12/18/2021

デッドリフトの頻度とボリューム問題

デッドリフトの頻度とボリュームをどのくらいにすれば良いのかは、意見が分かれます。スクワット(+脚トレ)だと、トータルボリュームを多く、頻度は1回あたりのボリュームと回復次第というのがおそらく主流の考えで、ベンチプレスは高頻度、重い日や軽い日を織り交ぜていくけどトータルではボリュームは多くなるというのが主流だと思います。デッドリフトについては高頻度派も低頻度派もいて、トータルボリュームについての意見もバラバラの印象です。

色々と書いていたら長くなってしまったので、この記事の簡単なまとめを書きますと、デッドリフトのトレーニングのボリュームと頻度は、以下に挙げる個人差を考慮して決めていくのが良いかなと思います。


・スクワットとの被り度合い
スクワットとデッドリフトのフォームが近い人は、デッドリフトのためのトレーニングをあまりやらなくてOK。スクワットで下半身を鍛えつつ、週1回くらい80-90%1RMくらいの重量で床引きデッドリフトを行っていくのが目安になります。

スクワットとデッドリフトのフォームの差が大きい人は、デッドリフトのためのトレーニングを多めにやったほうが良いと思います。床引きしたり、背中やハムストリングスを補助種目で鍛えたり。補助種目で背中やハムストリングスの筋肥大トレーニングをする場合は、普通の筋肥大トレーニングと同じで週2回程度でOKです。


・ボリュームへの反応度合い
反応が良い人は低ボリューム、反応が悪い人は床引きと補助種目をトータルで考えて高ボリューム。まずは低ボリュームで始めて、伸びないようならボリュームを増やしていく。


・レップレンジへの反応度合い
低レップ(5レップ以下)の反応が良い人は低レップで床引き。

高レップ(8-10レップくらい)の反応が良い人は、床引きコンベンショナルは背中の疲労で怪我しやすいですし、全身疲労もきついので、タッチアンドゴースタイルかRDLでボリュームを積むと良いと思います。スモウは背中の負担がそれほと強くなく、挙上距離も短いため、高レップでもあまり危険な感じがしないですし、全身疲労もそこまできつくないので、床引き高レップしても良いかもしれません。ただこれは私個人の印象なので、自分の身体と相談しながら。

レップレンジへの反応の調べ方は、そのレップレンジで充実感のあるトレーニングができるか、そのレップレンジのトレーニングが好きか、で判断で良いと思います。私は遅筋優位な体質なので、全般的に高レップのほうが好きです。


・回復力

床引きデッドリフトは全身の疲労がきついです。回復力が高い人は床引きデッドリフトのボリュームが多めでOK。回復力が低い人は床引きのボリュームを減らし、補助種目のボリュームを増やしたほうが良いでしょう。


・技術レベル
デッドリフトのフォームがまだ固まっていない場合は、重量と追い込み度を下げたフォーム洗練のためのトレーニングを高頻度で行うと伸びが速いです。フォームが安定すれば、重量が上がってきたときに怪我をしにくくなります。フォームがすでに固まっていれば、デッドリフトの頻度はそれほど高めなくて良いでしょう。


・重量
普通の人はあまり気にしなくて良いと思いますが、挙上重量が300kgを超えるような人ですと、高強度(だいたい85%1RM以上)の床引きデッドリフトは週1回以下(10日に1回とか)の頻度で行う人もいます。高重量ほど神経系の回復が遅くなると考えられ、床引きデッドリフトの頻度は下げたほうが良いでしょう。





デッドリフトは、素質の影響、トレーニングに対する反応や、疲労回復の個人差が非常に大きい印象です。10レップ×5セットを週2回といった高ボリュームで伸びていく人もいれば、5レップ以下の高強度トレーニングを1週間に1回くらいで伸びていく人もいます。

ベンチプレスだと、もちろんどれくらいの重量まで伸びるかは個人差がありますが、ほとんどの人がトータルのボリュームと頻度を多くして、ベンチプレスをやりこまないと伸びないと思います。週1回の高強度トレーニングをやるだけで、ベンチプレスがどんどん伸びていく人はおそらくいないでしょう。

スクワット(+脚トレ)も、ボリューム次第の印象です。


既成のトレーニングログラムを見ても、スクワットのおまけみたいにデッドリフトがちょっとだけ付属している感じのプログラム(SL5x5)もあれば、高頻度でデッドリフトをおこなうプログラム(Greg Nuckols' 28 Free Programs)もあれば、スクワットやベンチプレスと同じ頻度とボリュームで行うプログラム(5/3/1)もあります。

デッドリフトのトレーニングボリュームと頻度に正解は無くて、反応を見ながら手探りで調整していくのが良いのでしょうけど、成功率を上げるために意識すると良さそうな点を考察してみます。



デッドリフトの重量を伸ばすのに必要な要素

デッドリフトの重量を伸ばすのに必要な要素は、筋力、技術、腹圧と神経系です。


★筋力★

デッドリフトに必要な筋力の部位は、背中の姿勢維持(脊柱起立筋群、広背筋、腹圧)、股関節の伸展(臀筋とハムストリングス)、膝の伸展(大腿四頭筋)、あとはバーを落とさないように握りつづける力(把持力)です。

通常は、背中と股関節伸展の筋力がボトルネックになるので、デッドリフトを伸ばすために筋肉を鍛える場合は、背中と股関節伸展のトレーニングがメインになります。膝の伸展力は、コンベンショナルでは通常はボトルネックにならないですが、スモウではボトルネックになる場合がありそうです。バーを握る力は、大会に出るのでなければ気にする必要はないです。

・背中のトレーニング種目例
ベントロー、Pendlay Row(床引きベントロー)、グッドモーニング、バックエクステンションなど。個人的にはベントローかPendlay Rowのどちらかを、背中が疲れる重量でやればいいかなと思います。

・股関節伸展のトレーニング種目例

RDL、ヒップスラスト、ハムストリングスのアイソレート種目など。床引きコンベンショナルをたくさんやると疲労がきつい場合は、筋肥大フェーズでRDLをメインにトレーニングし、筋力フェーズで床引きコンベンショナルを高強度・低ボリュームで行うと良いかもしれません。

・膝の伸展のトレーニング
レッグプレスなど。

・把持力のトレーニング
ストラップを使わずにデッドリフトしていればグリップは強くなるらしいです。

動画:simplest most effective tip for your grip!
https://www.youtube.com/watch?v=M_FlB39puZQ



★技術★

無駄のないフォームや、瞬間的に強い力を発揮する技術。

・技術のトレーニング種目例
ポーズドデッドリフト、スピードデッドリフトなど。

いずれも50%1RMくらいの重量で、各セットRPE5程度の追い込み度でやれば疲労は非常に軽いです。フォームが安定していない場合は、積極的に行ってフォームの精度を高めていくと良いでしょう。

初心者のうちは、床引きデッドリフトを5レップ×3セット(RPE6-8程度)を週1回、ポーズドデッドリフトを疲労を溜めないようにして別の日に週1、2回って感じでやっていくと、技術習得が速いと思います。スピードデッドリフトも安全に行えるなら良い種目です。

★腹圧と神経系★

1RMに近い重量を挙上するには腹圧MAXで全力を出す必要があります。これは高強度の床引きデッドリフトで練習するしかないです。



スクワットとの重複

デッドリフトで使われる筋肉、関節の動作は、スクワットとある程度は重複します。どれくらい重複するかは、その人のスクワットのフォームと、デッドリフトのフォームによります。

床引きデッドリフトには様々なフォームがあります。コンベンショナルとスモウに分けられますし、コンベンショナルの中でも腰高で引くフォームや、尻を後ろに落としてスクワットみたいに挙げるフォームなどがあります。

関連記事:スモウデッドリフトの様々なフォームと個人的なやり方

関連記事:骨格の違いによるデッドリフトフォーム考察


<スクワットとデッドリフトのフォームの差が小さい>

スクワットのフォームとデッドリフトのフォームが近い人は、スクワットをやっていれば、デッドリフト用の筋肉も鍛えられていくので、デッドリフトのためのトレーニングをあまりやらなくても、デッドリフトは伸びやすいです。

例えば、スクワットのフォームが股関節メインのロウバースクワットで、デッドリフトは教科書的なコンベンショナルデッドリフトの人は、動作と使われる筋肉がかなり重複しているので、デッドリフトで筋肉を鍛える必要があまりないです。スクワット(+脚トレ)を週2回くらいしっかりトレーニングして下半身を鍛えて、デッドリフトのためには、週1回くらい床引き5レップ程度を数セット行うと良いでしょう。床引きの疲労がきつい場合は、補助種目で背中とハムストリングスの筋肉を補強して、筋力を伸ばしたいフェーズで、床引きで神経系の高強度トレーニングを低ボリュームで行えば伸びていくのではないかと思います。


動画:High Bar Squat vs. Low Bar Squat
https://www.youtube.com/watch?v=yQuCi2h_kNI



股関節メインのスクワットとスモウデッドリフトも、かなり重複しています。スモウだとハムストリングスと背中の強さがコンベンショナルほど要求されません。スクワットでボリュームトレーニングをして下半身の筋肉を増やして、デッドリフトは神経系の高強度トレーニングを低頻度・低ボリュームでやるだけで非常に高いレベルまで伸ばせる人もいます。


動画:デッドリフト週1回2セットだけで290kgまで伸ばした!?異次元の強さの秘密を聞いてきた!
https://www.youtube.com/watch?v=hkdO_HDfc2c

動画:【AMRAP】ポーズデッド235キロ & スクワット215キロ | パワーリフティング練習#117
https://www.youtube.com/watch?v=1hjtuEpXj_o



<スクワットとデッドリフトのフォームの差が大きい>

スクワットがハイバーで大腿四頭筋に強い負荷をかけるフォーム、デッドリフトがコンベンショナルの腰高フォームだったりすると、動作と筋肉があまり重複していないので、デッドリフトを伸ばすにはデッドリフトのためのトレーニングを多めにする必要があるでしょう。



動画:Squat everyday Day 717: Learning from the best
https://www.youtube.com/watch?v=R8c4jRo7M_k




動画:John Haack: IPF Worlds Meet Video
https://www.youtube.com/watch?v=YWSL_Yr2unw&list=RDCMUCPxN3rFugzsTQOAMnX7trNQ&index=3

以下は、John Haack選手が自身のトレーニングについて話している動画です。

動画:How to Deadlift and Pendlay Row with John Haack
https://www.youtube.com/watch?v=Bh3h6bVXQOw&t=19s


Pendlay Rowがデッドリフトを伸ばすのに非常に役に立ったとのこと。


動画:John Haack Part 1: Favorite Accessories and PED Usage
https://www.youtube.com/watch?v=P4e5GROslUk

パワーリフティング3種目とも7割のボリュームはメインリフトで行う。デッドリフトの補助種目はポーズドデッドリフトをやったり、あとは背中を鍛えるのに注力。

ちなみにベンチプレスの補助種目は、Larsen Press(足裏を床につけず脚をまっすぐ伸ばして行うベンチプレス)やバンドベンチプレス。スタビリティにフォーカスとのこと。

スクワットの補助種目は、セーフティスクワットバー(SSB)でのスクワットやポーズドスクワット。SSBは大腿四頭筋への負荷を増やせる。(競技でのスクワットのフォームがハイパーで大腿四頭筋の負荷が高い)



その他

レップレンジや回復力など他の要素は冒頭のまとめに書きました。なんだか締まりのない終わり方ですが、今回の記事はここまでです。良いデッドリフトライフを!



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