個人差に関する研究で面白いです。多くの初心者向けトレーニングプログラムは、重量を漸進的過負荷していきますが、この研究からは、重量を漸進的過負荷したほうが筋肥大しやすい人もいれば、レップ数を漸進的過負荷したほうが筋肥大しやすい人もいることがわかります。
Individual muscle hypertrophy response is affected by the overload progression model and is associated with changes in satellite cell content
https://www.fisiologiadelejercicio.com/wp-content/uploads/2025/06/Individual-muscle-hypertrophy-response-is-affected.pdf
被験者:若い男女 37名 過去半年間のトレーニング歴無し
種目:片脚レッグエクステンション
被験者の脚を片方ずつどちらかのプロトコルに振り分け
- LOADprog:9-12RMのレンジ内で重量を漸進的過負荷 4セット
- REPSprog:全セット限界まで 重量は初期設定の80%1RMで据え置き レップ数の漸進的過負荷 4セット
期間:10週間
インターバル:セット間90秒、プロトコル間2分(片脚4セット→もう片方の脚4セット)
測定:外側広筋の厚み(超音波)、外側広筋の筋肉組織採取
頻度:週2-3回
<結果>
・重量アップ優位(Loaders)
重量を漸進的過負荷した脚のほうが筋肥大したグループ。
7名(女性3名、男性4名)
筋肥大(外側広筋の厚み)
- 重量を漸進的過負荷した脚 +21.5%
- レップ数を漸進的過負荷した脚 +12.0%
トータルボリューム(レップ数×セット数×重量)
- 重量を漸進的過負荷した脚 47.4トン
- レップ数を漸進的過負荷した脚 50.1トン
セットあたりの平均レップ数
- 重量を漸進的過負荷した脚 10.4レップ
- レップ数を漸進的過負荷した脚 13.2レップ
平均重量
- 重量を漸進的過負荷した脚 48.6kg
- レップ数を漸進的過負荷した脚 41.6kg
・レップ数アップ優位(Repers)
レップ数を漸進的過負荷した脚のほうが筋肥大したグループ。
12名 女性6名 男性6名
筋肥大(外側広筋の厚み)
- 重量を漸進的過負荷した脚 +3.4%
- レップ数を漸進的過負荷した脚 +14.2%
トータルボリューム(レップ数×セット数×重量)
- 重量を漸進的過負荷した脚 53.4トン
- レップ数を漸進的過負荷した脚 53.1トン
セットあたりの平均レップ数
- 重量を漸進的過負荷した脚 10.7レップ
- レップ数を漸進的過負荷した脚 14.0レップ
平均重量
- 重量を漸進的過負荷した脚 55.3kg
- レップ数を漸進的過負荷した脚 41.8kg
このグループのみ、筋繊維あたりのサテライト細胞数の増加が、レップ数を漸進的過負荷した脚のほうが有意に多かった。
・筋肥大に差なし(No difference responders)
どちらのプロトコル(脚)も筋肥大に差がなかったグループ
13名 女性5名 男性8名
筋肥大(外側広筋の厚み)
- 重量を漸進的過負荷した脚 +14.5%
- レップ数を漸進的過負荷した脚 +14.9%
トータルボリューム(レップ数×セット数×重量)
- 重量を漸進的過負荷した脚 53.9トン
- レップ数を漸進的過負荷した脚 52.5トン
セットあたりの平均レップ数
- 重量を漸進的過負荷した脚 10.5レップ
- レップ数を漸進的過負荷した脚 14.4レップ
平均重量
- 重量を漸進的過負荷した脚 56.9kg
- レップ数を漸進的過負荷した脚 40.6kg
・筋肥大せず(Nonresponders)
どちらのプロトコル(脚)も筋肥大反応が乏しかったグループ
5名 女性4名 男性1名
筋肥大(外側広筋の厚み)
- 重量を漸進的過負荷した脚 +1.1%
- レップ数を漸進的過負荷した脚 -2.5%
トータルボリューム(レップ数×セット数×重量)
- 重量を漸進的過負荷した脚 43.9トン
- レップ数を漸進的過負荷した脚 42.6トン
セットあたりの平均レップ数
- 重量を漸進的過負荷した脚 10.5レップ
- レップ数を漸進的過負荷した脚 12.3レップ
平均重量
- 重量を漸進的過負荷した脚 45.0kg
- レップ数を漸進的過負荷した脚 36.4kg
考察
各反応グループの特徴を以下に整理します(初期状態では両脚の1RMとRMが同等との前提で、重量とレップ数の伸びを判断しています)。
- 「レップ数アップ優位(Repers)」は、重量の漸進的過負荷で重量が順調に伸びるのだが、これだと筋肥大反応が低い。レップ数を漸進的過負荷すると筋肥大反応が高くなる。
- こなしたトレーニングの内容からは、「レップ数アップ優位(Repers)」と「筋肥大に差なし(No difference responders)」の見極めが困難。
- 「筋肥大せず(Nonresponders)」は、重量は順調に伸びるが、レップ数の伸びが悪い。トレーニング内容がキツすぎたのかもしれない。
「重量アップ優位(Loaders)」は重量が伸びにくいけど筋肥大反応は高い、「レップ数アップ優位(Repers)」は重量が伸びやすいけど筋肥大反応は低い。実践面を考えると厄介ですね。通常はトレーニングを順調にこなせているかで適性を判断していきますが、重量の伸びと筋肥大反応が比例しないのなら、トレーニングプログラムが適しているのかの判断が難しいです。
とりあえず筋肥大できればOKなら、重量を漸進的過負荷するよりも、レップ数を漸進的過負荷するほうが筋肥大する確率が高そうに見えます。以下の表にまとめましたが、重量を漸進的過負荷にした脚は全体の64.9%の人が筋肥大し、レップ数を漸進的過負荷にした脚は全体の81.1%の人が筋肥大しました。(この研究での被験者数で有意差があるのか不明ですが)
重量を漸進的過負荷したほうが反応が良いタイプは、レップ数を漸進的過負荷だと伸びが悪くてもったいないので、できれば重量を漸進的過負荷にしたいです。しかし、観察による見極めが難しいです。
レップ数をこなせるタイプは、重量を上げていくよりも、レップ数を増やしていくほうが筋肥大の面では反応が良いかもしれません。ただ、レップ数をこなせるタイプでも、筋肥大に差なし(No difference responders)タイプもいます。
バーベル種目だと、レップ数の漸進的過負荷は体幹の疲労や心肺の限界が先にきやすいので、やるならセット数の増加にしたほうが良いでしょう。もしくは、レップ数を漸進的過負荷するのは、補助種目のアイソレート種目に限定するのも良いと思います。
Nonresponders以外では、被験者がどのプロトコルに反応が良かったかにかかわらず、レップ数を漸進的過負荷したほうの脚がサテライト細胞が増えている傾向がありました(下図の赤がレップ数を漸進的過負荷した脚。有意差があったのはレップ数アップ優位のみ)。筋肥大面でプラトーに陥った場合は、レップ数(セット数)を増やしていくプログラムを実施すると、サテライト細胞が増えて筋肥大のポテンシャルが増加するかもしれません。
サテライト細胞についての説明
- 筋肉は分裂終了細胞なので、細胞の置き換わりはほとんど起きない。タンパク質の合成と分解の動的な平衡を通じて、細胞の状態を保つ。筋肥大はタンパク質の合成が分解を上回る時に起きる。- サテライト細胞は、基底膜と筋鞘の間に存在する筋原幹細胞。通常は非活発だが、十分な力学的な(メカニカルな)刺激が骨格筋に加わると活発になる。活発になったサテライト細胞は増殖し、既存の細胞にくっつき、筋肉組織の修復や成長に必要な前駆体を提供する。
- サテライト細胞は筋繊維に新たな細胞核を提供し、収縮タンパク質を新たに合成するキャパシティを増やす。筋肥大の際の筋肉の細胞核と筋繊維量の比率は一定なので、筋繊維量の上限を引き上げるには細胞核を増やす必要がある。
実践面
平凡な結論になりますが、それぞれの人が重量の漸進的過負荷とレップ数の漸進的過負荷のどちらに適性があるのか、外からの観察で見極めるのは困難なため、両方のプログラムを数ヶ月おきに交互に実施していくのが良いと思います。重量アップ優位(Loaders)タイプでも、レップ数(セット数)を漸進的過負荷することでサテライト細胞数が増加し、将来の筋肥大ポテンシャルが高まる可能性があるので、レップ数(セット数)を漸進的過負荷するプログラムを実施するメリットはあります。
レップ数(セット数)を増やしていくプログラムがどうしても合わない、例えば体感的にキツすぎて無理、すぐガス欠になって筋肉が動かなくなる、次のトレーニングタイミングまでに回復が追いつかないといった場合は、追い込み度を下げたり、インターバルを長くしたり、速筋型と思われる場合はレップレンジを下げたりすると良いでしょう。
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