果物の果糖が肥満の原因になり健康に悪影響を及ぼすという理由で果物を避けるよう指示するダイエットがある。一方で、果物に含まれる微量栄養素が身体に良いので積極的に食べるよう推奨する食事法もある。
以下、果物の食べ方について考えてみたい。
★果物の栄養素
果物に含まれる主な栄養素は、糖質、繊維質、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルである。果物の糖質は単糖まで分解した場合、果糖とブドウ糖の割合がだいたい1:1になる。繊維質とビタミンとミネラルは必ず摂取すべき栄養素だが、果物にはそれほど多くは含まれてはいない。フィトケミカルは健康に良い影響を与える可能性がある。
★果物の加工品
ドライフルーツにするとビタミンCなどが失われる。ジュースにすると繊維質も失われる。ドライフルーツは砂糖漬けにしていてカロリー密度が高いものが多いし、ジュースは大量に飲みやすいので、カロリーの摂り過ぎに注意する。ドライフルーツは砂糖の塊だと考えた方が良い。ジュースは100%ストレートでもコーラやファンタと同じくらいのカロリーがあるので、これらの清涼飲料水と同じだと考えたほうが良い。
例としてパイナップル、パイナップルジュース、パイナップルドライフルーツの栄養成分。
★身体に良いかどうか
果物に限らず、食べ物が身体に良いかどうかは、その人の置かれた状況による。運動をせずカロリーオーバーの状況で糖質、特に果糖を大量に摂取するのは身体に悪い(関連記事参照)。というか食べ過ぎではカロリーのある食べ物は身体に悪いだろう。一方で、餓死寸前の人にとっては糖質は身体に良い。その人の置かれた状況を考慮せず、ある特定の食べ物を身体に悪いとするのは馬鹿げている。
こんな極端なことを言っても実生活のガイドラインにならないので、研究を参考にしてみると。
Health implications of fructose consumption: A review of recent data.
果糖の摂取は1日50g以下、もしくは総カロリーの10%以下が健康に悪影響を及ぼさない目安になっている。果物の糖質だけでなく、砂糖や異性化糖も果糖とブドウ糖の割合がだいたい1:1なので、果物やお菓子やジュースやケーキなどひっくるめて甘い食べ物の糖質は一日100g(400kal)までということになる。でもまあちょっとこれだと微量栄養素の観点から甘いもの(たいてい微量栄養素が乏しい)を摂り過ぎかなと思うし、料理にも砂糖は使われるので、果物やお菓子やデザートは一日200kcal程度までが妥当なガイドラインかと思う。
市販の菓子類に比べれば、果物は微量栄養素が多少なりとも含まれていて、質の悪い脂質も入っていないので、楽しみのための甘いものとして生の果物や干しただけのドライフルーツ(プルーンなど)を選択するのは良い生活習慣だろう。
もちろん一時的に1日200kcalを超えて食べても問題はない。甘いものを食べ過ぎた場合は、他の日に食べるのを控えれば良い。毎日大量に食べ続けなければ問題はない。
上のガイドラインは一日の摂取カロリーが2000kcalくらいで、特に運動していない人を想定している。運動量の多いアスリート、例えばロードレースや水泳やマラソンやシンクロナイズドスイミングなどの選手は、必要な摂取カロリーが多いのでもっと甘いものを食べても良いだろう。むしろホールフード中心に1日5000kcal食べたりするのは消化吸収能力が高くないとキツイはず。胃腸が強くないアスリートは、精製度の高い食品とサプリメントを積極的に利用しても良いと思う。
関連記事:
オーバーカロリー時のグルコース・フルクトース摂取の影響
5/10/2016
5/30/2014
オーバーカロリー時のグルコース・フルクトース摂取の影響
1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースを10週間にわたって摂取した場合の、体組成および脂質代謝異常やインスリン感受性に関する各指標への影響を調べた研究。結論を先に書いておくと、オーバーカロリーの状態でフルクトースを大量に摂取すると、腹部内臓脂肪が増加しやすく、脂質代謝異常のリスクが高まり、耐糖能が低下し、インスリン感受性が低下する。
★基礎知識
グルコース: ブドウ糖
フルクトース: 果糖
スクロース: グルコース分子1つとフルクトース分子1つが結合したもの。いわゆる普通の砂糖。
普通の食べ物で甘いものにはだいたいフルクトースが含まれている(麦芽糖や人工甘味料を除く)。
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康(肥満で中性脂肪などの各指標は良くはないけど現状では特に病気無し)
性別: 男性・女性
人数: 32名
年齢: 45-72歳
BMI: 25-35
運動: 被験者選びの段階で週の運動時間が3.5時間以上の人は除外。実験期間中も運動指導はなし。
<期間>
3段階の実験フェーズで構成されている。
a) 研究センター内での2週間。維持カロリーの食事。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物。
b) 研究センター外での8週間。自由な食事に加えて、1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取。糖ドリンクは3度の食事の時にそれぞれ一緒に摂取。これ以外は糖分の含まれる飲み物を飲まないよう指導。
c) 研究センター内での2週間。1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取しつつ、トータルで維持カロリーになるように食事管理。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物30%と、グルコースもしくはフルクトース25%。
★結果
- 研究センター外の8週間の体重・体脂肪量・ウェストサイズの増加は、グルコース・フルクトース群とも同じくらい。(Table 3 参照)
- フルクトース群は、腹部の体脂肪、特に内臓脂肪の増加が多かった。グルコース群は腹部内臓脂肪はほとんど増えなかった。(Figure 1 と Table 3 を参照 / SAT=皮下脂肪 VAT=内臓脂肪)
- 男性は腹部内臓脂肪の増加が女性よりも顕著だった。(Table S3 の最下段参照)
- 血中の脂質とリポタンパクの各指標は、全般的にフルクトース群の方が大幅に増加。(Table 4 参照)
- 食後のDNL(糖質→脂質)変換はフルクトース群で大幅に増加。(Table 4 参照)
- 耐糖能は、グルコース群では変わらなかったが、フルクトース群では低下。(Table 5 参照)
- インスリン感受性は、グルコース群では男性が上昇、女性は低下、フルクトース群では男女とも低下し女性の方が低下率が大きい。(Table 5 参照)
★個人的な感想
この実験とボディメイクでの意図的な増量では、運動の有無と、実験の被験者がすでにかなりの肥満であるという点が異なる。まあ増量時は甘いものを大量に食べない方が、比較的健康的に増量できるだろう。摂取する炭水化物は、米やパスタなど複合炭水化物を主体にするのが良いだろう。デザートやおやつに適度に甘いものを食べるのはさして影響ないと思う。
ちなみにこの研究で摂取したフルクトースと同レベルのフルクトースを摂取しようとしたら、成人男性(1日の必要摂取カロリー2400kcalと想定)で毎日2.5リットルのコーラを飲む必要がある。砂糖なら300グラム。ただ、フルクトースに加えてほぼ同量のグルコースも摂取することになるのでこの実験デザインと等しくはならない。
参考:
Consuming fructose-sweetened, not glucose-sweetened, beverages increases visceral adiposity and lipids and decreases insulin sensitivity in overweight/obese humans
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19381015
関連記事:
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響
砂糖と糖尿病
果糖ぶどう糖液糖と肥満
5/28/2014
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響
スクロース(≒砂糖)やHFCS(≒果糖ぶどう糖液糖)の健康への影響を調べた既存の研究は、疫学調査や、マウスに異常な量を与えるといった研究が多い。今回の研究は、肥満の人が一般的に摂取している量の糖を摂取した場合の身体への影響を調べた初めての前向き研究(prospective study)とのこと。2014年発表の研究。
スクロースとHFCSの違いは、グルコース分子とフルクトース分子が結合しているか否かと、フルクトースが含まれる割合。一般的に使用されているHFCSはフルクトースの割合が55%か42%なので、フルクトース含有率はスクロースとほぼ同じ。
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康な肥満
性別: 男性・女性
人種: 白人68%、アフリカ系9%、ヒスパニック14%、アジア系6%、その他3%
人数: 65名
年齢: 25-60歳
BMI: 27-35
<期間>
10週間
<一日の食事>
摂取カロリー: 維持カロリー
総摂取カロリーに占める糖由来のカロリーの割合: 10%HFCS / 20%HFCS / 10%スクロース / 20%スクロース
食事管理方法:低脂肪乳に糖を混ぜたものを被験者に配給。トータルで維持カロリーになるよう食事指導。食事は外で各自食べる。加糖された低脂肪乳を規定量飲まなかったりすると実験から脱落。開始時86名で最終的に65名が残った。
★結果
血圧や中性脂肪レベルは全てのグループで変化無し。
体重は全体では10週間で1kg増えたが、テクニカルには維持されていると言っていい状態。自己申告ベースでトータルの摂取カロリーが増えたことが原因かも(外で各自食事しているので正確な摂取カロリーは把握できない)。ウェストサイズには有意な差は無し。
スクロース20%群でHDL低下が見られた。脂質の摂取量が減って炭水化物の摂取量が増えたことが要因かも。
まとめると、一日の摂取カロリーの10%および20%相当のスクロースと砂糖(食事でも糖を摂取しているのでトータルの糖の摂取量はもっと多い。Table 3を参照)を10週間摂取しても、総摂取カロリーが維持カロリー程度ならば、体重や肥満状況やウェストサイズや中性脂肪レベルやLDLや血圧には悪影響が現れないという結果になった。
★感想
一通り読んだけど、まともな研究だと思った。ただ、資金を出しているのがコーン精製に関わる企業の協会だ。当然、HFCSの利害関係者。うーん。他の研究からも、トータルの摂取カロリーが維持カロリーで、常識的な範囲内での摂取量なら、砂糖およびHFCSの摂取は肥満や循環器疾患などの大きなリスクにならないというのは正しいと思うが。
参考:
The Effect of Normally Consumed Amounts of Sucrose or High Fructose Corn Syrup on Lipid Profiles, Body Composition and Related Parameters in Overweight/Obese Subjects
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3967182/
関連記事:
砂糖と糖尿病
果糖ぶどう糖液糖と肥満
4/26/2014
果糖ぶどう糖液糖と肥満
High-fructose corn syrup causes characteristics of obesity in rats: increased body weight, body fat and triglyceride levels
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3522469/
異性化糖(High-fructose corn syrup)が肥満の元凶という主張の根拠としてよく引用されるプリンストン大の論文。この実験で使われた異性化糖は果糖含有率55%なので、異性化糖の分類から以下、High-fructose corn syrupを果糖ぶどう糖液糖と訳す。果糖ぶどう糖液糖という単語の方が馴染み深いし。
そもそもラットを対象とした研究を人間の肥満問題にそのまま当てはめるのはナンセンスだと私は思っているのだけど、この研究では等カロリーを摂取しているはずなのに何故か体重に違いが出ているという結果が出ていて、興味深いので取り上げてみます。
実験で使われた餌のパターンは、以下の3種類。
・スクロース(砂糖)溶液 + 普通の餌
・果糖ぶどう糖液糖(果糖含有率55%)溶液 + 普通の餌
・普通の餌のみ(対照群)
それと、糖溶液・餌へのアクセス時間が12時間・24時間、実験期間が8週間・6-7ヶ月。詳しくは画像のTable 1に。
まず、ダイエットや栄養や健康についての問題は、科学界にイデオロギー的な対立があって、バイアスのかかった研究も多い。この研究はおそらく、果糖ぶどう糖液糖を肥満の元凶だと思っている陣営によって行われている。実験の構成や論文の書き方もそう主張できるようにバイアスがかかっているように見える。
結果が正しく測定されたと仮定して、データを見比べてみる。
Experiment 1は8週間の実験。Experiment 2は6-7ヶ月の実験。
・1日12時間の果糖ぶどう糖液糖溶液へのアクセスのグループの最終的な体重が重い。これを果糖ぶどう糖液糖が肥満の要因という主張の根拠としている。糖溶液+餌の総摂取カロリーは、スクロースグループでも、果糖ぶどう糖液糖グループ(12時間・24時間両方)でも同じだったとしている。対照群の摂取カロリーについては言及なし。以下、私のツッコミ。
→ 24時間果糖ぶどう糖液糖溶液グループは、12時間スクロースグループと体重に差がない。12時間果糖ぶどう糖液糖アクセスだと肥満になって、24時間果糖ぶどう糖液糖アクセスだと肥満にならないという結果。12時間でも24時間でも、糖溶液からの摂取カロリーと、餌を含めた総摂取カロリーは同じ。どう説明すれば良いのか? (論文中では説明なし)
→ 摂取カロリーが等しいのに体重に差が出たということは、消費カロリーに差があると考えられる。果糖ぶどう糖液糖溶液へのアクセス可能な時間によって、消費カロリーが変化するのだろうか。何故?(論文中では説明なし)
→ Experiment 2 だと、24時間果糖ぶどう糖液糖グループと、12時間果糖ぶどう糖液糖グループは最終的な体重に有意差がないとしている。Experiment 2 については摂取カロリーに差があったかどうかは書かれていない。摂取カロリーが同じなら、Experiment 1の結果と矛盾する。(論文中では説明なし)
→ Experiment 1では、糖溶液由来の摂取カロリーは、スクロースグループの方が果糖ぶどう糖液糖グループよりも1.5倍くらい多くなった。従って、フルクトースの摂取量は、スクロースグループの方が多い。スクロース(50%がフルクトース)と果糖ぶどう糖液糖(ここでは55%がフルクトース)の違いは、フルクトース含有率と、フルクトース分子とグルコース分子が結合しているか否か。この実験の結果をそのまま解釈すると、フルクトースの摂取量がラットの肥満に関係するのではなくて、フルクトース分子とグルコース分子の結合状態がラットの肥満に関係するという結果になる。
→ Experiment 2では、12時間果糖ぶどう糖液糖+12時間餌グループと、12時間スクロース+12時間餌グループでは体重に差がない。Experiment 1との違いは、餌のアクセス時間が24時間ではなく12時間になっていること。12時間果糖ぶどう糖液糖アクセスの場合、24時間餌にアクセスできると総摂取カロリーが同じでも肥満になり、12時間餌にアクセスできると摂取カロリーは不明だが肥満にならないという結果に。
以上より、実験結果から論理的に引き出される因果関係は、「フルクトース分子とグルコース分子が結合していない状態の糖溶液に12時間アクセス可能、且つ餌に24時間アクセス可能な状態だと、24時間アクセス可能な場合及びスクロース溶液に12時間アクセス可能な場合と摂取カロリーは変わらないが、このケースのみ消費カロリーの低下が引き起こされ、ラットは肥満する」ということになる。
こんな特殊なメカニズムがラットに備わっている可能性と、実験に何らかの不備があった可能性、もしくは単なる偶然である可能性、どの可能性が高いだろうか。
ちなみに Alan aragon や Lyle McDonald も、フルクトース・果糖ぶどう糖液糖悪玉論に対して否定的。フルクトース・果糖ぶどう糖液糖悪玉論に対する、まともな人々の回答を書いておくと。
・一般的に使われている果糖ぶどう糖液糖は、フルクトースとグルコースの含有率が砂糖とほとんど変わらない。
・異常な量を摂取しなければ、フルクトース自体に毒性があるわけではない。(というか、どんなものでも異常な量を摂取すれば毒性はあるだろう)
・果糖ぶどう糖液糖に、カロリー収支を超えて肥満を引き起こす効果があるわけではない。
・肥満防止には、カロリーオーバーにならないよう気をつけること。カロリーがあるものならどんなものでも食べ過ぎれば太る。
・果糖ぶどう糖液糖の積極的な摂取を推奨するわけではない。健康維持に有用な微量栄養素の摂取のため、砂糖も果糖ぶどう糖液糖も摂取量は低く抑えて、精製度の低い食べ物をバランスよく摂取すること。
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