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11/17/2020

ビタミンD摂取がストレングスと体組成変化に効果があったとする研究

(1)Effects of Seasonal Vitamin D3 Supplementation on Strength, Power, and Body Composition in College Swimmers
https://www.researchgate.net/publication/339044560_Effects_of_Seasonal_Vitamin_D3_Supplementation_on_Strength_Power_and_Body_Composition_in_College_Swimmers

日照量が減る秋にビタミンD摂取を摂取した場合の運動パフォーマンスと体組成への影響を調べた研究です。結果を先に書くと、運動パフォーマンス変化も体組成変化も、ビタミンD摂取グループのほうが良い結果でした。日照量の減る時期にビタミンDを摂取することで、高ボリュームのトレーニングに耐えるキャパシティを維持・改善し、トレーニング効果を得やすくなったと考えられます。

論文では血清ビタミンD濃度の単位がnmol/lなのですが、個人的に馴染みのあるng/mlに変換してあります。

 

5/22/2020

ビタミンDと運動パフォーマンス

サルコペニアなど筋肉が病的に弱っている高齢者は、ビタミンD摂取により体内ビタミンDレベルを改善することで、筋力がある程度戻ることがいくつかの研究で示されている。

ビタミンDが筋肉・筋力に影響を及ぼす仕組みは現時点では明確になっていない。ビタミンDが筋肉のタンパク質合成に関わったり、カルシウムイオンの調整に関わったりといったメカニズムが推測されている。

こうした背景から、若いアスリートにビタミンDを投与することで、運動パフォーマンスの改善が見込めるのではないか?というエルゴジェニック視点での研究がいくつか行われている。今回はそれを見ていきたい。



★ビタミンDサプリメントをアスリートが摂取したRCT研究
下のほうに「★まとめ」があるので、個別研究は読み飛ばしても大丈夫です。

(1)Acute Effects of Vitamin D3 Supplementation on Muscle Strength in Judoka Athletes: A Randomized Placebo-Controlled, Double-Blind Trial.
https://wlv.openrepository.com/bitstream/handle/2436/608837/Acute%20effects%20of%20Vit%20D%20on%20muscle%20function%20in%20judokas.pdf;jsessionid=01C07C8293F095F75C497313FDE54BFA?sequence=2
・被験者
柔道選手

・ビタミンD摂取方法
1日目 筋力テストしてすぐ多量のビタミンDを摂取(15万IU)
8日目 再び筋力テスト

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
13.16ng/ml→16.76ng/ml

※被験者ごとのビタミンDレベルの推移を見るとこの平均値はおかしい気がする。グループの人数ではなく、全体の人数で合計を割って平均を出しちゃってる感じがするが、まさかそんなことは・・・

・運動パフォーマンス測定
大腿四頭筋とハムストリングスの筋力(膝の伸展と屈曲の最大筋力を測定)
ビタミンD群は平均で13%上昇
プラシーボ群は平均で3%上昇


(2)Correcting Vitamin D Insufficiency Improves Some But Not All Aspects of Physical Performance During Winter Training in Taekwondo Athletes.
https://www.researchgate.net/publication/324928086_Correcting_Vitamin_D_Insufficiency_Improves_Some_But_Not_All_Aspects_of_Physical_Performance_During_Winter_Training_in_Taekwondo_Athletes
・被験者
テコンドー選手

・ビタミンD摂取方法
毎日5000IUを4週間

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
10.9ng/ml→38.4ng/ml

・運動パフォーマンス測定
無酸素ピークパワー(Wingate anaerobic test全力自転車マシン漕ぎ)と膝の伸展のストレングス向上については、ビタミンD群とプラシーボ群で有意差あり。筋持久力、垂直跳び、敏捷性、シャトルランは有意差なし。

・怪我
メインの研究目的ではないが、プラシーボ群のほうが怪我する選手が多かった。


(3)The effects of vitamin D3 supplementation on serum total 25[OH]D concentration and physical performance: A randomised dose-response study
https://www.researchgate.net/publication/235628143_The_effects_of_vitamin_D3_supplementation_on_serum_total_25OHD_concentration_and_physical_performance_A_randomised_dose-response_study
・被験者
ラグビーやサッカーなど

・ビタミンD摂取方法
週あたり20000IU、40000IU、プラシーボの3グループ。12週間。

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
20ng/ml→34ng/ml(週あたり20000IU)
20ng/ml→36ng/ml(週あたり40000IU)

・運動パフォーマンス測定
ベンチプレス1RM、レッグプレス1RM、垂直跳び、20m走いずれもビタミンD摂取による効果なし。


(4)Assessment of vitamin D concentration in non-supplemented professional athletes and healthy adults during the winter months in the UK: Implications for skeletal muscle function
https://static1.squarespace.com/static/59321fad9de4bb81bdceb3b6/t/593cb0a5e3df286fa0f55995/1497149606409/Assessment+of+vitamin+D+concentration+in+non-supplemented+professional+athletes+and+healthy+adults+during+the+winter+months+in+the+UK-+implications+for+skeletal+muscle+function.pdf
・被験者
ラグビー、サッカー、騎手の選手。

・ビタミンD摂取方法
毎日5000IUを8週間。

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
12ng/ml→42ng/ml

・運動パフォーマンス測定
10m走と垂直跳びが向上。ベンチプレス1RMとスクワット1RMは有意差無し(向上の傾向はあり)。


(5)Vitamin D Supplementation and Physical Activity of Young Soccer Players during High-Intensity Training
https://www.mdpi.com/2072-6643/11/2/349/htm
・被験者
サッカー選手

・ビタミンD摂取方法
毎日5000IUを8週間。

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
19ng/ml→43ng/ml

・運動パフォーマンス測定
スプリント能力とジャンプ力を測定。プラシーボ群とビタミンD群で有意差なし。


(6)Vitamin D Supplementation and Physical Performance in Adolescent Swimmers
https://www.researchgate.net/publication/265516194_Vitamin_D_Supplementation_and_Physical_Performance_in_Adolescent_Swimmers
・被験者
水泳選手

・ビタミンD摂取方法
毎日2000IUを12週間。

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
20ng/ml→30ng/ml

・運動パフォーマンス測定
スイムのタイム、握力、片足立ちの時間、いずれもプラシーボ群とビタミンD群で有意差なし。


(7)The influence of winter vitamin D supplementation on muscle function and injury occurrence in elite ballet dancers: A controlled study
https://www.researchgate.net/publication/236338298_The_influence_of_winter_vitamin_D_supplementation_on_muscle_function_and_injury_occurrence_in_elite_ballet_dancers_A_controlled_study
・被験者
プロのバレエダンサー

・ビタミンD摂取方法
毎日2000IUを4ヶ月

・ビタミンD群の血清ビタミンD濃度変化
ビタミンDレベルは測定していないようだ。実験は冬に行われ、室内での長時間の練習が多い職業なのでスタート時のビタミンDレベルは低いと思われる。

・運動パフォーマンス測定
アイソメトリックでのストレングス(膝の伸展)と垂直跳びで、いずれもビタミンD群が向上。ストレングスは+18.7%、垂直跳びは+7.1%。

・怪我
怪我率はビタミンD群のほうが低かった。ビタミンD群0.55/1000h、コントロール群1.87/1000h



★怪我リスク
(8)Stress Fractures in the Israeli Defense Forces From 1995 to 1996
https://journals.lww.com/clinorthop/Fulltext/2000/04000/Stress_Fractures_in_the_Israeli_Defense_Forces.27.aspx

(9)Association between serum 25(OH)D concentrations and bone stress fractures in Finnish young men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16939407
兵士対象の研究では、骨折リスクとビタミンDレベルの低さが相関している。骨折は頻繁に起こるものではないので、アスリート対象の研究だとサンプル数と調査期間の問題から有意差が出にくいと思う。

(10)The Association of Vitamin D Status in Lower Extremity Muscle Strains and Core Muscle Injuries at the National Football League Combine.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29275983
NFLコンバインの選手のデータから、怪我歴とビタミンDの関係を分析した研究。脚の筋肉の肉離れや体幹の筋肉の怪我リスクが、ビタミンDレベルの低さと相関していた。



★まとめ
単関節のストレングス向上はビタミンD摂取の効果ありとなった研究が多い。ジャンプ力はいくつかの研究で効果ありとなっている。ベンチプレスやスクワットなど複合関節種目でのストレングス向上は効果があまり期待できないようだ。

若いアスリートはビタミンD摂取により、部分的にストレングスとパワーが改善するかもしれない。欠乏レベルにある場合は、一日5000IUを2ヶ月くらい続けたい。日光に当たってもビタミンDが生成されるけど、日光に当たりすぎると皮膚がんなどの健康リスクが出てくるので、サプリメントで補うのが良いと思う。

怪我の予防については、結構期待できそうな感じがする。骨折と筋肉の怪我の予防に貢献する可能性がある。骨は単に強くすることで骨折予防だろうけど、肉離れなどはメカニズムがよくわからない。



★ビタミンD研究の注意点
アスリートにビタミンDを投与する研究の問題点は、

・被験者数が少ない

・初期ビタミンDレベルと、サプリメント摂取後のビタミンDレベルがばらばら。

・ビタミンDが運動パフォーマンスに影響を及ぼすメカニズムと、運動パフォーマンスにとって望ましいビタミンDレベルがはっきりしない。欠乏状態(だいたい20ng/ml以下)を改善することで、運動パフォーマンス向上が期待できるのか? それとも健康維持に十分なレベル(だいたい30-40ng/ml)よりさらに高いビタミンDレベルにすると、神経-筋肉が最大のパフォーマンスを発揮するようになるのか?



★ビタミンDが不足しやすい競技・季節
日焼け止めを塗らず肌を多く露出して、低緯度地域、夏、昼間の日差しに多く当たると、ビタミンDが多く生成される。高緯度地域、冬、朝夕の日差しはビタミンDを生成しにくい。

屋内競技はビタミンDが不足しやすい。屋外競技でも、高緯度の冬場、曇りの多い地域(例えば日本だと冬の日本海側)だとビタミンDが不足しやすい。

それと階級制競技はビタミンDが不足しやすい傾向があるようだ。


★タンニングマシンはビタミンD生成に効果的か
ビタミンD生成に必要なのはUVBなので、UVBが少ない種類のマシンだとあまりビタミンDが生成されないだろう。

4/22/2020

血中ビタミンDレベルと新型コロナの重症化リスクの研究

Vitamin D supplementation could possibly improve clinical outcomes of patients infected with Coronavirus-2019 (Covid-2019)
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3571484

血中ビタミンDレベルと新型コロナの重症化リスクに逆相関が見られるとする論文が出ている。病院の新型コロナ患者のデータを集めて分析したところ、ビタミンDレベルが低いと重症化リスクが上がり、ビタミンDレベルが高いと重症化リスクが下がるという綺麗な結果が出ている。


ビタミンDレベルと新型コロナの重症化リスクに因果関係があるのかを直接調べるには他のデザインの研究が望まれるのだけど、因果関係であるためには、とりあえず以下のような可能性を否定する必要がある。

1) 新型コロナ発症で体内のビタミンDレベルが低下する可能性
発症してからビタミンDレベルが低下し、測定時点ではその数字が出てきた可能性。発症前のビタミンDレベルはわからない。


2) 交絡因子の存在
例えば、

ビタミンDレベルが高齢になると低下する。(リンク先はイタリアのデータ)

・新型コロナは高齢になると重症化・死亡しやすい。

このような場合、単に年齢が要因でビタミンDレベルと重症化リスクの逆相関が出ている可能性がある。

他にも要介護で寝たきりの人は、日光に当たる機会が少なくビタミンDレベルが低いだろうし、それと同時に身体全体が弱っているだろうから、重症化しやすいと考えられる。身体がどれだけ元気かが屋外の活動量に関係し、それがビタミンDレベルに表れている可能性がある。

年齢や生活環境を揃えた場合のリスク比較を出してほしいけど、この研究ではコンフィデンシャル的な問題でビタミンDレベルと症状の重さ以外のデータは得られていないみたいなので今回は難しそう。


★所感
これは完全に個人の勘ですが、感触としてはビタミンDレベルが新型コロナの重症化リスクにある程度は影響しそうな感じがする。この研究者はフィリピンの人なのだけど、フィリピンのデータを見てみたら、平均でビタミンDレベルは30ng/mlを超えていて、高齢世代のほうがビタミンDレベルが高い。患者のデータは南アジアの国(複数形)の病院から集めたと書かれているのでフィリピンのデータがそのまま当てはまらないと思うけど、東南アジアや南アジアは若い世代の美白意識が強いので、若い世代よりも高齢者のほうがビタミンDレベルが低くなる傾向はないかもしれない。

新型コロナ発症後にビタミンDレベルが低下する可能性については、膜型人工肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)でビタミンDレベルが下がるという記述をみつけたので、症状Criticalではその影響が出るケースがあるかもしれない。他にもビタミンDレベルが下がるケースがいつかあるのだけど、いずれも1,2週間でビタミンDレベルが急激に下がるのはICUレベルの重篤な場合で、OrdinaryやSevereでも症状の重さに沿ってビタミンDレベルが下がっている説明にはならないと思う。


★今後望まれる研究
普段からビタミンDレベルを計測しているなるべく均質な集団での発症リスク、重症化リスクが出せるなら、ビタミンDレベルと新型コロナリスクの関係がかなりクリアになりそう。年齢だけじゃなく人種や所得や生活環境や宗教なども影響するだろうから集団は均質にしたい。ビタミンDを投与するグループとプラシーボを投与するグループで大規模なRCTをやってみて欲しいけど・・・倫理的な面から難しいかな。

関連記事:
新型コロナウィルスとビタミンD

新型コロナウィルスとビタミンD(詳細)

4/10/2020

新型コロナウィルスとビタミンD(詳細)

前回の記事の続き

前回記事:新型コロナウィルスとビタミンD

★体内のビタミンDレベルを保つには
・日光(紫外線)に当たる
太陽高度の高い時が良い。具体的には、低緯度地域、夏、昼間は太陽高度が高い。成人白人が全身を夏の日光に15-30分当てて10000IUくらい出来る。

・ビタミンDを多く含む食品を食べる
鮭、脂質の多い魚、卵の黄身など。ただ普通の食事で多くのビタミンDを摂取するのは難しい。

・サプリメント
屋外での活動が減少している現代においては、サプリメントで補うのが良いだろう。

専門家によれば、適切なビタミンDレベルを保つには日光も食品もサプリメントも全部必要とのこと。


★ビタミンDの種類
D2とD3があるのだけど、ビタミンD3で良いだろう。


★注意点
体内のビタミンDレベルが低下している場合は、望ましい水準に戻すことで免疫機能の回復や病気予防や骨を強くしたりや筋力を上げたりといった効果があると考えられるのだけど、ビタミンDレベルが低下していた場合に落ち込む分を取り戻すと思われるので、過剰摂取しても効果がブーストされるわけではない。


★上気道感染症やインフルエンザへの効果
ビタミンD摂取が上気道感染症やインフルエンザの予防にも効果がありそうなので、新型コロナウイルスの対策にもなるかもしれない。もちろんビタミンD摂取によりコロナウィルスへの感染リスクが下がるというエビデンスは現時点では存在しないが、ビタミンDサプリメントの摂取コストと、アップサイドリスク・ダウンサイドリスクを考えると割の良い賭けなので、自分だったら毎日5000IUビタミンDを摂取する選択肢を選ぶ。読解力のない人に絡まれるのも面倒なので繰り返すけど、私はビタミンD摂取が新型コロナウィルスの予防になると言っているわけではない。最悪死ぬことを考えると、ビタミンD摂取はやってみる価値はあると言っている(イタリアアメリカの死者の平均年齢が80歳くらいなので若い人が死ぬリスクは著しく低いと思うが)。またビタミンD不足は様々な健康リスクに関わると考えられているので、サプリメント摂取でビタミンDレベルを望ましい水準に保つのを避ける理由も無い。

ビタミンD摂取が気道感染症を予防するかを調べたメタ解析(1)を見ると、血清ビタミンD濃度が25nmol/L(10ng/ml)以下の場合にビタミンDを摂取すると気道感染症の強い予防効果があるが、それ以上だと有意差がでない。ビタミンDの摂取の仕方は、毎日もしくは毎週摂取したほうが効果が出る。1ヶ月に一回10万IUといった服用の仕方は効果が低そう。摂取量が少ないRCTも含んだ上で、25nmol/L(10ng/ml)以下の場合のビタミンD摂取で気道感染症の強い予防効果が出ているので、40ng/ml程度まで上げられる量を摂取すればより高い効果が期待できると思う。このメタ解析だと、高カルシウム血症と腎結石リスクは、プラシーボ群とビタミンD摂取群で変わらず。

メタ解析の元になっているRCTはデザインがいまいちなものが多い。ビタミンD摂取が効果を発揮するのは、初期状態がビタミンD不足だったときに、体内のビタミンDレベルを上げ免疫の働きを正常に戻すことにより病気のリスクを低減させると考えられるので、被験者の初期状態を低いレベルに揃えて、十分な量のビタミンDを投与する。血清ビタミンDレベルが適切な水準に上昇するのに数ヶ月かかるので、実験期間は長めに取る、というデザインにしないとRCTでは効果が示されにくいだろう。

良いデザインのRCT例(2)。被験者が抗体欠乏の患者と気道感染症になりやすい患者で、特に疾患の無い人と反応が変わるかもしれないけど。ビタミンDを毎日4000IU摂取。期間は1年。血清ビタミンD濃度は初期20ng/ml付近から3ヶ月で40ng/ml超えに上昇。ビタミンD摂取群は上気道感染症のリスクが下がり、抗生物質の摂取が減った。この研究と同じようなデザインで繰り返しRCTをやってみれば、ビタミンD欠乏の人がビタミンDを摂取することで上気道感染症やインフルエンザのリスクを下げるかどうかがはっきりする。

上気道感染症の罹患リスクと、血清ビタミンD濃度に逆相関が見られるとする観察研究(3)。ビタミンDレベルが低いと、上気道感染症の罹患リスクが上がる。30ng/ml以上の場合に比べたオッズ比が、10ng/ml以下で1.36、10-30ng/mlで1.24。

1000IU/日のビタミンD摂取で上気道感染症、風邪、インフルエンザ様症状の発症リスクに影響は認められなかったという結果のRCT(4)。人数が多くて期間も長いのは良いけど、スタート時点での血清ビタミンD濃度が約25ng/mLでそれほど低くはなく、摂取後も32ng/mLでそれほど上昇しているわけではなく、ビタミンDがそれほど低くない人が少量のビタミンDを摂取しても上気道感染症などのリスクは下がらなそうだということは言える。

この研究は血清ビタミンD濃度の四分位ごとの罹患リスクを出していて、血清ビタミンD濃度が高いほど、上気道感染症、風邪、インフルエンザ様症状の罹患リスクが下がり、病気の日数が短い傾向があることが示されている。特に重い症状での日数が大幅に短くなっている。四分位の区切りは、25th, 50th, and 75th percentiles (21.75, 28.42, 35.4 ng/mL)なので、これを見ると20ng/mL以下は感染症に対する免疫機能がかなり低下してそう、35ng/mL以上にするとちゃんと働いていそうって感じがする。


あとプロバイオティクスの摂取で喉や鼻の粘膜を強化するのも、新型コロナウィルス対策として意味があるかもしれない。価格が安くてダウンサイドリスクはほぼ無いのだから、ダメ元でやってみる価値はあると思う。

関連記事:プロバイオティクスのスポーツへの利用


★ビタミンDと肺炎
ビタミンD欠乏と市中肺炎の関係についてのメタ解析(5)。ビタミンDレベルの低さと、市中肺炎のリスクが相関している。血清ビタミンD濃度20 ng/mL以下で、オッズ比1.64。一般の肺炎は多くが細菌性で、新型コロナのウィルス性肺炎とは反応が異なるかもしれないけど参考まで。


★ビタミンD欠乏の割合
季節や屋外活動の多さなどで変わる。いくつか研究を見ていく。ビタミンD欠乏の閾値はいくつか定義があるけど、よく使われる20ng/ml以下の割合を見ていく。

・日本人のオフィスワーカー(6)。20 ng/ml以下は7月が9.3%、11月が46.7%。

・妊娠中の日本の女性(7)。平均すると20ng/mL以下は73.2%。季節ごとに見ると20ng/mL以下は4月が89.8%、10月は47.8%。日光が弱まり外出が減る冬の間にビタミンDレベルが低下していると思われる。

・2004年頃のアメリカのデータ(8)。20ng/ml以下が36%。ビタミンDレベルは、白人>ヒスパニック>黒人になっている。黒人は平均が20ng/ml以下で、深刻な欠乏である10ng/mlの割合がかなり高い(Table2)。狩猟採集生活をしていた頃に住んでいた地域の日照レベルに身体がアジャストしていて、それよりも日光が弱い地域に住むとビタミンDレベルが低くなるのだと思う。当然、屋外での活動時間が短くなればそれだけビタミンDレベルが下がる。日本に住む人だと、インドや東南アジアや南米やアフリカなど日差しが強い地域の出身で肌の色が濃い人は普通に生活しているとビタミンD欠乏リスクがかなり高くなると考えられる。

スウェーデンやイギリスやアメリカでは、肌の色の濃い移民が新型コロナウィルスの死亡者に占める割合が高いという報告が出ている。生活環境や衛生状態や医療へのアクセス度合いも影響しているのだろうけど、ビタミンDレベルの低さも影響しているのかもしれない。


★ビタミンD摂取の副作用
ビタミンDの摂取で、高カルシウム血症、高カルシウム尿、腎結石になるリスクが上がるかもしれない(研究によって結果がばらついている)。

通常レベル(1日10000IU以下)のビタミンDを摂取して高カルシウム血症などになるかは、おそらく反応に個人差がある。ビタミンDに過剰反応する遺伝子変異や、結核などの病気の人がビタミンD摂取に過剰反応して高カルシウム血症になりやすいと考えられている。メタ解析(9)では、800IU以下の小容量でもそれ以上の量でも高カルシウム血症のリスクは同程度上がるという結果が出ていて、過剰反応する体質の人がリスク比を引き上げている感じがする。


★摂取量目安
日光にあまり当たらない生活の人は1日あたり5000IU程度の摂取を推奨。血清ビタミンD濃度を測定できるなら、ビタミンDレベルが望ましい水準になったら1日あたり1000-2000IUに減らして維持していっても良い。週に一回より頻度が高ければ良さそうなので、1日5000IUペースで摂取したいなら、2日に一回10000IUといった摂取の仕方でも問題ないだろう。

買うのはアメリカの大手メーカーのサプリメントが安くて良いと思う。国内メーカーのものは価格が高い。海外サプリメントは質が悪いものもあるので、よくわからないメーカーのあまりに安いものは買わない方が良いと思う。

私はアマゾンで買えるこれを摂取しています。

ビタミンD摂取による高カルシウム血症のリスクが指摘されているので、一般的なカルシウムサプリメント(炭酸カルシウムやクエン酸カルシウム)との併用は止めたほうが良いだろう。そもそも一般的なカルシウムサプリメントは摂取しないほうが良いと思う。

関連記事:健康な骨と心臓血管のための食生活ガイドライン


★ビタミンD摂取量の上限
一般にはどのくらいの量でビタミンD過剰摂取の症状が出るのか。ケーススタディを集めた研究(10)を見てみると、成人だと一ヶ月60万IU(1日20000IU)を超えるペースで数ヶ月間以上摂取しつづけるするのは過剰摂取のリスクが高そう。過剰摂取の症状は、吐き気、嘔吐、脱水、腹部などの痛み、倦怠感、食欲不振など。これらの症状が出たら即座に服用はやめる。


★所感
おそらく新型コロナウィルスは人口の大部分が感染するまで止まらない。都市封鎖といった強硬措置で一時的に封じ込めたように見えたとしても、緩めたらまた感染が広がりだす。SARSやMERSとは感染力が違うので封じ込めは出来ないだろう。新型インフルエンザのパンデミックに近い。

既存のインフルエンザが新型コロナウィルスに比べてそれほど脅威ではないのは、過去に新型としてパンデミックが起こり、多くの人がある程度の免疫を持つようになったから。その過程では、多くの命が失われた。個人として出来ることは、遅かれ早かれ感染すると考えて、出来るだけ体調を整えてウィルスを迎え討つことだと思う。(外出自粛で日光に当たる機会が減り、運動不足になると、よりウィルスに対して身体が脆弱になるだろう)

経済に人命は替えられないという論拠で、経済的コストを無視して強硬な抑え込み策をやるべきだという主張があるけど、不況になると自殺者が増える。目の前の新型コロナ死者を一人でも減らそうと頑張ると、結果として多くの命が失われる可能性がある。

トータルの犠牲を小さくする方法はおそらく、経済活動をある程度維持しつつ医療崩壊を起こさないペースでのコントロールされたパンデミックを目指し集団免疫を獲得すること。スウェーデンがそれを目指している。スウェーデンは高い医療レベル、低い人口密度、他の欧米諸国に比べると低い肥満率、低い大気汚染レベル、あとこれははっきりとはしない説だけど、BCG接種国なのとビタミンDレベルの強化策で国民のビタミンDレベルが低くないこと。恵まれた条件が揃っているのでチャレンジ出来るのだと思う(もちろん為政者と国民が合理的に考え決断できるのが前提だが)。イギリスやアメリカやイタリアは都市封鎖せざるを得ない状況にあっという間に追い込まれた。

理想論を言えば、経済活動を維持したまま、重症化リスクの高い人達(主に高齢者)を社会から隔離、それ以外の重症化リスクの低い人たちは医療崩壊しないペースでなるべく早く集団免疫の獲得を目指すのが経済的被害も人的被害も最小になると思う。免疫を持つ人が増えるとウィルスは移る先が見つからなくなってその集団では感染が終息していく。その後重症化リスクの高い人たちを社会に合流させる。再び外からウィルスが入ってきても免疫を持っている大勢の人がバリアになって、リスクの高い人たちまでウィルスが辿り着きにくくなる。(このウィルスの感染力の強さと無症状や軽症の感染者の多さを見ると、すでにかなりの人が感染して免疫獲得済みな感じもする)

感染ゼロを目指して強硬に抑え込もうとする政策の問題点は、強烈な景気の落ち込みとそれに伴う自殺者の急増、そして集団免疫が出来ない限り、解除後にまた外からウィルスが入ってきて感染拡大が再開し、リスクの高い人たちもウィルスに晒されやすくなること。免疫が出来ない種類のウィルスだったらどうするのかという反論があるけど、それは都市封鎖しても同じことが言える。すでに世界各地にウィルスは広まっているので、世界中の人が同時に一ヶ月くらい刑務所の独房みたいなところで完全隔離でもしない限り、このウィルスは再び入ってくるだろう。

日本がどこを目指した戦略を取っているのかわからないけど、トレードオフを受け入れた上で、政策を実行して欲しいものです。現状では、パニックになった世論に流され、コストと被害を無駄に膨らませる政策をやっているとしか思えない。

参考記事:新型コロナ対策でいま求められる「戦略」と「戦術」

参考記事:感染症の基本法則とパラドックス



<参考文献>
(1)Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28202713

(2)Vitamin D3 supplementation in patients with frequent respiratory tract infections: a randomised and double-blind intervention study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3533016/

(3)Association between serum 25-hydroxyvitamin D level and upper respiratory tract infection in the Third National Health and Nutrition Examination Survey.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19237723/

(4)Vitamin D3 Supplementation and Upper Respiratory Tract Infections in a Randomized, Controlled Trial
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3805175/

(5)The association between vitamin D deficiency and community-acquired pneumonia
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6756683/

(6)Serum 25-Hydroxyvitamin D Concentrations and Season-Specific Correlates in Japanese Adults
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3899433/

(7)High frequency of vitamin D deficiency in current pregnant Japanese women associated with UV avoidance and hypo-vitamin D diet
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0213264

(8)Demographic Differences and Trends of Vitamin D Insufficiency in the US Population, 1988–2004
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3447083/

(9)Vitamin D-Mediated Hypercalcemia: Mechanisms, Diagnosis, and Treatment
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5045493/

(10)Development of Vitamin D Toxicity from Overcorrection of Vitamin D Deficiency: A Review of Case Reports
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6115827/

4/07/2020

新型コロナウィルスとビタミンD

緊急度が高いので先に結論を書いておきます。私がそう考えるに至った背景については数日中に別の記事に詳しく書いていきたいと思います。

新型コロナウィルス対策としてビタミンDの摂取が有効かもしれないので、毎日5000IUのビタミンD摂取を推奨。屋外での活動が少なく、ビタミンD欠乏になっていそうな人は、最初の数週間は毎日10000IU摂取し、その後毎日5000IU摂取を推奨。(摂取量は成人の目安)

ロジックを簡単に書くと、体内のビタミンDレベルが低い人は、上気道感染症やインフルエンザへの罹患リスクと重症化リスクが上がると考えられ、ビタミンD摂取によりビタミンDレベルを望ましいレベルまで引き上げ免疫機能を正常化することで、これらの罹患リスクと重症化リスクを下げることが期待される。これは新型コロナウィルスにも同じことが言える可能性があり、北半球の4月は体内のビタミンDレベルが下がりやすく、また外出自粛要請により日光に当たる機会が減り、ビタミンDレベルが低下している人が多くいると思われるので、ビタミンDを摂取するのが良いと考えました。血清ビタミンD濃度を測定できるのなら、測定結果を元にビタミンDレベルが低い人のみビタミンDを摂取するのがベストですが、検査には費用と手間と時間がかかるし、医療リソースを使うかもしれないので、とりあえず摂取するのが良いという判断です。

こういった注意が出ているのは把握しています。

「新型コロナウイルスにビタミンDが効く」等の情報に注意 (200226)

ビタミンDサプリメントの価格の安さ、及び摂取によるダウンサイドリスクとアップサイドリスクを考慮すると、ビタミンD摂取は割の良い賭けだと思うので、摂取したほうが良いと判断しました。もちろん、ビタミンDを摂取すると新型コロナウィルスへの罹患リスクが下がるとか、重症化しにくくなるといったエビデンスは現時点ではありません。

稀に遺伝子変異(CYP24A1 Mutation)によりビタミンDへの感受性が高い人がいます。通常は問題ない量のビタミンD摂取で高カルシウム血症の症状(吐き気、嘔吐、脱水症状、腹部などの痛み、倦怠感、食欲不振など)が出た場合は、服用を止めて病院に行ってください。ビタミンDサプリメントの摂取だけでなく、高カルシウム食や紫外線への曝露を避けたりと、生活の仕方から変えないといけないようです。もちろん既に医師からビタミンDの摂取を禁じられている人は摂取しないこと。


<参考文献>
 Evidence That Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza and COVID-19 Infections and Deaths
https://www.preprints.org/manuscript/202003.0235/v2
メカニズム的には新型コロナウイルスの感染リスクを低減し得るという論文。PDFのボタンを押すと全文読めます。ここでの推奨摂取量は、最初の数週間は1日10000IUで急速にビタミンDレベルを上げ、その後1日5000IU摂取。25(OH)Dレベルを測定できるなら、これを40–60 ng/mlにしたい。マグネシウムの摂取も推奨。

GLOBAL EPIDEMIC OF CORONAVIRUS—COVID-19: WHAT CAN WE DO TO MINIMIZE RISKS
https://storage.googleapis.com/journal-uploads/ejbps/article_issue/volume_7_march_issue_3/1584436192.pdf
学術誌の記事で高用量のビタミンD摂取が提案されています。この記事ではビタミンDに加えて亜鉛、セレン、抗酸化物質の摂取を推奨。最初に20万~30万IUをまとめて摂取、一週間後に同じ量。この量だと遺伝子変異が無い人も過剰摂取の症状が出るかもしれないけど、体内のビタミンDレベルを急速に上げたい場合は選択肢になる。

Optimisation of Vitamin D Status for Enhanced Immuno-protection Against Covid-19
https://www.bmj.com/content/368/bmj.m810/rapid-responses
左下の下矢印クリックで全文読めます。

Preventing a covid-19 pandemic
https://www.bmj.com/content/368/bmj.m810/rapid-responses
ここのresponsesでビタミンDの摂取についていくつかコメントが付いています。