食欲の低下しやすい運動方法
筋トレも有酸素運動も、激しくおこなうほど運動後に食欲が低下しやすいです。
有酸素運動だとHIITが最も食欲が低下しやすく、次に一定ペースの高強度有酸素運動、その次に一定ペースの中強度の有酸素運動の順です。(1)
筋トレだと、上半身だけのトレーニングよりも全身のトレーニングのほうが食欲が低下しやすいです(2)。また、高重量のトレーニングよりも、中重量でインターバルが短めのトレーニングのほうが食欲が低下しやすいです。(3)の研究では、90%1RM・各セット限界まで・インターバル180秒のグループよりも、70%1RM・各セット限界まで・インターバル90秒のグループのほうが運動後の食欲が抑制されました。
激しい運動で食欲が抑制されるメカニズム
運動によって、グレリンなどの食欲関連のホルモンがどう変化するかを調べた研究がいくつかあります。グレリンは食欲促進作用があり、PYYやGLP-1は食欲を抑制する作用があります。
メカニズムの候補としては、激しい運動により作られた乳酸塩がグレリンを作る細胞に結合し、グレリンの分泌を抑制する働きが挙げられます。他にも乳酸塩は視床下部で食欲抑制の働きを持つ可能性があります(6)。IL-6は、GLP-1とPYYの分泌促進などにより食欲抑制の働きがある可能性があります。その他のメカニズムでは、運動後の交感神経の活動や、胃の血流増加なども食欲に影響する可能性があります。
乳酸塩と食欲の関係を調べた研究はいくつかあって、乳酸塩の注入によりその後の食事量が低下した研究(4)や、乳酸塩の蓄積が多いほうがグレリンなど食欲関連のホルモンが食欲抑制方向になり、主観的な食欲も抑制された研究(5)があります。運動の強度と食欲のコントロール
運動の強度と食欲の関係に着目するのは新しい考え方です。運動の強度を変えることで食欲をコントロールし、体重管理につなげられる可能性があります。これまでの運動とダイエットの研究だと、有酸素運動と筋トレではどちらが体重を減らしやすいかといった視点のものが多いです。
ハイレベルなマッチョを目指すわけではない人が、ダイエット目的で運動をする場合は、食欲抑制効果の高いHIITや、インターバルが短めの全身の筋トレをすると食欲を抑制しやく、ダイエットに成功しやすいと思います。息がゼーゼーし主観的に辛い運動ほど食欲抑制効果が高いです。(2)の研究は有酸素運動のみの比較ですが、運動当日と翌日のHIITグループの摂取カロリーが低下しているのに対して、中強度の有酸素運動では摂取カロリーが低下していません。HIITは運動不足の人がおこなうと怪我リスクが高いので、マシンでの短いインターバルの筋トレが比較的安全だと思います。(7)の研究は筋トレと一定ペースの有酸素運動を比較した長期(12週間)のもので、筋トレグループが体重減少とグレリン低下の面で良い結果が出ています。筋トレの内容は、80%1RM、4セット×8レップ、セット間インターバル1分、種目間インターバル2分、マシンで全身をトレーニングです。逆に摂取カロリーを増やしたい、増量したいといったケースでは、インターバルを短くはせず、トレーニング部位を分割していくと、食欲低下を防ぎ、食事量を確保しやすいと思います。また、激しい運動の直後に食事をする必要がある場合は、クールダウンとして10-15分程度の低強度の有酸素運動をおこなうと食欲が回復しやすいかもしれません。クールダウンには乳酸塩の除去を早める効果があるので、乳酸塩レベルを速やかに下げることにより食欲が早く回復する可能性があります(ただ、運動後のクールダウンの食欲への影響を直接調べた研究は無いと思います)。
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<参考文献>
(1)Potential involvement of lactate and interleukin-6 in the appetite-regulatory hormonal response to an acute exercise bouthttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5625078/
(2)Appetite Is Suppressed After Full-Body Resistance Exercise Compared With Split-Body Resistance Exercise: The Potential Influence of Lactate and Autonomic Modulation
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31145383/
(3)Hunger is suppressed after resistance exercise with moderate-load compared to high-load resistance exercise: the potential influence of metabolic and autonomic parameters.
https://europepmc.org/article/med/31505127
(4)Lactate infusion during euglycemia but not hypoglycemia reduces subsequent food intake in healthy men
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22314041/
(5)Greater lactate accumulation following an acute bout of high-intensity exercise in males suppresses acylated ghrelin and appetite postexercise
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32240018/
(6)The emerging role of lactate as a mediator of exercise-induced appetite suppression
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32893673/
(7)The type of training program affects appetite-regulating hormones and body weight in overweight sedentary men
https://www.researchgate.net/publication/327257339_The_type_of_training_program_affects_appetite-regulating_hormones_and_body_weight_in_overweight_sedentary_men
長期(12週間)の研究で、筋トレ(80%1RM、4セット×8レップ、セット間インターバル1分、種目間インターバル2分、マシンで全身)と高強度の有酸素運動(最大心拍数の80-90%、10分×3)を比較。筋トレが体重減少とグレリン低下に効果的。
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