1/07/2022

スクワットやデッドリフトでの視線について

スクワットやデッドリフトの時に見る方向(視線)は、体幹の姿勢を崩さなければやりやすい方向でOKです。一般的には水平くらいか、やや斜め下が多いと思います。あまり首を反らして上を見ると、体幹の姿勢が崩れやすいですし、首に負担がかかりやすくなるので、極端に反らすのはやめたほうがいいかなと思います。視線を斜め下にすると重心が前に移動して前のめりになりやすい場合は、首を少しだけ反らしたり、目だけ上に動かすと良いと思います(上目遣い)。

首は体幹の背骨部分(胸椎と腰椎)ほどシビアなコントロールは要求されないので、ニュートラルを中心にある程度は動かしても大丈夫でしょう。デッドリフトだとかなり目線を上にする人もいます(逆に視線をかなり下にする人もいます)。


本題は、どこを見るかではなく、どうやって見るかです。ジムではパワーラックの前に鏡が置いていることが多いと思いますが、スクワットやデッドリフトの際に、鏡越しに自分の身体の一点やフォームを凝視したりせず、ぼーっと前を見て動作をすると、意識が身体の内部に向かい、身体をどう動かしているかを感じやすくなり、フォームやバランスが安定します。

パワーリフターの動画を見ると、遠い目をしながらスクワットやデッドリフトをしていますが、あんな感じの目です。

動画:Russel Orhii - 1st Place 841kg *WR Total* - 83kg Class 2021 IPF World Open Classic
https://www.youtube.com/watch?v=Kf03kexddpw


動画:John Haack 5 Weeks Out from Hybrid Showdown Meet
https://www.youtube.com/watch?v=AvpexkeFlnY


視覚情報に頼りがちな人は、目を瞑ってゆっくりと自重スクワットやゴブレットスクワットをしてみると、身体の内部の感覚を使いやすくなります。

ベンチプレスについては、視線は真上か、そこからやや足元寄りくらいが基本ですが、これもバーを凝視せず、天井をぼーっと見ると良いでしょう。





姿勢制御についての話

実践面については上に書いた内容で終わりなのですが、なぜ「ぼーっと見る」と良いのかについて理論的な説明を。

バランスを崩さずに姿勢をコントロールしようとする際には、3つの感覚入力が使われます。

<視覚>
目から得た視覚情報。周囲にある物体との相対的な位置から、頭部の位置と移動、垂直の基準(ドア枠などを見て)などの情報を得る。

<体性感覚>
関節や筋肉など身体内部の感覚。地面と接する足から水平の感覚基準を得たり、身体内部の感覚から身体部位間の位置関係を得たりする。

<前庭感覚>
頭部に加わる加速度の情報を得たり、重力加速度の情報から鉛直に関する感覚基準を得たりする。耳の奥にある耳石器と三半規管がセンサー。


これらの情報が中枢神経系で統合され、姿勢制御が行われています。個人差やその時の状況によって、3つの情報の重み付けが変わると考えられています。

スポーツだと、姿勢制御における視覚情報への依存を減らして体性感覚の寄与を高めることで、

・外力が加わったりして姿勢が崩れそうになった場合に即座に反応できる。例えば、サーフィン、マウンテンバイクでのダウンヒル、サッカーで背後からタックルをされた時など。

・視覚のリソースを周囲の状況把握に回せる。例えば、サッカーやラグビーなど。

といったメリットがあります。サッカーやサーフィンだと、レベルの高い選手ほど姿勢制御において視覚への依存が低く、体性感覚への依存が高いことが報告されています。逆に、ロードレース選手は高速走行しながらのコース取りのために、視覚情報への依存が高いようです。研究があるかわからないですが、野球も視覚依存が高そうです。格闘技だと打撃系は視覚依存が高くて、組み技系は体性感覚依存が高そうです。

詳しく知りたい方は、以下の論文を参考に。

感覚と姿勢制御のフィードバックシステム


フリーウェイトのバーベル種目だと、自分の身体だけに集中して、姿勢を崩さずバランスを取りながら、強い力を発揮する必要があるので、視覚情報への依存を減らして体性感覚優位にしたほうがメリットが大きいと考えられます。

ちなみにバランスボードなど不安定な支持面での動作は、体性感覚の信頼性が低下することで、体性感覚への依存を減らし、視覚情報への依存を高めるようです。バランスボードやBOSU(半球形のバランスボール)など不安定な面上でスクワットの練習をすると、体性感覚があまり使われなくなって、おそらくスクワットが下手になります。

BOSUでのスクワット動作を観察すると、パワーリフターのスクワットに比べて、目の焦点が合ってる感じがしますね。

動画:Bosu Squat
https://www.youtube.com/watch?v=pzIPlH20GKw



アイソレート種目

アームカールやレッグエクステンションで狙った筋肉に効かせたい場合は、その筋肉を凝視したほうがいいと思います。手のひらでターゲットの筋肉を軽く触るのも効果的です。




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