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1/12/2022

スクワットのバーの担ぎ方再考

私は、ロウバースクワットは肩甲骨を強く寄せて、背中をガチガチに固めて担ぐものだと思っていて、以前は自分でもそうやっていました。下の画像が実例で、Mark Rippetoe のスターティングストレングスに書かれているようなやり方です。ただこのやり方は肩周りが窮屈で肘や肩に負担がかかる感じがするので、ここ数年はずっとハイバーでスクワットしています。


動画:筋トレ:スターティングストレングス・プログラムによるローバースクワット
https://www.youtube.com/watch?v=4nXeRHYVHGo


ハイバーに変えてから、姿勢のことなど色々と学んでいって、上のようなロウバーのフォームで肩甲骨を強く寄せて胸椎を伸展しながらスクワットすることは機能的な身体動作なのだろうか? と疑問が燻ってしました。ハイバーだと肩甲骨を強く寄せる必要はないですし、胸椎を伸展する必要もないです。ゴブレットスクワットや、セーフティスクワットバーでのスクワットでも同様です。

最近、ロウバーの担ぎ方を調べ直して、ロウバースクワットのパワーリフターでも肩甲骨を強く寄せず、胸椎も伸展しないフォームの人がいるのがわかって、ロウバーもハイバーと同じ姿勢でやっていいとスッキリしたので、今回の記事を書くことにしました。体幹、姿勢、身体機能の基本モデルが、ハイバーでもロウバーでも共通で使えるのがスッキリポイントです。


10/30/2021

腰痛対策シリーズ1回目:腰痛の概略

腰痛対策について書いていきます。私自身は、若い頃は腰痛持ちでギックリ腰もやりましたが、自分で色々と対策を行うようになってから腰の調子は良いです。

腰痛にはいくつか種類がありますが、腰椎付近の慢性的な痛みの対処方法と予防方法について。椎間板ヘルニアや腰椎すべり症といったお医者さんの担当範囲のものではなく、なんとなく痛いといったレベルの腰痛の対策です。

長くなるので3回にわけて書くつもりです。

1回目:腰痛の概略

2回目:腰痛を防ぐストレッチやトレーニング

3回目:スクワットとデッドリフトでの腰痛のトラブルシューティング

背景となる考え方や、状況に応じての種目の選択方法といった点を中心に書いてみたいと思います。腰は肩や膝と並んで痛みが発生しやすい部位で、その対策も世の中に多くありますが、どれをやったら良いのか自分の状況に合わせて選べるように。

「腰痛 体幹」などで検索すると、専門家によって「◯◯をやれ! △△はやるな!」というのが違っているので、背景の考え方を理解していないと何をやればいいのかわからなくなりますし、信頼できそうな専門家の言うことを信じるにしても、◯◯さえやっていればいいのかと捉えがちになります。

さすがに最近は、腰痛対策でシットアップやバックエクステンションを勧めるケースはあまり見かけなくなり、プランクやドローインといったまともな種目を勧めることがほとんどだと思います。しかし、どんな人でもプランクやドローインさえやっていれば腰痛は解決するのかというと、そうではありません。

5/08/2021

デッドリフト 腹圧のかけかた 体幹の固め方

私のやり方の説明です。コンベンショナル、ベルト無し。撮影可能なジムをビジターで利用してスマホで撮ってきました。画質が10年前の動画みたいですが数日前に撮ってます。

動画:デッドリフト 腹圧のかけかた 体幹の固め方
https://www.youtube.com/watch?v=7L11x3_1lbY


これが正しいやり方だと言いたいわけではなくて、デッドリフトで体幹を固めるのが苦手な人に参考にしてもらえればと。

腹圧のコントロール方法は、関連記事に詳しく書いてあります。

関連記事:筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方

1/06/2021

筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方

腹圧は腹腔内圧のことで、胴体の横隔膜より下にある内臓などが詰まってる部分(腹腔)の圧力です。正確には、骨盤内部の部分は骨盤腔になりますが、腹腔と骨盤腔の間に仕切りがあるわけではないので、腹腔と骨盤腔をまとめて大きな水風船みたいなものだと考えるとわかりやすいです。下図のピンク色の部分がそれにあたります。
筋トレではよく、腹圧を高めることで体幹を固め、腰の怪我を防ぐと言われますが、これはどういうことなのか説明していきます。


3/29/2020

背中の伸展ポジションからの脱却

スクワットやデッドリフトで、背中の筋肉(主に脊柱起立筋群)で体幹を支える力の入れ方の問題点について書いていきたい。だいたいが背骨、特に腰椎がニュートラルポジションより反って(伸展して)、骨盤が前傾して、顎が上がっている。こういうやり方をしている人が多いので問題点を色々と書いていく



★背中の伸展ポジションの問題点
背中を伸展させて動作を行う問題点を羅列していくと、
- 骨盤前傾により股関節の屈曲が制限されるので、股関節を深く曲げにくい。
- 骨盤前傾でしゃがむと鼠径部で骨がゴリゴリ当たることがあり気持ちよくしゃがみにくい。
- 床引きデッドリフトは股関節の屈曲が足りないと、背中を丸めて無理に届かせることになるので腰に危険な負荷がかかる。
- 体幹がコントロールできていないのでスクワットでbutt winkしやすい。
- デッドリフトではハムストリングが伸びた状態で強い負荷をかけることになるので、ハムストリングを痛めやすい。
- 腰を反りすぎてトレーニング中に痛めるケースはあまりないとは思うが、脊柱起立筋群が緊張しっぱなしで常に腰が反ったポジションにあることで慢性的な腰の痛みになりやすい。

身体機能面で言えば、背中の筋肉に力をいれて背中を反って体幹を支える問題点は、矢状面のプル方向(デッドリフトやスクワット)でのみ辛うじてスタビリティを得られるが、矢状面のプッシュ方向(ベアクロールやプランク)、そして横断面、前額面では全くスタビリティが得られないこと。



多くのスポーツの動作だけでなく、普通に歩くことでさえも、矢状面だけでなく横断面や前額面での複雑な動作が必要なので、背中を反って体幹を支える癖をつけると、他のことに全く使えない身体の使い方を覚えてしまう。

もちろん背中の筋肉は体幹を支えるのに重要な筋肉だけど、胴体周り360度で体幹を固める身体の使い方を覚えると、機能的に身体を動かせるようになるし、スポーツにも応用が効くし、怪我しにくい。




★背中の伸展対策トレーニング
基本の体幹の固め方は以下参照

関連記事:体幹トレーニング

背中のストレッチのストレッチをして背中の反りを緩和しておくと良い

関連記事:背中のストレッチ

体幹の前側の筋肉を動員して体幹を固める練習でやりたいエクササイズは、デッドバグ系、ベアクロール系。肋骨を締めて体幹を固めるのを意識するのだけど、同時に腕と脚が体幹の前側の筋肉とリンクするようにすると良い。体幹の前側の筋肉は腹直筋だけじゃなく腹斜筋などお腹周り全体。手の平と足の裏が地面や重りに接していると良い(特に母指球・母趾球に負荷を感じると良い)。

デッドバグ系やベアクロール系の基本は、骨盤後傾で腰椎フラットにする。息を吐ききると肋骨を締めやすい。腕は強く突き出す。

ベアクロールはこんな感じで姿勢を作って前後左右に適当に這い回る。ジムで這い回るのが恥ずかしい場合は、「右手左足を浮かせる→左手右足を浮かせる」を交互にやると良いと思う。

動画:HighPerformanceHandbook.com: Dead Bug
https://www.youtube.com/watch?v=rbemelnkHag
デッドバグ。腰椎フラットで腰が床に付くように。肋骨が上がらないように。


動画:3 Month PNF Patterns with Bottoms Up Kettlebell Hold
https://www.youtube.com/watch?v=G7pneju5wIg
手が膝に近づく時に息を吸い、腕を伸ばす時に息を吐く。重りを持った腕は高く突き上げるイメージで。腰が反らず、胸が開かないよう注意する。


動画:Reverse Inch Worm
https://www.youtube.com/watch?v=RoM-81TFuLM
身体を曲げる時に息を吸って、伸ばす時に息を吐く。腰が反らず、胸が開かないよう注意する。


あと最近気づいたのですが、空手の三戦がいいんじゃないかと。
空手エアプですが、見様見真似で三戦の姿勢を取ってみると体幹を固めやすく、腕と脚と体幹がリンクしている感覚がある。足裏は床にべったりつけて、踵の骨の内側の接地を意識、脚、臀筋、体幹に力が入り、肘を内側に絞ることで腹斜筋のあたりが強く収縮し肋骨が締まる。呼吸はよくわからないので体幹トレーニングの記事で書いたPRIの呼吸法を使って、口から息を吐ききって肋骨を締めて腹回りの緊張を保ったまま鼻から息を吸ってバルサルバで息を止めて腹圧を高めてみた。


★デッドリフト
腕と脚と体幹のリンクができたら、デッドリフトをやってみる。バックスクワットよりもデッドリフトのほうが体幹の前側の筋肉に力を入れての動作がやりやすい。

(今後また変わるかもしれないけど今現在)個人的にやりやすいやり方を書いていくと、

バーベルの前に立ち、直立した状態で腕をキョンシーみたいに前に突き出し、口から息を吐ききってお腹周りの筋肉が収縮し肋骨が締まるのを感じる。お腹周りの筋肉の緊張を解かずに鼻から息を吸って適当なところで息を止める。

そのまま屈んでいき、体幹と尻に緊張を感じながらバーを握る。足の裏は母趾球と踵の骨のやや内側が地面に接しているのを意識する。アシンメトリーがある人は、重心が乗りにくい側の足の踵の内側接地を特に意識すると良い。

バーを軽く握ったら親指を内側に折り曲げる。母指球を押し出しながらバーを強く握り込み手首を軽く返すように力を入れる。同時に腹圧を最高レベルに引き上げる。この時点でバーベルが少し浮くのでそのまま足の裏で床を押し、バーが膝を超えたら上体を起こしてロックアウト。こうやると、胸が開かず肩甲骨が前傾せず体幹が安定する感じがする

パワーリフティング系のデッドリフト・スクワットのやり方解説だと膝を外側に押し出す、踏み込んだ足を両側に押し開くイメージで、と解説しているところが多いのだけど、これだと背中の伸展の筋肉に力を入れやすくなるけど体幹の前側に力を入れにくくなる感じがする。スクワットもデッドリフトも、膝とつま先はもちろん外側に開くのだけど、踵の骨の内側の接地、大腿骨はどちらかというと内旋方向に力を入れる(実際に内旋はさせない)イメージでやると、腕と脚と体幹の前側の筋肉がリンクし、骨盤が安定し、体幹を固めやすい。



★空気の入れ方
胸を水平面360度膨らませて息を吸い込む。肋骨の乳首より下のあたりを、前後左右360度膨らませるイメージで行うとやりやすいと思う。息を吸い込む時に肩が上がらないよう注意する。

 バックスクワットは腕とバーのポジションの問題で、上背部に空気を入れにくいので、息を吸うときに意識して上背部に空気を入れるようにすると体幹が安定すると思う。背中のストレッチで上背部に空気を入れる練習をすると良い。



★コンディショニング
背骨ニュートラルでトレーニングを行っても、デッドリフトやスクワットを熱心にやると背中の筋肉にはどうしても強い負荷がかかる。背中のストレッチやフォームローラーころころして背中の筋肉の緊張を取ってやると良いと思う。

関連記事:背中のストレッチ

動画:背中の筋膜リリース(コア フォームローラー編)
https://www.youtube.com/watch?v=1YVUjPEQQT0

12/24/2019

背中のストレッチ

ベンチプレス、デッドリフト、バックスクワット、プルやロウ。コンパウンド種目中心に本格的なウェイトトレーニングを行うと、背中が過度に反った(伸展)状態になりやすく、背中を反らせる筋肉が緊張しやすい。また肩甲骨を寄せて(内転)下げる(下制)状態になりやすい。骨盤が前傾し、腰が反り、肋骨が開きっぱなしになりやすい。




従って、背中を丸めて、肩甲骨を開いて、骨盤を後傾させて、肋骨を締めるエクササイズを行い、動作のバランスを取るとコンディションを整えやすい。

以下のストレッチをやると背中の緊張が取れ、肩甲骨の動きがスムーズになるので、熱心にウェイトトレーニングをやる人は試してみると良いと思う。ウォームアップの段階で行いアラインメント調整すると良いが、BIG3のセット間インターバルや、トレーニング後にもやると背中がリラックス出来て気持ちがいいのでおすすめです。

動画:Lift Moore Monday: All Fours Belly Lift
https://www.youtube.com/watch?v=LgpOlZpVFcQ

1. 口から息をゆっくり限界まで吐き出す。同時に背中を丸めながら、骨盤を後傾させる。恥骨と肋骨を近づけるイメージで行う。殿筋に力を入れる。息を吐ききった後はそのまま2,3秒息を止める。腕は肘を伸ばし床を押しながら(特に親指と人差し指で押す)、手で床を掴む感じをキープする。顎は引く。
2. その姿勢を維持したまま、鼻から息を吸い込む。上背部を膨らませるイメージで行う。
3. 次の吐き出すフェーズでさらに背中を丸めていく。息を吐き出すたびに少しずつ背中が丸まるよう頑張る。
4. 呼吸4,5回で1セット。これを2,3セット行う。


このエクササイズは上手くやると効果が絶大。
・背中の反りを直し、脊柱起立筋群の緊張を緩和する。
・肩甲骨が内転・下制で張り付いているのをスムーズに動かせるようにする。
・横隔膜をしっかり使って肋骨を膨らませて深く呼吸できるようにする。
・肋骨を締め強い体幹を作れるようにする。

熱心にウェイトトレーニングする人がなりやすい症状をオフセットするのに、一つだけエクササイズをするとしたらこれがベストだと思う。


他にも背中を丸めて腕を伸ばすエクササイズがあるので興味がある方は以下のサイトをどうぞ。NFLドラフト候補生のトレーニングを指導している人の記事で、ベンチプレスやデッドリフトやプルやロウを行うアスリートの身体コンディションを保つにはどうすれば良いのかという内容です。

Why You Must Reach
https://dsstrength.com/why-you-must-reach/


関連記事:プッシュとプルのバランス


11/26/2019

体幹トレーニング

★体幹の役割
身体動作における体幹の役割は、下半身と上半身をつなぐこと。日常動作やスポーツの多くにおいて、体幹は下半身の生み出した力を上半身に伝える。重いものを持ち上げたり、ボールを投げたり、棒を振り回したり(野球やゴルフ)。

力の伝達の橋渡しを効率的にするには、体幹はグニャグニャ動いてはいけない。また腰椎の健康のためにも、強い力をかけながら腰椎をグニャグニャ動かさないほうが良い。

日常動作やスポーツで、体幹を積極的に動かして力を生み出すケースはあまりないので、体幹を積極的に動かして筋力トレーニングを行うシットアップやバックエクステンションといったエクササイズは、機能的な身体動作の面からいって効果的とはいえない。そして腰の健康にも悪い。

体幹のトレーニングの基本的な考え方は、
(1)腰椎のニュートラルポジションを保ちつつ、腹圧を高め体幹を固める。

(2)日常動作やスポーツによって体幹をどの程度固めるかは異なる。目的に応じて、適切な強度と適切なタイミングで体幹を固めることが出来るようにトレーニングする。

日常動作だけだったら、そこまで強く体幹を固める必要はない。物を持ち上げるときにフッと力が抜けてぎっくり腰にならないように、意識せず自動的に適切なタイミングで体幹の筋肉が働くようにトレーニングすると良いだろう。重たいバーベルでスクワットやデッドリフトを行うなら、せん断方向と圧縮方向の強い力がかかる時に体幹をガチガチに固められるようトレーニングする。野球やゴルフなどねじりの動作があるスポーツを行うなら、捻り方向に力がかかったときにも体幹が固まるようトレーニングする。

トレーニングの順序としては、まずは股関節や肩関節などを動かさず、外部からの負荷もかけない状態で体幹を固める練習をする。それからこの状態を保ったまま肩関節や股関節を動かし、徐々に動作を複雑にし、かける負荷を強くしていく。



★体幹を固める練習
PRIなど姿勢系の分野でキャニスターポジションと呼ばれる姿勢を作れるようにする。競技によっては腰を反ったり丸めたりしたほうが競技パフォーマンスの面で良いケースもあるけど、ほとんどの人にとっては腰椎ニュートラルが効率的な身体動作の面でも腰の健康の面でもメリットがあるので、腰椎ニュートラルで体幹を固める方法を書いていく。

キャニスターは蓋のある密閉容器のことだけど、個人的にあまり馴染みがないので海苔の缶で例え話を書きます。海苔の缶の蓋をまっすぐ下ろしていくと、缶の中で空気がパンパンになる感じがする。これと同じように、骨盤に肋骨を真っ直ぐ下ろして蓋をするイメージで姿勢を作ると、腹圧がパンパンになって体幹が固まる。正確には横隔膜と骨盤底を平行にして真っ直ぐ下ろして蓋をするのだけど、横隔膜と骨盤底の身体イメージを持つのは困難なので、肋骨で骨盤に蓋をするイメージで良いと思う。

今回説明する体幹を固めるエクササイズが主に向いているのは、腰が過度に反っているタイプの人。熱心にトレーニングをしていたり、背筋をぴんと伸ばした姿勢で長時間座っていたりするとこうなりやすい。他のパターン、例えば腰がフラットになっているケースだとまた別のアプローチが向いているかもしれない(ただ腰がフラットだとすでにウェイトトレーニングで怪我をしている可能性が高いので、この記事を読む人にはそのケースはほとんどいないと思う)。


自分がどのような姿勢になっているのか知るには、能力の高い専門家による正確なアセスメントが一番良いのだけど、自己診断するなら、
・固い床に仰向けに寝ると、背中が反って腰の部分にかなりスペースが出来る、後頭部を床につけると肋骨が上方に突き出る。
・太っているわけではないが、直立姿勢になると下腹部がぽっこり前に出る。
・腰を反ると腰が痛い。
・自重で踵とお尻をぺったりとつけて座り込むフルボトムスクワットのポジションが出来ない。
このような状態だと、骨盤が前傾して、腰が反っていると思われる。

骨盤が前傾して腰が反っていると、以下のような症状が出やすい。
・股関節を深く曲げた時に腿の前側の付け根(鼠径部)が痛む。
・腰が張ったり、痛くなったりする。
・デッドリフト系のエクササイズをやると、ハムストリングスが伸び過ぎてハムストリングスが痛む。
・スクワットやデッドリフトで膝が内側によれやすく、膝が痛くなる。

骨盤の前傾を修正し、体幹を意識して固めるエクササイズは、ウォームアップの段階で行う。アラインメントの調整や、スタビライザーへの刺激はウォームアップでやったほうが良い。ウェイトやケーブルマシンを使って本格的に体幹に負荷をかけるエクササイズは、トレーニング本番で行う。

関連記事:ストレッチとウォームアップ


◇◇◇ステップ1◇◇◇
骨盤が前傾した状態で固まってしまっている場合は、まず骨盤が動くようにする。

関連記事:骨盤の前傾の矯正

a) 腰椎を曲げ、脊柱起立筋を伸ばし、骨盤を後傾させよう。強い負荷をかけて腰椎を曲げ伸ばしするのは腰に悪いけど、負荷をかけない状態で軽く曲げ伸ばしするのは腰に良い。motion is lotion!(関節は適度に動かすと関節の健康に良い)。

背中が強く反っている人は、この背中のストレッチをやっておくと良い。

関連記事:背中のストレッチ

キャットキャメル。息を吐き出しながら背中を丸める。背骨の可動域の限界を攻めないこと。腰椎を曲げて、骨盤が後傾できるようにすれば良い。
動画:RTS Coaching: The Cat-Camel

b) 股関節の屈筋を伸ばす。脛が地面と並行だと股関節の単関節筋(腸腰筋)が主に伸びる。足首を持ち上げると、膝と股関節の二関節筋(大腿直筋)が伸びやすくなる。両方やろう。コツは前後にグイグイ動いたりせず、腰を反らないように注意し、殿筋に力を入れ、恥骨をクイッと上に向ける感じでやる。


c) 広背筋を伸ばす
デッドリフトや懸垂など背中のトレーニングを熱心にやる人は広背筋もストレッチしておくと良い。適当なものに掴まって、体重を後ろにかけて伸ばすのが手軽。肩関節だけ伸ばすのではなくて、肩甲骨も一緒に引っ張られる感じにすると良い。

動画:Best Lat Stretch EVER!


◇◇◇ステップ2◇◇◇
体幹を固める練習を行う。

寝転んで膝と股関節を90度に曲げて、足を壁につけるか椅子に乗せるかして、膝の間にフォームローラーなど適当なものを挟んで、踵を下方向に軽く押して、臀筋とハムストリングスと内転筋に軽く力を入れて尾てい骨を少し浮かせて、腰の部分がぺったり床につくようにする。首には力を入れない。首が辛い場合は、後頭部の下に数センチの厚みのものを置いて枕にする。腕はやりやすい位置に置いておく。顔の上あたりに伸ばしておいたり、手のひらを膝に軽く乗せたりするのも良いだろう。



ニュートラルポジションよりも骨盤が後傾して、腰椎がフラットになるが、このエクササイズはこれで大丈夫。その状態で、鼻から息を吸って、口から息を深く吐き出す。目安としては、吸い込む息の量は限界の75%程度、吐き出す息の量は限界100%。3-4秒かけて吸い込んで、5-8秒かけて吐き出して、吐ききった状態で2-3秒止める。これを4-5回繰り返す。

腹直筋だけでなく腹斜筋のあたりも締まり肋骨がタイトになればOK。鏡や窓ガラスに顔を近づけて、「はー」と息を吐きかけて曇らせるイメージでやると感覚を掴みやすい。クランチのように上半身を丸めないこと。海苔の缶の例えだと、腹直筋だけでなくお腹周り360°を筋肉の壁で固めることで、腹圧を高め体幹を強く固めることが出来る。息を吸って深く吐き出すのを何回か繰り返して練習する。

吸って吐く動作に慣れてきたら、今度は体幹を締めた状態をキープしながら、ある程度息を吸ってお腹に空気を入れる。この時、息を止めたまま全力で叫ぼうとすると腹圧が高まる感覚を掴める。この腹圧を高めた状態で息を止め、上の歯と下の歯をあわせて、舌を口蓋(口の中の上の部分)にベタッと押し付けると、体幹を非常に強く固めることが出来る。スクワットやデッドリフトなどガチガチに体幹を固める際は、このやり方で体幹を強く固めると良い。

動画:90-90 Breathing Drill


動画:90/90 Hip Lift | Melbourne Strength Culture Tutorial


このエクササイズで体幹を固めることができるようになったら、目的に応じて股関節や肩関節を動かし、動かす関節の数を徐々に増やし、負荷を上げていく。下半身だったら、最初は股関節だけで、次に股関節と膝関節といった具合に、動作の複雑性を上げていく。負荷も最初は軽い負荷で、慣れてきたら徐々に上げていく。



★目的に応じた体幹トレーニング
アラインメント調整や体幹を固める練習をやったら、目的に応じた体幹トレーニングへ。目的の数だけエクササイズの種類はあると思うけど、ざっと例を挙げていく。基本的な考え方を理解すれば、自分で効果的なエクササイズを選んだり、新たに作り出したり出来る。

例1) 日常動作で元気に動きたい。ぎっくり腰になりたくない。
軽めの負荷でスクワットとデッドリフトの動きをやっておくと良い。スクワットはゴブレットスクワットがおすすめ。バーベルバックスクワットは体幹を固めるのが難しいので、重い重量を必要としないなら無理にやる必要はない。

関連記事:バックスクワットでのバーベルの担ぎ方


関連記事:butt winkの話


デッドリフトは股関節の使い方だけでなく、低い位置のものを持ち上げるときにタイミング良く体幹を固める練習も大事なので、ルーマニアンデッドリフトのような「エキセントリック→コンセントリック」のパターンと、床に置いたバーベルやダンベルを持ち上げ、1レップごとに床に置いて、一旦直立姿勢に戻りまた床から持ち上げる「最初からコンセントリック」のパターンの両方をやると良い。

・ゴブレットスクワット

・ダンベルデッドリフト



例2)バーベルを使ったスクワットやデッドリフト
背中を反らないスクワットとデッドリフトの動きを一から学ぶ場合は、息を吐ききった状態で息を止め体幹を固め、非常に軽い負荷をかけながらルーマニアンデッドリフトやゴブレットスクワットをしてみると良い。腰を反って背中で重量を受け止めるのではなく、大腿四頭筋、殿筋、ハムストリングス、内転筋などで負荷を受け止め、体幹は固い筒になるのをイメージする。1レップごと直立時に息継ぎをする。腹圧が弱くなっているので、必ず非常に軽い負荷でゆっくり行うこと。慣れてきたら、息をお腹に吸い込んだ状態で同様に体幹を固めて腹圧をかけ、バーベルの重量を上げていく。

前半が腰を反りすぎのデッドリフトの例。後半が腰を反らないデッドリフトの例。後半のやり方のほうが良い。
動画:over driving erectors on deadlift


腰を反らず最短距離でバーベルを挙げ、最小の動きで直立姿勢になる。
動画:Simple Tip For Better Lifting | Plymouth Back Pain Experts


デッドリフトのロックアウトの動きはヒップスラストと同じなので、ヒップスラストをやると良い練習になる。ヒップスラストは無理に重たい重量でやると腰を反って無理やり挙げるので、軽めの重量で股関節のみをバシンとロックアウトするよう意識すると良い。

関連記事:ヒップスラストのやり方


関連記事:デッドリフトのやり方



例3)プッシュ・プレス動作の体幹トレーニング
プル動作での体幹トレーニグはデッドリフトで手軽に出来るけど、プッシュ・プレス時の体幹トレーニグは負荷の調整と手軽さの面で結構難しい。

手軽に出来るのは bear crawlかな。ケーブルマシンでプッシュ動作をするのも良いと思う。

強い負荷をかけるならシンプルにソリを押すトレーニングが良いだろう。アメフトやラグビーといった競技をするならこのようなトレーニグが効果的。


例4)横方向の体幹トレーニグ
サイドベントのように体幹を動かすのではなく、体幹を固めながら横方向の力を加えるのが良い。手軽に出来るのはサイドブリッジ(サイドプランク)。



やり方を少し変えることで負荷を上げることも出来る。

動画:EricCressey.com: 1-leg Side Bridge, Top Leg on Bench

動画:EricCressey.com: Side Bridge with Top Leg March



例5) 捻り動作の体幹トレーニング
ケーブルマシンが負荷を調整しやすくて使いやすいと思う。捻りの動きを生み出すのは、股関節や胸椎や肩関節で、体幹(腰椎)は捻らない。

動画:Half-Kneeling Chop/Lift | Core Stability | Controlled Rotation


動画:Band Half Kneeling Pallof Press


あとはメディシンボール投げとか。




★ベルト
体幹トレーニングの際はリフティングベルトはしないほうが良いと思う。体幹の筋肉の力の入り方が微妙に変わってくるし、日常動作や多くの競技ではベルトはしないで動作を行う。スクワットやデッドリフトでとにかく重たい重量を挙げたいなら、多くの人はベルトをしたほうがより重い重量を挙げられるので、したほうが良いだろう。




★見た目問題
腹直筋の見た目を良くするにはクランチ系をやるのが手っ取り早いので、ボディメイクの観点では少しは腹筋運動的なエクササイズをやっておくのもありだと思う。肩周り(三角筋や大胸筋)のトレーニングもそうなんだけど、ベンチプレスや三角筋のアイソレート種目や腹筋運動は、機能的な身体動作と怪我リスクの面ではデメリットがあるが、見た目重視の筋肉を筋肥大させるには効果的。個人的にはこんな感じの腹筋マシンが腰に負担をかけず、腹直筋の中部上部を収縮させられる。