6/29/2018

1レップでのデッドリフトのトレーニング

SSPT Deadlift Training
https://marylandpowerlifting.com/2014/10/14/train-the-deadlift/

パワーリフティングのコーチの人が書いたデッドリフトについての記事を参考にして、デッドリフトの1レップトレーニングについて書いてみる。

1セットあたり複数レップのトレーニングを行うトップクラスのリフターもいるが、この人は1セットあたり1レップでのデッドリフトのトレーニングを推奨している。


★デッドリフトの特徴
ベンチプレスやスクワットとの違いは、デッドリフトはエキセントリックのフェーズ無しに挙上すること。ベンチプレスやスクワットはエキセントリックのフェーズがあることで、そのあとのコンセントリックのフェーズで腱・筋肉に蓄積された弾性エネルギーや伸張反射を利用することができる(これをSSC:stretch and shortening cycleと言う)。

デッドリフトも複数レップで行えば、2レップ目以降はSSCを利用して挙上することは出来るが、パワーリフティングの試合でデッドリフトを行う場合は1レップだけ行うのでSSCを使わず挙上しないといけない。従って競技としてデッドリフトを行う場合は普段から1レップでトレーニングし、SSCを利用しない挙上を練習したほうが実戦的になる。


★1レップトレーニングの特徴
・怪我のリスクが低い。複数レップのデッドリフトのトレーニングだと、セット終盤で下背部が疲労しフォームが崩れやすくなり怪我のリスクが高まるが、1レップトレーニングだとこれを避けることが出来る。
・全てのレップにおいてSSCを利用せず、またセット終盤のような疲労が溜まってない状態で行えるので、挙上テクニックの習得に向いている。
・1レップトレーニングは疲労が蓄積しにくいので、より高重量でより高頻度のトレーニングを行える。
・1レップトレーニングはトレーニングボリュームが小さくなりやすい。筋肥大を目指す場合は、複数レップのトレーニングを行うか、補助種目でボリュームを補うのが良い。


★セット数とインターバルの目安
デッドリフトの1レップトレーニングでは、1回のトレーニングでどのくらいのセット数をどのくらいのインターバルで行うのが良いかをまとめた表。


高負荷になるほど、セット数を減らしインターバルを長くする。長期的に見た場合、多くのトレーニングを80-89%の重量で行うのが良い。最適セット数にはそれほどこだわらず、疲労感などから自分にあった量に調整するのが良い。


★トレーニングプログラムの例
パワーリフティングの試合に向けたトレーニングプログラムの例。これはデッドリフトのみのプログラムで、他にもスクワットや補助種目を行う。


この人のジムでは、まず先にスクワットを行うことが多い。週1回デッドリフトのトレーニングを行うケースでは、デッドリフトの日は中重量・高ボリュームのスクワットのあとにデッドリフトを行う。他のトレーニング日は高重量スクワットトレーニングのあとに各々の弱点に合わせたデッドリフトの補助種目を行う。補助種目はデフィシットデッドリフト、ポーズドデッドリフト、ラックプル、ルーマニアンデッドリフト、チェーン付きなどを5レップ以下で行う。締めに腹筋種目と時には背中・股関節の一般的な種目を行う。

趣味でトレーニングを行っている人の場合は、終盤の休息を減らせばリニアピリオダイゼーションプログラムとして使えると思う。本気でパワーリフティングをやる人向けのジムのプログラムなので、初心者や中級者はこれよりもボリュームを減らしたほうが良いだろう。


★趣味でデッドリフトを行う人の考慮点
1レップトレーニングは、初心者がデッドリフトの練習をする場合にスキルを習得しやすくなって良いと思う。フォームが固まったら、1レップでも複数レップでも良いだろう。ただ、1レップトレーニングだと試合のように1RMを測定する機会が無いので、現在の1RMがどれくらいか把握しづらく、トレーニングの重量設定がやりにくいかもしれない。フォームが固まって安全に行えるなら、1RMを自主的に測定する機会を設けるのも一つの手だろう。複数レップのトレーニングだと限界まで残り何レップかだいたいわかるので、それで重量が伸びているのか把握できる。また1レップか複数レップかどちらか一方のみに限定する必要はないので、両方をミックスしつつトレーニングするのも良いだろう。

筋肥大を目指す場合はトレーニングボリュームを増やすことが必要になる。ストレングスの継続的な伸びにも筋肥大は必要なので、重量を増やしていきたい人はボリュームを増やす必要がある。デッドリフトも複数レップでトレーニングする方がボリュームを増やしやすいが、デッドリフトのみでボリュームを確保しようとすると全身疲労がきつくなると思う。デッドリフトのトレーニングはレップ数とセット数を抑え、良いフォームで適切な筋肉を適切なタイミングで動員し、全身を統合して最大の力を発揮することに集中するのが良いと思う。補助種目でボリュームを積むことでデッドリフトに必要な筋肉の筋肥大を目指す。

デッドリフトの補助種目は背中の姿勢維持を鍛えるものと、股関節の伸展を鍛えるものがある(競技として行う場合はバーを把持する力も鍛える必要がある)。背中の姿勢維持はグッドモーニングやバーベルのローイング動作など、股関節の伸展はルーマニアンデッドリフトなど。趣味の筋トレだと設備の制約があるので、自分が出来る範囲で行うのが良いだろう。


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