「科学的に正しい◯◯」といった記事や動画は、論文をいくつか引っ張ってきて、それをそのまま実践に適用しているパターンが多いです。
論文を読む能力の不足や、個人差の考慮の不足など気になる点はいくつかありますが、内容自体は大雑把なガイドラインとして使うにはおそらく問題ないものが多いと思います(最高、最強、最効率とか言い出すと怪しくなってきますが)。私が引っかかるのは、「科学的」という言葉の使い方です。エビデンスを人体の取扱説明書みたいに考えて、実験結果をそのまま実践に適用しようとするやり方は、科学的ではないなと。
ついでに書くと、「解剖学」をそのまま筋トレの実践に適用しているケースも、「決め付き過ぎでは?」「他の部位との連動や全体の動きが見えていないのでは?」と感じることが多いです。これも自分の中で解剖学を使ってモデルを作って、全体像を組み上げた上で、それぞれのケースに適用していったほうがいいと思います。
私が科学的だと考えるやり方
観察や実験などの結果から、現実に起きていることをうまく説明するモデルを作り、そのモデルを関連分野のエビデンスが出るごとに更新していくプロセスが「科学的」だと個人的には考えています。同じような結果が繰り返し再現されるようなら、そのモデルはより強固なものになっていきますし、違った結果が出てくるようならモデルを再考していく必要があります。そしてそのモデルをベースにして、実践に適用していきます。
地動説を例に出すと、天動説だと説明できない現象が観測され、円軌道の地動説が考え出され、円軌道だと精度が悪くて現実とズレがあるよねということで、現実の天体の動きをうまく説明できる楕円軌道の地動説が出来た、といった感じです。
ちなみに当時は占星術が気象予測や医療で使われていて、過去・現在・未来の惑星の位置を分単位で計算する必要があったため、惑星の動きを上手く説明するモデルは需要が高かったとのことです。
参考サイト:地動説
筋トレ界隈のエビデンスの考え方は、EBM(根拠に基づいた医療)が元になっていると思います。実践に際してはEBMと同じく、該当分野のエビデンスを洗って、個別ケースにおける適性やリスクやコストや個人の好みを考慮しながら、専門知識や経験則と合わせて適用していくやり方になると思いますが、モデルをベースに考えるという意識を持っておいたほうが良いです。
関連記事:エビデンスの考え方
人間の身体は複雑ですし、体組成や筋肥大の研究のように測定精度が低い分野もあるので、筋トレ関係の研究結果はかなりばらつきます。全体の傾向を把握する、なぜそうなるのかを考える、背後にあるメカニズムを推測する、筋の通ったモデルを作る、といったことをやっていくと、エビデンスを活用するのが上手くなります。
トレーニングボリュームに関する研究は、初心者や中級者を対象としたものがいくつかあります。
関連記事:筋肥大トレの推奨ボリューム2
関連記事:効果が頭打ちになるトレーニングボリュームの研究
関連記事:トレーニングボリュームを被験者ごとに調整した研究
研究結果の傾向は、初心者の場合はトレーニングボリュームは少なくても筋肥大しやすいですし、中級者だと初心者よりボリュームを増やす必要があります。これは一般的な経験則とも一致します。そして上級者については、実際のパワーリフティング、ウェイトリフティング、ボディビルなど筋肉量の多い競技のトップ選手は、オフシーズンのトレーニングボリュームが非常に多いです。
トレーニングボリュームと筋肥大の関係についての基本的なモデルを考えると、「漸進的過負荷の原則」です。
実際に個別ケースに適用していく場合は、様々な個人差を考慮していく必要があります。年齢、体組成、回復力、トレーニング歴、身体の使い方の癖、関節に痛みは出ないか、睡眠やストレスなど日々の生活の状況、食事、トレーニングへの反応度合い、トレーニングに使える時間、パワーラックの使用時間制限などトレーニング環境、実際にその人の生活スタイルで継続可能か、etc。
また、スクワットやベンチプレスといったフリーウェイトのバーベル種目を中心に筋トレをする場合は、さらに考えることが増えます。初心者のうちはそれほど意識しなくて良いのですが、中級者や上級者になって重量が上がってきて高ボリュームを行う場合は、中レップ・高レップでは全身疲労が問題になりやすく、低レップだと神経系の疲労の影響が出てきます。バーベル種目を高ボリューム行うと、筋肉自体は回復が追いついても、全身疲労や神経系の疲労がネックになって、トレーニングの質と量が低下しやすくなります。
ウェイトリフティングやパワーリフティングなどバーベル競技では、ボリュームと強度に波をつける(各種トレーニングプログラム)、セットの追い込み度を下げたりインターバルを長くするといった方法で、全身疲労や神経系の疲労の問題に対処しています。
ボディビル系は、アイソレート種目やマシン種目を中心にメニューを作り、主に中レップ・高レップのトレーニングを行うことで全身疲労や神経系の疲労の問題に対処しています。ターゲットの筋肉に効かせる、刺激を入れる角度を変える、といった目的でアイソレートやマシンをメインにしているケースが多いと思いますが、結果として全身疲労を蓄積させにくくし、個別の筋肉のボリュームを積みやすくしていると考えられます。
このように実践への適用を考えると考慮することが多いので、研究で行われた内容をそのまま適用して上手くいくケースはあまり無いと思います(特に中級者や上級者になってくると)。エビデンスを調べて積極的に活用しようとするのは良いことだと思いますが、それをそのまま使うのではなく、モデルを作り、モデルを指針にして実践への適用を考えていくと、上手くいきやすいと思います。
ちなみに当時は占星術が気象予測や医療で使われていて、過去・現在・未来の惑星の位置を分単位で計算する必要があったため、惑星の動きを上手く説明するモデルは需要が高かったとのことです。
参考サイト:地動説
筋トレ界隈のエビデンスの考え方は、EBM(根拠に基づいた医療)が元になっていると思います。実践に際してはEBMと同じく、該当分野のエビデンスを洗って、個別ケースにおける適性やリスクやコストや個人の好みを考慮しながら、専門知識や経験則と合わせて適用していくやり方になると思いますが、モデルをベースに考えるという意識を持っておいたほうが良いです。
関連記事:エビデンスの考え方
人間の身体は複雑ですし、体組成や筋肥大の研究のように測定精度が低い分野もあるので、筋トレ関係の研究結果はかなりばらつきます。全体の傾向を把握する、なぜそうなるのかを考える、背後にあるメカニズムを推測する、筋の通ったモデルを作る、といったことをやっていくと、エビデンスを活用するのが上手くなります。
例えば
「筋肥大に適切なトレーニングボリューム」という分野についてのモデルと実践への適用を考えてみますと・・・。
トレーニングボリュームに関する研究は、初心者や中級者を対象としたものがいくつかあります。
関連記事:筋肥大トレの推奨ボリューム2
関連記事:効果が頭打ちになるトレーニングボリュームの研究
関連記事:トレーニングボリュームを被験者ごとに調整した研究
研究結果の傾向は、初心者の場合はトレーニングボリュームは少なくても筋肥大しやすいですし、中級者だと初心者よりボリュームを増やす必要があります。これは一般的な経験則とも一致します。そして上級者については、実際のパワーリフティング、ウェイトリフティング、ボディビルなど筋肉量の多い競技のトップ選手は、オフシーズンのトレーニングボリュームが非常に多いです。
トレーニングボリュームと筋肥大の関係についての基本的なモデルを考えると、「漸進的過負荷の原則」です。
・あまりトレーニングしていない筋肉は低ボリュームでOK
・トレーニングレベルが上がって筋肉が大きくなればなるほど、さらなる筋肥大にはより多くのボリュームが必要になる。
・それまで慣れていたトレーニング内容よりもボリュームを増やすと、筋肥大しやすくなる。
実際に個別ケースに適用していく場合は、様々な個人差を考慮していく必要があります。年齢、体組成、回復力、トレーニング歴、身体の使い方の癖、関節に痛みは出ないか、睡眠やストレスなど日々の生活の状況、食事、トレーニングへの反応度合い、トレーニングに使える時間、パワーラックの使用時間制限などトレーニング環境、実際にその人の生活スタイルで継続可能か、etc。
また、スクワットやベンチプレスといったフリーウェイトのバーベル種目を中心に筋トレをする場合は、さらに考えることが増えます。初心者のうちはそれほど意識しなくて良いのですが、中級者や上級者になって重量が上がってきて高ボリュームを行う場合は、中レップ・高レップでは全身疲労が問題になりやすく、低レップだと神経系の疲労の影響が出てきます。バーベル種目を高ボリューム行うと、筋肉自体は回復が追いついても、全身疲労や神経系の疲労がネックになって、トレーニングの質と量が低下しやすくなります。
ウェイトリフティングやパワーリフティングなどバーベル競技では、ボリュームと強度に波をつける(各種トレーニングプログラム)、セットの追い込み度を下げたりインターバルを長くするといった方法で、全身疲労や神経系の疲労の問題に対処しています。
ボディビル系は、アイソレート種目やマシン種目を中心にメニューを作り、主に中レップ・高レップのトレーニングを行うことで全身疲労や神経系の疲労の問題に対処しています。ターゲットの筋肉に効かせる、刺激を入れる角度を変える、といった目的でアイソレートやマシンをメインにしているケースが多いと思いますが、結果として全身疲労を蓄積させにくくし、個別の筋肉のボリュームを積みやすくしていると考えられます。
このように実践への適用を考えると考慮することが多いので、研究で行われた内容をそのまま適用して上手くいくケースはあまり無いと思います(特に中級者や上級者になってくると)。エビデンスを調べて積極的に活用しようとするのは良いことだと思いますが、それをそのまま使うのではなく、モデルを作り、モデルを指針にして実践への適用を考えていくと、上手くいきやすいと思います。
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