いトレーニング刺激
1,2週間続けるのが限度のハードトレーニング。

・中くらいのトレーニング刺激
持続可能なトレーニング。体感的にはそれなりにキツイ。次のトレーニング日に8,9割程度の回復で、全回復はしないけどトレーニングの質と量を落とさずに続けられるくらいの疲労度。ずっと続けると疲労が徐々に溜まっていくので定期的にデロードを入れる。

・弱いトレーニング刺激
余裕のある楽なトレーニング。フィットネスを維持しながら回復したり、新たなトレーニングになれることが目的。デロードもここに含まれる。


視覚的にわかりやすいよう、絵文字で表すと・・・




トレーニング刺激の強弱のパターン

トレーニング刺激を強・中・弱に分けて、その組み合わせでプログラムの雛形を考えていきます。


<NGパターン>

まずはNGパターンです。

・回復を考えず、ひたすらハードトレーニングを続ける。

強 強 強 強 強・・・・昇天



例) 6RM×6 6RM×6 6RM×6 6RM×6 6RM×6 6RM×6 6RM×6

例) 10RM×5 10RM×5 10RM×5 10RM×5 10RM×5 10RM×5



・刺激の弱い楽なトレーニングを続ける



<OKパターン>

・中くらいの刺激のトレーニングを続けて、定期的にデロードを入れる。

中 中 中 弱 中 中 中 弱・・・


例えば、シンプルなフラットローディング型

例) 10×4@65% 10×4@65% 10×4@65% デロード 8×4@70% 8×4@70% 8×4@70% デロード


リニアピリオダイゼーションもこのパターンがやりやすいと思います。

例) 10×4@65% 9×4@67% 8×4@70% デロード 7×4@75% 6×4@77% 5×5@80% デロード


回復に余裕があるならデロードの頻度を下げてもOKです。

例) 中 中 中 中 中 中 弱・・・


・弱→中→強を繰り返す
弱い刺激は、新たなトレーニングブロックへの慣らしと、前ブロックからの回復を兼ねています。弱い刺激のトレーニング内容は、デロードよりは強度とボリュームを多くします。

弱 中 強 弱 中 強・・・


例) 10×3@65% 10×4@65% 10×5@65% 8×3@70% 8×4@70% 8×5@70%




プログラムの雛形を作る

各適応ごとにトレーニング刺激の強・中・弱を考えます。そして、その組み合わせでピリオダイゼーションプログラムの雛形を作っていきます。

・ワークキャパシティトレーニング 弱/中/強

・筋肥大トレーニング 弱/中/強

・筋力トレーニング 弱/中/強


またはレップレンジで

・10-12レップ 弱/中/強

・6-10レップ 弱/中/強

・3-6レップ 弱/中/強



<ピリオダイゼーションプログラムの雛形の記述例>


◆ブロック・ピリオダイゼーション
各適応ブロックで、弱→中→強を繰り返すブロック・ピリオダイゼーションの雛形です。


◆リニア・ピリオダイゼーション
レップ数を下げながら強度を上げていくリニア・ピリオダイゼーションの雛形です。



<その他のパターン>

他のパターンのプログラムでは、Smolovや Bulgarian method など強い刺激を入れ続けるプログラムや、Sheikoみたいな複雑なプログラムもあるのですが、自分で組むのはかなり難しいと思います。(そもそもSmolovや Bulgarian methodは上級者向けです)


強い刺激を入れ続けるプログラムは、20世紀の東側諸国のオリンピックリフティングのやり方をパワーリフティングに転用したもので、その東側諸国のオリンピックリフティングのやり方は、

・選別された素質のある若い選手が

・トレーニング中心の生活をしながら

・メインリフトに絞って高頻度・高ボリュームで練習し

・大部分が途中で潰れても、生き残った者だけが素晴らしい結果(オリンピックリでのメダル獲得)を出せれば良い

という考えに基づいています。それと・・・薬物使用が前提でしょう。


Sheikoのような複雑なプログラムは、競技者が経験豊富なコーチに処方してもらうプログラムで、趣味でトレーニングする人が自分に合うようにカスタマイズするのは難しいです。


上に挙げたプログラムはいずれもメインリフトに特化しているため、バランスの良い発達が難しく、疲労管理が難しいといった問題点があります。また、パワーラック、ベンチ台の使用時間が非常に長くなるので、普通のジムだと実施が難しいと思います。




メインリフトと補助種目の変数設定

トレーニング刺激の強弱の雛形に合わせて、メインリフトと補助種目の具体的なレップ数、セット数、強度を設定していきます。

変数設定のやり方は無数にありますが、ここではわかりやすさのため明確な指針を書きます。刺激の強弱の感覚が掴めたら、トップセットを入れるなど好みに合わせて、自分流にアレンジしていきましょう。


<強弱に合わせたメインリフトの変数設定>

メインリフトをストレートセットで行います。

強い刺激のトレーニングのメインリフトは、最終セットでRPE9程度(限界まで1レップ残し)になる強度・レップ数に設定します。

中くらいの刺激のトレーニングのメインリフトは、最終セットでRPE8程度(限界まで2レップ残し)になる強度・レップ数に設定します。

弱いの刺激のトレーニングのメインリフトは、最終セットでRPE7程度(限界まで3レップ残し)になる強度・レップ数に設定します。


強い刺激のメインリフトの例: 8レップ×5セット@65-70%1RM RPE6-9(1セット目がRPE6程度、5セット目がRPE9程度)

中くらいの刺激のメインリフトの例: 8レップ×4セット@65-70%1RM RPE6-8(1セット目がRPE6程度、4セット目がRPE8程度)

弱い刺激のメインリフトの例: 8レップ×3セット@65-70%1RM RPE6-7(1セット目がRPE6程度、3セット目がRPE7程度)


だいたい以下の表の変数設定で、メインリフトをストレートセットで4セットやると、中くらいの刺激になると思います。この強度設定は、ある程度疲労が溜まっている状態でトレーニングすることを想定しています。


この表をベースにして、刺激の強弱を変えていきます。

・ボリュームを調整して刺激の強弱を変える
強い刺激にしたい場合はセット数を1増やします。弱い刺激にしたい場合はセット数を1減らします。

例) 強度とレップ数を固定してセット数を変更する

強 10レップ×5セット@60-65%1RM

中 10レップ×4セット@60-65%1RM

弱 10レップ×3セット@60-65%1RM


4セットを中くらいの刺激の基準にするとボリュームが多すぎる場合は、3セットを中くらいの刺激のトレーニングにしてもOKです。その場合は、強・中・弱とも強度を+5%1RMしたほうが良いと思います。


・強度を調整して刺激の強弱を変える
強い刺激にしたい場合は+5%1RMします。弱い刺激にしたい場合は-5%1RMします。

例) レップ数とセット数を固定して強度を変更する

強 8レップ×4セット@70-75%1RM

中 8レップ×4セット@65-70%1RM

弱 8レップ×4セット@60-65%1RM




トレーニング刺激の強弱パターンごとの変数設定例


<フラットローディング>

レップ数、セット数、強度が一定。




<リニアローディング>

(1)強度を上げつつレップ数を下げるやり方。


(2)セット数とレップ数を一定のまま強度を上げていくやり方。



<強度のウェーブローディング>

レップ数を下げながら強度をどんどん上げていく。



<ボリュームのウェーブローディング>

レップ数と強度を一定にして、セット数を増やしていく。







トータルボリュームを考えて補助種目のボリュームを決める


メインリフトのボリューム(セット数)を決めたら、種目・部位あたりのトータルボリュームの目標に合わせて、補助種目のボリュームを決めていきます。

前回の記事に書いたボリュームの目安を再び書きますと、


・メインリフト(この記事ではBIG3)の週のトータルボリューム

初心者:4-8セット(2-4セットを週2回が目安)

中級者:6-10セット(3-5セットを週2回が目安)


・補助種目を含めての部位あたりの週のトータルボリューム

初心者:5-10セット

中級者:10-20セット


新たにプログラムを始める場合は、それまで慣れていた種目・部位あたりのトータルボリュームに1,2セット足した数字を、中くらいの刺激のボリューム目安にすると良いでしょう。

例えば、それまで週に種目・部位あたり12セット(メインリフト8セット+補助種目4セット)だったら、以下のようなボリューム設定が考えられます。


強い刺激の例:メインリフト10セット(5セットを週2回)+補助種目6セット(3セットを週2回)=週トータル16セット

中くらいの刺激の例:メインリフト8セット(4セットを週2回)+補助種目6セット(3セットを週2回)=週トータル14セット

弱い刺激の例:メインリフト6セット(3セットを週2回)+補助種目4セット(2セットを週2回)=週トータル10セット



このボリューム設定を、先ほど作ったピリオダイゼーションの雛形に落とし込んでいくと・・・


<ブロック・ピリオダイゼーションの例>

10レップ、8レップ、4-6レップを、弱→中→強のパターンで各3週間ずつトレーニングするブロック・ピリオダイゼーションです。各部位・種目のトレーニング頻度は週2回です。筋力ブロックでは、メインリフトに集中するため補助種目を増やさないようにしています。




<リニア・ピリオダイゼーションの例>

リニア・ピリオダイゼーションの例です。各部位・種目のトレーニング頻度は週2回です。





デロードの強度とボリューム目安

デロードは、強度、レップ数、セット数を、それまでのトレーニングから1-3割減らすのが目安です。

例えば、8レップ×5セット@70%をやっていたら、

疲労がかなり溜まっている場合は、強度、レップ数、セット数を3割ずつ減らす。

→ 5レップ×3セット@50%


疲労がそれほど溜まっていない場合は、強度、レップ数、セット数を1割ずつ減らす。

→ 7レップ×4セット@63%






補助種目のレップレンジ

筋肥大・ワークキャパシティのトレーニング期間は、補助種目のレップレンジは8-15レップにすると良いでしょう。


筋力トレーニングの期間の補助種目のレップレンジをどうするかは、目的によって違ってきます。

・筋肉量の維持目的で補助種目を行う場合は、そのまま8-15レップで行います。

・メインリフトの1RM向上目的で補助種目を行う場合は、ハーフスクワットやラックプルなど高重量を持てるパーシャル種目を低レップで行い神経系のトレーニングをします。




疲労を考慮した補助種目の選択

疲労管理の微調整は、補助種目で行うとやりやすいです。メインリフトに動作と重量が近い補助種目や、主動筋に強い負荷がかかる補助種目は疲労が大きくなります。メインリフトをこなして、体力に余裕があるならそういった種目をやると良いでしょう。体力に余裕が無いなら、マシンやアイソレート種目を補助種目にすると疲労を軽くできます。



補助種目は、メインリフトに動きと重量が近いほど、メインリフトの向上効果(キャリーオーバー)が高いです。しかし、全身疲労も大きくなります。


例えばスクワットの補助種目を考えてみます。メインリフトがハイバースクワットの場合の主な補助種目を、キャリーオーバーと疲労コストが大きい順に並べていくと・・・


といった感じになります。マシン種目やアイソレート種目は全身疲労が小さいですが、メインリフトへのキャリーオーバーも小さいです。全身疲労とキャリーオーバーにはトレードオフがあるので、トータルでの疲労管理や弱点補強などを考えて補助種目を選択していくと良いでしょう。

メインリフトのボリュームを減らして、マシン種目やアイソレート種目中心にすると、ボディビル・フィジークに寄せるメニュー構成になります。そうすると全身疲労が小さくなって疲労管理が楽になるので、プログラムはわりと適当で良くなります。そのぶんメインリフトの重量を伸ばしにくくなります。


この記事は、「BIG3を軸とした」トレーニングプログラムについてなので、趣味のトレーニングでパワーリフティングに寄せたメニュー構成、それを実施していくためのプログラムの考え方を書いています。

プライオリティをどこに置くかですね。BIG3の重量を伸ばすことを重視するのか、見た目を整えるのを重視するのか。初心者を脱して中級者になるくらいまでは、BIG3中心にやっていくと重量の伸びと見た目の改善が両立しやすいのですが、トレーニング重量とボリュームが増えるにつれてリソース(時間・体力)の制約が厳しくなってくるので、好みがあるならどちらかに寄せていったほうが良いでしょう。

例えば中級者以降は、見た目重視のボディメイクをするなら、BIG3はほどほどにして、胸、肩、腕、背中のアイソレート種目を多くやったほうが効果的だと思います。単純に脚を太くしたいといった場合も、スクワットを4分インターバルでやるよりも、レッグプレスを2分インターバルでやったほうが、少ない疲労と時間で太くできます。

私の利用しているジム(ゴールドジム)でも、バーベル種目をガンガンやって高重量を挙げる系の人と、ダンベルやマシン中心にトレーニングするボディビル・フィジーク系の人とで分かれています。

Larry Wheels(この人はステロイドユーザーですが)や、Russel Orhiiみたいに、ムキムキで高重量が挙がる身体になれるのは、素質があって、疲労、怪我、トレーニング時間の問題をクリアできるごく一部の人だけです。




メニュー構成例

基本は2分割で、トレーニング日は週3回か週4回にするのが多くの人にとってやりやすいと思います。メニューの例をいくつか書いていきます。トータルボリュームを確保して、疲労の管理さえできれば、メニューは自分の生活スタイルに合ったやり方でOKです。


(1)上半身と下半身で分割

下半身の日がキツイです。

A ベンチプレス+補助種目、ロウ・プル種目、肩・腕のアイソレート種目

B スクワット+補助種目、デッドリフト+補助種目



(2)押す系と引く系で分割 

Bのほうが時間と体力に余裕があるので、Bに肩・腕を入れています。

A ベンチプレス+補助種目、スクワット+補助種目

B デッドリフト+補助種目、ロウ・プル種目、肩・腕のアイソレート種目


上の2つの分割例を1週間のスケジュールに当てはめると、1週間でABを交互に2回ずつ実施します。

例) 月曜A 火曜B 水曜休み 木曜A 金曜休み 土曜B 日曜休み

体力と時間が厳しい場合は、2週間でABを交互に3回ずつ、トレーニング日は週3回でも良いでしょう。トータルボリュームが積みにくくなるので、一回あたりのボリュームをやや増やしたほうが良いと思います。

例) 月曜A 火曜休み 水曜B 木曜休み 金曜A 土曜休み 日曜休み
月曜B 火曜休み 水曜A 木曜休み 金曜B 土曜休み 日曜休み


2分割を週3回トレーニングに落とし込む場合は、AとB両方(全身)をトレーニングする日を作る方法があります。全身の日は補助種目を減らしてメインリフト中心にします。

例) 月曜A 火曜休み 水曜B 木曜休み 金曜A+B(全身) 土曜休み 日曜休み



(3)上下分割で下半身の日を楽にするメニュー


A ベンチプレスと補助種目、ロウ・プル種目、肩・腕のアイソレート種目

B スクワット、デッドリフトの補助種目(補助種目のみ。デッドリフトはやらない)

C デッドリフト、スクワットの補助種目(補助種目のみ。スクワットはやらない)

例) 月曜A 火曜B 水曜休み 木曜A 金曜休み 土曜C 日曜休み



(4)デッドリフトを週1回にするメニュー

ロウ・プル、肩・腕の頻度が少ないので、Aの日にもロウ・プル、肩・腕を軽くやったほうがいいと思います。

A ベンチプレス+補助種目、スクワット+補助種目

B デッドリフト+補助種目、ロウ・プル種目、肩・腕のアイソレート種目

例) 月曜A 火曜休み 水曜B 木曜休み 金曜A 土曜休み 日曜休み



(5) OHP(オーバーヘッドプレス)も重視するメニュー

パワーリフティングのやり方でBIG3の重量重視だと、よくあるやり方は、

・スクワット:尻を後ろに引く股関節メインのロウバースクワット

・デッドリフト:ナローでもスモウでも

・ベンチプレス:好きなやり方で

スクワットのトレーニングでデッドリフト用の筋肉も鍛えて、デッドリフトは神経系の発達を主目的とした筋力トレーニング中心にしてボリュームを抑える。

ベンチプレスは、回復できる限度までのボリュームと頻度にする。


このやり方はBIG3の重量を伸ばす点では効率的なのですが、大腿四頭筋と肩があまり発達しないです。

そこで全身のストレングスを重視する場合は、


スクワット:ハイバースクワットで大腿四頭筋にも強い負荷がかかるフォームで行う

デッドリフト:股関節伸展を鍛えるために補助種目含めてしっかりやる。

ベンチプレス:OHPと並行して行うためボリュームを抑える

OHP:重量を伸ばすのを目指す


スクワット系とデッドリフト系のボリュームを同じくらいに。

ベンチプレスとOHPを同等に扱ってボリュームも同等に。


というやり方もあります。その場合のメニュー構成例は、

例) 週4回トレーニング

A ハイバースクワット、RDL(デッドリフトの補助種目)

B ベンチプレス、ケトルベル・ボトムアッププレス(OHPの補助種目)

C 床引きデッドリフト、フロントスクワット(スクワットの補助種目)

D OHP、足上げナローベンチプレス(ベンチプレスの補助種目)




スクワットとデッドリフトのボリューム設定

スクワットとデッドリフトで使われる筋肉がかなり被っている場合は、デッドリフト系のトータルボリュームをスクワットの半分くらいにすると良いと思います。例えば、ナロー寄りのスタンスのロウバースクワットで股関節メインのスクワットフォームと、ナローデッドリフトの組み合わせです。ワイドスタンスのスクワットとスモウデッドリフトも使われる筋肉が被ります。


この場合は例えば、週のトータルボリュームを

ベンチプレスと補助種目:トータル12セット

スクワットと補助種目:トータル12セット
例) スクワット4セット、レッグプレス2セットを週2回

デッドリフトと補助種目:トータル6セット
例) 床引きデッドリフト4セット、レッグカール2セット、ヒップスラスト2セット。週1回でまとめてやっても良いし、週2回に分けても良いです。

といった設定にします。


ハイバースクワットで大腿四頭筋の負荷が高いフォームとナローデッドリフトの組み合わせのように、スクワットとデッドリフトで使われる筋肉があまり被らないフォームで、スクワットもデッドリフトも頑張りたい場合は、スクワット系とデッドリフト系のボリュームを同じくらいにしたほうが良いでしょう。

例えば、週のトータルボリュームが

ベンチプレスと補助種目:トータル12セット

スクワットと大腿四頭筋の補助種目:トータル12セット
例) スクワット3セット、レッグプレス3セットを週2回

デッドリフトと股関節伸展筋の補助種目:トータル12セット
例) タッチアンドゴー8レップ×1セット、RDL8レップ×2セット、シーテッドレッグカール3セット、ヒップスラスト3セットを週2回。

この場合はデッドリフト週1回のメニュー構成は無理です。


スクワット系とデッドリフト系を同じくらいのボリュームでトレーニングするのは全身疲労がきついので、スクワットもデッドリフトもメインリフトのセット数を抑えめにして、補助種目で筋肉を鍛えることを意識すると良いです。特にデッドリフトは床引きの疲労コストが重いので、RDLやタッチアンドゴーをメインにするのをおすすめします。


どうしても体力面できつい場合は、各種目週2回のうち、1回をボリュームを少し減らして軽めにすると良いでしょう。

もしくはスクワットに力を入れてデッドリフトはボリューム控えめにする期間(1-2ヶ月)と、デッドリフトに力を入れてスクワットはボリュームを控えめにする期間(1-2ヶ月)を交互に行うと良いでしょう。

関連記事:デッドリフトの頻度とボリューム問題




メインリフトと補助種目のトレーニング変数を設定したプログラム例

ここまで書いてきたことをまとめた、総合的なプログラムの記述例を書きます。











1つの適応のブロックの長さ

DUP型ではない普通のピリオダイゼーションでプログラムを組む場合、一つの適応のブロックを3週間~1ヶ月にするとやりやすいと思います。


例) 弱 中 強 各1週間 合計3週間

例) 中 中 中 デロード 各1週間 合計4週間


1ヶ月程度の期間だと、トレーニングをしていない他の適応が衰えにくいメリットもあります。

例えば90%1RM以上3レップ以下の高強度トレーニングを長期間続けると、ボリューム不足で筋肉量が落ちやすくなると思われます。高強度・低ボリュームのトレーニングを長期間(目安は一ヶ月以上)続ける場合、筋肉量の維持目的で10レップ@60-70%1RMのセットを少量入れると良いでしょう。

ウェイトリフティングのようなパワー競技だと、パワートレーニングをずっと続けると、筋肉量が低下しやすくなるので、筋肉量の維持目的で高レップトレーニングを入れるようです。

動画:LU Xiaojun explains how periodisation work in the Chinese National Team
https://www.youtube.com/watch?v=xI9b4D4GZL0


ただ、5-10レップくらいのレンジの筋トレは、適応同士がかけ離れていないので、他の適応の低下はそこまで意識しなくてOKです。筋肉量、筋力、それぞれある程度は維持できるでしょう。

パワーリフティング寄りの筋トレは、筋力と持久力を同時に伸ばす「コンカレント・トレーニング」のような適応の競合や、ある適応を先に伸ばしておくと次にトレーニングする適応の伸びが良くなる「Phase Potentiation」といった要素がほとんど無いです。筋力と筋肥大は似た種類の適応で、相性も良いです(持久力と筋力は相性が悪いです)。


適応の衰えが気になるようだったら、メインリフトのセットが5レップ付近のトレーニングを長期間続ける場合、補助種目を10-12レップにしたり、軽い有酸素運動を取り入れたりすると、筋肉量やワークキャパシティを維持しやすくなります。

逆に、メインリフトのセットが10レップ付近のトレーニングを長期間続ける場合は、80-90%1RMのトップセットを組み込むと筋力を維持しやすくなります。




有酸素運動

弱い刺激のトレーニング週は時間と体力に余裕があるので、10-20分程度の軽い有酸素運動を入れると、ワークキャパシティが高まります。サイクルマシン、エリプティカルトレーナー、水泳など膝への負担が軽いものを、心拍数120-150くらいで行うのがおすすめです。ランニングはスクワットのトレーニングに影響が出やすく、また筋トレを続けていると身体が重たくなってくるので、膝への負担も大きくなります。


体力レベルが高い人は、自重のサーキットトレーニングを行うのも良いでしょう。




柔軟性をもたせる

同じくらいの効果が期待できるなら、複雑なプログラムよりも単純なプログラムが良いです。細かい記述よりもざっくりした記述が良いです。


プログラムを書いていると楽しくなってきて、細かく最適化したものや、数値の並びが美しいものを書きたくなってくるのですが、人間の身体はそんなに単純なものではないので、細かいプログラムを作っても思い通りに効果が高まるわけではないです。また、細かく記述したプログラムほど、実施していく上で少しのズレが出ると軌道修正が難しくなります。

トレーニング中心に生活している人たちと違って、趣味のトレーニングだと毎回きっちりトレーニングをこなすことが難しい場合があるので、なるべくざっくりしたプログラムにするのが良いと思います。

トレーニングプログラムの本質は、トレーニング刺激に強弱をつけて、回復・適応の波を作ることです。強度、レップ数、セット数などの設定はそれを実現するための手段です。細かい設定に振り回されて、回復・適応の波が作れなくなるようなら本末転倒です。


<忙しくて週単位のメニューがこなしにくい場合>

メニューが週単位で3週間~1ヶ月で1ブロックになるプログラムが多くありますが、週単位のメニューで頻度が週2回だと、各種目・各部位をトレーニングする機会が2回です。そのうち1回が疲れや時間の都合で十分にトレーニングできないとプログラムの進行に支障をきたします。

1ヶ月を1ブロック、10日をメニュー単位にして、10日で各種目・部位を3回トレーニングといったメニューにすると、そのうち1回がイマイチでも2回をしっかりトレーニングできていれば全体の進行がうまくいくので、忙しい人はそのような組み方もおすすめです。




プログラム実施中の調整

プログラム実施中の調整は、ある程度は臨機応変にやっていきます。いい加減にやるのと、臨機応変にやるのとでは、紙一重なところがあるのですが、疲労や時間不足などへの対応の考え方を書きます。



<回復が追いつかない>

回復が追いつかないなら、プログラム全体の強度とボリュームを見直します。プログラムに慣れないうちは、想定1RMを低めにして重量を抑えめにする、ボリュームを増やしすぎない、といった点に気をつけたほうがいいです。プログラム記述に使う想定1RMを、本当の1RMの90%-95%で計算するのも良いと思います(疲労を抜いて高強度トレに慣れた時の1RMと、ボリュームトレーニング中の疲労が溜まった状態の1RMは違うので)。



<時間や体力などリソースの制約がある時>

・ボリュームトレーニングで優先することは?


→ ボリュームを積む。

調子がいまいちだったり、時間があまりない場合、ボリューム優先のトレーニングでは、重量を下げる、インターバルを短くする、メインリフトを減らして補助種目を増やす、といった方法で、部位あたりのトータルレップ数を積むことを優先します。調子が悪かったり疲れ気味だったりするとメインリフトがきついので、その場合は補助種目のほうがボリュームを積みやすいです。あと補助種目のほうがインターバルを短く出来て短時間で終わらせられます。補助種目は体幹への負荷が軽い種目を選びましょう。


・筋力トレーニングで優先することは?

→ 高強度のトレーニングを行う。

時間や体力が不足している時の筋力トレーニングは、なるべく強度を落とさずに、ボリュームを減らしたほうがいいです。ただ高強度のトレーニングは集中力が欠けていると危ないので、疲労が溜まってたりで調子が悪いときは無理をせず、低強度・低ボリュームでトレーニングを切り上げて、次のトレーニング日にしっかりやったほうが良いでしょう。




1サイクルを終えての分析

中級者くらいの人には、2,3ヶ月で1サイクル(マクロサイクル)が完了するくらいの長さのプログラムがおすすめです。そのくらいの期間だと、狙った適応が起きたか判断しやすいですし、改善点が見つかったらプログラムをブラッシュアップして次のサイクルに反映させることが出来ます。短すぎると適応が起きたかわからないですし、長すぎると改善点が反映されず効率が良くないプログラムを続けることになります。


適応が起きたかの判断は、ある程度疲労を抜いてから85%-90%1RMくらいの重量で限界セット測定で想定1RMを算出する、もしくは直接1RMを測定するのが一般的です。どの方法にしろ測定を行う重量に近い重量はトレーニングで持っておいたほうがいいです。(85%1RMくらいまでしかトレーニングせずにいきなり1RM測定とかはしない)

怪我リスクを考えると、85%-90%1RM程度を限界セット(ただし潰れるまではやらずにRPE9か9.5で止める)が安全だと思います。5レップ付近が限界になるくらいの重量だと想定1RMもわりと正確に出せます。8レップや10レップ出来る重量だと想定1RMが不正確になりやすいです。

ベンチプレス100kgといった節目で1RMチャレンジをしたくなる気持ちはよくわかるので、そういった場合はスポッターをお願いしたり、セーフティをちゃんとセットしたりして安全に行いましょう。


<分析ポイントの例>


・狙ったとおり重量は伸びたか
伸びた場合はどこが成功要因か。土台とピークのどこが伸びた? 筋肥大した? 筋力だけが伸びた? 弱点が強化された? フォームが改善された? 強度やボリュームの設定が良かった?


・プログラムをどれくらい実施できていたか
実施率は100%に近かったか。あまり実施できなかった場合は何が原因か。その原因を取り除くことは出来るか。例えば、強度設定が高すぎて実施できなかった場合は、強度設定を下げる。時間や体力がボトルネックになっていた場合は、力を入れる種目を絞って、他の種目は維持程度に軽くトレーニングするのも選択肢になる。


・強度とボリュームは適切だったか
強い刺激と弱い刺激をメリハリつけて入れられていたか。


・栄養摂取や睡眠は十分だったか


・疲労管理は上手くいったか


・弱点となる部位は見つかったか


・体重の増減はあったか。
中級者くらいの男性(身長cm - 体重kg = 100くらい。例えば、170cm、70kgの人)が全身トレーニングで、なるべく体脂肪を増やさないぎりぎりの増量を狙う場合は、2,3ヶ月で0.5-1.0kg体重が増えるくらいがちょうどよいペースだと思います。このくらいの体重増加ペースで重量も伸びているなら、上手くいっています。

2,3ヶ月といった短期間で5kgとか増やすと一時的に重量も伸びやすいですが、増えた体重の大部分が体脂肪で、減量すると重量も低下しやすいです。

重量が伸びず、体重も増えなかった場合は、次のサイクルでは摂取カロリーを増やしたほうが良いでしょう。

体重が減りながら重量が伸びた場合は、もともとの体脂肪率が高く体組成が改善した、筋肉量は変わらず筋力が伸びた、フォームが改善されたといった要因が考えられます。いずれの要因も何度も繰り返せるものではないので、継続的に重量を伸ばすには体重を徐々に増やしていきましょう。



改善点があるか考えてみて、次のサイクルに反映していきます。再現性のある成功プログラムが組めるように、分析していくことが重要です。

自分の状況が、ピーク部分に比べて土台が大きく、筋力を伸ばす余地が大きいと分析したうえで、5/3/1のような低ボリュームの筋力アッププログラムを実施して、狙い通り筋力が伸びたなら成功です。だけど自己分析をせず、「重量を伸ばしたい、有名なプログラムをやってみよう」という理由で低ボリュームの筋力アッププログラムをやると、ピークに比べて土台が大きいなら筋力は伸びますが、それを続けていくと筋力が伸びる余地がなくなりトレーニング効果が出なくなります。再現性のあるプログラムを組むには、自己分析と、プログラムがどこに効果があるのか・あったのかを把握することが重要です。


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BIG3のトレーニングプログラムについては電子書籍も出版しています。

BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方
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英語だと、Alexander Bromleyの書籍や動画が非常にためになるので、興味がある方はぜひ。この人はストロングマンの選手です。


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Alexander Bromley(You Tube)
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