(1)Dietary protein intake in midlife in relation to healthy aging – results from the prospective Nurses’ Health Study cohort
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002916523662823
中年の女性看護師を対象としたコホート研究です。
30年間の追跡調査で、タンパク質の摂取量・種類と健康状態の関連をアンケートで調べています。
健康状態の調査項目は大きく分けると以下の4点です。
・慢性疾患(がんや糖尿病など)
・記憶力(物忘れがひどくないか)
・身体機能(日常生活に支障がないレベルに動けるか)
・メンタルヘルス
タンパク質の摂取量(摂取量カロリーに占めるタンパク質の割合)で5階層にグループ分けをして、各階層のタンパク質の摂取量・種類と健康状態の相関関係を分析しています。
5/17/2024
タンパク質の摂取量・種類と健康の関係
1/23/2021
タンパク質摂取量と除脂肪体重の増加の関係(2020年のメタ解析)
この手の研究だと2018年のメタ解析(2)が有名で、その解析ではタンパク質の摂取量が1.6g/体重kg/dayで除脂肪体重の増加が頭打ちになるという結果になっていました。下のグラフは、(2)の研究のものです。
今回のメタ解析だと、「1.3g/kg/dayを超えると除脂肪体重の増加が緩慢にはなるが頭打ちにはならず、タンパク質摂取量を増やすほど除脂肪体重が増えやすくなる関係が続く」という解析結果になっています。
2018年の研究はレジスタンストレーニング有りのみの研究が対象で、解析対象の研究数は49です。今回の研究はレジスタンス有り無しの両方を集めていて、全部で105、レジスタンストレーニング有りの研究は53です。
1/26/2018
タンパク質の種類と筋肥大
関連記事:ゴールデンタイムはあるのか?
最新研究だと、
(1) A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28698222
タンパク質摂取量1.62g/kg/dayを超えると、追加でプロテインサプリメントを摂取しても筋肥大がさらに促進されるわけではないという結果。
しかし、へえ~と思った研究があったので、タンパク質の種類による筋肥大への影響の違いをちょっと調べてみました。
★ホエイとサテライト細胞
実験期間中の筋肥大に違いがあるかどうかだけでなく、長期的な筋肥大の差につながる可能性のあるサテライト細胞の増加に違いがあるかどうか、という視点。
(2) Effects of Whey, Soy or Leucine Supplementation with 12 Weeks of Resistance Training on Strength, Body Composition, and Skeletal Muscle and Adipose Tissue Histological Attributes in College-Aged Males
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5622732/
若い男性が12週間のレジスタンストレーニングを実施。サプリメントの内容が異なる5グループに分けて、レジスタンストレーニングの効果に違いが出るか調べた研究。
サプリメントは、プラシーボ(マルトデキストリン)、ロイシン、ホエイプロテイン・コンセントレイト、ホエイプロテイン・ハイドロリセート、ソイプロテイン・コンセントレイト。
プラシーボ以外のサプリメントの摂取量は、ロイシン含有量約3gで揃えられている。1回あたりの摂取量は、ホエイがタンパク質含有量約25g、ソイがタンパク質含有量約39g。これを1日2回摂取。
プラシーボグループ含めて、グループ間ではストレングスの伸び、及び全身の筋肉量と筋繊維の断面積の変化に有意差は出なかった。プラシーボグループでも除脂肪体重を考慮するとタンパク質摂取量がそれなりに多かったことから、サプリメントでタンパク質をさらに摂取しても筋肥大に差が出なかったと考えられる。
しかしサテライト細胞の数については違いが出ていて、プラシーボとロイシンはサテライト細胞の数が有意差なしだったが、ホエイプロテイン摂取の2グループはサテライト細胞が増えた。ソイは有意差有りには達しなかったが増える傾向があった。プラシーボとロイシンに比べて、ホエイとソイのグループはトータルのタンパク質摂取量が多くなっているので、これが影響した可能性もある。ただトータルのタンパク質摂取量はソイが最も多いけど、サテライト細胞の増加はソイよりもホエイの方が優位になっているので、タンパク質摂取量以外のファクターがある感じもする。
サテライト細胞の増加は筋肥大ポテンシャルの向上を示唆していると考えられる。実験期間中の筋肥大に差がなくても、サテライト細胞の数に差が出ていれば、長期的には筋肥大に差がつくかもしれない。
サテライト細胞の働きについては以下を参考に
関連記事:筋肥大のメカニズム
ホエイとプラシーボでサテライト細胞の増加に違いが出るかどうかを調べた研究は他にもいくつかあって、部分的にホエイ優位の結果か、もしくは有意差は無いけど傾向としてはわずかにホエイ優位という結果が出ている。これらの研究もホエイの方がプラシーボよりもトータルのタンパク質摂取量が多いので、ホエイの効果によるものなのか、タンパク質摂取量の違いによるものなのか、はっきりしない面もある。
以下の2つの研究でのホエイの摂取量は1日約20g
(3) Influence of exercise contraction mode and protein supplementation on human skeletal muscle satellite cell content and muscle fiber growth.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4280155/
(4) Protein Supplementation Does Not Affect Myogenic Adaptations to Resistance Training.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28346813/
https://www.utmb.edu/pepper/publications/2017%20Pubs/PMC5433887.pdf
差は微妙なものだと思われるが、プラシーボよりもホエイの方が不利になることはなさそうなので、筋肥大の最大化を目指す場合はホエイプロテインを飲むのが良いと思う。除脂肪体重約60kgの若い男性が1日あたりタンパク質含有量約50gのホエイプロテインを摂取した(2)の研究が、サテライト細胞の数にもっとも差が出ているので、実践する場合はこの量が目安になるだろう。
★肉・魚と筋肥大
(5) Effects of an omnivorous diet compared with a lactoovovegetarian diet on resistance-training-induced changes in body composition and skeletal muscle in older men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10584048
http://ajcn.nutrition.org/content/70/6/1032.long
高齢者(51–69歳)が12週間のレジスタンストレーニングを実施。食事内容が異なる2グループに分けて、レジスタンストレーニングの効果に違いが出るか調べた研究。
片方のグループは、卵と乳製品は食べても良いベジタリアン食(ラクト・オボ・ベジタリアン)。もう片方は、肉でもなんでも食べる通常の食事(ここでの肉は魚も含む)。
被験者は両グループとも、実験前の食事では肉も魚も食べている。
結果は、通常の食事グループの方が筋肥大で良い結果が出ている。除脂肪体重はラクト・オボ・ベジタリアンが-0.8kg、通常食が+1.7kg。脚から採取した筋繊維は、タイプ1が変化無しで、タイプ2が両グループとも太くなったが、通常食の方がより太くなった(通常食+16.2%、ラクト・オボ・ベジタリアン+7.3%)。ストレングスの伸びはグループ間で有意差なしだけど、通常食の方がより伸びた傾向。
食事内容による筋肥大効果の違いがどのような要因によるものか推測すると、
1) 摂取タンパク質の量と質の違い
ラクト・オボ・ベジタリアングループの方がタンパク質摂取量と動物性タンパクの割合が低いので、それが筋肥大に悪影響を与えている可能性がある。ただグループ間でそれほど大きな差では無いし、高齢者がレジスタンストレーニングを行った関連研究ではラクト・オボ・ベジタリアン食だとタンパク質摂取量が1.6g/体重kg/dayでも筋肥大しなかったとのことなので、摂取タンパク質の違いは筋肥大の差にほとんど影響を与えていないのではと考えられる。
2) 亜鉛不足の可能性
ベジタリアン食は亜鉛が不足しやすい。亜鉛が不足すると筋合成に悪影響が出るようだ。
(6) Effects of magnesium and zinc deficiencies on growth and protein synthesis in skeletal muscle and the heart.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1772873
3) クレアチン不足
ラクト・オボ・ベジタリアングループは、食物からのクレアチン摂取量がほぼゼロになるので、筋肥大に悪影響が出ている可能性がある。またクレアチンローディングの逆で、水分が抜けて除脂肪体重が減っているのかもしれない。
関連記事:クレアチンについて
4) テストステロンレベル
今回の研究では計測していないが、もしかしたらラクト・オボ・ベジタリアングループはテストステロンレベルが低下していて、それが筋肥大に悪影響を与えた可能性がある。
(7) Serum sex hormones and endurance performance after a lacto-ovo vegetarian and a mixed diet.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1435181?dopt=Abstract
要因ははっきりしないし、現時点の科学で解明できない要因もあるのかもしれないけど、筋肥大の差はくっきり出ているので、筋肥大を目指すには肉・魚は食べたほうが良いと思われる。ベジタリアン食にこだわる場合は、サプリメントで亜鉛とクレアチンを摂取すると良さそう。
ちなみに健康面を考えるなら、赤身肉ばかり食べず、タンパク質源は分散させた方が良いだろう。
関連記事:低炭水化物食とタンパク質源の健康への影響
★ソイと筋肉のダメージ
(8) Soy Beverage Consumption by Young Men
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1300/J133v03n01_03?journalCode=ijds19
(9) Four Weeks of Supplementation With Isolated Soy Protein Attenuates Exercise-Induced Muscle Damage and Enhances Muscle Recovery in Well Trained Athletes: A Randomized Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5098124/
ソイプロテインの継続的な摂取で、ソイのもつ抗酸化作用により筋肉のダメージが軽減されるという研究がある。筋トレによる筋肉へのダメージを減らせれば、短いスパンで次のトレーニングを行うことが出来、長期的に良い結果を得られると考えられる。ただ一般的な日本人の食生活は欧米に比べて大豆製品の摂取量が多いので、追加でソイプロテインを摂取しても研究のような効果がないかもしれない。
★まとめ
実践面では、ホエイプロテインを摂取、肉と魚を食べる、トータルのタンパク質摂取量は1.6-2.0g/kg/day程度(維持カロリー以上摂取)というのが筋肥大効果を高めるタンパク質の摂取の仕方だと思う。豆製品も食べておくとトレーニング効率を高められるかもしれない。
関連記事:タンパク質摂取量の目安
8/15/2017
消化吸収の速いタンパク質と遅いタンパク質の長期の比較(ホエイ相当vsカゼイン)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28422532
https://www.researchgate.net/profile/Julien_Louis/publication/316266159_Effects_of_Post-Exercise_Protein_Intake_on_Muscle_Mass_and_Strength_During_Resistance_Training_is_There_an_Optimal_Ratio_Between_Fast_and_Slow_Proteins/links/590af1840f7e9b1d082491b4/Effects-of-Post-Exercise-Protein-Intake-on-Muscle-Mass-and-Strength-During-Resistance-Training-is-There-an-Optimal-Ratio-Between-Fast-and-Slow-Proteins.pdf
タンパク質の消化吸収速度と、血液中のアミノ酸濃度(特にロイシン濃度)の上昇の違いが、長期的な筋肥大およびストレングスの向上に影響を与えるのか。
タンパク質を摂取してから数時間程度の血液中のアミノ酸濃度と筋合成の度合いを調べた短期(acute)の研究だと、消化吸収が速くてロイシン含有率が高いホエイの優位性を示す研究が多い。これらの短期の研究を根拠としてサプリメーカーがホエイプロテインパウダーやロイシンに特化したサプリメントなどを売り込んでいるのだけど、以前も書いたように、これらの短期の研究だとトレーニング無しでもタンパク質摂取後に筋合成が起こっていて、トレーニング無しなら長期的には筋肥大も起きないだろうから、空腹時に筋分解が高まるなどしてどこかで帳尻を合わせている可能性がある。従って、短期の研究がホエイ優位を示しても、長期でも同じ結果になるのかは不明だった。
今回の研究は、レジスタンストレーニングに合わせて、消化吸収の速い水溶性のミルクタンパク質と、消化吸収の遅いカゼインを摂取し、長期的な筋肥大とストレングスの変化を比較している。長期でホエイ相当のタンパク質とカゼインの比較をしたまともな研究は恐らく初めてだと思う。
★実験方法
・被験者:レジスタンストレーニング歴のある若い男性。前年にプロテインパウダー摂取していない人のみ。だいたいの平均は身長180cm、体重76kg、体脂肪率17%、ベンチプレス1RMが90kg前後、スクワット3RMが95kg前後。
・プロテインドリンク
ミルクから精製された2種類のタンパク質を、割合を変えて混ぜ合わせて使用。
a) 水溶性ミルクタンパク質:消化吸収が速くアミノ酸組成がホエイに似ている。ホエイよりも精製されていない。
b) カゼイン:消化吸収が遅い。
この2種類のタンパク質の組み合わせを三つ作り、被験者3グループに割当。
FP(100) 水溶性ミルクタンパク質100%
FP(50) 水溶性ミルクタンパク質50% + カゼイン50%
FP(20) 水溶性ミルクタンパク質20% + カゼイン80%
プロテインドリンクに含まれるタンパク質の量は3種類とも20g。炭水化物も20g含まれている。これをレジスタンストレーニング終了後15分以内に摂取。
・レジスタンストレーニング
慣れるための準備期間が3週間、その後に本番9週間。トレーニング頻度は週に4回。3週間ごとにレップ数を減らし強度を上げるリニアピリオダイゼーション。
・食事
1日のトータルのタンパク質摂取量が体重1kgあたり1.5-2.0gになるよう食事指導。結果として平均で1.9g/kg程度摂取したのでタンパク質の摂取量は十分だと考えられる。
・体組成測定
DXA
・ストレングス測定
ベンチプレス1RM、スクワット3RM、アイソメトリックでの肘と膝の伸展・屈曲の力
★実験結果
プロテインドリンク摂取直後の血漿ロイシン濃度のピーク値、およびAUC(area under the curve:曝露量)に違いがあった。カゼイン80%のプロテインドリンクを摂取したグループ(FP20)は、水溶性ミルクタンパク質の割合が高いプロテインドリンクを摂取したグループ(FP100、FP50)に比べて、ロイシン濃度のピーク値とAUCが低くなった。
しかし長期的には3グループとも体組成とストレングスの変化に有意差なし。
★コメント
トレーニング後に摂取するプロテインドリンクの消化吸収が速くても遅くても、長期的な筋トレ効果は変わらないという結果になった。
今回の研究から得られる教訓は、
・摂取して数時間の血中のアミノ酸濃度や筋合成速度を測定した短期の研究は、そのまま長期の結果を保証するものではないだろう。
・ある一定のロイシン閾値を超えることが筋合成のトリガーになるといった、短期間の、そして複数ある筋合成ルートの一つでしか無いメカニズムが長期的な筋肥大を決めるわけではないだろう。
・運動後の「ゴールデンタイム」に、消化吸収の速いプロテインドリンクを慌てて飲む必要はなさそう。
・消化吸収が速いタンパク質と遅いタンパク質を組み合わせれば、筋合成促進と筋分解抑制の両面から効果を発揮でき筋肥大を最大化できる・・・という説もあまり意味がなさそう。
今後、この研究結果を覆す研究が出てくるかもしれないけど、現時点ではタンパク質の消化吸収の速度に神経質になる必要はないと思う。ただ胃腸が強くない人は消化吸収が速いプロテインパウダーを積極的に利用することで、胃腸のキャパシティがボトルネックにならず、十分な栄養を取ることが出来てより良い結果を得られるかもしれない。
基本は1日のトータルのタンパク質摂取量を確保し、一日に3,4回の食事、トレーニング前後の食事間隔があまり空かないように栄養供給するといった感じで良いだろう。
関連記事:ゴールデンタイムはあるのか?
健康面も考えるならリスク分散のためにタンパク質源は分散させた方が良いだろう。筋肉の餌としてのタンパク質のクオリティを考えた場合、必須アミノ酸、特にBCAAの含有率が高い方が良いのだろうけど、1日に体重1kgあたり2g程度のタンパク質を動物性食品中心に摂取すれば、アミノ酸組成の差は消えるのではないだろうか。食事でのタンパク質摂取量が足りない場合は、追加で摂取するプロテインパウダーのアミノ酸組成の差が筋肥大に影響するかもしれない(この記事にあるミルクとソイの比較はこのケースかも)。
維持・増量時にタンパク質摂取量を確保するためにプロテインパウダーを利用する場合は、価格や飲みやすさなどの総合面からホエイプロテインパウダーが優れていると思う。減量時やintermittent fastingなどで食事間隔が大きく空き、肝グリコーゲンの枯渇によりタンパク質が分解されやすくなる状況では、カゼインなど消化吸収の遅いタンパク質を積極的に摂取したほうが良いだろう。
関連記事:プロテインパウダーの選択
関連記事:タンパク質摂取量の目安
★類似した過去の研究
2つあるけどどちらもいまいち。
(2)The effect of whey isolate and resistance training on strength, body composition, and plasma glutamine.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17240782
Whey vs Casein. Who will win?
https://evidencebasedfitness.net/whey-vs-casein-who-will-win/
この研究の中身の紹介と批評の記事
被験者数が少ないのも問題だけど、それ以外にもサプリメーカーがスポンサーなのが胡散臭くて、ホエイを摂取したグループのみ、やたらと良い数字が出ているのも胡散臭い。趣味でボディビルをやっている被験者が通常の食事に加えて一日に体重1kgあたり1.5gのプロテインパウダー(スポンサー提供)を摂取したら、加水分解ホエイ群のみが10週間で除脂肪体重が5kgも増えて体脂肪は1.4kg減って、カゼイン群は有意差なし。加水分解ホエイ群はスクワット1RMが80kgから156kgに上昇。トレーニング歴のある人が10週間でこの結果を得るのはちょっと考えにくい。体重1kgあたり1.5gという多量のプロテインパウダーを摂取するのも、実践面から参考にならない。
(3)Effects of soluble milk protein or casein supplementation on muscle fatigue following resistance training program: a randomized, double-blind, and placebo-controlled study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4107592/
水溶性ミルクタンパク質群とカゼイン群の間でストレングスと筋肥大に有意差なかっただけでなく、プラシーボ群とも有意差なし。プロテインドリンクのタンパク質含有量が一回あたり10g(トレーニング日は3回、休息日は2回摂取)と少なかったためなのか、それとも一日のトータルのタンパク質摂取量がプラシーボ群でも十分だったのか。
6/29/2016
高タンパク食の健康への影響
人間を対象とした長期のコントロール実験を行い実際に発病するかどうかを確認するのは予算的にも倫理的にも無理なので、長期の疫学調査と、短期の実験で病気と関連のある指標が変化するかを見て、それと動物実験の結果を見て、健康への影響を推測している。
明確な共通の定義がないが、高タンパク食というのはだいたい1.5 g/kg/day以上。
★腎臓
まとめ:既に腎臓に問題がある人は、高タンパク食を避けることで病状の進行を抑制できる。健康な腎臓の人は高タンパク食でも問題ないだろう。健康な腎臓は高タンパク食に適応できると思われるが、タンパク質摂取量を増やす場合は、一気に増やさず徐々に増やし段階的に適応させるのが良いだろう。
・既に腎臓に問題がある人
- 高タンパク食を避けることで病状の進行を抑制できる。これはほぼ確実。
- 日本腎臓学会のガイドラインだと、ステージ3以降(GFR60以下)でタンパク質の摂取量が制限される。
- 高タンパク食が悪影響を及ぼす経路の一つとして、機能低下した腎臓には酸負荷が問題になるようだ。
・健康な腎臓の人
- タンパク質の摂取量を増やすことが腎臓の仕事量を増やし、腎臓の機能を損なうという主張がある。しかし腎臓片方摘出後や妊娠時には腎臓の仕事量が増えるが、それで腎臓病になるわけではない。
- 高タンパク食では腎臓の仕事量の指標であるGFRが上がったり腎臓が肥大したりするが、これは高タンパク食への正常な適応だと思われる。
- アスリートは一般的に高タンパク食だが、アスリートが腎臓病になりやすいというエビデンスは無い。
- 脂質異常症、肥満、高血圧といった腎臓病になるリスクの高い人を対象とした高タンパク食ダイエットの実験でも腎機能の低下は報告されていない。
- 健康な腎臓の人においては、長期(疫学調査)でも短期でも高タンパク食による腎機能の低下を示した研究は無い。
- 比較的長期の動物実験でも、健康な動物が高タンパク食で腎臓を壊すという研究は無い。
・酸負荷
- 高タンパク食と高ナトリウム食は、腎臓の酸負荷を増やす。
- 病気(アシドーシス)と判断されるレベルまでいかなくても、体内のわずかなphの傾きでも健康に悪影響を与える可能性がある。
- 野菜や果物を十分に食べた方が良い。
・GFR:糸球体(Glomerular)の濾過(Filtration)速度(rate)
- 腎機能の指標。健康な腎臓は血液をどんどん濾過して要らないものを尿として排出できる。これが低下してくると濾過が進まなくなるので、体内に要らない物質が残り続け健康に悪影響が出る。
- 健康診断の腎機能の項目にあるeGFRは、血清クレアチニン値と年齢と性別から算出される推定のGFR。濾過機能に異常があるとクレアチニンの排出が滞り血清クレアチニン値が上昇するので、血清クレアチニン値からGFRを推定することができる。正確なGFRはイヌリンを使って計測されるが、一般的にはクレアチニン・クリアランス検査で測定する。
★腎臓結石
まとめ:おそらく体質によって結石の出来やすさが異なる。結石が出来やすい体質の人は高タンパク食を避けるのが安全だろう。
・結石が出来やすい体質の人に推奨される、結石の種類別食生活。
- シュウ酸カルシウム結石では、動物性タンパク質とシュウ酸とナトリウムを減らし、カルシウムの摂取量は維持し、クエン酸とカリウムの摂取量を増やす。
- リン酸カルシウム結石では、ナトリウムを減らす。
- 尿酸結石では、インスリン抵抗性が最大の問題なのでまず体重を減らす。野菜を多く食べる。あとプリン体を多く含む動物性タンパク質を減らす。
- どの種類の結石でも水分を十分に取った方が良い。
★骨
まとめ:高タンパク食の場合は、カルシウムとビタミンDを十分に摂取することで骨を強くするだろう。また果物と野菜を多く食べることも重要だろう。
- 高タンパク食では尿からのカルシウムの排出が増える。これが高タンパク食は骨を脆くするという主張につながっている。
- しかし、高タンパク食ではカルシウムの吸収率が上がることで尿からの排出量も増え、骨由来のカルシウムの排出が増えているわけではないことを示す研究がある。
- タンパク質には、骨基質の材料を提供する、カルシウム吸収率を上げる、IGF-1の生成を促進するといった骨の健康にプラスになる効果がある。IGF-1は骨芽細胞の活動を活発にし、腎臓でのリン酸塩の再吸収を促進する。
- 中和のために骨が分解され、カルシウムが放出されるという酸負荷による悪影響が仮にあるとしても、果物と野菜の摂取を増やすことで防ぐことが出来るだろう。(腎臓が健康なら酸は問題なく処理できると思うが)
★肝臓
まとめ:健康なら問題ないだろう。ただ絶食後に大量のタンパク質を摂取するのは避けたほうが良いだろう。
- 肝硬変ではタンパク質摂取量を減らす。
- マウス実験で48時間の絶食後に高タンパク食を与えたら肝臓にダメージが出た。
★大腸がん/心臓病/健康全般
まとめ:脂質の多い加工肉は食べ過ぎないようにする。果物と野菜を食べ、運動をするのも大事。
- タンパク質摂取量の多い人は、脂質の多い加工肉を多く食べ、野菜や果物はあまり食べず、運動せず、太っている傾向がある。疫学調査で高タンパク食が数々の健康リスクにつながるという結果が出るのは、これらの他のファクターが影響している可能性が高い。
- 脂質の少ない加工されていない肉には健康にポジティブな効果がある。
参考:
Controversies Surrounding High-Protein Diet Intake: Satiating Effect and Kidney and Bone Health
http://advances.nutrition.org/content/6/3/260.long
Dietary protein intake and renal function
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1262767/
Protein Controversies
http://www.bodyrecomposition.com/nutrition/protein-controversies.html/
Can eating too much protein be bad for you?
http://examine.com/faq/can-eating-too-much-protein-be-bad-for-you/
知ればなるほど! CKD患者の電解質・酸塩基平衡
http://www.kayexalate.jp/report/pdf/kayexalate_REPORT07.pdf
慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル 〜 栄養指導実践編
http://www.jsn.or.jp/guideline/pdf/H25_Life_Diet_guidance_manual.pdf
Nutritional aspects of stone disease
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12474643
Optimum Nutrition for Kidney Stone Disease
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1548559512002212
Self-Fluid Management in Prevention of Kidney Stones
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26166074
関連記事:
タンパク質摂取量の目安
9/26/2015
プロテインパウダーの選択
プロテイン | パウダー | 消化吸収 | 価格 | BCAA含有率 | その他 |
ホエイ | 速い | 普通 | 高い | カルシウム摂取できる | |
カゼイン | カゼイネート | やや遅い | やや高い | やや高い | カルシウム摂取できる |
ミセラーカゼイン | 遅い | 高い | やや高い | ||
ソイ | 速い | 安い | 普通 | イソフラボン過剰摂取に注意 |
プロテインパウダーは、いわゆる「プロテイン」のこと。乳製品や大豆のタンパク質を粉末にしたもの。
★プロテインパウダーの特徴
・プロテインパウダーの長所
- ものによっては通常の食品よりもタンパク質1gあたりの価格が安い。
- 脂質と炭水化物が少ないのでカロリーコントロールしやすい。
- 保存期間が長い。
- 栄養摂取量の管理が容易。
- 運動前・運動中に摂取しても高い強度の運動が可能(カゼインはキツイかも)。
- 運動直後の食欲が無い状態でも摂取しやすい。
- 食欲や消化能力の問題で運動量に見合うだけの食事を取るのが困難な場合に栄養摂取補助に使える。
・プロテインパウダーの短所
- 精製度の高い食品に共通の問題だが、微量栄養素が少ない。そのため食事の大半を占めるようにはしないほうが良い。
・プロテインパウダーの消化吸収速度
消化吸収が速いとエネルギーとして使われやすくなる(酸化される)ので、筋肉の餌という観点では無駄が増える。絶食を続けてから運動をした場合、例えば寝起きに何も食べずにトレーニングした後などはたぶん消化吸収が速い方が良いが、わざわざそんなことをせず運動前に摂取しておけば良いし、通常の食事は消化吸収に5時間くらいはかかるので、普通に生活していれば体内の栄養供給がすっからかんの状態でトレーニングすることにはならない。従って、消化吸収が速いプロテインパウダーはトレーニング直前やトレーニング中に摂取しても胃にもたれにくく高強度の運動ができるという点以外にはあまりメリットは無い。ペプチドとかは無駄に高価で無駄に酸化されるだけ。
・BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)
タンパク質は消化吸収過程でアミノ酸に分解され小腸と肝臓を経由してから血液に放出され、それから筋肉にたどり着く。小腸ではアミノ酸は一時的に蓄えられたり身体内で使われるタンパク質やホルモンの材料になったりする。肝臓では酸化されたり分解されて他の物質の材料になったりする。そのため食べたタンパク質のアミノ酸組成がそのまま血液中に放出されて、筋肉にたどり着くわけではない。BCAAは肝臓で代謝されにくくそのまま血液中に放出されやすい。またロイシンは筋合成のシグナルに関わってたりする。従って筋合成の観点ではBCAA含有率は大事で、プロテインパウダーのコストパフォーマンス(タンパク質1gあたりの価格)を考える場合は、BCAA含有率も加味した方が良いだろう。ちなみに肉や魚などのタンパク質のBCAA含有率は15-20%程度。
★ホエイ
BCAA含有率23-25%程度。消化吸収が速い。糖質や繊維質や脂質と一緒に摂取すると消化吸収が遅くなるので、維持期・増量期に通常の食事と同時に摂取する場合は消化吸収の速さは気にしなくて良い。ホエイ単体だとかなり速いので減量期に単体で使う場合は注意。BCAA含有率と価格と手に入れやすさと飲みやすさを考えると、維持期・増量期はホエイでタンパク質摂取量を底上げするのが便利。
ホエイとカゼインのプロテインパウダーはそれなりにカルシウムが含まれているのも良い。カルシウムが不足するとおそらく太りやすくなる。
★カゼイン
BCAA含有率20%程度。カゼインのプロテインパウダーには、ミセラーカゼインとカゼイネートがある。原材料にカゼインカルシウムやカゼインナトリウムと書かれているものがカゼイネート。カゼイネートは精製度が高く、消化吸収速度がミセラーカゼインより速い。ホエイよりは遅いが、BCAA含有率はホエイより低く、消化吸収速度はミセラーカゼインより速く、尖ったところが無いので使いにくい。価格はミセラーカゼインより安価。
ミセラーカゼインは減量時や、LeangainsのようなIntermittent Fastingで食事間隔を空ける時に使うと良い。日本メーカーのカゼインプロテインパウダーはほとんどがカゼイネート。ミセラーカゼインは海外製のを利用するのが良いと思う。私はオプティマムのナチュラルシリーズのカゼインを使ってます。
維持期・増量期でカロリーの摂取枠に余裕があるならスキムミルクも良い。ミルクタンパク質はホエイが20%で、カゼインが80%。精製度が低いので微量栄養素はプロテインパウダーより優れているし、価格もミセラーカゼインより安価だろう
★ソイ(大豆)
BCAA含有率17%程度。消化吸収が速い。男性は植物エストロゲン(イソフラボン)の摂り過ぎによるテストステロンレベル低下リスクが警告されるが、議論は決着してない模様。経験則では昔のボディビルダーはソイプロテインを大量に摂取していたがネガティブな効果は報告はされていない。
ソイは価格面以外では特にメリットが無いので、ベジタリアンや乳製品アレルギーでソイ以外に選択肢が無い人以外は、ソイにこだわる必要は無いだろう。目安としてはプロテインパウダー以外の豆製品も含めて大豆タンパク質は1日50g程度を上限に。食べ物全般に言えることだが、特定の食べ物を偏って大量摂取はせず、色んな食材を満遍なく食べることで、リスク分散および微量栄養素の相乗効果を狙うのが良い。
※追記:ソイプロテインパウダーの摂取で筋肉のダメージが軽減される可能性がある。
Soy Beverage Consumption by Young Men
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1300/J133v03n01_03?journalCode=ijds19
Four Weeks of Supplementation With Isolated Soy Protein Attenuates Exercise-Induced Muscle Damage and Enhances Muscle Recovery in Well Trained Athletes: A Randomized Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5098124/
[参考書籍]
The Protein Book / Lyle McDonald
関連記事:
タンパク質摂取量の目安
ゴールデンタイムはあるのか?
カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度
カルシウム・乳製品が体組成変化に与える影響
低炭水化物食とタンパク質源の健康への影響
2/25/2015
タンパク質摂取量の目安
運動のタイプやトレーニングレベルなどによって、タンパク質の必要量は違ってくると考えられます。ただ、運動量もトレーニングレベルも体組成も人によって違いますし、タンパク質のアミノ酸組成も違います。またタンパク質の必要量を調べる研究の測定精度の問題もあるので、タンパク質の推奨摂取量はおおまかな目安でしか出せません。以下の表は、カロリー収支がマイナスではない場合のタンパク質摂取量の目安です。タンパク質は多めに摂取してもデメリットが小さいので、多めの数字にしています。
持久系競技 | 筋肥大・ストレングス | |
---|---|---|
趣味の運動 | 1.2-1.5g/kg/day | 1.6-2.2g/kg/day |
アスリート | 1.8-2.2g/kg/day | 2.2-3.0g/kg/day |
アスリートは、一日数時間の運動を週に5日以上実施するような競技者を想定しています。また、わずかな運動パフォーマンスの差が成績に大きな影響を及ぼす高いレベルの競技者を想定しています。ボディビルやフィジークの競技者も含みます。
・トレーニングをしない日
基本的には、トレーニングをしない日も同じ量のタンパク質を摂取します。ただ、トレーニングが週一回といった場合は、トレーニング日とその翌日と翌々日のみタンパク質摂取量を上の表の量にし、他の日は体重1kgあたり1g程度でいいかもしれません。
・体脂肪率が高い場合
体脂肪にはタンパク質は必要ないので、男女とも体脂肪率が30%を超えるような場合は、除脂肪体重1kgあたり上記の量のタンパク質を摂取すると良いでしょう。例えば体重80kgで体脂肪率30%だったら、除脂肪体重は80×(1-0.3)=56kgです。2g/kg/dayで計算して、一日にタンパク質を112g摂取します。
・性別による違い
一般的に女性は男性に比べて体脂肪率が高いので、タンパク質の必要量が男性よりも少ないです。摂取量レンジの下限付近にすると良いでしょう。例えば趣味の筋トレだったら、女性は1.6-1.9g/kg/dayにすると良いと思います。
・減量でカロリー収支がマイナスの場合
大まかな目安としては、維持・増量時よりもタンパク質の摂取量を20%程度増やすと良いでしょう。タンパク質には除脂肪体重の減少を抑える効果に加えて、食欲を抑える効果もあります。ここでの減量はカロリー不足が消費カロリーの20%程度の減量を想定しています。例えば消費カロリー2500kcalだったら、摂取カロリー2000kcal、カロリー不足500kcal程度です。明確な関係式が出せるわけではないですが、基本的には消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が低くなるほど、つまり急速な減量ほど、タンパク質の摂取量を増やしたほうが良いです。
持久系競技 | 筋肥大・ストレングス | |
---|---|---|
趣味の運動 | 1.4-1.8g/kg/day | 1.9-2.6g/kg/day |
アスリート | 2.2-2.6g/kg/day | 2.6-3.6g/kg/day |
・体脂肪率が極度に低い状態への減量
ボディビルやフィジークのコンテストを目標に減量する場合は、男女とも3.0g/kg/day前後のタンパク質を摂取すると良いでしょう。コンテストに向けての減量をおこなう競技者を対象としたケーススタディ研究がいくつかあるのですが、このくらいのタンパク質を摂取しているケースでは除脂肪体重をある程度維持できています。マラソンランナーなどトップレベルの持久系アスリートのケーススタディ研究も、2.5-3.0g/kg/day程度の摂取で減量がうまくいっているので、非常にレベルの高い持久系アスリートも一般に推奨されるよりも多めに摂取したほうが良いと思います。
10/24/2014
タンパク質の摂取タイミングの効果についてのメタ解析研究
http://www.jissn.com/content/10/1/53
タンパク質の摂取タイミングが筋力向上と筋肥大にどのような影響を与えるのか、既存の複数の研究結果をメタ解析した論文。私は統計学について無知なためここで用いられている手法を理解できているわけではないが、Alan Albert Aragon も Brad Jon Schoenfeld も現場知識があって誠実に科学研究を行う信頼できる研究者だと思うので、以下抄訳してみる。
★今回の論文で解析対象とした研究
- 実験群はレジスタンストレーニング実施の前後1時間以内に6g以上の必須アミノ酸(or相当のタンパク質)を摂取し、対照群は前後2時間以内にタンパク質を摂取しなかった研究。
- レジスタンストレーニングプロトコルを少なくとも6週間継続した研究。
★結果
共変量をコントロールしなかった単純な解析では、タンパク質摂取タイミングは筋肥大に有意差ありで、筋力に有意差無しという結果になった。筋肥大への影響量は、小さい~中程度といったレベル。しかし、共変量をコントロールした解析ではタンパク質摂取タイミングは筋肥大に影響なしという結果になり、サブ解析ではトータルのタンパク質摂取量が、摂取タイミング研究で示された筋肥大の差の大部分を説明するという結果が出た。これらの結果は、トレーニングの直前・直後にタンパク質を摂取することが筋トレ効果を高めるのに非常に重要であるという一般的な考えを否定するように見える。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えていない摂取タイミング研究での平均のタンパク質摂取量は、対照群が1.33 g/kg/dayで、実験群が1.66 g/kg/dayだった。レジスタンストレーニングの効果を最大に得るためには初心者は少なくとも1.6 g/kg/dayのタンパク質摂取が推奨されていることを考慮すると、これらの研究での筋肥大の差はタンパク質摂取量の違いによるものである可能性が高い。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えた摂取タイミング研究では、対照群が1.81 g/kg/dayで、実験群が1.91 g/kg/dayだった。トータルの摂取量を揃えた研究はわずかに3つあり、2つは結果に差が無し。残り一つは摂取タイミングが筋力と除脂肪体重の増加に有意差をもたらしたという結果なのだが、データ不足により今回の解析対象の基準を満たせず除外された。
このメタ解析研究の強みは、
- 解析対象に含める研究の基準を高く設定し、質の高い研究を集め、バイアスが入る可能性を減らしたこと。
- それなりのサンプル数を確保できたこと。実験数23で、筋力については被験者数478名、筋肥大については被験者数525名。
- 良い解析手法。
このメタ解析研究の限界は、
- 対照群の食事タイミングが研究によってバラバラ。ある研究では運動後2時間でタンパク質摂取で、他の研究では何時間もタンパク質摂取を遅らせた。
- 大半の研究がレジスタンストレーニング初心者を被験者としている。トレーニング歴のある人と初心者とでは反応が異なるのは良く知られている。今回の研究でのサブ解析では、筋力についても筋肥大についても、トレーニング歴とタンパク質摂取タイミングの間に交互作用効果は示されなかったが、トレーニング歴のある被験者数を対象とした研究が4つだけなので、この解析結果は強くはない。
- サンプル数を大きくするため、筋断面積と除脂肪体重のデータを筋肥大のデータとして扱った。除脂肪体重の増加は大部分が筋繊維の肥大によるものであるが、レジスタンストレーニングでは骨や結合組織も増加することが知られている。筋断面積と除脂肪体重のデータを分けて解析もしてみたが、結果はほぼ同じだった。
- トータルのタンパク質摂取量を揃えた研究がわずかしかない。
★結論
既存のエビデンスは、ワークアウト前後1時間以内のタンパク質摂取が、レジスタンストレーニングの効果(筋力と筋肥大)を大きく高めるという主張をサポートしないようだ。もしワークアウト前後にアナボリックウィンドウが存在するのなら、それは前後1時間よりも長いものだろう。
ただ、今回の解析からは因果関係は直接には導けないため、タンパク質摂取タイミングが実際にはトレーニング効果の違いをもたらし、タンパク質摂取量の増加はそれに偶然に一致した可能性を排除できない。今後、タンパク質摂取量を揃えて摂取タイミングの影響を調べる研究、またトレーニング歴のある人を対象にした研究が多く行われることが期待される。
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ゴールデンタイムはあるのか?
7/19/2014
減量時のタンパク質摂取量による体組成変化の違い
Increased protein intake reduces lean body mass loss during weight loss in athletes.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19927027/
一日のタンパク質の摂取量を体重1kgあたり1.0gのグループと2.3gのグループに分けて、減量による体組成変化の違いを調べている。被験者はエリートレベルではないアスリートで、減量前の体脂肪率(平均値)は17%程度。結果は、2週間という短い期間ではあるが、高タンパク質摂取グループの方が除脂肪体重の減少が抑制された。2010年の論文。
★被験者
年齢: 18-40歳
運動歴: 週に2回以上のレジスタンストレーニングを6ヶ月以上継続。
性別: 男性
人種: 英国人
人数: 20人
詳しいデータはTABLE 1に。(数値は平均値±標準誤差)
★実験期間
- トータル4週間
- 減量フェーズは3週目と4週目の計2週間
★減量期間の食事
- 維持カロリー摂取の60%に制限(40%のカロリーカット)。
- マクロ栄養素の割合は、高タンパク質グループがタンパク質35%、脂質15%、炭水化物50%。対照群がタンパク質15%、脂質35%、炭水化物50%。
- 一日のタンパク質の摂取量は、高タンパク質グループが体重1kgあたり2.3g、対照群が体重1kgあたり1.0g。詳しくはTABLE 2に。
- タンパク質は主に動物性タンパク質を摂取。
- 食事回数は不明だが、通常の食事に加えて軽食も摂取して、栄養摂取タイミングを一日に分散させている。栄養摂取タイミングはトレーニングに合わせてはいない。
- 被験者が高タンパク質グループなのか対照群なのかわからなくするため、脂質中心でタンパク質をほとんど含まないプロテインシェイクもどきを作ったり、肉っぽいけど実は脂質が多い食べ物を提供したりと気を使っている。被験者のトレーニングに対するやる気が違ってきたりしないように。
★トレーニング
- 通常のトレーニングを各自継続。
★測定
- 体組成測定方法: DEXA
- 運動パフォーマンス測定: スクワットジャンプ、アイソメトリックでのレッグエクステンションの最大筋力、チェストプレの1RM、チェストプレスの筋持久力テスト、バイクでの無酸素運動能力テスト(Wingate test)
- 血液分析もしているけど特に面白くないのでここでは割愛。
- 主観での疲労感や満腹感も測定している。
★結果
<体組成変化>
以下の数値はアブストラクトに載っているもので多分2週目の測定値からの変化。FIGURE 2 は1週目と2週目の平均値からの変化。体脂肪の減少量は両グループとも同じで、対照群は除脂肪体重の減少が大きく、そのぶんトータルの体重の減少も大きくなっている。
・体重
高タンパク質群: -1.5±0.3kg
対照群: -3.0±0.4kg
・除脂肪体重
高タンパク質群: -0.3±0.3kg
対照群: -1.6±0.3kg
<運動パフォーマンス>
スクワットジャンプの際の踏み込みの力以外は、減量による変化はなし。除脂肪体重は減少しているので、実際には運動能力はわずかに低下していて測定では観測できなかった可能性がある。スクワットジャンプの際の踏み込みの力の低下は、体重減少に伴う必然的なもので、運動パフォーマンスの低下を示すものではないだろうとのこと。
<疲労感>
主観での疲労感は、高タンパク質グループの方が高くなった。理由は不明。
★個人的な感想
- 2週間という短い減量期間だけど、減量時にはタンパク質の摂取量を増やすことで、除脂肪体重の減少を抑制できるという常識的な結果になっている。
- 40%のカロリーカットなので割と速い減量ペース。
- 体重1kgあたり2.3gのタンパク質摂取量がベストなのかは不明。
- 被験者の体脂肪率が平均で17%程度で運動歴があるのでボディメイクの参考になる(アスリート対象の実験は少なく、被験者が肥満で運動歴の無い実験が多い)。
- 減量前後の体重変化にはグリコーゲンと水分量の変化も寄与してそうだけど、両グループ間の比較においては条件は同じ。
関連記事:
減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化
6/06/2014
カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度
カゼイネートとミセラーカゼインの違いについてはこの記事(pdf)を参照。ちなみに今回引用した論文は、この記事内のBoirieとReitelsederのもの。先に論文読んでからこの記事見つけたので偶然。この記事で言及されてないことは、Reitelsederの研究で使われたカゼインはカゼイネートであること。
<<カゼイネートの消化吸収速度>>
Whey and casein labeled with l-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion
http://ajpendo.physiology.org/content/300/1/E231.long
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康
性別: 男性
人数: 17名
年齢: 24-30歳
BMI: 22-25
LBM: 55-60kg
運動歴: 過去6ヶ月に継続的な有酸素運動とレジスタンストレーニングの経験なし
★実験方法
運動: 片足レッグエクステンション、80%1RMの重量で8レップ10セット。
栄養摂取: 運動直後に、水かホエイかカゼイン(カルシウム・カゼイネート)を摂取。プロテインの摂取量は、LBM(除脂肪体重)1kgあたり0.30g
★結果
血漿アミノ酸濃度は以下のFig.4.の通り。これはトータルの濃度で、実験で摂取したアミノ酸と筋分解で血中に放出されたアミノ酸を区別していない。有意差*はホエイとカゼインについてのもので、ベースラインに対してのものではない。全体的に、ホエイは3時間程度で、カゼイン(カルシウム・カゼイネート)は4時間程度でベースラインに戻っている。

以下のFig.6.は筋合成の速度。1時間後から3.5時間後はホエイの筋合成速度が大きく、3.5時間後から6時間後はカゼインの筋合成速度が大きい。トータルではホエイとカゼインの間では有意差なし。この実験では筋合成のみ調べていて、筋分解については不明。カゼインの方が筋分解を長時間に渡って防ぐだろうから、ネットバランスはカゼインの方が有利という結果になっていると思われる(注意点:短期の結果が長期の結果を保証するわけではない)。

<<ミセラーカゼインの消化吸収速度>>
よく見かける1997年のBoirie他の研究を引用する。カゼインの種類は論文中には書かれていないがミセラーカゼイン。他の論文でこの実験で使ったのはミセラーカゼインだと明記している。
Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9405716
この実験の優れている点。
- 同位体を含んだ標識用ロイシンを乳牛を経由(絞られた乳からプロテイン抽出)させることで実験用のプロテインに標識をつけている。
- ロイシンを主な測定対象としているので、ホエイとカゼインのトータルの摂取量を、含有ロイシン量が等しくなるように調整している。
- 血中のロイシンの測定はトータルのロイシン濃度だけではなく、実験で摂取したプロテイン由来のものと、筋分解により血中に供給されたものも測定している。
- プロテイン摂取後7時間まで測定している。
★結果
カゼインは、7時間後もトータルの血漿ロイシン濃度(左上)がベースラインを上回っている。右側はロイシン現出速度で、Exoが実験で摂取したプロテイン由来で血中へのアミノ酸供給の目安、Endoが内部由来つまりカタボリックの目安。
実験条件は、摂取量がホエイ30g、カゼイン43g(含有ロイシンの量が等しくなるようにしている)で、カゼイネートの実験より摂取量が多く、またこの実験では運動を行っていないこともあり、直接の比較は難しいけど、別の論文でミセラーカゼイン30g摂取で8時間経っても血漿ロイシン濃度はベースラインを上回っていたし、消化吸収の速度は、ホエイ>カゼイネート>ミセラーカゼイン で良いと思う。
ちなみに日本製のカゼインプロテインは、カゼイネートを使っているものが多いので、成分チェックをちゃんとしよう。私は何のしがらみもないので遠慮なく具体名を出すけど、バルクスポーツのカゼインプロテインはカゼイネートを使っているのに、たしか以前購入した時の記憶ではパッケージにはBoirieの論文のグラフとおぼしきものを載せていて、商品説明には「ミルクをろ過して製造され」「約7時間もアミノ酸を放出」といったミセラーカゼインの特徴が書かれているので、誇大広告か虚偽表示になるのではないだろうか。
★実際の栄養摂取への適用
通常はホールフードの食事をメインにして補助としてプロテインパウダーを使うだろうから、ホエイかカゼイネートかミセラーカゼインかはそれほど神経質になる必要はないとは思う。一日のトータルのタンパク質摂取量が最も大事。プロテインパウダーと糖分を含んだ飲み物といった流動食をメインにするのなら、消化吸収速度に合わせて食事間隔を調整した方が良いだろう。シビアな減量時や食事間隔が空く時にプロテインパウダーを使う場合は、カゼイネートは避けてミセラーカゼインにするのが良いと思う。
★補足
こういう短期(acute)の研究から導かれる一般的論としては、ホエイとカゼインを合わせて摂取するのがベストということになる。ただ、長期間に渡ってだとどうなるかわからない。acuteの研究だと、運動無しでも食後には筋合成が起きる。これは空腹時の筋分解の回復なのか、一時的に筋肉にアミノ酸が押し込まれる感じになっているのかよくわからないけど、運動なしでは当然長期の筋肥大にはつながらない。従って運動後の栄養摂取による筋合成のデータにも、一時的なものと長期的なものが含まれてると思う。ホエイの短時間の筋合成ブーストも一時的なものの割合が高いのなら、長期の筋肥大にはあまり意味がなくて、ホールフードやカゼインなどのスロープロテインで淡々とアミノ酸供給しとけば良いのではないかという話になる。(ホエイとカゼインの効果を比較した長期の研究は一応あるんだけど、実験デザインがいまいち)
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
5/15/2014
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
タンパク質(プロテイン)の種類によって消化吸収の速度に差が出るというのは広く知られるようになってきていて、サプリメントメーカーもホエイとカゼインを混ぜたファストとスローの両面アプローチを謳う製品を出したりしている。(余談だけど、日本のメーカーのカゼインプロテインパウダーは多くがカゼイネートを使っている。カゼインプロテインの消化吸収の遅さを示す研究で使われるのはミセラーカゼイン。カゼイネートの消化吸収速度はどのくらいだろう? あとで調べた→カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度)
この研究は、タンパク質の消化吸収速度の違いによって、体内でのタンパク質の利用のされかたがどう変わってくるかを調べている。
Hydrolyzed dietary casein as compared with the intact protein reduces postprandial peripheral, but not whole-body, uptake of nitrogen in humans
http://ajcn.nutrition.org/content/90/4/1011.full
比較したタンパク質は以下の2種類。
・IC(intact casein): 未加工カゼインプロテイン(ミセラーカゼイン)
・HC(hydrolyzed casein): 加水分解されたカゼインプロテイン。消化吸収が速い。
摂取の仕方は、カゼインプロテイン(IC/HC)+カーボ(マルトデキストリンとスクロース)+大豆油
上の一つ目の画像は摂取後の血清アミノ酸濃度の変化。加水分解されたカゼインプロテインは消化吸収が速いのでアミノ酸濃度がすぐ上がってすぐ下がる。
それで、今回の目玉が2つめの画像のデータ(TABLE 3)。
- Splanchnic retention : 内臓部分に回されるタンパク質量。
- Peripheral uptake : 周縁部分・・・つまり主に骨格筋に摂取されるタンパク質量。
未加工カゼインプロテインのほうが Peripheral uptake が多い。従って、骨格筋にタンパク質を送り込みたいなら、消化吸収が遅いタンパク質を摂取した方が有利。
この研究は食事直後の身体変化を調べたもの。それではレジスタンストレーニングをしながら長期間に渡って違う種類のタンパク質を摂取した場合は筋肥大に差が出るのだろうか。
これについては、ミルク(ホエイ2割+カゼイン8割)とソイプロテイン(消化吸収が速い)の摂取を比較した研究があって、ミルクの方がより筋肥大したという結果になっている。
Consumption of fat-free fluid milk after resistance exercise promotes greater lean mass accretion than does consumption of soy or carbohydrate in young, novice, male weightlifters1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/86/2/373.long
細かいことを言うと、ミルクとソイプロテインではミルクの方がアミノ酸組成が骨格筋の合成に有利な気がするので、吸収速度のみがファクターになっていないと思うけど、タンパク質摂取量とカロリーは等しくしてあるし、筋肥大に結構差が出てるから吸収速度の影響が大きいのだろう。
レジスタンストレーニング後のミルクとソイの摂取による筋合成反応の違いの研究(acute研究)もあって、アミノ酸供給が続いていた方が筋合成に有利だという結果になっている。
Consumption of fluid skim milk promotes greater muscle protein accretion after resistance exercise than does consumption of an isonitrogenous and isoenergetic soy-protein beverage1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/85/4/1031.full
以上よりタンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響をまとめると、
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方が骨格筋により多くのアミノ酸を届けられる。
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方がより長い時間アミノ酸を身体に供給でき、筋合成を長く続けることができる。
消化吸収が速いタンパク質(ホエイやソイプロテインパウダー)のみを摂取する場合は、3時間おきくらいに多めに摂取するといった方法にすれば、レジスタンストレーニングによる筋肥大効果を十分に享受することが出来るだろう。食事回数を増やしたくない人は、固形物の食事かカゼインプロテインパウダーを摂取すると良い。
あと、骨格筋へのデリバリー効率を考えると、タンパク質単価(g/円)だけでは高たんぱく質食品やプロテインパウダーのコスパは決まらないなあと思った。
関連記事: タンパク質について
3/11/2014
中高年の高タンパク食に癌リスク?
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140311001
当該研究:Low Protein Intake Is Associated with a Major Reduction in IGF-1, Cancer, and Overall Mortality in the 65 and Younger but Not Older Population
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131%2814%2900062-X
関連研究:Long-term effects of calorie or protein restriction on serum IGF-1 and IGFBP-3 concentration in humans
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2673798/
当該論文を読んでみた感想。
・高タンパク質グループは心筋梗塞や糖尿病の病歴が多く、体重を減らそうとしたり、健康上の理由で食生活を変えた人の割合も高い。また、高タンパク質グループは自己申告の摂取カロリーも低い。一応研究ではこの関係性を気にして、糖尿病患者ではない人の糖尿病死亡率を出していて、低タンパク質グループが低いという結果になってはいるが、病的な肥満の人が高タンパク質・低カロリーの食事に切り替えたことにより、高タンパク質グループでは潜在的に死亡の危険度の高い人が多くなっている可能性は排除できない。(Table S1参照)
・IGF-1が癌を促進すると主張しているのに、50-65歳の中タンパク質グループの癌死亡リスクはIGF-1の上昇とそれほど強く比例していない。また、65歳以上の癌の死亡率は、高タンパク質グループの方が低くなっている。それと、50-65歳の全体の死亡率は、中タンパク質グループではIGF-1の上昇によりやや低下するという結果になっている。(Fig S2参照)
・低タンパク質・高炭水化物グループは、穀物や野菜や果物からの食物繊維や微量栄養素の摂取量が健康リスクの低減に寄与しているのかもしれない。
・調査対象の平均ウェスト97cm、平均BMIは27。研究の結果が、健康的な体型の人に当てはまるかわからない。
・平均の摂取カロリーは1800kcal程度だけど、こんな体型の人がこのカロリーのはずがないだろう。身長170cmだと体重80kg。食事内容の自己申告のいい加減さを示している。
・各グループ内でBMIレベルごとにそれぞれ危険度を出せば、もう少しリスク要因がわかるかもしれない。
関連研究を見ると、タンパク質摂取量が多くても痩身を保てばIGF-1は低下している。仮にIGF-1レベルの上昇が癌のリスクを高めるという仮説を受け入れるとしても、健康的な食生活をし痩身を保てばタンパク質の摂取量が多くても問題ないのではないでしょうか。
個人的には、特定のホルモンや遺伝子や食材などを病気や老化の要因として槍玉に挙げるタイプの主張は好きではないです。特に、局所的な細胞レベルの働きを長期の身体活動に敷衍する主張や、疫学調査を根拠に単純な因果関係を持ち出す主張は。人間の身体はそんなに単純ではないだろうと思います。
2/08/2014
筋肉についてのこれまでの研究を総括した論文
Exercise training and protein metabolism: influences of contraction, protein intake, and sex-based differences
http://jap.physiology.org/content/106/5/1692.long
2/06/2014
カゼインプロテインについて
カゼインプロテインは、加工方法の違いにより、化学加工で製造されるカゼイン塩(カゼインカルシウム、カゼインナトリウム)と、濾過を経て製造されるカゼイン・ミセルの二種類がある。カゼイン塩の方が安価である。
カゼイン・ミセルの方が微量栄養素などの観点から良さそうなんだけど、米メーカーのフレーバー付きのものしか見つからない。これらはタンパク質の割合があまり高くないし、米メーカーの味付けはくどい傾向があるので単品で飲むのはけっこうつらい。今は国内メーカーのフレーバー無しのカゼインカルシウムに、フレーバー付きのホエイを混ぜて飲んでるけど・・・どうしようかな。
なるべくカッテージチーズを食べるようにするか。ちなみにフレーバー付きホエイを水少量でドロドロに溶いてカッテージチーズにかけると、デザートっぽくなる。低カロリーで、ほぼタンパク質のみ。
1/31/2014
トレーニング前の栄養摂取
Fasted Training Boosts Muscle Growth?
http://www.leangains.com/2009/12/fasted-training-boosts-muscle-growth.html
炭水化物メインの食事を摂った場合と、絶食状態の場合で、レジスタンストレーニングをして、その後のタンパク質・炭水化物補給時における筋合成の度合いを比較した研究。 絶食時の方がアナボリックが高まった。絶食時の方がトレーニング中のカタボリックも盛んだろうから、長期的に見て筋肉が増えるのかは不明。
Pre-Workout Protein Boosts Metabolism
http://www.leangains.com/2009/12/pre-workout-protein-boosts-metabolism.html
トレーニング前のタンパク質(ホエイ)摂取と、炭水化物摂取を比較した研究。 タンパク質摂取したグループの方がEPOCが大きい。おそらく筋合成の差。
このブログの筆者(リーンゲインズの主唱者)は、「絶食+トレーニング前のアミノ酸もしくはタンパク質摂取+トレーニング後にメインの食事」でアナボリック効果を大きく出来るのではと言っている。絶食といっても、リーンゲインズでは2時間くらいまえに軽い食事を摂るプログラムもOKと言っているので、トレーニング時にインスリンの影響を排除できれば良いと考えている模様。
1/28/2014
大豆タンパク質に含まれるイソフラボンについて
甲状腺治療で服薬している人は、服薬の前後は大豆タンパク質を避ける。
甲状腺機能に問題のある人は、大豆タンパク質の摂取を制限した方が良いかもしれない。ヨウ素の摂取が少ない場合に問題になる。
イソフラボンは、閉経後の女性には良い影響がありそう。
Effects of Soy Protein and Soybean Isoflavones on Thyroid Function in Healthy Adults and Hypothyroid Patients – Research Review
http://www.bodyrecomposition.com/research-review/effects-of-soy-protein-and-soybean-isoflavones-on-thyroid-function-in-healthy-adults-and-hypothyroid-patients.html
1/24/2014
タンパク質について
動物性タンパク質は消化率が高い。植物性は低め。植物性タンパク質はアミノ酸スコアも低いので、植物性タンパク質中心に摂取する場合は多めに食べる必要。
What Are Good Sources of Protein? – Digestibility
http://www.bodyrecomposition.com/nutrition/what-are-good-sources-of-protein-digestibility.html
★タンパク質の消化速度
高齢になると、タンパク質への反応が鈍くなるので、アミノ酸濃度を急上昇させるタンパク質の方がアナボリック効果が高くなる。若いうちはあまり差がない。
一般的には、ホエイは血中アミノ酸濃度を急上昇させてアナボリック効果、カゼインはアミノ酸濃度を長時間保ち抗カタボリック効果と言われるが・・・
夜中寝てる間の絶食のあと、朝一にタンパク質を摂取した場合の身体の反応を調べた研究が多い。前回の食事が消化中の時にタンパク質を摂取したら身体はどう反応するかの研究は見当たらないので、現実の昼食や夕食で身体がどう反応しているのかはよくわからない。
今回の話は全て、トレーニング中後以外の時の話。トレーニングすると身体の反応が大きく変わってくる。
What Are Good Sources of Protein? – Speed of Digestion Part 2
http://www.bodyrecomposition.com/nutrition/what-are-good-sources-of-protein-speed-of-digestion-part-2.html
(テンダーロインのデータは、テンダーロインに似せたアミノ酸組成を静脈注射したもの)
WPHとWPIの消化速度はほとんど変わらない。
そもそも消化の速いタンパク質の方が良いのか?
通常の食事やトレーニング後は、より遅い、もしくは遅いのと速いタンパク質のミックスが良いとライルは言っている(高齢者除く)。ホエイとカゼインを含み、他の微量栄養素も含む牛乳もトレーニング後の回復に良い。
トレーニング前中は、吸収速いプロテインが良い。
ホエイは消化が速いので、アミノ酸燃焼されやすい。
What Are Good Sources of Protein? – Speed of Digestion Part 3
http://www.bodyrecomposition.com/nutrition/what-are-good-sources-of-protein-speed-of-digestion-part-3.html
★タンパク質のクオリティ
アミノ酸スコア: 実際に身体でどのように使われるのかや、消化率については何も語ってない。アミノ酸・タンパク質のリクワイアメントは年齢や運動種類によって変わる。
Biological Value(BV): 血流に入ったタンパク質がどれだけ身体に保持されるかの指標。摂取量と排泄量から算出。タンパク質摂取量やカロリー摂取量に影響される。タンパク質摂取量が多いとBV低下、カロリー摂取多いとBV上昇。現代先進国の人間やアスリートの高タンパク高カロリーの食事だとあまり参考にならない。
タンパク質のクオリティは、タンパク質とカロリーが不足している発展途上国では重要な問題で、各指標はそのためのもの。
カロリー十分で除脂肪体重1kgあたり2-3gのタンパク質を、高品質で色々な食材から摂取していれば、個々のタンパク質の差は問題にならない。
カロリー不足の状態ではタンパク質の差は重要に。乳製品のタンパク質(ホエイとカゼイン)が有利らしい(理由はここでは割愛されている)
What Are Good Sources of Protein? – Protein Quality
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★アミノ酸組成
臓器、骨格筋、髪、肌、酵素、肝タンパク質など、それぞれ必要なアミノ酸組成は異なる。
大まかにわけて、基本的な健康と身体機能にとって必要なアミノ酸組成と、運動パフォーマンスの最適化に必要なアミノ酸組成がある。前者は普通に肉、魚、卵、乳製品、豆など高品質のタンパク質を食べてれば問題ない。
魚のタンパク質がインスリン感受性に良い影響を与えるという研究も。
What Are Good Sources of Protein? – Amino Acid Profile Part 1
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BCAA 分岐鎖アミノ酸。ロイシン、イソロイシン、バリン。筋肉の材料になり、運動のエネルギーとしても使われる。肉のタンパク質は15%がBCAA。ホエイが25%、カゼインが20%。
BCAA補給によるベネフィットを示した研究の多くは、十分なタンパク質を与えていない状況で行われていることに注意。欠乏状態と充足状態とでは栄養素の影響は異なる。
持久運動で消費されるカロリーの5-10%はアミノ酸を燃焼して賄われる。BCAAは特に使われる。持久運動の際、一時間あたり10-12gの吸収の速いタンパク質と炭水化物を摂取すると、筋肉のダメージを減らし回復を早める。ホエイ摂取お薦め。
ウェイトトレーニングではそれほどアミノ酸は消費されないだろう。
強度の高い持久運動による免疫力低下を防ぐには、十分なタンパク質摂取が必要。運動中の炭水化物摂取はさらに重要。
ウェイトトレーニングでは免疫力へのネガティブな影響はない傾向。毎日ハードなトレーニングをしない限りは。
What Are Good Sources of Protein? – Amino Acid Profile Part 2
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運動への適応。レジスタンストレーニングは筋肥大、持久運動はエネルギー生成に必要なミトコンドリアや酵素の増加。従って、それぞれの運動の適応に身体が必要とするアミノ酸は異なるだろう。
肝臓が身体に必要なアミノ酸を血流に放出する門の役割で、余分なアミノ酸は破棄されるか燃焼される。摂取したアミノ酸組成と血流に表れるアミノ酸組成はほとんど関係ない。BCAAは優先的に骨格筋に送られる。
BCAAは筋合成を促進する。具体的にはロイシンが。でもこれらの研究はタンパク質摂取が不足している状態だったり、高齢者を対象としてたりして、しっかり栄養摂取している若いトレーニーが追加でBCAAを摂取するとどうなるのかという疑問には答えていない。実際は、十分なタンパク質を摂取していれば良さそう。トレーニング時はホエイと炭水化物の摂取がお薦め。
高品質のタンパク質を様々な食材から得て、十分なカロリーを摂取していれば、特定のアミノ酸を摂取することでレジスタンストレーニングや持久運動のパフォーマンス向上がもたらされるとは考えにくい。
減量時にはタンパク質の必要摂取量が増加する。減量時は乳製品のタンパク質(wholeで)がお薦め。
魚のタンパク質(具体的には鱈)はインスリン感受性と、おそらくはレプチン感受性を改善する。タウリンの作用と思われる。
What Are Good Sources of Protein? – Amino Acid Profile Part 3
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亜鉛:免疫機構、食欲、レプチンレベル、テストステロンなどのホルモンレベルに関わる。対内に貯蔵出来ないので日々摂取する必要がある。多く含まれる食物は、牡蠣、赤身肉、レバー、蟹肉、チーズ、チキン。
鉄分:赤血球や甲状腺機能に関わる。赤身肉、レバー、内臓肉、チキン。
B12:ヴィーガンやB12の吸収に障害を持っている人以外は普通に食事していれば大丈夫。
カルシウム:骨の健康を保つ。十分に摂取すると、血圧を下げたり体脂肪を減らしたりする可能性。カルシウムは脂質の吸収や脂質の燃焼に影響を与えているかもしれない。乳製品。
What Are Good Sources of Protein? – Micronutrient Content
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★脂質
脂肪酸の種類
- 飽和脂肪酸: 動物性の食品に含まれる。ある種の飽和脂肪酸はコレステロールレベルを上げるが、ほかは影響なし。
- 不飽和脂肪酸: 常温で液体。健康に対してはニュートラル。
- 多価不飽和脂肪酸: 主に植物性の食品に含まれる。オメガ3脂肪酸は魚油(EPA・DHA)と亜麻油・紫蘇油(ALA)。オメガ3脂肪酸はとても健康によい。
- トランス脂肪酸: たぶん健康にはそれほど良くない。摂取量による。タンパク質豊富な食品にはあまり含まれないので、ここではあまり触れない。
- MCT、CLA: タンパク質豊富な食品にはあまり含まれないので、ここではあまり触れない。
赤身肉:部分によって含まれる脂質の量が大きく異なる。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が半々くらい。わずかに多価不飽和脂肪酸も含む。
鶏肉:部分によって含まれる脂質の量が大きく異なる。皮なし胸肉はほぼ無脂質。大部分が不飽和脂肪酸で残りが飽和脂肪酸、わずかに多価不飽和脂肪酸。
豚肉:脂質が多い。テンダーロイン例外でほぼ無脂質。
卵:全卵のタンパク質のクオリティはとても高いが、白身だけだとそれほど高くない。コレステロールについては、少数のセンシティブな人以外は問題ない。脂質は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が半々くらい、わずかに多価不飽和脂肪酸。
魚:種類によって含まれる脂質の量が大きく異なる。多価不飽和脂肪酸が多い。半分くらいは一価不飽和脂肪酸。
乳製品: 牛乳の脂質の大部分は飽和脂肪酸、少量の不飽和脂肪酸、ごくわずかの多価不飽和脂肪酸。
豆類とナッツ: 豆類は脂質が少ない。ナッツは脂質多いが、大部分が不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸。
大豆: 脂質多い。半分が多価不飽和脂肪酸、残りは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の半々。植物性エストロゲンの問題。
What Are Good Sources of Protein? – Dietary Fat Content
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その他のチェックポイン後
・可用性
・タンパク質含有率、付随する脂質と炭水化物の量
・コスト
どのタンパク質がベストなのかはコンテキスト次第。
What Are Good Sources of Protein? – Wrapping it Up
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