中高年の高タンパク食に癌リスク
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140311001
当該研究:Low Protein Intake Is Associated with a Major Reduction in IGF-1, Cancer, and Overall Mortality in the 65 and Younger but Not Older Population
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131%2814%2900062-X
関連研究:Long-term effects of calorie or protein restriction on serum IGF-1 and IGFBP-3 concentration in humans
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2673798/
当該論文を読んでみた感想。
・高タンパク質グループは心筋梗塞や糖尿病の病歴が多く、体重を減らそうとしたり、健康上の理由で食生活を変えた人の割合も高い。また、高タンパク質グループは自己申告の摂取カロリーも低い。一応研究ではこの関係性を気にして、糖尿病患者ではない人の糖尿病死亡率を出していて、低タンパク質グループが低いという結果になってはいるが、病的な肥満の人が高タンパク質・低カロリーの食事に切り替えたことにより、高タンパク質グループでは潜在的に死亡の危険度の高い人が多くなっている可能性は排除できない。(Table S1参照)
・IGF-1が癌を促進すると主張しているのに、50-65歳の中タンパク質グループの癌死亡リスクはIGF-1の上昇とそれほど強く比例していない。また、65歳以上の癌の死亡率は、高タンパク質グループの方が低くなっている。それと、50-65歳の全体の死亡率は、中タンパク質グループではIGF-1の上昇によりやや低下するという結果になっている。(Fig S2参照)
・低タンパク質・高炭水化物グループは、穀物や野菜や果物からの食物繊維や微量栄養素の摂取量が健康リスクの低減に寄与しているのかもしれない。
・調査対象の平均ウェスト97cm、平均BMIは27。研究の結果が、健康的な体型の人に当てはまるかわからない。
・平均の摂取カロリーは1800kcal程度だけど、こんな体型の人がこのカロリーのはずがないだろう。身長170cmだと体重80kg。食事内容の自己申告のいい加減さを示している。
・各グループ内でBMIレベルごとにそれぞれ危険度を出せば、もう少しリスク要因がわかるかもしれない。
関連研究を見ると、タンパク質摂取量が多くても痩身を保てばIGF-1は低下している。仮にIGF-1レベルの上昇が癌のリスクを高めるという仮説を受け入れるとしても、健康的な食生活をし痩身を保てばタンパク質の摂取量が多くても問題ないのではないでしょうか。
個人的には、特定のホルモンや遺伝子や食材などを病気や老化の要因として槍玉に挙げるタイプの主張は好きではないです。特に、局所的な細胞レベルの働きを長期の身体活動に敷衍する主張や、疫学調査を根拠に単純な因果関係を持ち出す主張は。人間の身体はそんなに単純ではないだろうと思います。
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