Time course of recovery following resistance training leading or not to failure.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28965198
各セット限界まで追い込んだ場合と、限界レップ数の半分で止めた場合の、トレーニング後72時間の疲労回復の経過を比較した研究。
★実験方法
種目はスミスマシンでのベンチプレスとスクワット
重量はすべて10RM(75%1RM)
以下の3パターンについてトレーニング後72時間までの回復の経過を比較している。
(1) 3セット×5レップ(非限界)
(2) 6セット×5レップ(非限界)
(3) 3セット×10レップ(限界)
(2)と(3)のパターンは、トレーニングボリュームを等しくしつつ、非限界と限界で疲労度合いがどう変わるかを調べている。
コンセントリックを全速力で挙上しているので、非限界パターンはパワートレーニングになっている。被験者はトレーニング歴あり。レジスタンストレーニングに慣れているので、普段トレーニングしている人の参考になる。
★疲労度合いの測定項目
血液検査
- アンモニア、テストステロン、コルチゾール、成長ホルモン
- クレアチンキナーゼ(筋肉のダメージの指標)
運動パフォーマンス
- カウンタームーブメントジャンプ(以下CMJ)
- ベンチプレスとスクワットの中重量での挙上速度(疲れていると挙上速度が低下する)
★結果
非限界パターンは3セットも6セットも、トレーニング直後のCMJが低下したのみで、ベンチプレスとスクワットの挙上速度はトレーニング直後も翌日以降もパフォーマンスが変わらず。
限界パターンは、スクワットとベンチプレスの挙上速度が24-48時間後まで低下、CMJは48時間後まで低下。またトレーニング直後のパフォーマンスの落ち込みが激しい。
クレアチンキナーゼを見ると、非限界6セットパターンはトレーニング48時間後にベースラインに戻ったのに対し、限界パターンは72時間後にベースラインに戻った。上昇の程度も限界パターンの方が大きく、トレーニングボリュームが同じでも限界まで追い込んだ方が筋肉のダメージが大きいことが示唆される。
☆コメント
トレーニングからの疲労回復にかかる時間は概ねボリューム依存で、例えば高強度・低レップトレーニング(8セット×3レップ)と高ボリュームトレーニング(8セット×10レップ)とでは、高ボリュームトレーニングの方が回復に時間がかかることがわかっている。
Comparison of the recovery response from high-intensity and high-volume resistance exercise in trained men.
https://www.researchgate.net/publication/315684978_Comparison_of_the_Recovery_Response_from_High_Intensity_and_High_Volume_Resistance_Exercise_in_Trained_Men
今回の研究は、トレーニングボリュームが同じでも、追い込み度が高いと回復に時間がかかることが明確に示されている点が新しい。
全セット限界までやった方が疲労が大きく回復に時間がかかることはわかった。では、トレーニングの効果はどうなのだろう。限界までやった方が筋肥大とストレングスの向上は大きくなるのだろうか。
一回のトレーニングセッションがもたらす効果を考えてみると・・・
筋肥大を促す刺激は大きく分けて、メカニカルテンション、代謝ストレス、筋肉へのダメージと言われている。ボリュームが等しい(メカニカルテンションが等しい)場合、限界までやった方が代謝ストレスと筋肉のダメージが大きくなるので、より強い刺激が筋肉に入ると考えられる。
長期的な視点を考えると・・・
例えば今回の研究のような「1部位あたり限界までを3セット」or「1部位あたり限界レップ数の半分を6セット」というトレーニングメニューを週2回ペースで続けていくなら、限界までやった方が筋肥大とストレングスの伸びは大きいと思う。このメニューだとトレーニングボリュームが小さいので、全セット限界までやっても身体が扱えるボリュームと疲労の限度まで余裕があるだろう。トレーニングにあまり時間が割けず、限られた時間でなるべく効果を得たい場合は、このようなボリュームの小さいトレーニングメニューを、セット間インターバルを長めに取りつつ全セット限界までやるのも良いと思う。
しかし例えば、「1部位あたり補助種目も含めて限界までを10セット」を週3回ペースで続けたりすると、おそらく身体のキャパシティを超えてしまう。限度を超えた疲労によりトレーニングの質が低下したり、ストレスレベルが高くなりアナボリックに不利な体内環境になったりして、トレーニング効果が低下する恐れがある。
またトレーニングセッション内での悪影響もある。限界まで追い込むとトレーニング直後のパフォーマンス低下が激しいので、スクワットやベンチプレスで全セット限界までやると、その後の補助種目や同じ筋肉を使う種目で質の高いトレーニングが行えなくなる。
トレーニングボリュームを増やし、なるべく速いペースで向上しようとする場合は、非限界セット中心にトレーニングを続けた方が長期的にはトレーニングの質と量を増やせてよりよい結果を出せると思う。
競技の補助としてレジスタンストレーニングを行う場合は、限界までやると疲労が大きすぎて専門のトレーニングに支障が出るだろう。トレーニングスケジュールとの兼ね合いもあるけど、限界までやらない方が良いだろう。
実践を考えると、今回の研究のように10RMの重量で5レップだと追い込み度がやや低いかもしれない。このレップ数なら出来るだけ速く挙上するパワートレーニングが推奨される。筋肥大トレーニングでボリュームを積みたい場合は、限界まで1-4レップ残し程度、例えば10RMの重量だったら6-9レップ程度が良いと思う。
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