11/17/2020

ビタミンD摂取がストレングスと体組成変化に効果があったとする研究

(1)Effects of Seasonal Vitamin D3 Supplementation on Strength, Power, and Body Composition in College Swimmers
https://www.researchgate.net/publication/339044560_Effects_of_Seasonal_Vitamin_D3_Supplementation_on_Strength_Power_and_Body_Composition_in_College_Swimmers

日照量が減る秋にビタミンD摂取を摂取した場合の運動パフォーマンスと体組成への影響を調べた研究です。結果を先に書くと、運動パフォーマンス変化も体組成変化も、ビタミンD摂取グループのほうが良い結果でした。日照量の減る時期にビタミンDを摂取することで、高ボリュームのトレーニングに耐えるキャパシティを維持・改善し、トレーニング効果を得やすくなったと考えられます。

論文では血清ビタミンD濃度の単位がnmol/lなのですが、個人的に馴染みのあるng/mlに変換してあります。

 


実験内容

・被験者
バージニア工科大学の水泳選手で、男性6名と女性13名。

プラシーボグループ 男性3名 女性6名
ビタミンDグループ 男性3名 女性7名

参考までに、被験者の4月時点での血清ビタミンD濃度の平均は23ng/ml。4月からは屋外プールで練習し、日光にたっぷり当たり、8月の実験開始前の時点で血清ビタミンD濃度は49ng/ml。これは健康維持に必要な血清ビタミンD濃度としては十分に高い水準。

・グループ分け
プラシーボグループ:プラシーボを摂取
ビタミンDグループ:毎日5000IUのビタミンDサプリメントを摂取

・地域
アメリカのバージニア州(北緯37度)

・実験期間
8-11月の12週間

・トレーニング内容
筋トレについては、「strength and conditioning sessions」としか書かれておらず、どのような内容だったのか不明。並行して水泳と、陸上でのスプリント練習などを実施。上限のトレーニング時間が週に合計20時間。

・食事
これまで通りの食事

・結果

<血清ビタミンD濃度>

8-11月の12週間で、ビタミンDグループは8%上昇、プラシーボグループは44%減少。血清ビタミンD濃度の具体的な値は書かれていない。プラシーボグループの11月は、グラフ目測だと75-80nmol/lなので30ng/ml程度と思われ、健康面では特に問題はないだろうといえる水準。


<運動パフォーマンス>

*がついている項目は有意差あり。ビタミンDグループのほうが全般的に良い結果になった。

運動パフォーマンス変化
  プラシーボグループ ビタミンDグループ
ベンチプレス +4.6% +6.3%
スクワット +7.0% +16.3%*
デッドリフト +2.5% +13.8%*
幅跳び +4.3% +9.5%
垂直跳び +2.1% +13.5%*
ディップス(最大反復回数) +16.6% +17.7%
プルアップ(最大反復回数) +8.3% -2.1%



<体組成>

*がついている項目は有意差あり。 ビタミンDグループのほうが良い結果になった。

体組成変化
  プラシーボグループ ビタミンDグループ
体重 +0.1kg +2.4kg
体脂肪率 -4.0%* -6.2%*
除脂肪体重 +0.3kg +2.7kg*

ただ、上の表は論文の数値から作成したのですが、体重計で測定した体重の変化と、DXAで測定した除脂肪体重と体脂肪率の変化の整合性が無いです。この体重変化と除脂肪体重変化で、体脂肪率が大幅に低下するのはおかしい。実験前の体脂肪率の算出が間違っている感じですが・・・。除脂肪体重の数値が正しいなら、体脂肪率の変化は両グループとも、もっと小さいと思います。参考までに体重と除脂肪体重から、両グループの実験前と後の体脂肪率を計算してみると、

・プラシーボグループの体脂肪率:19.6%→19.3%(変化-0.3%)  

・ビタミンDグループの体脂肪率:19.5%→18.5%(変化-1.0%)

<ホルモンレベル>

プラシーボグループは遊離テストステロンが低下し、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)が上昇した。遊離テストステロンの低下とSHBGの上昇は、高ボリュームのトレーニングからの回復が不十分なことを示唆していると考えられる(2)。





コメント

ストレングスと体組成の変化を比較すると、ビタミンD摂取グループのほうが良い結果でした。実験の状況や各データを見てみると、

・良い結果を得られたビタミンD摂取グループでも、12週間のトレーニングの成果としてはストレングスの伸びが特に高いわけではない。

・トータルのトレーニング時間が長い。また水泳の練習はかなりの運動量になる。論文では、秋はプレシーズンでハードなトレーニングをおこなう時期と書かれている。疲労や回復の面でかなり負荷のかかるトレーニングだったと考えられる。

・ホルモンレベルの変化は、プラシーボグループの回復が不十分なことを示唆している。

おそらくは、ビタミンDの摂取が直接的にトレーニング効果を高めたというよりも、高ボリュームのトレーニングに耐えられるキャパシティを維持・改善することで、体力・回復力の面で厳しい状況でもトレーニング効果を得やすくなったのではないかと思います。

趣味で筋トレする人の運動量だと効果を得られるのか不明ですが、運動パフォーマンスの研究ではビタミンDを摂取するとプラシーボに比べて良い結果になるか効果無しかのどちらかがほとんどで、アップサイドのほうが大きいと思われるので、日光にあまり当たらない生活をしている人は摂取するのも良いと思います。以下の状況に当てはまる場合は、ビタミンD摂取の効果を得やすいと思われます。

◯ 血清ビタミンD濃度が低い

◯ 屋内競技

◯ 日照量が少ない地域・季節

◯ トレーニング量が多い

メタアナリシス(3)だと、下半身種目のストレングスが向上しやすいという結果が出ています。

ビタミンDの摂取量は、定期的に血清ビタミンD濃度を測定し、40ng/ml程度を維持するように調整していくのが最善と思われますが、なかなか大変だと思うので大雑把な目安を書きます。あまり日光に当たらない生活スタイルの人や、日照量が少なくなる季節では、1日あたり5000IU程度の摂取量が良いと思います。1日あたり5000IUのペースで摂取していくと、不足している人は数ヵ月で血清ビタミンD濃度を望ましい水準に上げられます。摂取頻度は1週間に1回以内なら効果が出やすいので、2日に1回10000IUでも大丈夫です。既に血清ビタミンD濃度が十分な水準の人は、1日あたり2000-3000IU程度でも維持できるかもしれません。



関連記事:ビタミンDと運動パフォーマンス


<参考文献>

(1)Effects of Seasonal Vitamin D3 Supplementation on Strength, Power, and Body Composition in College Swimmers
https://www.researchgate.net/publication/339044560_Effects_of_Seasonal_Vitamin_D3_Supplementation_on_Strength_Power_and_Body_Composition_in_College_Swimmers

(2)Biomarkers in Sports and Exercise: Tracking Health, Performance, and Recovery in Athletes
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5640004/

(3)Effect of Vitamin D supplementation on upper and lower limb muscle strength and muscle power in athletes: A meta-analysis
https://www.researchgate.net/publication/332772876_Effect_of_Vitamin_D_supplementation_on_upper_and_lower_limb_muscle_strength_and_muscle_power_in_athletes_A_meta-analysis

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