1/12/2022

スクワットのバーの担ぎ方再考

私は、ロウバースクワットは肩甲骨を強く寄せて、背中をガチガチに固めて担ぐものだと思っていて、以前は自分でもそうやっていました。下の画像が実例で、Mark Rippetoe のスターティングストレングスに書かれているようなやり方です。ただこのやり方は肩周りが窮屈で肘や肩に負担がかかる感じがするので、ここ数年はずっとハイバーでスクワットしています。


動画:筋トレ:スターティングストレングス・プログラムによるローバースクワット
https://www.youtube.com/watch?v=4nXeRHYVHGo


ハイバーに変えてから、姿勢のことなど色々と学んでいって、上のようなロウバーのフォームで肩甲骨を強く寄せて胸椎を伸展しながらスクワットすることは機能的な身体動作なのだろうか? と疑問が燻ってしました。ハイバーだと肩甲骨を強く寄せる必要はないですし、胸椎を伸展する必要もないです。ゴブレットスクワットや、セーフティスクワットバーでのスクワットでも同様です。

最近、ロウバーの担ぎ方を調べ直して、ロウバースクワットのパワーリフターでも肩甲骨を強く寄せず、胸椎も伸展しないフォームの人がいるのがわかって、ロウバーもハイバーと同じ姿勢でやっていいとスッキリしたので、今回の記事を書くことにしました。体幹、姿勢、身体機能の基本モデルが、ハイバーでもロウバーでも共通で使えるのがスッキリポイントです。



パワーリフターの実例

スターティングストレングス型とは違って、肩甲骨を強く寄せず、胸椎を伸展しないロウバースクワットの実例です。




動画:【5分でわかる!】スクワットで高重量がモテる正しい担ぎ方!【最新版】
https://www.youtube.com/watch?v=aXTTUb_iC2w




動画:【化物スクワット】高重量を持てる理由は○○だ!!!
https://www.youtube.com/watch?v=dKQSkxkUr9Q





動画:Russel Orhii - 700lb/317.5kg Squat
https://www.youtube.com/watch?v=1p5dI-DD_hk&t=228s


このフォームは、肩甲骨は軽く寄せつつ、外に開く意識か、肋骨に押し付ける意識でやると安定すると思います。こうすると前鋸筋とローテーターカフに力が入って肩周りが固まり、体幹も固めやすくなります。また、胸郭が開かず、胸椎の伸展が抑えられて、腹圧を高めやすい体幹のポジションを取れます。

前鋸筋とローテーターカフに力を入れる感覚は、下の関連記事を参考にして下さい。この辺の筋肉を使って肩甲骨をコントロールするのは、BIG3全てで重要になってくる技術なので、怪我をせずに重量を上げていきたい方はマスターしておいたほうが良いと思います。

関連記事:ベンチプレスで重要な脇の締め方(スクワットやデッドリフトにも使える)



強い体幹、弱い体幹

体幹の姿勢は、胸椎も腰椎もニュートラルで、胸郭を開かない姿勢が最も腹圧をかけやすく安定します。スクワットよりも体幹の負担が大きいデッドリフトでは、それがベストの姿勢です。スクワットもバーを安定して担げるなら、なるべくデッドリフトの姿勢に近づけたほうが体幹は安定するはずです。


肩甲骨を強く寄せて、背中の筋肉でバーの重さを受けるスターティングストレングス型のデメリットは、

・胸椎が伸展して、同時に胸郭が開く。胸椎伸展と胸郭の開き(肋骨の外旋)はセットで起こります。

・胸郭が開く、つまりリブフレアのポジションになり、腹圧が抜けやすくなる。

・腹圧が抜けやすくなることで、背中の筋肉を強く使って重量を受けることになり、背中が疲れる。

・スクワットでボトム付近に近づくと腰椎が不安定になりやすい。



もちろん猫背になるのは良くないのですが、「胸を張る」と意識だと、胸郭が開いて胸椎を伸展しやすくなるので、軽く胸を上げる、胸を起こすくらいの意識のほうが良いかなと思います。

おそらく挙上重量は、肩甲骨寄せ&胸椎伸展フォームでも、肩甲骨あまり寄せない&胸椎ニュートラルフォームでもあまり変わらないと思います。通常は、体幹の強さは、スクワットではボトルネックにならないです。ただ、きつくなってきたときの体幹の安定感と、背中の筋肉の疲労度が違うので、トレーニングを続けていく中での疲労や怪我リスクについては、胸椎ニュートラルのほうが優れていると思います。



スクワットの息の入れ方

呼吸について個人的に良いと思うやり方を書きますと、

1. 息を吸ってラックアップしてから、スタートポジションに立ち、スタンスを決める。

2. いったん息を吐く。

3. 肩を上げながら、「ほ」か「ふ」を発音する感じの口の形で息を一気に吸い込む。肋骨の下端あたりが360°水平方向に膨らめばOKです。肋骨の前側だけしか膨らまないと、胸が開いて腹圧が抜けやすいです。バーを背中に担いだ状態だと、鼻から息を吸うのでは吸い込む力が足りないので、口から吸ったほうがいいです。また、口を大きく開けるよりも、「ほ」か「ふ」みたいに口をすぼめて息を一気に吸ったほうが背中側にも空気が入りやすいです。

4. バーの重さを利用して胸郭を下げて、同時にお腹周りの筋肉に力を入れて腹圧を高める。私は肋骨でお腹に蓋をするイメージでやっています。

5. しゃがみ始める。


ハイバーですが、下の動画10分あたりからの、John Haack選手の正面アングルのスクワットがわかりやすいです。キャプチャ画像は息を吸い込んでいる時のものです。


動画:John Haack 5 Weeks Out from Hybrid Showdown Meet
https://youtu.be/AvpexkeFlnY?t=598




体幹の固め方は、インナーは横隔膜を押し下げ、腹横筋を締めて、アウターは腹直筋、腹斜筋、広背筋に力を入れます。体幹の筋肉の詳しい使い方は関連記事を参考にしてください。

関連記事:筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方


スクワットのフォームは、身体機能にプラスになる身体の使い方をするという点でも、なるべく重たい重量を挙げるという点でも、上の動画に出てくるパワーリフターのフォームが適していると思います。私は趣味の筋トレでも、スクワットとデッドリフトのフォームはパワーリフティングのやり方で基本的にOKだと考えています(動作範囲は自分の関節の可動域に合わせたほうがいいと思います)。ベンチプレスは競技のフォームに近づけると身体機能にマイナスになっていくので、どこまで競技に近づけるべきか悩んでいます。


2 件のコメント:

  1. 毎回とても参考になります。自分はローバー、ハイバー、フロントスクワット、オーバーヘッドプレス全部同じ手幅でした…胸椎の伸展に関してはスクワット始めたての人はだいたいバーの重さで前に流れて潰れるので初心者向けのキューとしては適切なのかなと思います。自重スクワットや女性のスクワット(で負荷が軽い場合)に胸椎の過伸展と反り腰のセットはよく見る気がします。
    腹圧やリブフレアは映像などでもセルフチェックしづらいので難しいなあと常日頃悩んでいます。

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    1. SADHIさん、

      コメントありがとうございます!

      初心者向けのキューはおっしゃる通りで、背中が丸まったり、バランスが崩れるのは、背中が多少反ることよりもずっと危険なので、スクワットもデッドリフトも最初は背筋を伸ばす意識でやったほうがいいと思います。

      体幹の姿勢や腹圧がどうなっているかは、私の場合はベルトをしないでスクワットやデッドリフトをしたり、プランクなど体幹トレで骨や体幹の筋肉がどうなっているか確認したりしてたら意識しやすくなりました。それと体幹の姿勢が崩れていると、腹直筋に力が入りっぱなしになって固くなりやすいので、お腹が固くなっていないかもシグナルとしてチェックするようにしています。

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