4/22/2020

血中ビタミンDレベルと新型コロナの重症化リスクの研究

Vitamin D supplementation could possibly improve clinical outcomes of patients infected with Coronavirus-2019 (Covid-2019)
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3571484

血中ビタミンDレベルと新型コロナの重症化リスクに逆相関が見られるとする論文が出ている。病院の新型コロナ患者のデータを集めて分析したところ、ビタミンDレベルが低いと重症化リスクが上がり、ビタミンDレベルが高いと重症化リスクが下がるという綺麗な結果が出ている。


ビタミンDレベルと新型コロナの重症化リスクに因果関係があるのかを直接調べるには他のデザインの研究が望まれるのだけど、因果関係であるためには、とりあえず以下のような可能性を否定する必要がある。

1) 新型コロナ発症で体内のビタミンDレベルが低下する可能性
発症してからビタミンDレベルが低下し、測定時点ではその数字が出てきた可能性。発症前のビタミンDレベルはわからない。


2) 交絡因子の存在
例えば、

ビタミンDレベルが高齢になると低下する。(リンク先はイタリアのデータ)

・新型コロナは高齢になると重症化・死亡しやすい。

このような場合、単に年齢が要因でビタミンDレベルと重症化リスクの逆相関が出ている可能性がある。

他にも要介護で寝たきりの人は、日光に当たる機会が少なくビタミンDレベルが低いだろうし、それと同時に身体全体が弱っているだろうから、重症化しやすいと考えられる。身体がどれだけ元気かが屋外の活動量に関係し、それがビタミンDレベルに表れている可能性がある。

年齢や生活環境を揃えた場合のリスク比較を出してほしいけど、この研究ではコンフィデンシャル的な問題でビタミンDレベルと症状の重さ以外のデータは得られていないみたいなので今回は難しそう。


★所感
これは完全に個人の勘ですが、感触としてはビタミンDレベルが新型コロナの重症化リスクにある程度は影響しそうな感じがする。この研究者はフィリピンの人なのだけど、フィリピンのデータを見てみたら、平均でビタミンDレベルは30ng/mlを超えていて、高齢世代のほうがビタミンDレベルが高い。患者のデータは南アジアの国(複数形)の病院から集めたと書かれているのでフィリピンのデータがそのまま当てはまらないと思うけど、東南アジアや南アジアは若い世代の美白意識が強いので、若い世代よりも高齢者のほうがビタミンDレベルが低くなる傾向はないかもしれない。

新型コロナ発症後にビタミンDレベルが低下する可能性については、膜型人工肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)でビタミンDレベルが下がるという記述をみつけたので、症状Criticalではその影響が出るケースがあるかもしれない。他にもビタミンDレベルが下がるケースがいつかあるのだけど、いずれも1,2週間でビタミンDレベルが急激に下がるのはICUレベルの重篤な場合で、OrdinaryやSevereでも症状の重さに沿ってビタミンDレベルが下がっている説明にはならないと思う。


★今後望まれる研究
普段からビタミンDレベルを計測しているなるべく均質な集団での発症リスク、重症化リスクが出せるなら、ビタミンDレベルと新型コロナリスクの関係がかなりクリアになりそう。年齢だけじゃなく人種や所得や生活環境や宗教なども影響するだろうから集団は均質にしたい。ビタミンDを投与するグループとプラシーボを投与するグループで大規模なRCTをやってみて欲しいけど・・・倫理的な面から難しいかな。

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