6/28/2024

限界セット(RPE10)と非限界セット(RPE8-9)の筋肥大効果を比較した研究

Similar muscle hypertrophy following eight weeks of resistance training to momentary muscular failure or with repetitions-in-reserve in resistance-trained individuals
https://www.researchgate.net/publication/378436551_Similar_muscle_hypertrophy_following_eight_weeks_of_resistance_training_to_momentary_muscular_failure_or_with_repetitions-in-reserve_in_resistance-trained_individuals


トレーニング歴有りの被験者を対象として、限界まで追い込んだ場合と、限界の少し手前で止めた場合の筋肥大効果を調べた研究です。これまでの限界セットと非限界セットの効果を比較した研究は、ほとんどがトレーニング歴の無い被験者を対象としたもので、非限界セットの追い込み度も研究によってまちまちでした。

今回の研究は、現場経験が豊富な研究者が関わっていて、痒いところに手が届く実験デザインになっています。

・被験者のトレーニングレベルが高い。

・非限界セットの設定がRPE8-9(限界まで2レップ残しか1レップ残し)で実用的。

・レップレンジやインターバルの設定が実用的。

・トレーニングボリュームの設定を、被験者の普段のトレーニングボリュームを基準にしている(ボリュームの変化が筋肥大効果に影響を与えると思われるため。これに関連した研究はこちら→関連記事:トレーニングボリュームを被験者ごとに調整した研究 )

・被験者の片方の脚を限界セット、もう片方の脚を非限界セットにしている。筋肥大反応の個人差の影響が無い。

・筋肥大するように体重が増加する食事をさせている(トレーニングレベルの高い被験者だと体重増加無しでは筋肥大しにくい)。


<研究内容>
被験者:トレーニング歴有り(平均で7年半、週に4.8回のトレーニング頻度) 18-40歳(平均年齢は20代後半) 男性12名 女性6名 18名のうち9名がパワーリフティングかボディビルの競技歴有り

グループ分け:それぞれの被験者の片方の脚を限界まで、もう片方の脚を2-RIRか1-RIR(RPE8か9)まで

限界グループ
レッグプレス 8-10RM レッグエクステンション10-12RM

RIRグループ
レッグプレス 8-10レップ(2-RIR=RPE8) レッグエクステンション10-12レップ(1-RIR=RPE9)

トレーニングボリューム:それぞれの被験者の最近のトレーニング内容における大腿四頭筋の週間セット数を、レッグプレスとレッグエクステンションに均等に配分したセット数を前半の4週間は実施する。例えば大腿四頭筋のボリュームが合計10セットでトレーニングしていたら、実験ではレッグプレス5セットとレッグエクステンション5セットを実施。ただし、週15セット以上の人は、怪我リスク低減やトレーニング時間が長くなりすぎないようにするため、セット数を20%減らす。後半の4週間は全員セット数を20%増やす。

トレーニング頻度:週2回

インターバル:レッグプレス4分、レッグエクステンション2分、種目間5分

実験期間:事前測定1週間→トレーニング8週間→事後測定1週間

測定方法:大腿四頭筋(大腿直筋と外側広筋)の厚みを超音波測定

食事:実験期間10週間の間、1ヶ月で体重が1%増えるようにアプリの指示に従って栄養摂取



<結果>
経験豊富な被験者のため、RIRは誤差1レップ以内で非常に正確だった(指示通りの追い込み度でトレーニングを行えていたと思われる)。

体重は平均で3.6%増えた。

実施した総レップ数と、総ボリューム(セット数×レップ数×重量)は、両グループで同じくらいになった。限界グループは1セット目のレップ数が多いが、最終セットのレップ数が少なくなり、結局両グループとも同じくらいのトレーニングボリュームになった。



実施セット数は、レッグプレスとレッグエクステンションを合わせて10-17セットの範囲になった。平均セット数は書かれていないが、レップ数から判断すると前半4週間が11セット、後半4週間が13セットくらい。


筋肥大(大腿四頭筋の厚みの増加)は、両グループで同等だった。大腿直筋はわずかにRIRグループが優位、外側広筋はわずかに限界グループが優位。レッグプレス→レッグエクステンションの順でトレーニングを行ったため、限界グループはレッグプレスで強い刺激が入ったけど、レッグエクステンションはヘロヘロだったのかもしれない(レッグエクステンションのほうが大腿直筋が筋肥大しやすい)。こなせた総レップ数も、レッグプレスは限界グループのほうが多い傾向で、レッグエクステンションはRIRグループのほうが多い傾向だった。

大腿四頭筋の厚み(大腿直筋と外側広筋の平均)
限界グループ+6.96%
RIRグループ+6.98%

大腿直筋の厚み
限界グループ+5.98%
RIRグループ+7.38%

外側広筋の厚み
限界グループ+7.95%
RIRグループ+6.59%




コメント

トレーニング経験が豊富で、限界まで1レップか2レップ残しで正確に止められる人は、そこで止めても、限界までやった場合と筋肥大効果は同等だと思われます。回復力には個人差がありますし、セット数やインターバルの長さでもボリュームの稼ぎやすさが違ってくると思われるので、トータルボリュームを確保しやすいほうを選べばよいと思います。

トレーニング経験があまりない人は限界まで◯レップ残しが不正確になりやすいので、最大限の筋肥大を狙いたい場合は、限界までやったほうが良いでしょう(怪我リスクや精神的な辛さを無視すれば)

限界セットをどのような時に使えば良いかは、下の関連記事にも書いてあります。

関連記事:追い込み度の違いによる筋力向上と筋肥大効果への影響(2023年版)

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