5/27/2016

ベンチプレスの肘の位置

Tucking the Elbows for Bench – You’re Probably Doing it Wrong
http://strengtheory.com/why-you-should-not-tuck-your-elbows-benching/

ギア無しのベンチプレスの話。

tuckがちょっと日本語にしにくいんだけど、押しこむとか仕舞いこむとかそんなニュアンスで、この場合は肘を胴体の方に寄せる動きを意味している。

ベンチプレスでは肘はある程度は胴体に寄せるが、多くの人は寄せすぎている。「肘を胴体に寄せろ」というのは一般的に悪いキュー(合図)。


肘を胴体に寄せすぎると、肘がバーよりも奥(下半身の方向)にいってしまい上腕三頭筋に余計な負荷がかかる。肘は常にバーの真下に位置する必要がある。


また肘を胴体に寄せすぎると、上腕の動く方向と大胸筋の筋繊維の方向があまり一致しなくなり、大胸筋が大きな力を発揮できなくなる。

上腕の動く方向と多くの筋繊維の方向が一致することで、大胸筋がより強い力を発揮できる。

肘を胴体に寄せていくと、手のひらが自分の顔の方を向く(アンダーハンドグリップになる)のが肘にとって自然な動き。だがベンチプレスはオーバーハンドグリップで握るので、肘を胴体に寄せすぎると肘に捻じれ方向の負荷がかかってしまう。この状態で重たいバーベルの負荷が上からかかるので肘を痛めやすい。サムレスグリップの方が挙上しやすいと感じる人が多いのは、肘を胴体に寄せすぎる間違ったフォームでも、サムレスグリップで握ると手のひらに遊びが出来、肘の捻じれからある程度逃げられるため。
バーを下ろす位置は、乳首からみぞおちの上の間くらい。肘を胴体に押し込むイメージではなくて、「肘を開いて押し上げる」イメージで行う。こうすれば大胸筋をより効果的に使うことが出来る。このフォーム改善により多くの人は大胸筋の負荷が上がり、大胸筋が鍛えられ、よい重い重量を挙げられるようになる。


関連記事:
ベンチプレスのバーの軌道

[ボディメイク記録] 減量結果


前回の記録 2月29日
今回の記録 5月29日


★現状記録
筋グリコーゲンレベルは低め。直前のトレ履歴は、前々日に下半身、前日に上半身。


★身体計測
身長:180cm
体重:71.0kg(-6.6kg)
バスト:98.0cm(-4.5cm)
ウェスト:74.0cm(-7.5cm)
ヒップ:87.5cm(-5.5cm)
右上腕:29.0cm(-3.0cm)
左上腕:28.5cm(-3.0cm)
手首径:16cm
右大腿:54cm(-4.0cm)
左大腿:53cm(-4.0cm)
右カーフ:35.0cm(-0.5cm)
左カーフ:34.5cm(-1.0cm)
足首径:19cm


★主な種目のトレーニング重量
懸垂ワイド順手・・・5kg加重×7reps
ベンチプレス・・・80kg×3reps
デッドリフト・・・125kg×3reps
スクワット(スミスマシン)・・・85kg×5reps


★トレーニング種目明細
セット数: メイン4セットくらい。増量時から-1セット、各セット-1か-2レップ。

メイン種目
- スクワット(週2回)
- デッドリフト(週2回)
- ベンチプレス(週2回)

補助種目
- インクラインベンチプレス(スミスマシン)
- ナローグリップベンチプレス(スミスマシン)
- インクラインベンチにうつ伏せになってラテラルレイズ
- インクラインベンチにうつ伏せになって上背部を使ってのダンベルローイング
- 懸垂(ワイド順手・ナローパラレル)
- ローイングマシン
- レッグカール
- カーフレイズ
- アーノルドプレス
- サイドレイズ
- アームカール
- 腹筋マシン
- カールアップ
- プランク


★減量プロセス
基本的に上半身を週2回、下半身を週2回。上半身は胸、肩、腕、懸垂。下半身はデッドリフトとスクワットとレッグカールをこの順番で行った。

有酸素運動は、ウェイトトレーニング後に10-20分くらい有酸素マシン(エリプティカルトレーナー)漕ぐのと休みの日に早足で30分歩く程度。

カロリー摂取の振り分け目安は以下の通り。あくまで目安なので厳密には出来ていない。
- 食事回数は一日3回。トレーニング日はトレーニング直前にホエイとスクロース。
- トレーニング日はトレーニング前後の食事で炭水化物摂取。
- トレーニングしない日はなるべく炭水化物カット。
- 体重は最初の2ヶ月は1週間に0.5kg減のペース。あとの1ヶ月は1週間に0.3kg減のペース。減量開始直後に水とグリコーゲンが抜けて一気に減る分はカウントしない。
- 実際はこんな感じで体重減少ペースを見ながら調整している→減量時の食事調整例

1週間のサイクル
1日目:下半身トレ/500kcal程度マイナス
2日目:上半身トレ/500kcal程度マイナス
3日目:休み/500kcal程度マイナス
4日目:休み/500kcal程度マイナス
5日目:下半身トレ/500kcal程度マイナス
6日目:上半身トレ/500kcal程度マイナス
7日目:休み/500kcal程度マイナス


★食事内容
- タンパク質の摂取量は2-3g/体重1kg/日。動物性食品とプロテインパウダーのみ摂取量にカウント。植物性タンパク質はアミノ酸組成と人体への吸収率が低いのでカウントしていない。
- 脂質の摂取量はあまり把握していないけど、炭水化物カットの日は卵や魚や乳製品など高たんぱく質食品に付随する脂質を普通に摂取、トレーニング日は脂質を減らしなるべく炭水化物でカロリーを摂るようにした。
- 健康のため、野菜や豆も摂取。炭水化物カット日は米やパスタを食べない程度でシビアにはやらず、野菜や豆類はなるべく食べるようにした。


★雑感
- ゴールデンウィークは維持カロリーに戻すダイエット休止にした。
- 週末は1食か2食、リフィードを入れた。だいたい外食。ビールは飲んでも1缶。
- 前回の減量と同様にウェスト75cmあたりからなかなか落ちなくなった。
- スクワットの重量が落ちた。自重の減少を考えると結構落ちてる気がする。デッドリフトはグリコーゲン戻せばあまり変わってない感じ。デッドリフトの方が自重減少の影響は小さいし、トレーニングボリュームも少なかった気がするんだが・・・。
- 便秘対策で「1日分の食物繊維 ブランシリアル(日清シスコ)」というシリアルを毎日食べたら、毎日快便が続いた。減量中とは思えない量が出てくる。


★怪我
- 一度、膝に違和感が出た。有酸素運動は止めてウェイトトレも軽めにしたら、1週間程度でなんともなくなった。


★今後の予定
- ゆっくり増量。1ヶ月に0.5-1.0kg増加ペースを目標。夏場にぷよぷよすると暑苦しいのでなるべくゆっくりやる。


5/21/2016

ベンチプレスのバーの軌道

Fix Your Bar Path for a Bigger Bench
http://strengtheory.com/bench-press-bar-path/

ネタ元。これを書いている人はトップクラスのパワーリフター。バーの軌道を修正すると、筋力が変わらなくてもベンチプレスの重量を伸ばすことができるという記事。


トップクラスのパワーリフターと、初心者(と言っても平均で100kg挙上)のベンチプレスのバーの軌道を比較すると、
- 下ろす際の軌道は、トップリフターと初心者はほぼ同じ。ややアーチした直線になる。
- 挙げる際の軌道が大きく違う。初心者は前半は胸から真っ直ぐ上に挙げて、後半に肩の真上に向かって挙げる。トップリフターはその逆で前半に顔の方に斜めに挙げて、後半に真上に挙げる。

なぜこのような違いが出ているのか、ベンチプレスで使う筋肉への負荷のかかり方から考えてみると・・・

まずベンチプレスでバーベルを持ち上げるのに使う筋肉の動きは、以下の組み合わせになる。
1) 広げた腕を前で閉じる動き(主に大胸筋)
2) 腕を前方に上げる動き(主に三角筋前部)
3) 肘を伸ばす動き(上腕三頭筋)




胸から真っ直ぐ上に挙げるとスティッキングポイントで三角筋前部(腕を前方に上げる動作)がボトルネックになり、まだ大胸筋(広げた腕を前で閉じる動作)は力を発揮できるのに挙がらなくなる。




挙上前半で顔の方に向かって斜めに挙げると、肩関節からバーまでの水平距離が小さくなる。これによりスティッキングポイントで三角筋前部がボトルネックになりにくくなり、より重い重量が挙がるようになる。

トップリフターは挙上中に発揮する最大の力と最小の力の差が小さい。初心者は最大の力と最小の力の差が大きい。挙上重量を決めるのは「最小の力(スティッキングポイント)」。バーの軌道の改善、つまりスティッキングポイントでのモーメントアームの縮小により、各筋肉の筋力は同じでも最小の力を引き上げ、挙上重量を伸ばすことができる。

脇の角度を90度にしてバーを真っ直ぐ鎖骨に下ろして、真っ直ぐ上に挙げるなら前部三角筋の負荷は大幅に減るが、それだと筋力を十分に発揮できる範囲を超えて下ろすことになるし、肩関節や大胸筋の怪我のリスクも上がる。一方で、腹の方に下ろすと挙上距離は縮まるが、前部三角筋の負荷が大きすぎてここがボトルネックになり重量が落ちる(大胸筋にも十分に刺激が入らない)。バーを下ろす位置は、乳首からみぞおち付近の間が良い。


バーの軌道の変更は、数週間から数ヶ月かけて行う。身体が動作を学び直す必要がある。いきなり重い重量でフォームを変えようとするのは危ないので気をつける。



★コメント
パワーリフター体型の人に向いているフォームの可能性もあるけど、腕が細長い私がやってみても力が入りやすい感じがして、肩や肘に変な負荷がかかっている感じもしなかったので、たぶん万人向けのフォームだと思います。大胸筋の負荷が上がるので大胸筋を鍛えたい人にも向いている。もちろん肩や肘に違和感を感じる場合は止めた方が良いです。


関連記事:
ベンチプレスの肘の位置 

5/15/2016

食事回数と血糖レベル


食事回数が血糖レベルに及ぼす影響について。健康リスクについての話。

Effect of meal frequency on glucose and insulin excursions over the course of a day
http://www.clinicalnutritionespen.com/article/S1751-4991%2810%2900054-5/fulltext


★被験者
18-35歳/男女各4名/健康かつ肥満ではない/週に4回程度の軽い~中程度の運動


★食事
1日トータル1500kcalで各食事に均等に振り分け。炭水化物は主にスクロースとコーンシロップ、タンパク質はソイとホエイ。以下の3パターンの食事方法での血糖レベルとインスリンレベルを測定。(P=タンパク質、C=炭水化物、F=脂質)
- 3CHO:高炭水化物1日3食 P15% C65% F20%
- 6CHO:高炭水化物1日6食 P15% C65% F20%
- 6PRO:高タンパク1日6食 P45% C35% F20%


★結果
高炭水化物1日6食の方が高炭水化物1日3食よりも、血糖の曝露量(AUC)は30%程度高くなった(Fig.2上図)。小分けにして食べるほうが、身体はより多くのグルコースに晒されるということになる。血糖の曝露量は糖質の摂取量が同じならどう食べても同じだろうと思っていたので、この結果は意外だった。



★所感
この研究の結果から考えると、2型糖尿病リスクや糖化を気にする場合は、食事回数は少ないほうが良さそう。ただ健康へのネガティブな影響は、トータルの曝露量が問題なのか、ある閾値を超えた部分が問題になるのかよくわからない。後者が問題になる場合でも、今回の研究のデータだと血糖レベルのピーク値は高炭水化物同士だと3食が6食よりもわずかに高い程度なので(Fig.1上図)、いずれにしろ高炭水化物食なら1日3食の方が健康に良さそうということになる。そして高炭水化物食に比べると、高タンパク質食の方が血糖の曝露量とピーク値は低い。

ちなみに高脂質食も2型糖尿病のリスクファクターになるので注意。糖質をカットすればいくら食べても大丈夫ということにはならないだろう。
http://www.riken.jp/pr/press/2011/20110815/
http://www.igaku.co.jp/pdf/1309_tonyobyo-3.pdf

野菜や肉や魚を炭水化物より先に食べると、消化吸収が遅くなるのとインクレチンの分泌により血糖レベルの上昇がゆるやかになる。ただ野菜やタンパク質源を先に食べると、2型糖尿病患者では血糖レベルの低下が遅くなっている。AUCは野菜やタンパク質源を先に食べたほうがやや小さくなっているが、血糖レベルの上昇が長時間続くのはデメリットがあるような気が・・・。健康な被験者は血糖レベルのピーク値のみが低下しているので、デメリットはなさそう。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3882489/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4742500/

個人的には自分の遺伝的な2型糖尿病リスクは高くなさそうだし、食べ過ぎず運動を続けていれば別に大丈夫だろうと思ってそれほど気にしていないです。優先順位は、「低い体脂肪率・カロリー収支・運動習慣>>食事回数・マクロ栄養素の振り分け・食べる順番」でしょう。

ボディメイクでは増量期にカロリー収支がプラスになり健康にネガティブな影響が出る可能性があるので、その際は食事回数を多くせず、野菜や肉や魚を炭水化物より先に食べた方が健康に良いと思う。(もちろんトータルの摂取量が同じなら食事回数や食べる順番は体重の増減には影響しない


5/10/2016

果物の食べ方

果物の果糖が肥満の原因になり健康に悪影響を及ぼすという理由で果物を避けるよう指示するダイエットがある。一方で、果物に含まれる微量栄養素が身体に良いので積極的に食べるよう推奨する食事法もある。

以下、果物の食べ方について考えてみたい。


★果物の栄養素
果物に含まれる主な栄養素は、糖質、繊維質、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルである。果物の糖質は単糖まで分解した場合、果糖とブドウ糖の割合がだいたい1:1になる。繊維質とビタミンとミネラルは必ず摂取すべき栄養素だが、果物にはそれほど多くは含まれてはいない。フィトケミカルは健康に良い影響を与える可能性がある。


★果物の加工品
ドライフルーツにするとビタミンCなどが失われる。ジュースにすると繊維質も失われる。ドライフルーツは砂糖漬けにしていてカロリー密度が高いものが多いし、ジュースは大量に飲みやすいので、カロリーの摂り過ぎに注意する。ドライフルーツは砂糖の塊だと考えた方が良い。ジュースは100%ストレートでもコーラやファンタと同じくらいのカロリーがあるので、これらの清涼飲料水と同じだと考えたほうが良い。

例としてパイナップル、パイナップルジュース、パイナップルドライフルーツの栄養成分。


★身体に良いかどうか
果物に限らず、食べ物が身体に良いかどうかは、その人の置かれた状況による。運動をせずカロリーオーバーの状況で糖質、特に果糖を大量に摂取するのは身体に悪い(関連記事参照)。というか食べ過ぎではカロリーのある食べ物は身体に悪いだろう。一方で、餓死寸前の人にとっては糖質は身体に良い。その人の置かれた状況を考慮せず、ある特定の食べ物を身体に悪いとするのは馬鹿げている。

こんな極端なことを言っても実生活のガイドラインにならないので、研究を参考にしてみると。
Health implications of fructose consumption: A review of recent data.

果糖の摂取は1日50g以下、もしくは総カロリーの10%以下が健康に悪影響を及ぼさない目安になっている。果物の糖質だけでなく、砂糖や異性化糖も果糖とブドウ糖の割合がだいたい1:1なので、果物やお菓子やジュースやケーキなどひっくるめて甘い食べ物の糖質は一日100g(400kal)までということになる。でもまあちょっとこれだと微量栄養素の観点から甘いもの(たいてい微量栄養素が乏しい)を摂り過ぎかなと思うし、料理にも砂糖は使われるので、果物やお菓子やデザートは一日200kcal程度までが妥当なガイドラインかと思う。

市販の菓子類に比べれば、果物は微量栄養素が多少なりとも含まれていて、質の悪い脂質も入っていないので、楽しみのための甘いものとして生の果物や干しただけのドライフルーツ(プルーンなど)を選択するのは良い生活習慣だろう。

もちろん一時的に1日200kcalを超えて食べても問題はない。甘いものを食べ過ぎた場合は、他の日に食べるのを控えれば良い。毎日大量に食べ続けなければ問題はない。

上のガイドラインは一日の摂取カロリーが2000kcalくらいで、特に運動していない人を想定している。運動量の多いアスリート、例えばロードレースや水泳やマラソンやシンクロナイズドスイミングなどの選手は、必要な摂取カロリーが多いのでもっと甘いものを食べても良いだろう。むしろホールフード中心に1日5000kcal食べたりするのは消化吸収能力が高くないとキツイはず。胃腸が強くないアスリートは、精製度の高い食品とサプリメントを積極的に利用しても良いと思う。



関連記事:
オーバーカロリー時のグルコース・フルクトース摂取の影響