運動で「筋肉がつる」とはどういう現象か
専門的には、運動誘発性筋痙攣(EAMC:Exercise-Associated Muscle Cramp)と呼ばれる現象で、運動中や運動の後に、激しい痛みを伴って筋肉が不随意(自分の意思とは無関係)に収縮することです。
運動が要因の筋痙攣以外にも、病気による筋痙攣や、夜中に突発的に起こる筋痙攣もあります。今回は、運動による筋痙攣のみを対象とします。
専門的には、運動誘発性筋痙攣(EAMC:Exercise-Associated Muscle Cramp)と呼ばれる現象で、運動中や運動の後に、激しい痛みを伴って筋肉が不随意(自分の意思とは無関係)に収縮することです。
運動が要因の筋痙攣以外にも、病気による筋痙攣や、夜中に突発的に起こる筋痙攣もあります。個人差に関する研究で面白いです。多くの初心者向けトレーニングプログラムは、重量を漸進的過負荷していきますが、この研究からは、重量を漸進的過負荷したほうが筋肥大しやすい人もいれば、レップ数を漸進的過負荷したほうが筋肥大しやすい人もいることがわかります。
Individual muscle hypertrophy response is affected by the overload progression model and is associated with changes in satellite cell content
https://www.fisiologiadelejercicio.com/wp-content/uploads/2025/06/Individual-muscle-hypertrophy-response-is-affected.pdf
被験者:若い男女 37名 過去半年間のトレーニング歴無し
種目:片脚レッグエクステンション
被験者の脚を片方ずつどちらかのプロトコルに振り分け
- LOADprog:9-12RMのレンジ内で重量を漸進的過負荷 4セット
- REPSprog:全セット限界まで 重量は初期設定の80%1RMで据え置き レップ数の漸進的過負荷 4セット
期間:10週間
インターバル:セット間90秒、プロトコル間2分(片脚4セット→もう片方の脚4セット)
測定:外側広筋の厚み(超音波)、外側広筋の筋肉組織採取
頻度:週2-3回
被験者:15名(男性13名、女性2名) 平均年齢29歳 体重87.5kg 身長176.8cm 10名がパワーリフター 3名がウェイトリフター 2名が投擲競技の選手 ベンチプレス平均1RMはベタ寝で体重の1.38倍
フォーム:被験者がそれぞれブリッジを組んでベンチプレスをした場合(アーチ)と、ベタ寝でベンチプレスをした場合(フラットバック)の、1RM、挙上距離、挙上速度、筋電位を測定し比較する。拷問みたいなハードなストレッチをすると、普通に筋トレするのと同等に筋肥大するという研究が出てきています。筋力(アイソメトリック)についても、普通の筋トレと同等の伸びになっています。実用性の面では疑問符が付きますが、学術的に興味深い内容なので取り上げます。
ストレッチによる筋肥大研究のこれまでの流れについては、こちらの論文が詳しいです。ざっと概略を書きます。
(1)Physiology of Stretch-Mediated Hypertrophy and Strength Increases: A Narrative Review
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10587333/
動物実験では、ストレッチによる筋肥大について明確な効果が示されています。ただし、重りで無理やり筋肉を引っ張るのを毎日24時間続けるといった、人間対象では不可能な方法です。
人間対象のストレッチ研究は、ストレッチで筋肥大が起きたり、起こらなかったりと結果がばらついています。
ストレッチをする時間の長さと、ストレッチの強度が重要なファクターになっていると考えられます。
一日数分程度の普通のストレッチだと、筋肥大はほぼ起こらないです。短時間のストレッチでも効果があったとする研究が一部ありますが、効果なしの研究のほうが多いです。
一日一時間といった長時間、または筋肉に非常に強いテンションがかかり、痛みを強く感じるストレッチだと、確実に筋肥大が起こりそうです。また、効果が示された研究では、整形外科的な器具を用いて、筋肉を強制的にストレッチ状態で固定しています。
ストレッチで筋肥大が起こるのは、筋肉への力学的な張力(メカニカルテンション)が主要な経路だろうと推測されていますが、詳しいメカニズムははっきりとはわかっていません。筋肉が引っ張られて薄くなることで虚血が起こり、酸欠による筋肥大が起こっている可能性もあるようです。
たぶんデロードの研究は初めてです。途中で3週間休止してトレーニング再開するという研究はあったのですがデロードというよりもリトレーニングの研究です。1週間のデロード期間の研究は世界初だと思います。ただ、一般的に行われるデロードと違って、完全にトレーニングを休んでいます。
(1)Gaining more from doing less? The effects of a one-week deload period during supervised resistance training on muscular adaptations
https://sportrxiv.org/index.php/server/preprint/view/302/604
<被験者>
トレーニング歴有りの若い男女。男性率7割強。平均体重78kgでスミスマシンスクワットの1RM平均が100kg付近なので高いレベルのトレーニーというわけではなさそう。
<トレーニング内容>
トレーニングメニューは両グループで同じ。いずれの種目も2分インターバルで8-12RMを5セット実施(全セット限界まで)
上半身 週2回
・ショルダープレス
・ラットプルダウン
・チェストプレス
・バイセップスカール
・トライセプスプッシュダウン
下半身 週2回
・スミスマシンスクワット
・レッグエクステンション
・膝を伸ばしたカーフレイズ
・膝を曲げたカーフレイズ
通常トレーニンググループは、9週間ずっと同じメニューでトレーニング
デロードグループは、4週間トレーニング+1週間完全オフ+4週間トレーニング
<結果>
筋肥大は両グループで差は無し。
筋力については通常グループのほうがやや有利。
ジャンプ力は両グループで差は無し。
<その他>
ディスカッション欄に書かれていることが興味深いです。
・デロード後は、リフレッシュ感よりもむしろ怠さを訴える被験者がいた。
・4週目から9週目にかけて、通常グループは筋肉痛が減って、デロードグループは筋肉痛が増えた。
・4週目から9週目にかけて、デロードグループはモチベーションが低下して、通常グループはモチベーションは変わらず。
他には、ファンディング欄にRenaissance Periodizationの名前があります。日本でも人気の高いMike Israetelのチームですね。よく見たらMike Israetelは研究者欄にも名前がありました。他に有名な人だと、Brad J. Schoenfeldも関わっています。
ケーブルマシンを使っての上腕三頭筋のトレーニングで、オーバーヘッドでのトライセップスエクステンションと、プッシュダウンでのトライセップスエクステンションでは、どちらが筋肥大効果が高いかを、上腕三頭筋長頭、内側頭、外側頭それぞれについて調べた研究です。
上腕三頭筋は長頭、内側頭、外側頭で構成されます。長頭は、肘と肩関節にまたがる二関節筋です。内側頭と外側頭は、肘関節のみの単関節です。
この研究は、被験者の左右の腕をランダムに各グループに振り分けているので、筋肥大の個人差の影響がないです。例えば、被験者Aは、右腕をオーバーヘッドでトライセップスエクステンション、左腕をプッシュダウンといったように振り分けています。
期間は12週間、被験者21名(各グループが21本の腕)、筋肉量の測定はMRIで行っています。筋肥大研究としての研究の質が高く、結果の信頼性が高いです。
被験者は、14名の男性、7名の女性、平均年齢は20代前半、少なくとも過去1年間はトレーニング歴なし。
一般的な上腕三頭筋の筋トレ方法と少し違うのは、肩の外転を防ぐために手首を回外した状態(アームカールと同じ握り)でトライセップスエクステンションしていることです。
メタアナリシスで、頻度を上げると筋力も伸びやすくなるかを調べています。分析対象の研究の数は22で、そのうちトレーニング歴ありの被験者を対象とした研究は3つです。
Effect of Resistance Training Frequency on Gains in Muscular Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis
https://www.researchgate.net/publication/323348254_Effect_of_Resistance_Training_Frequency_on_Gains_in_Muscular_Strength_A_Systematic_Review_and_Meta-Analysis
レジスタンストレーニングによる筋力向上の要素には大きく以下の3つがあって、
<筋肥大>
筋肉が太くなった。
<神経系の適応>
神経-筋肉が強い力を出すのが上手くなった。
<スキル向上>
フォームが良くなった。複数の筋肉を協調させて強い力を発揮するのが上手くなった。
アームカールやレッグエクステンションといった単関節種目だと、スキル向上の影響は小さくて、筋肥大と神経系の適応がメインになります。
スクワットやベンチプレスといった複合関節種目だと、スキル向上の影響が大きくなってきます。
(1)Stimuli and sensors that initiate skeletal muscle hypertropHy following resistance exercise
https://journals.pHysiology.org/doi/full/10.1152/japplpHysiol.00685.2018?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org
レジスタンストレーニングによる筋肥大は、どのような刺激によってもたらされるのか、またそれらの刺激はどのようなセンサーによって感知されるのか。現状でわかっていること、わからないことをまとめた2019年の論文です。
以前調べた筋肥大のメカニズムから時間が経ったので、そのアップデートの意味もあります。
関連記事:筋肥大のメカニズム
内容がマニアックなので先に結論を書いておくと、実践面では「力学的な負荷」をかけることを最優先すればOKです。具体的には6-15レップ程度のセットをメインにトレーニングします。筋肥大の刺激の候補には、力学的な負荷以外に「ダメージ」と「代謝ストレス」もありますが、実践面では力学的な負荷を最優先するのが良いでしょう。
筋肉のダメージを増やすために、意図的に強い負荷をかけてエキセントリック動作をしたりするのはどれほど効果があるかはわからないですし、ダメージが大きくなりすぎると筋肥大にマイナスになる可能性があります。代謝ストレスを主目的としたトレーニング(高レップのセットや加圧トレーニング)は、力学的な負荷がメインのトレーニングにプラスしておこなうとさらに効果が高まるのか、それとも力学的な負荷が十分なら代謝ストレスを上乗せしても効果は高まらないのか、はっきりしていません(加圧トレーニングは力学的な負荷が不十分な状態で代謝ストレスを加えています)。
アップサイドリスクとダウンサイドリスクを考えると、ダメージを目的としたトレーニングはアップサイドが不明でダウンサイドリスクが大きいです。従って、ダメージを目的としたトレーニング、例えば高重量・高ボリュームのエキセントリック動作はあまりやらないほうが良いと思います。代謝ストレスを目的としたトレーニングは、アップサイドは不明ですがダウンサイドリスクは小さいと考えられるので、力学的な負荷を目的としたトレーニングに追加しておこなうのは問題ないと思います。
以下、マニア向けの内容。