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5/03/2024

スクワットよりもデッドリフトの疲労はキツいか

動画:Deadlift Recovery & Capacity Scientifically Explained & How to Improve Your Conv. Deadlift
https://www.youtube.com/watch?v=dsSkbmkT-OY



スクワットよりもデッドリフトの疲労はキツいか?という動画なのですが、内容をざっと要約すると、

疲労を、「ROM×ワークロード×レバレッジ」とすると、スクワットとデッドリフトはROM(動作範囲)は同程度、デッドリフトはスクワットよりも高重量を扱えるが、それはレバレッジが有利なためであり、トータルで見れば身体にはスクワットもデッドリフトも同程度の負荷がかかっている。そのため、疲労も同程度になるはず。デッドリフトで回復に時間がかかるのは、フォームが雑なのと、ケツが使えてなくて背中に負担がかかり、ギリギリ粘って挙上中に背骨が動いてダメージが入っているから。ストリクトなフォームで出来るなら、デッドリフトとスクワットは同程度の疲労度で、同程度のボリュームを扱える・・・といった内容です。


私の考えは、デッドリフトが、タッチアンドゴーやRDLを含むなら、その通りだと思います。良いフォームで、タッチアンドゴーやRDL中心にやれば、ボリュームは積める。デッドリフト系種目でなかなか回復しないケースは、挙上中に背骨が動いてダメージが入っていたり、背中を反って背中の筋肉で負荷を受けたりしていて、体幹の疲労が重くて回復に時間がかかるのだと思います。フォームの精度を上げれば、ボリュームを積みやすくなります。

ただ、床に置いたタイミングで息継ぎをする床引きは、疲労がスクワットよりキツイと思います。緩んだ状態から腹圧を一気にMAXに持っていくのを繰り返すのが、全身の疲労を重くする感じがしますね。スクワットも、ピンスクワットを5レップ×4セット@RPE8(置いた時に息継ぎ)とかでやれば、床引きデッドリフトに似た疲労感になる気がします。

2/20/2021

歳を取ると筋トレからの疲労回復が遅くなるのか?

自分自身も中年のおじさんなので、加齢の回復への影響については以前から興味を持って探していたのですがなかなか研究が見つからなく・・・。既存の研究をまとめた論文(1)を見つけたので、この論文で取り上げられている個別の研究を中心に、今回の記事は書いていきます。

筋トレの疲労回復の研究では、筋肉にダメージを与えるハードな筋トレ(エキセントリック主体や高ボリュームの筋トレ)をして、その後数日間の回復度合いを調べます。回復度合いは以下の3種類の項目の1つ、もしくは複数で測定されることが多いです。

・主観的な筋肉痛の度合いの測定

・クレアチンキナーゼなどの筋肉のダメージ指標の測定

・ストレングス・パワーの落ち込み度合いの測定

11/28/2020

運動後の食欲

激しい運動の後は食欲が低下しやすいです。どのような運動だと食欲が低下しやすいのか、運動とその後の食欲の関係にはどのようなメカニズムがあるのか調べてみました。


食欲の低下しやすい運動方法

筋トレも有酸素運動も、激しくおこなうほど運動後に食欲が低下しやすいです。

有酸素運動だとHIITが最も食欲が低下しやすく、次に一定ペースの高強度有酸素運動、その次に一定ペースの中強度の有酸素運動の順です。(1)

筋トレだと、上半身だけのトレーニングよりも全身のトレーニングのほうが食欲が低下しやすいです(2)。また、高重量のトレーニングよりも、中重量でインターバルが短めのトレーニングのほうが食欲が低下しやすいです。(3)の研究では、90%1RM・各セット限界まで・インターバル180秒のグループよりも、70%1RM・各セット限界まで・インターバル90秒のグループのほうが運動後の食欲が抑制されました。 

 

8/24/2018

連日トレーニング

一般的にレジスタンストレーニングでは、ある部位(筋肉)をトレーニングしたら、次のトレーニングまで48時間~72時間程度空け、筋肉が回復してから再度トレーニングするのが良いと言われる。これは半ば常識となっている。

その常識にチャレンジした研究が今回の2つの研究。トレーニングの頻度とボリュームを揃えて、連日同じ部位をトレーニングするグループと、最低でも1日休みを入れるグループでトレーニング効果に違いが出るか調べている。

例えば以下のようなトレーニングプログラムで効果に違いが出るか。
連日:月曜~木曜が休み、金曜~日曜に全身トレーニング。
隔日:月曜、水曜、金曜に全身トレーニング。


(1)Effects of Consecutive Versus Non-consecutive Days of Resistance Training on Strength, Body Composition, and Red Blood Cells.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6015912/

被験者:若い男性(たぶんシンガポール人)。日頃から運動をしているが本格的なレジスタンストレーニングをしているわけではない。

トレーニング内容:
両グループとも全身を週3日トレーニング。トレーニング期間は12週間。トレーニング種目とトレーニングボリュームはグループ間で同じ。グループ間で異なるのは、トレーニングを3日連続で行うか、最低でも1日空けるか。

トレーニング種目は全てのトレーニング日で共通。
- レッグプレス
- ラットプルダウン
- レッグカール
- ショルダープレス
- レッグエクステンション

全種目10RMの重量で3セット×10レップ(10RMの重量で10レップなのでたぶん全セット限界まで)

結果:
両グループともストレングスが伸び、除脂肪体重が増えた。ストレングスの伸び、除脂肪体重の増加量にグループ間で有意差なし。


(2)Nonconsecutive versus consecutive-day resistance training in recreationally trained subjects.
https://www.researchgate.net/publication/308763287_Nonconsecutive_versus_consecutive-day_resistance_training_in_recreationally_trained_subjects

被験者;
趣味で運動している若い男性(たぶんポルトガル人)。除脂肪体重(60kg台前半)とベンチプレス1RM(80kg後半)とトレーニング歴(8年くらい)からすると筋トレ中級者だと思う。

トレーニング内容:
両グループとも全身を週3日トレーニング。トレーニング期間は7週間。トレーニング種目とトレーニングボリュームはグループ間で同じ。グループ間で異なるのは、トレーニングを3日連続で行うか、最低でも1日空けるか。

種目は以下の通り。全てのトレーニング日で全身トレーニングだけど、トレーニング日によって少し種目に違いがある。レップ数もトレーニング日によって変わっている。


結果:
体組成は両グループとも実験前後で変化なし。腕と脚の太さの変化は連日グループがわずかに良い結果。

ストレングスはベンチプレスとレッグプレスについて測定。両グループともベンチプレスとレッグプレスの記録が伸びた。グループ間で伸びに有意差なし。


☆コメント
上の2つの研究で共通するのは
- 被験者は初心者~中級者。
- コンパウンド種目は多いがマシン中心で、全身への負荷がきついスクワットやデッドリフトは行っていない。
- 部位あたりのトレーニングボリュームはそれほど多くない。

今回の2つの研究ではトレーニングボリュームはそれほど多くはない。ただ多くはないと言っても、3セットか4セットを限界まで行っているので、24時間では筋肉のダメージもトレーニングキャパシティも回復していないだろう。それでもグループ間で差がないので、完全に回復せずトレーニングを行ってもちゃんと効果が得られるようだ。

Time restricted feeding(リーンゲインズのように決まった時間枠内でのみ食事を行う)の研究(4)で示されているように、食事タイミングを分散させなくても栄養はしっかり消化吸収されるし、トレーニングタイミングを分散させなくてもトレーニング効果は得られる。最近は、短期の研究から推測されるよりも人体がフレキシブルに適応できることを示す研究が増えてきていて面白いと思う。

今回の研究結果は、トレーニングプログラムを組む上でのフレキシビリティを高める。例えば、トレーニングを行える日が土曜と日曜しかない場合、一般的に推奨される部位あたり48~72時間の休息を入れようとすると、土曜に下半身、日曜に上半身といった分割スタイルになり、部位あたり週に1回しかトレーニングが行えない。現状のエビデンスからは、週に1回よりも週に2~3回トレーニングした方がストレングスも筋肥大も高い伸びになる可能性が高いので、全身を連日トレーニグすれば、休みを入れて週に2回トレーニングするのと同等の効果を得ることが出来、部位あたり週1回トレーニングするよりも高いトレーニング効果が得られることが期待される。(5)(6)

ただ中級者から上級者になるとトレーニングの重量とボリュームが増えてきて、連日トレでは2日目以降はトレーニングの質と量が落ちるだろう。またスクワットやデッドリフトは回復に時間がかかると考えられる(3)。上級者が連日ハードに同じ部位や同じ種目をトレーニングしようとすると、トレーニングの質と量が低下することにより、休みを入れてトレーニングするよりも伸びが低くなる可能性が高い。

中級者から上級者で、諸事情により連日同じ部位をトレーニングしないといけない場合は、以下のような点を考慮して疲労管理を行いつつ、トレーニングの質と量を確保するのが良いと思う。
- セット間インターバルを長めに取る。
- 全セット限界までやると筋肉のダメージが大きくなるので、追い込み度を下げる。特に1日目は追い込み度低めが良いだろう。目安としては多くのセットを限界まで2-4レップ残し程度で行う。
- 筋肉のダメージの度合いは概ねトレーニングボリュームに比例するので、1日目にボリュームが低くなる高強度低レップのストレングストレーニング(目安は85%1RM以上の重量、5レップ以下)を行い、2日目に高ボリュームの筋肥大トレーニング(目安は60%~85%1RMの重量、6-15レップ)を行うのも良い。
- 同じ部位でも、1日目はフリーウェイト、2日目はマシンやアイソレートといった感じで種目を少し変えてみる。



参考文献:
(1)Effects of Consecutive Versus Non-consecutive Days of Resistance Training on Strength, Body Composition, and Red Blood Cells.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6015912/

(2)Nonconsecutive versus consecutive-day resistance training in recreationally trained subjects.
https://www.researchgate.net/publication/308763287_Nonconsecutive_versus_consecutive-day_resistance_training_in_recreationally_trained_subjects

(3)Resistance Training Recovery: Considerations for Single vs. Multi joint Movements and Upper vs. Lower Body Muscles
https://digitalcommons.wku.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1653&context=ijes

(4)Effects of eight weeks of time-restricted feeding (16/8) on basal metabolism, maximal strength, body composition, inflammation, and cardiovascular risk factors in resistance-trained males
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5064803/

(5)Training Frequency for Strength Development: What the Data Say
https://www.strongerbyscience.com/frequency-muscle/

(6)Training Frequency for Muscle Growth: What the Data Say
https://www.strongerbyscience.com/frequency-muscle/


関連記事:
限界まで追い込んだ場合と追い込まなかった場合の回復の違い

8/10/2018

運動からの疲労回復方法(2018年版)

An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2018.00403/full

マッサージやコンプレッションウェアなど、運動後に行われる疲労回復方法について、どの手法がどれくらいの効果があるかを調べたメタ解析研究。


★回復の評価軸
筋肉のダメージと炎症の指標
- creatine kinase (CK)
- C-reactive protein (CRP)
- interleukin-6 (IL-6)

被験者の主観
- 筋肉痛
- 疲労感


★結果一覧
massage:マッサージ
compressive garments:コンプレッションウェア
immersion:水に浸かる
electrostimulation:電気刺激
stretching:ストレッチ
cryotherapy:クライオセラピー(超低温の冷気を短時間当てる)
active recovery:アクティブリカバリー(運動後に低強度の運動をする)
Contrast Water Therapy:冷水と温水に交互に浸かる
hyperbaric therapy:いわゆる酸素カプセル

筋肉のダメージと炎症の指標





筋肉痛(DOMS)と疲労感(perceived fatigue)




★回復方法別の結果解説
・マッサージ
- 疲労感を軽減するのに最も有効(コルチゾールレベルの低下とβエンドルフィンレベルの上昇が寄与か)。
- 筋肉痛の軽減効果も高い。
- CKとIL-6の低下に最も効果的(筋肉のダメージの軽減と回復の促進を示唆)。

想定メカニズム:筋肉の血行をよくし、浮腫を軽減する可能性。

実践: 運動後2時間以内に20-30分のマッサージ。


・コンプレッションウェア
- 筋肉痛と疲労感の軽減に効果的。
- 今回の解析では、各種炎症マーカーのCK, IL-6, CRPについては効果は見られず。
- 既存の研究は、回復期間、着用期間、どれくらいの圧力がかかるか、着用する部位などがバラバラで、またコンプレッションウェアの実験では運動の強度が低い傾向があり、そもそもダメージがあまり出ていない可能性もある。

想定メカニズム:圧力で浮腫を軽減、筋肉から老廃物を排出しやすくする。

実践:運動後24時間以上は着用したほうが良さそう。


・水に浸かる
- 筋肉痛と疲労感の軽減に効果的。
- CKをやや低減。IL-6とCRP については有意差なし。

想定メカニズム:浮腫の軽減と痛みの感覚の麻痺。水圧が筋肉から代謝物の排出を促進。血管収縮により炎症が拡がるのを防ぐ。

実践:11–15℃の冷水に11–15分浸かる。(体温以下の水温なら効果があるので厳格にこの温度にしなくても良い)


・冷水と温水に交互に浸かる
- 筋肉痛に効果あり。疲労感については有意差なし。
- CKの低減。

想定メカニズム:血管収縮と血管拡張を繰り返すことで浮腫の軽減、炎症と痛みの軽減。


・アクティブ・リカバリー
- 筋肉痛に効果あり(運動後の短い時間での効果が大きい)。疲労感については有意差なし。
- CK, IL-6, CRPは有意差なし。

想定メカニズム:血行を良くし、代謝物の除去を促進。


・クライオセラピー
- 運動後の短い時間に筋肉痛に小さな効果あり。
- IL-6は低減。CKとCRPには有意差無しだが、継続的な使用でCKに低減効果が出るとする研究もある。
- 既存の研究は温度や使用タイミングなどがバラバラ。


・ストレッチ、電気刺激
- 筋肉痛と疲労感については低減効果なし。ストレッチは筋肉痛を悪化させる場合も。



★解析結果についての留意点
- 研究によって運動の強度がまちまち。強度の高い運動をすればそれだけ低減効果が出やすくなり、逆に強度の低い運動をするとダメージと疲労が小さいので低減効果も出にくくなる。
- レーザーや振動を使った最新の手法は、既存の研究の数が少ないので今回の研究には含まず。
- パフォーマンスは別の評価軸で今回の研究では含まず。ダメージや炎症の指標の変化と、実際の運動パフォーマンスの変化が一致するわけではない。



☆コメント
疲労回復方法については以前書いたけど、以前の記事は古い研究を基にしているので、今回のメタ解析研究の結果で情報をアップデートして良いと思う。

推奨方法は・・・
運動が生活に関わる人は、お財布と相談しながらマッサージを受けるのが良いでしょう。

趣味で運動をしている人は、水に浸かるかコンプレッションウェアが良さそう。水に浸かるのは体温以下の水温ならば効果があるので水風呂がない場合はプールでも良いだろう。ただ後述するように冷水に浸かるのは筋肥大とストレングスの向上を妨げる可能性があるので、筋トレをしている人は注意したほうが良いと思う。コンプレッションウェアは長時間の着用が必要なようなので、人によっては着用し続けるのが少し鬱陶しいと感じるかもしれない。

運動からの回復には十分な食事と睡眠が最も大事で、プラスアルファで疲労回復のために何ができるか。趣味で運動している人は、上に挙げた効果的な方法へのアクセスに難がある場合は、無理してやる必要もないと思う。運動のボリュームを適切に設定し、しっかり食べてしっかり寝るのが基本。

アスリートの場合は、状況によって回復方法を使い分けるのも良いだろう。例えば1日に複数回の試合をするような場合は、アクティブリカバリーのように短時間でも痛みが軽くなってパフォーマンスを上げられるならば意味があるだろう。

ダメージや炎症の軽減が、長期的な適応にどのような影響を及ぼすのかはあまりわかっていない。トレーニング後に10度の冷水に10分浸かると筋肥大とストレングスの伸びが阻害されたという研究(2)があり、高用量の抗炎症薬の継続的な服用でも筋肥大とストレングスの伸びが阻害されたという研究(3)があるので、ダメージや炎症を和らげるとそれだけ筋肥大しにくいといったこともあるかもしれない。

ただ考えられる説がいくつかあって、
(ⅰ) 筋肉のダメージが筋肥大に深く関わっていて、筋肉のダメージを軽くし早く回復させることで筋肥大が抑制される。(最近の筋トレ研究のトレンドでは筋肉のダメージは筋肥大に直接的な関係があまりないというのが主流になっているが)
(ⅱ) ダメージや炎症を抑制する方法や薬物は、同時に筋肥大のプロセスも抑制する。
(ⅲ) トレーニング初期は筋肉のダメージが大きく、繰り返しトレーニングを行いダメージの修復を繰り返すことで、筋肉がトレーニングに耐えられるようになり、それからようやく本格的な筋肥大が始まる。ダメージは筋肥大には直接的には関わらないが、トレーニングに耐えうる筋肉へのトランスフォームを行うのに重要な役割を果たす。トレーニング後の炎症反応を無理やりに抑制するとダメージの修復が遅れて、トレーニングに耐えうる筋肉へのトランスフォームが進まず、筋肥大フェーズに入りにくい。

素人の考えだが、(ⅱ) and/or (ⅲ)の説がもっともらしい説明だと思う。適度な炎症は適応に必要なので、通常のトレーニングで起こる程度の炎症を抑え込むのはあまり良くない感じがする(もちろん怪我や病気での炎症は抑え込んだ方が良いだろう)。従って感覚が麻痺するほどの低温の水に浸かったり、冷気を当てたりするのは適応を妨げる可能性がある。一方で、マッサージやコンプレッションウェアは代謝物の排出促進などにより回復を早めるのがメインな感じがするので、適応を妨げないかもしれない。水に浸かるのも、水圧による回復効果があるのなら、20-30℃程度の温い水に浸かるのは筋肥大とストレングスの向上を妨げないかもしれない。

あとストレッチやフォームローラーは、筋肉の疲労回復には効果がないとしても、姿勢や筋肉のバランスを整えて怪我を防止するのに効果的なので、なるべく行ったほうが良いと思う。詳しくは関連記事の「ストレッチとウォームアップ」を参考に。運動後の激しいストレッチは筋肉痛を悪化させる可能性があるので、運動後にストレッチをやる場合は軽くやるのが良いだろう。個人的にはストレッチとフォームローラーは運動前と寝る前にやっています。



参考文献:
(1)An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2018.00403/full

(2)Post-exercise cold water immersion attenuates acute anabolic signalling and long-term adaptations in muscle to strength training
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4594298/

(3)High‐doses of anti‐inflammatory drugs compromise muscle strength and hypertrophic adaptations to resistance training in young adults
https://www.researchgate.net/publication/319204260_High-doses_of_anti-inflammatory_drugs_compromise_muscle_strength_and_hypertrophic_adaptations_to_resistance_training_in_young_adults



関連記事:
筋トレの疲労と回復方法

疲労のメカニズム

ストレッチとウォームアップ

5/23/2017

水素水の運動パフォーマンスへの効果

疲労について調べているときに(参考記事:「疲労のメカニズム」)、水素水が運動パフォーマンス向上(正確に言えば繰り返しの高強度運動のパフォーマンス低下を遅らせる)効果があるという研究を見つけて、えっ!?と思って調べてみた。


★水素水の運動パフォーマンスへの効果を調べた研究
Effects of hydrogen rich water on prolonged intermittent exercise.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28474871
pH9.8の水素水を一日2リットルを2週間。水素水群ではピークパワー出力が低下しなかった。アブストラクトしか読めず。

Pilot study: Effects of drinking hydrogen-rich water on muscle fatigue caused by acute exercise in elite athletes
https://medicalgasresearch.biomedcentral.com/articles/10.1186/2045-9912-2-12
パイロットスタディだけど。筑波大の研究っぽい。1.5リットルの水素水(pH書いてないけどマグネシウムスティックを使っているので弱アルカリ性のはず)をテスト前24時間に飲んだ。水素水群のみ20レップまでから40レップまででピークトルクの低下なし。とはいっても、実際のデータ(グラフ)を見ると、単に被験者数が少ないせいで水素水は有意差に達しなかっただけな感じもする。血中の乳酸塩レベルが水素水群で低下しているのは、H+が先に中和されて乳酸塩があまり生成されていないから?  (ちなみに論文著者は乳酸塩と疲労についての理解が間違っている)


★メカニズム
水素水が運動パフォーマンスに効果があるとしたら、それはどういうメカニズムなのか?と思って見つけたのが、水素水のアルカリ性に注目して、重曹の代わりに水素水をアシドーシス緩衝に使うのはどうかと書いている論文。

Serum Alkalinization and Hydrogen-Rich Water in Healthy Men
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3498110/
pH9.3の水素水を毎日2リットル一日かけて少しずつ飲むのを一週間続けたら、安静時と運動直後の血液pHが上昇。重曹に比べるとpHの上昇率は2分の1程度と小さいが、実験期間では特に副作用は報告されなかった。重曹よりも副作用の可能性がだいぶ低そうなので、水素水は運動による代謝性アシドーシスを緩衝するのに役立つ可能性がある。胃酸で中和されないのかな?と思ったけど、血液pH上昇してる。




高強度運動における代謝性アシドーシス(H+の蓄積)は、運動パフォーマンスを低下させる(疲労させる)と考えられている。H+を水酸化物イオンで中和することでこれを和らげる。

H+ + OH- = H2O


★重曹(NaHCO3)の運動パフォーマンスへの効果
Mechanistic Insights into the Efficacy of Sodium Bicarbonate Supplementation to Improve Athletic Performance.
https://sportsmedicine-open.springeropen.com/articles/10.1186/s40798-016-0065-9

Examin.com:Sodium Bicarbonate
https://examine.com/supplements/sodium-bicarbonate/

運動パフォーマンスへの重曹の効果は過去に多く研究されている。高強度の運動においてパフォーマンス(パワー、スピード、ワークキャパシティ、限界に達するまでの時間)を2-3%向上させる。

メカニズムとしては、H+を中和して処理することによりH+の蓄積が抑制される。これにより、解糖系の速度が低下しにくい、K+の細胞外への蓄積を抑制する、中枢系の疲労を遅らせるなどの効果が得られると推測される。つまり高強度の運動において疲労を遅らせることで、高い運動パフォーマンスを維持できるようだ。

また数は少ないが、重曹の継続的な服用と高強度の持久運動トレーニングにより、遅筋の有酸素能力(ミトコンドリアの効率性)が向上し、持久能力が向上することを示す研究もある。

重曹の副作用としては、胃腸の不快感、過度の摂取でアルカローシス、ナトリウムの過剰摂取、むくみ、パニック障害の人の発作を誘発など。運動パフォーマンス向上を期待できる推奨量[0.3g/体重kg]を摂取すると、体重70kgの人で一回5.7gのナトリウムを摂取することになる。

Sodium bicarbonate Side Effects
https://www.drugs.com/sfx/sodium-bicarbonate-side-effects.html
重曹の副作用いろいろ。

Effect of sodium bicarbonate on [HCO3 −], pH, and gastrointestinal symptoms
http://www.catedradeporte.com.ar/archivos/para%20analisis/Trabajo%203%20-%20Effect%20of%20Sodium%20Bicarbonate%20on%20Gastrointestinal%20Symptoms.pdf
胃腸に問題が起こる。



★クエン酸ナトリウム
アルカリ性水溶液の飲用によるアシドーシスの緩衝が疲労軽減に意味があるなら、なぜクエン酸ナトリウムでは運動パフォーマンスの向上が見られないのか? 気になったので調べたところ、

Thirty years of investigation on the ergogenic effects of sodium citrate:
is it time for a fresh start?
https://www.researchgate.net/publication/308709639_Thirty_years_of_investigation_on_the_ergogenic_effects_of_sodium_citrate_Is_it_time_for_a_fresh_start
クエン酸ナトリウム摂取後60-90分後に胃腸に不快感、3-4時間後に血液pH上昇のピークが2016年の研究で観察されたとのことで、それまでの研究ではクエン酸ナトリウム摂取から運動までの時間間隔が短すぎて、pHが上昇しきらず胃腸に不快感があるときに運動したためパフォーマンス向上が見られなかったのでは?との考察をしている。

ちなみにクエン酸ナトリウム水溶液は弱アルカリ性だけど、クエン酸水溶液は弱酸性。


★水素水の運動パフォーマンスへの効果
水素水で運動パフォーマンスに効果があったというのは、おそらく水素が原因ではなくて、重曹水と同様にアルカリ性の水を飲んだことが原因だと考えられる。従って、水素ガスを溶解させたタイプの中性の水素水だと効果が無いだろう。マグネシウムスティックを使うタイプか、電解タイプ(アルカリイオン水)で、pHが9-10程度のものを一日1.5-2リットル飲み続けると、効果があるかもしれない。

代謝性の疲労を少し遅らせる可能性があるのであって、数日間続く疲労の主要因である筋肉のダメージを減らすわけではないと考えられるので(もし運動で起こるレベルのアシドーシスが筋肉のダメージを促進するならアシドーシスを緩衝することで筋肉のダメージも減らせるが)、普段のトレーニングで水素水を飲んでもあまり意味がないだろう。

何か競技を行っている人が、試合のパフォーマンスを上げることを目的として、試合の一週間くらい前から飲むと効果が期待できるかもしれない。効果があったとしても重曹ほどのエルゴジェニック効果はなさそうだけど、重曹と違って副作用をほぼ心配せず試すことが出来る。また重曹と同様に継続的な摂取で遅筋の有酸素能力の向上も得られる可能性がある。アルカリ性水溶液としての水素水に価値があるとしたら、それは水素が健康な人にとっては毒にも薬にもならないから。(ざっと調べた感じではアルカリ性水素水のマグネシウムやカルシウムは数リットルで数十mg程度のようなので、重曹のナトリウムと違ってこれは問題にはならなそう)

競技は1-7分くらいの時間に全力を出すタイプのスポーツや、数十秒の最大出力をインターバルを挟んで繰り返すスポーツが向いているだろう。例えば中距離走やスピードスケートや自転車競技あたりだと思う。効果はあっても小さいと思われるので、わずかなパフォーマンス差が勝敗を分ける高いレベルのアスリート向け。バーン感の出る高レップ筋トレでも疲労を遅らせてボリュームを少し増やせる可能性があるけど、競技ではないので一回のトレーニングのボリュームを増やせても、次のトレーニングセッションまでの回復時間が長くなるだけであまり意味がないだろう。

5/17/2017

筋トレの疲労と回復方法

前提知識として、前回の記事「疲労のメカニズム」を参考に。


★筋トレのセッション中の疲労原因
高負荷・低レップ: ATPやPCrやCa2+や中枢系の疲労
中負荷~低負荷・中レップ~高レップ: 上に加えてH+やK+の蓄積がある考えられる。セット数が多くなるとグリコーゲンレベルの低下や筋肉のダメージもあるだろう。



★疲労からの回復時間
それなりに強い疲労状態からの各メカニズムの回復時間の目安。

ATP: 数十秒程度
PCr: 2-4分程度
H+: 数十分?
K+: 数十分?
Ca2+: 数十分~数日間?
グリコーゲン: しっかり食べれば24~48時間で回復
ダメージ: 数日間

疲労度合いやコンディションや個人差やどの程度までの回復を求めるのかによって回復時間は様々だろう。詳しくは調べていない。筋トレにとっては、ダメージ以外の疲労はあまり重要ではない。何かの競技の試合だと、分単位時間単位の回復は重要だけど、筋トレは一回のセッションでどう回復するかはあまり重要ではなくて、数日後に行う次のトレーニングセッションまでの回復が重要だろう。

筋肉へのダメージは、メカニカルなストレスによる筋原線維へのダメージ(フィラメントやZ線の変形)と、それに続いて起こる細胞膜の変形とカルシウムホメオスタシスの混乱を起こすと考えられている。従って収縮を担う繊維部分のダメージによる筋力低下に加えて、末梢系でのCa2+システムの疲労も起こると考えられる。また炎症性サイトカインによる中枢系の疲労も起こるだろう。筋肉痛だと痛みが邪魔して力が入らない(中枢系の運動指令が低下する)というのもある。

参考サイト:骨格筋の構造と筋収縮|動作のしくみから理解する(2)

疲労メカニズムの中では、たぶんダメージが最も回復に時間がかかる。トレーニングから1日や2日経っても1RMが数%程度低下しているのは、筋肉のダメージが主な要因だろう。トレーニングに慣れていなかったり、筋肉が伸びた状態でのエキセントリック動作をみっちりやったりするとダメージは大きくなる。また高ボリュームのトレーニングほどダメージが大きく回復に時間がかかる。

グリコーゲン以外の疲労は、EPOC(excess post-exercise oxygen consumption)のレベルと継続時間が、おおよその疲労のレベルと回復時間に一致する感じがする。筋トレ後数十分はEPOCが大きく、疲労も大きく、1RMの低下も大きい。24時間~48時間経過すると、EPOCはあっても数%程度で、1RMの低下も数%程度。(慣れたトレーニングを行った場合。不慣れなトレーニングだとEPOCも1RMの低下も大きくなる)



★疲労と筋肥大効果のオーバーラップ
おそらく完全にはオーバーラップしていない。疲労を抑えつつ、なるべく筋肥大効果を得ることが望ましい。長期的な成果を得るには、高い質と量のトレーニングを継続する必要がある。高い質と量のトレーニングを継続するには、疲労を適切に管理することが重要になる。

ダメージの大きいトレーニングは直後の筋合成を高めるけど長期的な筋肥大には関係しないという研究があるので、意図的に不慣れなトレーニングを行ったり、筋肉が伸びた状態でエキセントリック動作を集中的に行ったりしてダメージによる筋肥大を狙うのは、費用対効果(疲労-筋肥大のコスパ)が悪い感じがする。それではダメージをなるべく避けたほうが良いかというと、筋肉のダメージはサテライト細胞による筋繊維への新たな細胞核の提供により筋肥大のキャパシティを増やす可能性があるので、ダメージも一概に無駄とは言えないだろう。各種目でエキセントリック動作も丁寧に行う程度が、ほどほどのダメージを得られて良いのではないだろうか。

関連記事:筋肥大のメカニズム

また筋肥大目的で高負荷低レップのみのトレーニングを行うと疲労が強くなるようなので、筋肥大目的なら6-12レップのセットが大半を占めるようにするのが良いと思う。

関連記事:レップ数によるトレーニング効果の違い



★疲労からの回復
・トレーニング中の疲労回復
基本的には特異性の原則が適用され、筋持久力が必要な中レップ高レップトレーニングを続ければ、代謝物の蓄積などへの耐性がついて疲労に強くなる。

高負荷低レップはPCrの影響が大きいと考えられるので、トレーニングセッション中のトレーニングの時間効率を高めるには、全身持久力を高めるトレーニングを行い、PCrの回復速度を上げると良いだろう。

トレーニングセッション中の回復を早めたり疲労を遅らせたりするサプリもある。

ただ数十分以内の疲労対策を行うのは、何かの競技の試合では意味があるけど、筋トレでセット間の回復を早くしたり、疲労を遅らせることで各セットでの追い込み度を引き上げるのは、時間効率を高くする以外にはあまり意味がないと思う。

筋トレの成果にとって重要なのは、長期的に見て高い質と量のトレーニングを継続すること。それには各部位を数日間隔でトレーニングし、次のトレーニングまでに疲労を回復させて高い質と量のトレーニングを継続する。このスパンでの疲労は筋肉のダメージが主要因だと思われるので、筋肉のダメージをいかに回復させるかが重要だろう。



★ダメージの影響の評価軸
筋肉のダメージの影響の評価軸を大きく3つにわけると
- 痛み(筋肉痛)
- 筋力(1RMやジャンプ力)の低下
- 身体組織のダメージ・炎症度合い(クレアチンキナーゼなどの測定)

短いスパンで何かの競技の試合をする人にとっては、身体組織にダメージが残っていても、とりあえず痛みや筋力が早く回復して運動パフォーマンスを取り戻すことが重要だろう。筋トレでは身体組織のダメージが回復するのが重要だろう。

 

★筋肉のダメージの回復方法
筋肉のダメージからの回復方法について、数多くの方法が提案されている。ざっと調べたものを以下に紹介する。Pubmedやgoogle scholarで、EIMDで検索すると色々と出て来る(EIMDはExercise-Induced Muscle Damageの略)。

The Prevention and Treatment of Exercise-Induced Muscle Damage
https://www.researchgate.net/publication/5361673_The_Prevention_and_Treatment_of_Exercise-Induced_Muscle_Damage

筋肉のダメージの予防と事後ケアについて、色々な方法の効果をレビューしている。2008年の論文なので少し古め。

・抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE)
ビタミンC、ビタミンEの摂取による筋肉のダメージへの影響は、改善効果を示すものもあれば示さないものもあり結果が一貫していない。長期的な服用で効果があるかも。

・炭水化物とタンパク質
長時間の自転車こぎで、運動中と運動直後に炭水化物とタンパク質を合わせて摂取すると回復が早まるという研究がある。一方で、大腿四頭筋のエキセントリック動作100レップでは効果がでなかったという研究がある。長時間の運動だと、運動中に栄養供給したほうが良さそう。

HMB 
研究の数が少なく結果も一貫していない。もしかしたらダメージ軽減に効果があるかも。

・NSAIDs
ダメージの緩和効果は一貫していない。ダメージの回復と筋肥大を阻害する可能性があるので使用は推奨されない。

・運動前のストレッチ
スタティックストレッチは筋肉のダメージ軽減に効果なし。パッシブストレッチは少し効果あるかも。

・マッサージ
運動後にマッサージするのは痛みの緩和とダメージ指標の低減にに効果があるようだ。パフォーマンスの改善は見られず。

・電気療法の類
痛みの緩和に効果がありそう。ただ個別の筋肉をアイソレートして刺激することしか出来ないので、あまり実用的ではない。


・軽い運動
一時的に痛みが和らぐが、またもとに戻る。ダメージの回復にはあまり効果がなさそう。

・リピーテッドバウトエフェクト(repeated bout effect)
不慣れな運動は最初は大きなダメージ起こるけど、2度め以降はダメージが小さくなる。これをリピーテッドバウトエフェクトと言う。不慣れな種目を行う時や、休養からトレーニングを再開するときは、最初はボリュームを少なくするのが良い。ボリュームが少なくてもリピーテッドバウトエフェクトは得られる。


・ソイプロテイン
Soy Beverage Consumption by Young Men
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1300/J133v03n01_03?journalCode=ijds19

Four Weeks of Supplementation With Isolated Soy Protein Attenuates Exercise-Induced Muscle Damage and Enhances Muscle Recovery in Well Trained Athletes: A Randomized Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5098124/

ソイプロテインの継続的な摂取により、抗酸化作用が筋肉のダメージ軽減に効くかも。


・オメガ3脂肪酸
Effect of an acute dose of omega-3 fish oil following exercise-induced muscle damage.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28213750

Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids in Physical Performance Optimization
http://www.cis.edu.rs/wp-content/uploads/kurs/XVII-predavanje/reference/omega-3-fatty-acid-and-sport-performance-ISNEM_2013.pdf

オメガ3脂肪酸は、筋肉痛の緩和とそれに伴うパフォーマンス改善、あと炎症反応の抑制が期待できるかも。結果があまり一貫していない。ただ健康には良いのでオメガ3脂肪酸は積極的に摂取したほうが良い。一日1-3g程度が目安。サプリは高価なのでイワシやサンマなどの100円くらいの缶詰がおすすめ。良質のタンパク質と良質のカルシウムも摂取できる。マグロなど食物連鎖の上位の魚は水銀リスクがあるのでほどほどに。


・クルクミン
Reduced inflammatory and muscle damage biomarkers following oral supplementation with bioavailable curcumin.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214647416300034
痛みは改善しないが、ダメージの指標がかなり改善。ただこの研究は企業から資金提供を受けている。筋肉のダメージへのクルクミンの効果を調べた研究はこれしか見つからなかった。

Examin.com:Curcumin
https://examine.com/supplements/curcumin/
クルクミンには抗炎症作用があるようだ。クルクミン単体だと人体に吸収されにくいのでピペリンと合わせて飲む。クルクミンサプリは結構高価。ウコンの力は・・・クルクミンの含有量が上の実験で使用したサプリよりだいぶ少ない。


・一時的に血流を止める
The effect of intermittent lower limb occlusion on recovery following exercise-induced muscle damage: A randomized controlled trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28153608

一時的に血流を止めるのを繰り返すと(たぶん加圧トレーニングのように縛って圧迫)、身体組織のダメージの回復が早まり、筋力も早く回復するようだ。腕と脚にしか使えない。素人が自己流でやらないほうが良いだろう。

Mechanisms underpinning protection against eccentric exercise-induced muscle damage by ischemic preconditioning.
http://www.medical-hypotheses.com/article/S0306-9877(16)30707-1/fulltext

ダメージの予防として事前に血を止めるのも提案されている。メカニズム的には事前に軽く筋肉にストレスを与えて、リピーテッドバウトエフェクト引き出すようだけど、トレーニング後の回復中にストレスを与えると良くない気がするが・・・。抗炎症作用が高まるようなので、それが事後でもダメージ回復につながるのだろうか。


・フォームローラーやローラーマッサージャー
THE EFFECTS OF SELF‐MYOFASCIAL RELEASE USING A FOAM ROLL OR ROLLER MASSAGER ON JOINT RANGE OF MOTION, MUSCLE RECOVERY, AND PERFORMANCE: A SYSTEMATIC REVIEW
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4637917/

フォームローラーやローラーマッサージャーによるマッサージは、筋肉痛を和らげてパフォーマンスを回復させる可能性があるみたいだけど、筋肉のダメージ自体の回復が早まっているのかは微妙な感じ。血行が良くなることで、栄養と酸素が筋肉に運ばれ回復が早まる可能性はある。筋肉は使い続けると固く縮こまりやすいので、フォームローラーなどで筋肉をケアするのは、長期的には重要だろう。

・冷水に浸かる
What are the Physiological Mechanisms for Post-Exercise Cold Water Immersion in the Recovery from Prolonged Endurance and Intermittent Exercise?
https://www.researchgate.net/publication/295077960_What_are_the_Physiological_Mechanisms_for_Post-Exercise_Cold_Water_Immersion_in_the_Recovery_from_Prolonged_Endurance_and_Intermittent_Exercise

運動直後に冷水に浸かり上昇した体温を下げることで、体温上昇による中枢系の疲労を和らげる、後回しにされていた筋肉への血流を回復させて回復を早める、副交感神経優位にすることで強度の高い運動によるストレスを緩和し回復モードに早く入る(ただしその日の運動パフォーマンスは落ちるので一日のうちに複数回試合を行う場合は避けたほうが良い)、といったメカニズムで疲労回復に効果がありそう。

筋肉のダメージ回復への効果では、全身を使う長時間の持久運動や、ダッシュを繰り返すチームスポーツなどでは筋肉のダメージへの効果が繰り返し示されているが、単関節のエキセントリック運動で筋肉にダメージを与えた場合は冷水に浸かっても回復効果が示されない。筋トレだと、スクワットやデッドリフトで全身が疲れてダルくなった場合はトレーニング後に冷水に浸かると良いかもしれない。特に夏場。

ただ浸かりすぎると筋肥大にマイナスかもしれないので、冷たすぎる水に10分以上浸かるのは止めたほうが良さそう。運動後に頭が熱でぼーっとしてる場合に水に浸かって、それがおさまったらすぐ出るのが良いだろう。ジムにプールが併設されているなら、軽く泳ぐのも良いだろう。


・コンプレッションウェア
Effects of Compression Garment Pressure on Recovery from Strenuous Exercise.
http://research.stmarys.ac.uk/1322/9/The%20effects%20of%20lower%20limb%20compression%20garment%20pressure%20REVISED%20Nov%20V1.pdf

高い圧力のコンプレッションウェアを運動後に着用し続けるのはパフォーマンス回復に効果がありそう。この実験では14.8  ±  2.2  mmHg  at 170 the thigh and 24.3 ± 3.7  mmHg at the calf のコンプレッションウェアを運動後72時間シャワー時以外着用し続けた。Discussionによるとクレアチンキナーゼなどの指標はこの実験では改善しなかったが、他の実験では回復を示すものもあった。この実験では実験で与えたダメージが小さかったのではと考察されている。メカニズムとしては筋肉を支えることで身体組織が無駄に動かず回復が早まる可能性があるが、正確な仕組みはよくわかっていないとのこと。



★最後に
疲労回復の効果は、トレーニングの種類、強度、施術の方法(水温、コンプレッションウェアの圧力、マッサージ系の方法など)、サプリの摂取量、タイミングなどによって変わってくると考えられる。現状の研究では各方法ともベストの量やタイミングを突き詰めることはできていない。またこれまでの研究で効果が出ていないものも、タイミングや量を変えることで効果が出るかもしれない(少なくとも効果が出そうなメカニズムの仮説が存在すれば)。


5/09/2017

疲労のメカニズム



Fatigue in Sport and Exercise
Shaun Phillips


疲労ってなんだろう?と最近考えていて、適当に探してみたら良い本が見つかった。運動による疲労について書かれていて、慢性的に身体がダルいなど病気の疲労は扱わない。2015年出版なのでかなり新し目の情報が得られる。著者はエディンバラ大学の講師。運動生理学を学ぶ大学生向けのテキストのようだ。

この本で取り上げられるのは、現時点でわかっている疲労の主なメカニズム。細かいものは他にもあるし、今後の研究でアップデートされていくだろう。

研究結果についての解釈で注意したいのは、生体外(in vitro)と生体内(in vivo)では挙動が異なる場合も多くあり、生体外でしか確認されていないメカニズムもあるので、疲労の原因だと断言するのが難しいものもある。そのため、~の可能性がある、~かもしれない といった表現が多い。

この記事では本の内容を簡単にまとめる。


★疲労(fatigue)とは何か
運動の継続による筋力の低下や、疲れているという感覚(主観的な苦しさや筋肉のバーン感など)を特徴とする現象。

しかし現時点でも、研究者の間では疲労についての明確な共通の定義が定まっていない。fatigueとexhaustion(力を使い果たすこと)の区別も曖昧。そのため研究結果の比較や解釈が難しくなっている。

例えば、運動を続けていると競技に必要なパフォーマンスの継続が難しくなること、最大の筋力を保てなくなること、徐々に出力が低下すること、など様々な疲労の定義がある。

実際に、スプリント、長距離走、チームスポーツ、ストレングス競技など運動の種類によって疲労は異なる。また疲労のメカニズムについては依然として解明されていないことが多くあるので、定義が明確に定まっていないほうが、探求の幅を狭めたり先入観を持って研究したりということが避けられるメリットもある。



★疲労の測定の難しさ
筋力の変化を測定したり、EMGで筋肉の活動を調べたり、筋肉の組織を採取したり、血液検査をしたり、TMSで脳の活動を調べたり、MRIで身体内部の活動を調べたりといった手段があるけど、疲労の一部分しかわからないし、運動している人間をリアルタイムで測定するのはとても難しい。



★神経-筋肉の伝達経路
前提知識として、脳から運動指令が出て、筋肉に到達し、筋肉が収縮するまでを簡単に書いておく。

まず、脳から筋肉まで・・・

脳→神経→脊髄→神経→筋肉

筋肉に電気信号が到達してから筋繊維が収縮するまで・・・

神経→(電気信号)→神経終末→アセチルコリン放出→Na+が筋細胞内に流入(脱分極)→T管が脱分極→リアノジン受容体が開孔→筋小胞体からCa2+が放出→Ca2+がトロポニンCに結合→アクチンとミオシンの滑走(筋繊維の収縮)

参考サイト:
神経のしくみと機能|動作のしくみから理解する(7)
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1989

骨格筋収縮のメカニズム(1)|骨格筋の機能
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2088

骨格筋収縮のメカニズム(2)|骨格筋の機能
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2089



★疲労の起こる場所の分類
大きく分けて、中枢系(central)と末梢系(peripheral)の疲労がある。
- 中枢系の疲労は、中枢神経系(脳と脊髄と運動神経)で起こる疲労(主に脳)
- 末梢系の疲労は、神経と筋肉の接合部分から先の部分で起こる疲労(主に筋肉)

中枢系の疲労と末梢系の疲労は、それぞれ独立しているわけではなく、相互作用をしていると考えられる。



以下、主な疲労のメカニズムである、エネルギーの枯渇、代謝性アシドーシス、脱水と体温上昇、カリウムとカルシウム、中枢系の疲労を順に見ていく。


★エネルギーの枯渇
・ATP

ATP + H2O ⇔ ADP + Pi + H+ + energy

ATPの貯蔵量:筋肉の最大出力を2秒間続けられるだけの量

ATPの補充ルート
- PCr(クレアチンリン酸)系
- 無酸素(解糖)系
- 有酸素系

強度の高い運動であっても筋肉内のATPレベルは60%以下には低下しない。ただ個別の筋繊維(特に速筋)を見ると20%程度の低いレベルまで低下することもあり、疲労の原因になっている可能性がある。

ATPレベルが身体組織にとって危機的な水準まで低下しないように身体活動にブレーキをかけるのが疲労の役割だという見方もある。


・PCr(クレアチンリン酸)

PCr + ADP + H+ ⇔ ATP + Cr

PCrの貯蔵量:筋肉の最大出力を10秒間続けられるだけの量

理想的な状況下ではPCrの貯蔵量は2-4分で回復する

- 6秒のスプリントでPCrの貯蔵レベルは35-55%に低下
- 20秒のスプリントでPCrの貯蔵レベルは27%に低下
- 30秒のスプリントでPCrの貯蔵レベルは20%に低下

5-30秒のスプリントではPCrレベルの低下が疲労の一因になっているようだ。ただ完全に枯渇はしていないので他にも疲労の要因があると考えられる。

PCrの回復の早さは全身持久力と相関する。高強度の運動を繰り返し行う場合、全身持久力を高めるトレーニングを行っておくと、回復が早まり高いパフォーマンスを維持することが出来るだろう。


・グリコーゲン
長時間の運動で筋グリコーゲンの貯蔵レベルが大きく低下した場合でも、筋肉内のATPレベルは保たれている。
ただ、筋繊維内のグリコーゲンの低下が局所的なATPレベルの低下を招き、筋小胞体からのCa2+の放出を阻害することで、筋繊維の収縮が抑制される可能性がある。

また長時間の運動で肝グリコーゲンが枯渇することにより低血糖になり、中枢系と末梢系の両方の疲労を引き起こす可能性があるが、これには個人差がかなりあるようだ。


・脂質
トリグリセリドの形で脂肪組織に大量と、筋肉内に少量貯蔵されている。トリグリセリドはグリセロールと脂肪酸に分解され、脂肪酸が筋肉に取り込まれ酸素を用いてATPを再合成する。

脂肪酸→アセチルCoA→(β酸化)→クレブス回路

脂質は大量にあるので疲労には直接には関わらないが、もし脂質を優先的に使用することでグリコーゲンの消費を抑えることが出来れば、疲労を遅らせることが出来る。実験では炭水化物の摂取を制限し空腹時の運動をすることで脂質を優先的に使用する適応が起きるが、再び炭水化物を摂取すると元に戻るので、グリコーゲンを蓄えた状態で脂質を優先的に使用してグリコーゲンを節約し疲労を遅らせることが出来るかは微妙なところ。

図. スプリントの際のATP再合成源エネルギーシステムの割合推移

図. 持久運動の際の主なエネルギー源の割合推移




★代謝性アシドーシス
・乳酸への誤解
グルコースの解糖ではピルビン酸塩が生成され、その過程でH+も生成される。高強度の運動ではクレブス回路によるピルビン酸塩の有酸素代謝が間に合わず、ピルビン酸塩が蓄積していく。ピルビン酸塩が蓄積されると解糖ペースが落ちて運動パフォーマンスが低下し、またH+が蓄積されると酸性度が高くなりすぎ体組織の機能に悪影響がでる。H+を処理しつつピルビン酸塩を乳酸塩に変換することでこれを防ぐ。

ピルビン酸塩 + NADH+ + H+ → 乳酸塩 + NAD+

このようにグルコースの解糖の結果、生成されるのは乳酸塩であって乳酸ではない。また乳酸塩はピルビン酸塩とH+を処理することで疲労を和らげる役割を果たしていて、乳酸が溜まるから疲れるわけではない。

乳酸塩は運動後1時間くらいで無くなるので筋肉痛の原因にはならない。またバーン感が乳酸塩によるものだというエビデンスはない。バーン感は、H+などの蓄積や、筋繊維の収縮によるメカニカルな刺激を神経が検知しているのかもしれない。


・H+によるアシドーシスの影響
1) Ca2+がトロポニンCへ結合する際にH+が競合することで筋収縮を弱くするかもしれないが、あってもわずかだと考えられ、むしろ酸性環境ではカルシウムポンプに結合するCa2+が減り、そのぶんトロポニンCに多くのCa2+が結合することが出来、筋収縮に好都合の可能性がある。

2) H+はクロスブリッジによる力の生成を妨げ、その結果筋力の低下を起こす可能性がある。また筋収縮の最大収縮速度を低下させる可能性もある。

3) 高強度の運動による血液内のH+の増加は、酸素と結合するヘモグロビンの割合を減らし、脳に運ばれる酸素量が少なくなることで、中枢系の疲労の原因になる可能性がある。



★脱水と体温上昇
脱水と体温上昇は、主に長時間の持久運動や屋外でのスポーツで問題になる。

・脱水
血液中から水分が減ることで、一拍ごとに心臓から送り出される血液の量が減り、心拍数を増やすことでこれを補う。また内蔵などコア部分への血液が優先され、皮膚へ回される血液量が減ることで、体表面からの放熱が妨げられ体温が上がり、これも疲労につながる。また筋肉への血流も少なくなり、グリコーゲンの消費量が増えることで疲労が早まる。

脱水になると運動の主観的な辛さが増す。

運動による脱水で体重が2%減るとパフォーマンスに悪影響が出るという研究結果があるが、これは他人に決められたペースで運動し続けた場合。自分でペースをコントロールできる状況では、この程度の脱水では悪影響は出ない。

そもそも運動による体重減少は、減少分がそのまま水分不足になるわけではない。例えばグリコーゲンは水と一緒に1:3の割合で貯蔵されているが、運動でグリコーゲンが消費されてそれにくっついていた水が発汗で失われたとしても、身体は水分不足の状況にはならない。

水分補給は、「喉が渇いたら適宜飲む」という戦略が最も効果的なようだ。体重減少分を無理して飲む必要は無い。飲み過ぎも飲まなすぎも極端なのは悪影響が出る。


・体温上昇
高温多湿の環境で体温上昇しやすい。

体温上昇により、脳の温度上昇、脳への血流減少、脳の活動低下、脳からの運動指令の低下が起こり、これらが疲労になっていると考えられる。

体表面の温度の上昇により、放熱のための皮膚への血流が増加することで、筋肉への血流が減少し疲労につながる。



★カリウムとカルシウム
・カリウム
運動神経から伝わってきた活動電位が筋肉の細胞膜に伝わりそれが筋全体に伝搬する仕組み
A:脱分極
ナトリウムチャネルが開き、Na+が細胞内に流入し、電位上昇。
B:再分極 
ナトリウムチャネルが閉じ、カリウムチャネルが開き、K+が流出し、電位が低下する。
C:過分極
カリウムチャネルが開き続け、電位が安静時よりも低下する。
D:安静時の電位
カリウムチャネルが閉じ、ナトリウム・カリウムポンプの働きにより安静時の電位に戻る。

理屈の上では、筋肉の活動が続いて細胞外へのK+の流出が続くと、細胞内のK+が少なくなり、脱分極による活動電位の上昇が小さくなり、筋小胞体からのCa+放出が少なくなり、筋肉の収縮が弱くなる。

ただ生体内ではこれをカバーするメカニズムが色々とあるようだ。動員する運動単位を切り替えて負荷分散したり、発火頻度を調整して活動電位を必要最小限に抑えて筋肉を収縮させたり、活動電位が多少低下してもCa2+の放出には十分だったり、ナトリウム・カリウムポンプが筋肉の活動中もNa+とK+のバランス調整を行いK+の蓄積を抑制したり、Cl-の存在がK+の蓄積や細胞内への流入を促進したり・・・といったメカニズムにより、K+の細胞外への蓄積は疲労の大きな原因ではないと現時点では考えられる。

一方で、細胞外のK+の蓄積は、求心性神経を刺激し、脳がそれを検知し、疲れているという感覚やバーン感を感じさせ、脳からの運動信号の弱まりをもたらす可能性がある。


・カルシウム
筋小胞体からCa2+が十分に放出され、それが再び取り込まれることは、筋肉の活動にとって非常に重要である。この働きが低下すると筋肉の出力が弱まる。

1) グリコーゲンレベルが低下すると、筋小胞体の機能が低下し、Ca2+の動きが妨げられ、筋肉の収縮が弱まる(疲労する)。

2) 無機リン酸塩(Pi)
PCrの分解やATPの加水分解でPiが生成される。
- Piが蓄積されると筋収縮が妨げられる。
- Piが蓄積されると、Ca2+に対する筋収縮の感受性が低下し、Ca2+の量が同じだった場合でも筋力が低下する。
- Piは筋小胞体からのCa2+放出チャネルを抑制し、また筋小胞体内でPiがCa2+と結合し蓄積することで、Ca2+の放出が低下し、筋力の低下(筋肉の疲労)を引き起こす可能性がある。

3) Mg2+の蓄積によりCa2+への感受性の低下や、筋小胞体からのCa2+の放出の減少が起こる。



★中枢系の疲労
・末梢系からのフィードバック
筋肉の収縮によるメカニカルな刺激や、代謝物の蓄積による化学的な刺激が求心性神経によって脳に伝えられ、そのことにより脳からの運動指令が抑制され、筋肉の活動が弱まる。

・脳内の神経伝達物質
セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが脳の疲労に関わっているようだ。ただ、前駆体や受容体ブロッカーの投与により高温での長時間の運動のみパフォーマンスが変化するなど、一定条件下で脳の疲労に影響を及ぼしているようだ。

・アンモニア
運動中の筋肉では、プリンヌクレオチドサイクルでの脱アミノ反応とBCAAの酸化によりアンモニアが生成される。アンモニアの疲労への影響は、長時間の運動による認知能力への悪影響に限られると考えられる。

・サイトカイン
運動中の筋肉からは、エネルギー枯渇(主にグリコーゲンレベルの低下)により、炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)の生成量が急増する。運動による筋肉へのダメージによっても、IL-6は作られるようだ。また同時にIL-1とTNF(腫瘍壊死因子)も生成される。これらの炎症性サイトカインは血液経由で中枢神経系に働きかけ眠気や発熱を促す効果がある。これらのサイトカインにより、運動による疲労感を感じるようだ。IL-6の投与により、疲労感の増大と運動パフォーマンスの低下が見られる。サイトカインは神経伝達物質の働きにも影響を与えるようだ。病気の時の慢性的な疲労感やダルさにもサイトカインは関わっている。

・意識下・無意識下でのペース配分
運動を完遂するのに必要なペース配分を、意識的に、もしくは無意識で調整して、その調整に疲労感が使われているという説。オーバーペースだと疲労を感じ、ペースが遅いと楽に感じる。生理学的な疲労現象が起きて脳が疲労を感じるだけではなく、ペース配分の調整のために脳が疲労を感じて、体力の使い方を調整する。持久運動で途中どんなに疲れていても、大抵はゴールが近づくと主観的に楽になるし、実際に身体も動くようになってラストスパートが出来る。

またもっと極端な状況、例えばATP、PCr、グリコーゲンといったエネルギーが完全に枯渇したり、代謝物が溜まりすぎたり、体温が上昇しすぎたりして、身体が危機的な状況になるのを防ぐため、疲労感を用いて身体活動にブレーキをかけているという考え方も出来る。



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