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8/31/2024

電子書籍「図解デッドリフト」リリース!

デッドリフトについて、詳細に解説した本を書きました。

Amazonの販売サイト→図解デッドリフト Kindle版

デッドリフトへの愛を詰め込んだ結果、290ページくらいになりました。

今回は図を多く入れたかったので、固定レイアウトで作っています。ファイル一覧だとこんな感じです。


スマホで読むのを前提としているので、タブレットやパソコンだと図や字が大きく感じるかもしれません。

念入りにチェックはしましたが、表示が変になるなどの問題がありましたら、コメント欄で教えていただけると助かります。

内容は、以下のようになっています。

目次詳細(クリックで展開)
  第1章 デッドリフトとはなにか
   1-1 デッドリフトとは
   1-2 デッドリフトは難しいか
   1-3 実はそれほど難しくない
   1-4 基本はコンベンショナル
   1-5 床引きすべきか
   1-6 デッドリフトに関わる関節・部位
   1-7 動かすところ、動かさないところ
   1-8 デッドリフトで最も重要なこと
   1-9 スクワットとデッドリフトの違い
    1-9-1 SSCの有無
    1-9-2 動作イメージ
    1-9-3 使われる筋肉
    1-9-4 フォームは様々

  第2章 姿勢
   2-1 初心者のうちに身に着けたいこと
   2-2 背骨ニュートラルは非常に大事
   2-3 姿勢の個人差
   2-4 姿勢パターン
    2-4-1 良い姿勢
    2-4-2 猫背&反り腰
    2-4-3 背中全体が反り
    2-4-4 背中全体が曲がり
    2-4-5 スウェイバック
   2-5 姿勢パターンを積み木で例えると
   2-6 部位の分解
   2-7 首周り
    2-7-1 頚椎が曲がり(反りが失われてる)
    2-7-2 頚椎が過度に反り
   2-8 肩と胸周り
    2-8-1 胸椎が過度に曲がり(猫背)
    2-8-2 胸椎が反り
   2-9 腹と腰回り(腰椎)
    2-9-1 腰椎が曲がり
    2-9-2 腰椎が反り
   2-10 尻周り
    2-10-1 骨盤が前傾
    2-10-2 骨盤が後傾
   2-11 ニュートラルの姿勢の見つけかた
   2-12 イス軸法による脱力
   2-13 姿勢を少しずつ改善していく

  第3章 腹圧
   3-1 初心者のうちに身に着けたいこと
   3-2 腹圧とは
   3-3 呼吸と腹圧
   3-4 腹圧に関わる筋肉
   3-5 多裂筋と骨盤底筋群
   3-6 横隔膜
   3-7 腹横筋
   3-8 インナーまとめ
   3-9 インナーのコントロール
   3-10 アウターの筋肉
   3-12 体幹が固まる仕組みその1
   3-13 体幹が固まる仕組みその2
   3-14 腹圧の使い分け(強い負荷)
   3-15 腹圧の使い分け(弱い負荷)
   3-16 腹圧と姿勢
   3-17 腹圧をかけて体幹を固める練習
    3-17-1 All Fours Belly Lift
    3-17-2 90/90 Hip Lift
    3-17-3 腹圧を高める練習
    3-17-4 デッドバグ
    3-17-5 ベアクロール

  第4章 ヒップヒンジ
   4-1 初心者のうちに身に着けたいこと
   4-2 ヒップヒンジに必要なストレッチ
    4-2-1 尻のストレッチ
    4-2-2 ハムストリングスのストレッチ
    4-2-3 スパイダーストレッチ
    4-2-4 大腿直筋のケア
    4-2-5 ストレッチのタイミング
   4-3 ヒップヒンジの練習
    4-3-1 尻の筋肉に力を入れる練習
    4-3-2 背骨と股関節の動きを分離する
    4-3-3 ヒップヒンジの基本練習
    4-3-4 ヒップヒンジのコツ
    4-3-5 尻を突き出して腰を反らない
    4-3-6 イスやベンチを利用した練習
   4-4 ルーマニアンデッドリフトの練習
   4-5 徐々に重量を増やす

  第5章 デッドリフトの基本技術
   5-1 基本技術のチェックポイント
   5-2 バーを握る位置
   5-3 バーの握り方
   5-4 基本はダブルオーバーハンド
   5-5 素手で高重量
    5-5-1 オルタネイトグリップ
    5-5-2 フックグリップ
   5-6 バーに対して立つ位置
   5-7 足幅
   5-8 つま先の向き
   5-10 グリップの手幅
   5-11 背中の姿勢
   5-12 目線
   5-13 首
   5-14 足裏の重心位置
   5-15 バーの軌道
   5-16 肩甲骨の位置
   5-17 肩甲骨とバーの相対的な位置
   5-18 肩甲骨を固定する感覚を掴む
   5-19 肩関節(外旋か内旋か)
   5-20 バーの引き付け
   5-21 挙上開始時の尻の位置
   5-22 呼吸のタイミング

  第6章 5つのフェーズ
   6-1 フェーズ分解
   6-2 セットアップ
    6-2-1 荷物を持ち上げるイメージではない
    6-2-2 セットアップ前のスタンス決め小技
    6-2-3 息を吸い込む
    6-2-4 息を吸うタイミング
    6-2-5 息を吸うタイミング ①立っている時
    6-2-6 息を吸うタイミング ②バーを握って
    6-2-7 緩みを取る
    6-2-8 緩みの取り方
    6-2-9 緩みの取り方 ①トップダウン
    6-2-10 緩みの取り方 ②ボトムアップ
    6-2-11 広背筋を固める
    6-2-12 腹圧を大きく高める
   6-3 踏み込み
    6-3-1 踏み込みのやり方
    6-3-2 壁を作る
    6-3-3 大腿四頭筋の役割
    6-3-4 踏み込みの失敗例 ①ぶっこ抜き型
    6-3-5 踏み込みの失敗例 ②スクワット型
   6-4 上半身を起こす
    6-4-1 上半身の起こしで意識するポイント
    6-4-2 踏み込みと上半身の起こしの寄与
   6-5 ロックアウト
    6-5-1 ロケット打ち上げに例えると
    6-5-2 ロックアウトの失敗
   6-6 下ろし

  第7章 チューニング
   7-1 フォームのチューニング
   7-2 実質的な腕の長さを伸ばす
    7-2-1 腕を伸ばすメリットとデメリット
    7-2-2 僧帽筋上部の脱力
    7-2-3 肘と手首を伸ばす
    7-2-4 背中を反らない
    7-2-5 胸椎上部をニュートラルより丸める
    7-2-6 肩甲骨を外転する
    7-2-7 肩関節を内旋する
    7-2-8 バーを下に置いてくるイメージ
   7-3 セットアップ・踏み込みルーティーン
    7-3-1 尻を上げて勢いをつける
    7-3-2 テンションをかけながら尻を上げる
    7-3-3 一旦踏み込んで緩みを取る
    7-3-4 後ろに身体を投げ出す
    7-4-5 バーを握ってすぐに踏み込む
   7-4 骨格バランス別のフォーム
    7-4-1 骨格バランスの判断
    7-4-2 標準タイプ
    7-4-4 腕だけ短いタイプ
    7-4-5 脚と腕が短いタイプ
    7-4-6 高身長
   7-5 股関節の個人差
    7-5-1 股関節の外旋・内旋
    7-5-2 外旋・内旋適性の判定方法
    7-5-3 つま先の開きと膝の向きの調整
    7-5-4 スモウデッドリフトの向き・不向き
   7-6 トップ選手のフォームを見て学ぶ

  第8章 デッドリフトバリエーション
   8-1 スモウデッドリフト
    8-1-1 スモウのスタンス
    8-1-2 スモウとコンベンショナルの主な違い
    8-1-3 スモウの身体への負荷
   8-2 ルーマニアンデッドリフト(RDL)
   8-3 タッチアンドゴー
   8-4 ポーズドデッドリフト
   8-5 デフィシットデッドリフト
   8-6 スティフレッグデッドリフト
   8-7 ラックプル/ブロックプル
   8-8 テンポ/スローエキセントリック
   8-9 ワイドグリップ
   8-10 コンベンショナル⇔スモウ
   8-11 トラップバー(ヘックスバー)

  第9章 補助種目
   9-1 補助種目の分類
   9-2 グリップ
    9-2-1 特異的なグリップトレーニング
    9-2-2 握り込む動作のトレーニング
   9-3 膝の伸展
   9-4 股関節の伸展
    9-4-1 踏みこみの補助種目
     9-4-1-1 ボックススクワット
     9-4-1-2 ポーズド・ハイバースクワット
     9-4-1-3 トラップバーデッドリフト
     9-4-1-4 ブルガリアンスクワット
    9-4-2 上半身の起こしの補助種目
     9-4-2-1 RDL
     9-4-2-2 スティフレッグデッドリフト
     9-4-2-3 ダンベルBスタンスRDL
     9-4-2-4 加重バックエクステンション
     9-4-2-5 股関節主体のロウバースクワット
    9-4-3 尻のはめ込みの補助種目
     9-4-3-1 ヒップスラスト
   9-5 体幹を固める
    9-5-1 体幹前側の補助種目
     9-5-1-1 プランク
     9-5-1-2 デッドバグ
     9-5-1-3 ベアクロール
    9-5-2 体幹後ろ側の補助種目
   9-6 腕を引き付ける
    9-6-1 ヘソへ引く補助種目
     9-6-1-1 ベントオーバーロウ
     9-6-1-2 ペンドレイロウ
     9-6-1-3 シーテッドロウ(ナローグリップ)
     9-6-1-4 ワンハンドロウ
     9-6-1-5 懸垂・ラットプルダウン
    9-6-2 胸へ引く補助種目
     9-6-2-1チェストサポーテッドロウ
     9-6-2-2シーテッドロウ(ワイドグリップ)
     9-6-2-3 インバーテッドロウ
    9-6-3 頭上へ引く補助種目

  第10章 メニュー・プログラム
   10-1 用語説明
   10-2 デッドリフトの変数設定
   10-3 1レップのセット
   10-4 バリエーション種目の変数設定
   10-5 アイソレート種目の変数設定
   10-6 デッドリフト系トレーニングの頻度
   10-7 効かせる・効かせない
   10-8 スクワットとの兼ね合い(ボリューム)
   10-9 スクワットとの兼ね合い(疲労管理)
   10-10 スクワットと同じ日にやるかどうか
   10-11 メニュー例(熱心な初心者向け)
   10-12 メニュー例(中級者向け)
   10-13 プログラム例(中級者向け)
   10-14 骨格バランス別のトレーニング方針
    10-14-1 標準タイプ
    10-14-2 腕長・脚長タイプ
    10-14-3 腕だけ短いタイプ
    10-14-4 脚と腕が短いタイプ
    10-14-5 高身長

  第11章 トレーニングの継続
   11-1 継続は力なり
   11-2 食事と睡眠
   11-3 フォーム
   11-4 腰痛対策
    11-4-1 事故的な急性の腰痛
    11-4-2 慢性的な腰痛
    11-4-3 腰痛の予防方法
   11-5 ウォームアップ
   11-6 コンディションを整える
    11-6-1 背中の張りを取る
    11-6-2 背面全体をマッサージガンで緩める
    11-6-3 尻をほぐす
    11-6-4 広背筋を伸ばす
    11-6-5 背骨を動かす
    11-6-6  股関節のストレッチ
    11-6-7 股関節の外転・外旋を鍛える
    11-6-8 左右差の対策
   11-7 試行錯誤と身体感覚

  第12章 トレーニングアイテム
   12-1 靴
   12-2 トレーニングベルト
   12-3 リストストラップ・パワーグリップ
   12-4 スネガード

  付録
   選手名当てクイズの答え
   自著の紹介

9/22/2022

電子書籍「BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方」リリース!


スクワット、ベンチプレス、デッドリフトを中心としたトレーニングプログラムの組み方について書きました。BIG3のプログラムを説明したものだと、世界最高の出来栄えと言って良いでしょう(自画自賛)。


BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BG1VQ2SF

 

トレーニングプログラム関連の解説だと、推しの自作プログラムや販売プログラムを持つ人が書いていることが多いので、そのプログラム中心の考えになりがちなのですが、私は特に推しプログラムはないので、フラットな視点で書いています。


本書ではプログラムの考え方を中心に書いているのですが、中級者向けのオーソドックスな4種類のプログラム

・ブロック・ピリオダイゼーション
・リニア・ピリオダイゼーション
・レイヤー型プログラム
・DUP型プログラム

については、具体的なメニュー構成と変数設定を含んだサンプルプログラムを載せているので、そのまま使うことも出来ます。

元のブログ記事の時点でかなり練って書いたので、わりとそのまま使っているところも多いです。内容を修正したところもあります。全体のうち、8割がブログ記事がベースで、2割が加筆といった感じです。なのでまあ、ブログ記事を読めばある程度は事足ります・・・。

関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方1回目:3つのモデル

関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方2回目:実際のトレーニングプログラム

関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方3回目:トレーニング変数の調整

関連記事:BIG3を軸としたトレーニングプログラムの考え方4回目:PDCA



想定ターゲットは、初心者~中級者くらいの人で、BIG3を中心にトレーニングをしている人です。

スマホのKindleアプリで読みやすいように調整しているので、パソコンやタブレットで読むと図表がやや大きいかもしれません。


なにか質問があればコメント欄にお願いします!


参考までに目次を。

5/09/2017

疲労のメカニズム



Fatigue in Sport and Exercise
Shaun Phillips


疲労ってなんだろう?と最近考えていて、適当に探してみたら良い本が見つかった。運動による疲労について書かれていて、慢性的に身体がダルいなど病気の疲労は扱わない。2015年出版なのでかなり新し目の情報が得られる。著者はエディンバラ大学の講師。運動生理学を学ぶ大学生向けのテキストのようだ。

この本で取り上げられるのは、現時点でわかっている疲労の主なメカニズム。細かいものは他にもあるし、今後の研究でアップデートされていくだろう。

研究結果についての解釈で注意したいのは、生体外(in vitro)と生体内(in vivo)では挙動が異なる場合も多くあり、生体外でしか確認されていないメカニズムもあるので、疲労の原因だと断言するのが難しいものもある。そのため、~の可能性がある、~かもしれない といった表現が多い。

この記事では本の内容を簡単にまとめる。


★疲労(fatigue)とは何か
運動の継続による筋力の低下や、疲れているという感覚(主観的な苦しさや筋肉のバーン感など)を特徴とする現象。

しかし現時点でも、研究者の間では疲労についての明確な共通の定義が定まっていない。fatigueとexhaustion(力を使い果たすこと)の区別も曖昧。そのため研究結果の比較や解釈が難しくなっている。

例えば、運動を続けていると競技に必要なパフォーマンスの継続が難しくなること、最大の筋力を保てなくなること、徐々に出力が低下すること、など様々な疲労の定義がある。

実際に、スプリント、長距離走、チームスポーツ、ストレングス競技など運動の種類によって疲労は異なる。また疲労のメカニズムについては依然として解明されていないことが多くあるので、定義が明確に定まっていないほうが、探求の幅を狭めたり先入観を持って研究したりということが避けられるメリットもある。



★疲労の測定の難しさ
筋力の変化を測定したり、EMGで筋肉の活動を調べたり、筋肉の組織を採取したり、血液検査をしたり、TMSで脳の活動を調べたり、MRIで身体内部の活動を調べたりといった手段があるけど、疲労の一部分しかわからないし、運動している人間をリアルタイムで測定するのはとても難しい。



★神経-筋肉の伝達経路
前提知識として、脳から運動指令が出て、筋肉に到達し、筋肉が収縮するまでを簡単に書いておく。

まず、脳から筋肉まで・・・

脳→神経→脊髄→神経→筋肉

筋肉に電気信号が到達してから筋繊維が収縮するまで・・・

神経→(電気信号)→神経終末→アセチルコリン放出→Na+が筋細胞内に流入(脱分極)→T管が脱分極→リアノジン受容体が開孔→筋小胞体からCa2+が放出→Ca2+がトロポニンCに結合→アクチンとミオシンの滑走(筋繊維の収縮)

参考サイト:
神経のしくみと機能|動作のしくみから理解する(7)
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1989

骨格筋収縮のメカニズム(1)|骨格筋の機能
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2088

骨格筋収縮のメカニズム(2)|骨格筋の機能
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2089



★疲労の起こる場所の分類
大きく分けて、中枢系(central)と末梢系(peripheral)の疲労がある。
- 中枢系の疲労は、中枢神経系(脳と脊髄と運動神経)で起こる疲労(主に脳)
- 末梢系の疲労は、神経と筋肉の接合部分から先の部分で起こる疲労(主に筋肉)

中枢系の疲労と末梢系の疲労は、それぞれ独立しているわけではなく、相互作用をしていると考えられる。



以下、主な疲労のメカニズムである、エネルギーの枯渇、代謝性アシドーシス、脱水と体温上昇、カリウムとカルシウム、中枢系の疲労を順に見ていく。


★エネルギーの枯渇
・ATP

ATP + H2O ⇔ ADP + Pi + H+ + energy

ATPの貯蔵量:筋肉の最大出力を2秒間続けられるだけの量

ATPの補充ルート
- PCr(クレアチンリン酸)系
- 無酸素(解糖)系
- 有酸素系

強度の高い運動であっても筋肉内のATPレベルは60%以下には低下しない。ただ個別の筋繊維(特に速筋)を見ると20%程度の低いレベルまで低下することもあり、疲労の原因になっている可能性がある。

ATPレベルが身体組織にとって危機的な水準まで低下しないように身体活動にブレーキをかけるのが疲労の役割だという見方もある。


・PCr(クレアチンリン酸)

PCr + ADP + H+ ⇔ ATP + Cr

PCrの貯蔵量:筋肉の最大出力を10秒間続けられるだけの量

理想的な状況下ではPCrの貯蔵量は2-4分で回復する

- 6秒のスプリントでPCrの貯蔵レベルは35-55%に低下
- 20秒のスプリントでPCrの貯蔵レベルは27%に低下
- 30秒のスプリントでPCrの貯蔵レベルは20%に低下

5-30秒のスプリントではPCrレベルの低下が疲労の一因になっているようだ。ただ完全に枯渇はしていないので他にも疲労の要因があると考えられる。

PCrの回復の早さは全身持久力と相関する。高強度の運動を繰り返し行う場合、全身持久力を高めるトレーニングを行っておくと、回復が早まり高いパフォーマンスを維持することが出来るだろう。


・グリコーゲン
長時間の運動で筋グリコーゲンの貯蔵レベルが大きく低下した場合でも、筋肉内のATPレベルは保たれている。
ただ、筋繊維内のグリコーゲンの低下が局所的なATPレベルの低下を招き、筋小胞体からのCa2+の放出を阻害することで、筋繊維の収縮が抑制される可能性がある。

また長時間の運動で肝グリコーゲンが枯渇することにより低血糖になり、中枢系と末梢系の両方の疲労を引き起こす可能性があるが、これには個人差がかなりあるようだ。


・脂質
トリグリセリドの形で脂肪組織に大量と、筋肉内に少量貯蔵されている。トリグリセリドはグリセロールと脂肪酸に分解され、脂肪酸が筋肉に取り込まれ酸素を用いてATPを再合成する。

脂肪酸→アセチルCoA→(β酸化)→クレブス回路

脂質は大量にあるので疲労には直接には関わらないが、もし脂質を優先的に使用することでグリコーゲンの消費を抑えることが出来れば、疲労を遅らせることが出来る。実験では炭水化物の摂取を制限し空腹時の運動をすることで脂質を優先的に使用する適応が起きるが、再び炭水化物を摂取すると元に戻るので、グリコーゲンを蓄えた状態で脂質を優先的に使用してグリコーゲンを節約し疲労を遅らせることが出来るかは微妙なところ。

図. スプリントの際のATP再合成源エネルギーシステムの割合推移

図. 持久運動の際の主なエネルギー源の割合推移




★代謝性アシドーシス
・乳酸への誤解
グルコースの解糖ではピルビン酸塩が生成され、その過程でH+も生成される。高強度の運動ではクレブス回路によるピルビン酸塩の有酸素代謝が間に合わず、ピルビン酸塩が蓄積していく。ピルビン酸塩が蓄積されると解糖ペースが落ちて運動パフォーマンスが低下し、またH+が蓄積されると酸性度が高くなりすぎ体組織の機能に悪影響がでる。H+を処理しつつピルビン酸塩を乳酸塩に変換することでこれを防ぐ。

ピルビン酸塩 + NADH+ + H+ → 乳酸塩 + NAD+

このようにグルコースの解糖の結果、生成されるのは乳酸塩であって乳酸ではない。また乳酸塩はピルビン酸塩とH+を処理することで疲労を和らげる役割を果たしていて、乳酸が溜まるから疲れるわけではない。

乳酸塩は運動後1時間くらいで無くなるので筋肉痛の原因にはならない。またバーン感が乳酸塩によるものだというエビデンスはない。バーン感は、H+などの蓄積や、筋繊維の収縮によるメカニカルな刺激を神経が検知しているのかもしれない。


・H+によるアシドーシスの影響
1) Ca2+がトロポニンCへ結合する際にH+が競合することで筋収縮を弱くするかもしれないが、あってもわずかだと考えられ、むしろ酸性環境ではカルシウムポンプに結合するCa2+が減り、そのぶんトロポニンCに多くのCa2+が結合することが出来、筋収縮に好都合の可能性がある。

2) H+はクロスブリッジによる力の生成を妨げ、その結果筋力の低下を起こす可能性がある。また筋収縮の最大収縮速度を低下させる可能性もある。

3) 高強度の運動による血液内のH+の増加は、酸素と結合するヘモグロビンの割合を減らし、脳に運ばれる酸素量が少なくなることで、中枢系の疲労の原因になる可能性がある。



★脱水と体温上昇
脱水と体温上昇は、主に長時間の持久運動や屋外でのスポーツで問題になる。

・脱水
血液中から水分が減ることで、一拍ごとに心臓から送り出される血液の量が減り、心拍数を増やすことでこれを補う。また内蔵などコア部分への血液が優先され、皮膚へ回される血液量が減ることで、体表面からの放熱が妨げられ体温が上がり、これも疲労につながる。また筋肉への血流も少なくなり、グリコーゲンの消費量が増えることで疲労が早まる。

脱水になると運動の主観的な辛さが増す。

運動による脱水で体重が2%減るとパフォーマンスに悪影響が出るという研究結果があるが、これは他人に決められたペースで運動し続けた場合。自分でペースをコントロールできる状況では、この程度の脱水では悪影響は出ない。

そもそも運動による体重減少は、減少分がそのまま水分不足になるわけではない。例えばグリコーゲンは水と一緒に1:3の割合で貯蔵されているが、運動でグリコーゲンが消費されてそれにくっついていた水が発汗で失われたとしても、身体は水分不足の状況にはならない。

水分補給は、「喉が渇いたら適宜飲む」という戦略が最も効果的なようだ。体重減少分を無理して飲む必要は無い。飲み過ぎも飲まなすぎも極端なのは悪影響が出る。


・体温上昇
高温多湿の環境で体温上昇しやすい。

体温上昇により、脳の温度上昇、脳への血流減少、脳の活動低下、脳からの運動指令の低下が起こり、これらが疲労になっていると考えられる。

体表面の温度の上昇により、放熱のための皮膚への血流が増加することで、筋肉への血流が減少し疲労につながる。



★カリウムとカルシウム
・カリウム
運動神経から伝わってきた活動電位が筋肉の細胞膜に伝わりそれが筋全体に伝搬する仕組み
A:脱分極
ナトリウムチャネルが開き、Na+が細胞内に流入し、電位上昇。
B:再分極 
ナトリウムチャネルが閉じ、カリウムチャネルが開き、K+が流出し、電位が低下する。
C:過分極
カリウムチャネルが開き続け、電位が安静時よりも低下する。
D:安静時の電位
カリウムチャネルが閉じ、ナトリウム・カリウムポンプの働きにより安静時の電位に戻る。

理屈の上では、筋肉の活動が続いて細胞外へのK+の流出が続くと、細胞内のK+が少なくなり、脱分極による活動電位の上昇が小さくなり、筋小胞体からのCa+放出が少なくなり、筋肉の収縮が弱くなる。

ただ生体内ではこれをカバーするメカニズムが色々とあるようだ。動員する運動単位を切り替えて負荷分散したり、発火頻度を調整して活動電位を必要最小限に抑えて筋肉を収縮させたり、活動電位が多少低下してもCa2+の放出には十分だったり、ナトリウム・カリウムポンプが筋肉の活動中もNa+とK+のバランス調整を行いK+の蓄積を抑制したり、Cl-の存在がK+の蓄積や細胞内への流入を促進したり・・・といったメカニズムにより、K+の細胞外への蓄積は疲労の大きな原因ではないと現時点では考えられる。

一方で、細胞外のK+の蓄積は、求心性神経を刺激し、脳がそれを検知し、疲れているという感覚やバーン感を感じさせ、脳からの運動信号の弱まりをもたらす可能性がある。


・カルシウム
筋小胞体からCa2+が十分に放出され、それが再び取り込まれることは、筋肉の活動にとって非常に重要である。この働きが低下すると筋肉の出力が弱まる。

1) グリコーゲンレベルが低下すると、筋小胞体の機能が低下し、Ca2+の動きが妨げられ、筋肉の収縮が弱まる(疲労する)。

2) 無機リン酸塩(Pi)
PCrの分解やATPの加水分解でPiが生成される。
- Piが蓄積されると筋収縮が妨げられる。
- Piが蓄積されると、Ca2+に対する筋収縮の感受性が低下し、Ca2+の量が同じだった場合でも筋力が低下する。
- Piは筋小胞体からのCa2+放出チャネルを抑制し、また筋小胞体内でPiがCa2+と結合し蓄積することで、Ca2+の放出が低下し、筋力の低下(筋肉の疲労)を引き起こす可能性がある。

3) Mg2+の蓄積によりCa2+への感受性の低下や、筋小胞体からのCa2+の放出の減少が起こる。



★中枢系の疲労
・末梢系からのフィードバック
筋肉の収縮によるメカニカルな刺激や、代謝物の蓄積による化学的な刺激が求心性神経によって脳に伝えられ、そのことにより脳からの運動指令が抑制され、筋肉の活動が弱まる。

・脳内の神経伝達物質
セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが脳の疲労に関わっているようだ。ただ、前駆体や受容体ブロッカーの投与により高温での長時間の運動のみパフォーマンスが変化するなど、一定条件下で脳の疲労に影響を及ぼしているようだ。

・アンモニア
運動中の筋肉では、プリンヌクレオチドサイクルでの脱アミノ反応とBCAAの酸化によりアンモニアが生成される。アンモニアの疲労への影響は、長時間の運動による認知能力への悪影響に限られると考えられる。

・サイトカイン
運動中の筋肉からは、エネルギー枯渇(主にグリコーゲンレベルの低下)により、炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)の生成量が急増する。運動による筋肉へのダメージによっても、IL-6は作られるようだ。また同時にIL-1とTNF(腫瘍壊死因子)も生成される。これらの炎症性サイトカインは血液経由で中枢神経系に働きかけ眠気や発熱を促す効果がある。これらのサイトカインにより、運動による疲労感を感じるようだ。IL-6の投与により、疲労感の増大と運動パフォーマンスの低下が見られる。サイトカインは神経伝達物質の働きにも影響を与えるようだ。病気の時の慢性的な疲労感やダルさにもサイトカインは関わっている。

・意識下・無意識下でのペース配分
運動を完遂するのに必要なペース配分を、意識的に、もしくは無意識で調整して、その調整に疲労感が使われているという説。オーバーペースだと疲労を感じ、ペースが遅いと楽に感じる。生理学的な疲労現象が起きて脳が疲労を感じるだけではなく、ペース配分の調整のために脳が疲労を感じて、体力の使い方を調整する。持久運動で途中どんなに疲れていても、大抵はゴールが近づくと主観的に楽になるし、実際に身体も動くようになってラストスパートが出来る。

またもっと極端な状況、例えばATP、PCr、グリコーゲンといったエネルギーが完全に枯渇したり、代謝物が溜まりすぎたり、体温が上昇しすぎたりして、身体が危機的な状況になるのを防ぐため、疲労感を用いて身体活動にブレーキをかけているという考え方も出来る。



関連記事:
筋トレの疲労と回復方法

2/15/2017

ストレスについて-身体反応と管理方法-

ネタ元はこの本
   ↓
Why Zebras Don't Get Ulcers
https://www.amazon.com/Why-Zebras-Dont-Ulcers-Stress-Related-ebook/dp/B0037NX018/

エビデンスベースでストレスについて様々な面から書かれている。著者は研究者なので科学的思考でエビデンスを扱えていて内容の信頼性が高い(科学的思考でエビデンスを扱えないとエビデンスベースでも誤った主張をいくらでも行うことが出来る)。文章も機知に富んでいて面白い。Lyle McDonald と Greg Nuckols も推薦。

邦訳(「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」)は絶版かな。探してみたけど売っていない。


★ストレスへの身体の反応
生物のストレス反応は、短期的で肉体的なストレスに適応している。例えば、捕食者からダッシュで逃げる時は、身体に強いストレスがかかっている。

ストレス反応により身体は、栄養素の取り込みや身体組織の構築など今やる必要のないコストのかかる活動は抑制して、酸素を取り込み貯蔵してあるエネルギーを動員しそれを筋肉に送り込んで走って逃げることに集中する。捕食側ならエネルギーを動員して追いかける。同種間での資源(食べ物や繁殖相手など)を巡っての闘争も同様。ストレス反応は生物の生存に必要不可欠なもの。

激しい運動をするとアドレナリンやノルアドレナリンや成長ホルモンやコルチゾールの血中レベルが一時的に急上昇するのも、この不必要な活動の抑制とエネルギー動員が目的。貯蔵されているグリコーゲンや体脂肪が分解され、身体活動のエネルギー源として使われる。

捕食者から逃れ、食事をして休んでいる時はストレス反応が消えて、消化吸収や身体組織の構築が行われる。

精神的なストレスでも、基本的には同じストレス反応システムが活性化される。アドレナリンやノルアドレナリンやグルココルチコイド(コルチゾールなど)の血中レベルが上がり、心拍増加や血圧上昇などが起きる。精神的なストレスを感じると心臓がバクバクするのはこのため。

身体は短期間のストレス反応に適応している。現代の先進国では捕食活動や逃走や闘争などの必要性は滅多になく、また人間は脳みそが非常に発達しているため、現代社会では精神的なストレスを感じることが多くなっている。肉体的なストレスは通常は一時的なものだけど、精神的なストレスは容易に長期間続くことができる。精神的なストレスにより長期間このストレス反応システムを活性化すると、身体には色々と不具合が出てくる。具体的には胃潰瘍や心血管疾患など色々な病気になりやすくなったり、性欲が低下したり、記憶力に悪影響が出たり、子供だったら成長が阻害されたりする。


★ボディメイクへの適用
強いストレスがかかった状態が続くと、維持・増強に高いコストがかかる筋肉は減りやすくなり、食べ過ぎるとメタボにもなりやすい。また上述したような様々な悪影響があるので生活の質も低下する。

歳を取ると一般的には仕事や家庭での責任が増え、精神的なストレスも大きくなってくる。一方で加齢とともにストレスへの耐性が低下していく。ボディメイクに限らず、歳を取るほどストレス管理の重要性が高くなる。


★ストレスの管理
以下に挙げたストレス管理方法を、まずはいくつか試してみる。できれば毎日少しずつ続けると良い。

・環境を整える
1) ストレスのはけ口を持つこと。
趣味や運動などを行いストレスを解放する。はけ口を周囲の人間に向ける、つまりイライラしたら人にあたるのはストレス低減に効果的で、類人猿でも序列が下の相手をいじめて憂さ晴らしをするのが観察されるが、理性ある人間としては避けたい行為。

2) コントロールできる範囲を少しずつ広げること
状況をコントロールできないほどストレスは増大しやすい。

3) 予測可能性
ストレス要因となる出来事は予測可能な方が、心構えが出来てストレス低減の傾向がある。しかし、毎度のこと(例:通勤電車は混んでます)や非常に稀なこと(例:小さな隕石があなたの車を直撃します)が知らされても、ストレス低減効果はほとんどない。前者は毎度のことで避けられないし、後者はもともと普段から気にしてストレスを感じているわけではないので、予測可能になってもストレスは低下しない。あとストレス要因発生の直前に知っても心構えができず、ストレス低減にはならない。逆にずっと先のことがわかってもストレス低減にはならない。またあまりに悪い出来事(例:明日あなたは脚を切断されます)は、事前に知らされてもストレス低減にならない。

4) コミュニティへの参加や周囲のサポート
社会的なつながりを持つとストレスは低減しやすい。ただし親しみを感じる相手とつながること。合わない相手や見知らぬ他人の中に放り込まれてもストレスが増大するだけになる。それと困ってる人に必要とされ、サポートをする側になるのもストレスを低減させる。

5) 運動
継続的で自発的で適度な運動はストレス低減効果がある。特に軽めの有酸素運動が良い。嫌々やってもストレス低減にはならないので、自分が楽しく出来る運動を選ぶのが良い。

6) 睡眠
規則正しい生活リズムで良質の睡眠を取る。

7) 瞑想
瞑想中は血圧低下などの良い効果が見られるが、それが日々の生活で継続するのかは不明。実験デザインが良くない研究が多いのではっきりとはわからない。自分に合っていると感じるなら続けると良い。

8) 自主性
小さなことで良いので、能動的に行動し責任を持って自分で決定する機会を増やすと良い。

・自分の考え方
1) 物事の良い面を見ること
ポジティブに捉える。物事は今後良くなっていくと考える。ただし結果が悪くなることも心の隅で想定しておくこと。ひたすら楽観しているとその間はストレスは軽いけど、実際に悪い結果が出たら大きなストレスを感じてしまう。

2) その状況が世界の全てだと思わないこと
世の中には色々な選択肢がある。他の道を選ぶ可能性を塗りつぶしていくと、追い詰められてしまう。

3) コントロール可能だと思うこと
受け身にならず発生した問題は自分でコントロールでき、解決できると思うとストレスを低減しやすい。ただし致命的な病気や交通事故など非常に悪い出来事については、コントロール可能だと思わない方が良い。自分がああすれば防げたのに・・・もっと頑張れば良かった・・・とさらにストレスを感じてしまう。

4) ストレス要因を変えるか、自分の受け止め方を変えるか
ロジカルなアプローチで結果を良く出来ることは、変えようとした方が良い。変えようもない大きなこと、すでに起こってしまった悪いことは、自分の受け止め方を変えるしかない。そして状況が変更可能なものかどうか見分ける。変えられない大きすぎるものに挑み続けると潰れてしまう。また良い出来事は自分の手柄、悪い出来事は何か外部要因のせいで一時的なものだと考えるのもストレス低減になる(でもこれをやると成長できないような・・・どこかの政治家がこんな態度だけど)。

11/27/2016

[書籍] 姿勢の教科書

姿勢の教科書
竹井仁 著

最近、姿勢矯正に興味があるので読んでみた。姿勢に関わる骨格と筋肉のメカニズムを基本から学べる。また、よくあるアンバランスのケースが解説され、修正のためのエクササイズ例も載っている。

この本で扱われているアンバランスの主な例は、
- 腰椎の反り、フラット化
- 胸椎の過度な後彎(猫背)
- 脊柱側弯症
- 骨盤の前傾・後傾
- 骨盤の高さの左右差
- 寛骨の前傾・後傾(骨盤の捻じれ)
- 肩甲骨のアラインメント異常(いかり肩、なで肩、翼状肩甲)
- 膝関節の内反・外反
- 扁平足
- ストレートネック

施術者が読むことを想定しているのか、用語が専門的でとっつきにくいけど、図も豊富なので理解はしやすいと思う。姿勢の矯正、バランスの取れた身体に興味のある人にはとてもお薦めの本。

筋力のアンバランスやアラインメントのズレがあると、運動により怪我をしたり関節の痛みなどが出やすくなる。ウェイトトレーニングだと肩や腰や股関節や膝を痛めることが多い。ランニングだと膝が多いかな。

筋力のアンバランスがあると記録も伸びにくいし、姿勢が悪化して見た目も悪くなる。怪我をしやすくなるのでトレーニングが継続的に行えなくなって、身体面でもメンタル面でも停滞してしまう。

アンバランスがあるままトレーニングを続けると、強い筋肉ばかりつかって弱い筋肉は放置されるので、アンバランスがさらに拡大していく。自分の身体のバランスに何か問題があると思った場合は、早めに修正した方が良いと思う。


関連記事:
バランスの取れたトレーニング種目の選択-メカニズム編-

バランスの取れたトレーニング種目の選択-エクササイズ編-

骨盤の前傾の矯正

膝の健康のために

肩の健康のために

懸垂のやり過ぎによる怪我リスク(肘と肩)

7/23/2016

筋肥大トレの変数調整

Brad Schoenfeld の新著から(ハードカバー/PDF版)。筋肥大を目的としたトレーニングにおいて、ボリュームや頻度や負荷といった変数をどのように調整するのが良いか。

この本は筋肥大について詳しく知りたい人には非常にお薦めです。Pratical Applications と Key Point と Take-Home Points の欄に結論が簡潔にまとまっているので、そこだけ読んでも参考になると思う。

Lyle McDonald もレビューでexcellentと言っている。


★ボリューム
基本的にはボリュームが多いほうが筋肥大効果は高い。ただしやり過ぎるとオーバートレーニングになり効果が低下する。ボリュームと筋肥大効果の関係は逆U字を描く。

オーバートレーニングを防ぐために、ボリュームを徐々に増やしていき、定期的にボリュームを減らす期間を入れるピリオダイゼーションでトレーニングを行うと良い。

トレーニング経験があまり無い人は、一回のトレーニングセッションで各部位を計40-70レップ(例えば4セット×10レップで計40レップ)。上級者はその倍くらいまでやる必要があるかもしれない。筋肉量が多くなるほど、さらに筋肉量を増やすためには多くのボリュームが必要になる。


★頻度
各部位を週に2-3回トレーニングするのが良いだろう。分割してトレーニングすることでセッション当たりの各部位のボリュームを増やすことが出来る。


★負荷
負荷の強さをレップレンジで3つに分けると、
高負荷・低レップ: 1-5RM
中負荷・中レップ: 6-12RM
低負荷・高レップ: 15RM以上

どのレップレンジでも十分なボリュームのトレーニングを行えば、ほぼ同等の筋肥大効果が得られる。

高負荷・低レップはほぼATP-CP系の運動になるので、その筋肥大効果はメカニカルテンションによるものになる。高負荷・低レップを筋肥大目的で行うとなると、各種目3レップ×10セットとかをやることになり、トレーニング時間が長い、怪我のリスクが高い、疲労感が強いといったデメリットがある。ただ神経系を適応させ高重量を扱えるようにしておくと、中負荷・中レップでも扱える重量が伸び、より質の高いトレーニングを行うことが出来る。ある程度は高負荷・低レップもやっておくと良いだろう。

低負荷・高レップは解糖系の寄与が高くなり、その筋肥大効果は主に代謝ストレスによるものになる。メカニカルテンションはそれほど与えられない。低負荷・高レップのトレーニングを行うことで遅筋の発達が狙え、また代謝物質への耐性を上げることで中負荷・中レップのトレーニングでより多くのレップをこなすことができるようになる。従ってこのレップレンジでもある程度のトレーニングを行ったほうが良いだろう。

中負荷・中レップは、メカニカルテンションと代謝ストレスの両方を筋肉にバランス良く与えることが出来る。時間が長くならない、怪我のリスクが低い、高負荷のような疲労感もなく低負荷のような追い込みのキツさもない、といったメリットがある。筋肥大目的ではこのレップレンジを中心にトレーニングを行うのが良いだろう。


★種目の選択
神経系が適応し各モーターユニットが協調動作をするようになり十分な負荷を筋肉に与えることが出来るようになってから、本格的な筋肥大が始まる。従って、初心者はまずは少ない種目を繰り返し練習し、安全に効率よく筋肉に負荷をかけられるフォームを身につける必要がある。フリーウェイトのフォームが難しい場合は、まずはマシンでトレーニングを行い、後でフリーウェイトに移行するのも良い。

各種目のフォームを身につけたら、多角的に色々な種目で、マシンもフリーウェイトも単関節も複合関節も行いながら、全身の筋肉を包括的に鍛える(ボディビル目的の場合)。


★コンセントリックとエキセントリック
コンセントリックとエキセントリックは筋肥大のシグナルの経路が異なり、筋繊維の適応の仕方にも違いが見られる。従ってコンセントリックとエキセントリックの両方をトレーニングに組み入れた方が良いだろう(重りをコントロールしながら普通に挙げて下ろせばOK)。アイソメトリックも加える必要があるかは現状の研究からはわからない。


★セット間インターバル
短いインターバルと長いインターバルの筋肥大への効果を比較した研究では、長いインターバルの方が筋肥大効果が大きいという結果が得られている。これは長いインターバルの方がセット間に回復でき、トータルのトレーニングボリュームが大きくなったからだと思われる。コンパウンド種目は少なくとも2分はインターバルをとったほうが良いだろう。

代謝ストレスを与えるには60-90秒程度の短いインターバルの方が良いと考えられる。また短いインターバルのトレーニングを続けていると適応が起こり、短いインターバルでもボリュームを維持できるようになる可能性があるので、短いインターバルのトレーニングを部分的に組み込むのも良いだろう。


★挙上テンポ
現状のエビデンスでは、下ろしてから挙げるまでの時間が0.5-6秒の間なら筋肥大への効果はほとんど違いが無い。10秒を越えるゆっくりとした動作になると筋肥大効果は低下する。


★種目の実施順序
一般的に大筋群からトレーニングを行うべきと言われているが、小筋群を先に行った場合に比べて優れた筋肥大効果を得られるとは研究では示されてはいない。

トレーニングを最初に行った部位がより筋肥大効果を得やすいので、特に鍛えたい部位や発達が遅れている部位を最初にトレーニングすると良いだろう。


★動作範囲(フルレンジかパーシャルか)
アームカールやニーエクステンションといった単関節の動作であっても、関節の角度によって負荷が強くかかる筋肉の部分が異なってくる。フルレンジで動作を行った方がより広範囲の筋肉に負荷をかけ高い筋肥大効果を得られるだろう。

また筋肉が引き伸ばされた状態での負荷は筋肥大効果が高い。これもフルレンジで高い筋肥大効果を得られる要因になる。パーシャルを組み込むなら筋肉が引き伸ばされるレンジで行うと良いだろう(ストレッチ度が強いレンジでは低負荷でやるのが安全。例えばダンベルフライ)。


★セット毎の追い込み度(限界までやるべきか)
85% 1RMといった高い強度のトレーニングでは、限界の1レップか2レップ手前で止めても高い筋肥大効果を得られるようだ。高負荷ではセットの序盤からモーターユニットがフル動員され、筋繊維に強いメカニカルテンションがかかる。

低負荷・高レップでは限界近くまでやった方が良いだろう。低負荷では限界に近づくにつれてモーターユニットの動員率が高まり、代謝ストレスも強くなる。

高負荷・低レップと中負荷・中レップも限界までやった方が筋肥大効果はいくらかは高いだろうけど、常に全セットを限界までやり続けるとオーバートレーニングのリスクが高まる。(コストに見合った利益を得られない)

限界までやるのは、セットや期間を限定して行うのが良いだろう。例えば、最初の期間は全セットを限界の1レップか2レップ手前で止める、次の期間は最後のセットだけ限界まで行う、そして次の短い期間に大部分のセットを限界まで行う。


関連記事:
筋肥大のメカニズム

下のSchoenfeldのタグにいくつか関連記事あり。

3/23/2016

[書籍] The Muscle and Strength Pyramid(肉体改造のピラミッド)

 


・The Muscle and Strength Nutrition Pyramid
・The Muscle and Strength Training Pyramid


購入はこちらから。栄養とトレーニングについてそれぞれ一冊ずつ。
http://muscleandstrengthpyramids.com/


エビデンスベースでトレーニングと栄養について総合的に書かれていて、優先順位と重み付けも明確にしている。素晴らしい本だと思う。

Lyle McDonaldも推薦(Muscle and Strength Pyramids by Eric Helms – Book Review)。Alan Aragonは序文を書いている。

ピラミッドは、優先順位と重み付けを表している。1が土台となる要素で、より優先順位が高く、より重みも増す。ピラミッドの上の方は、高いレベルを目指すアスリートがさらに上積みするために使うもので、初級者やレクリエーションでトレーニングを行う人にとっては重要度は低い。

栄養
1.エネルギーバランス
2.マクロ栄養素と繊維質
3.ミクロ栄養素と水分補給
4.栄養摂取タイミングと頻度
5.サプリメント

トレーニング
1.継続(Adherence)
2.ボリューム、強度、頻度
3.進歩のペース・プログラムの組み方
3.エクササイズ種目の選択
4.休憩時間
5.挙上テンポ

アスリートでなくても、何が重要ではないか知るのは、リターンの小さいことにリソースを使わないようにするという点で役に立つ。リソース(時間、労力、お金など)は限られているから、リターンの大きい土台に使うと効率良く結果を出せる。フィットネス雑誌の記事にあるようなサプリメントや○○セット法トレーニングなどの些末なことに労力を使ってしまうと、空回りしてしまい効果が出ない。

想定読者は、週4-6回ゴールドジムのようなフリーウェイトを扱えるジムに通い、本気で身体作りを行う、またボディビルのコンテスト出場やパワーリフティングの大会出場を目指すような人。現時点でのレベルは初級者でも良いが、ガッツリやる気のある人向け。あとフォームが身についていて、筋肉にしっかりと負荷をかけられることが前提。ただ、週2-3回のジム通いでそこそこ良い身体になりたいという人にとっても十分に役に立つ内容だと思う。

筋トレやダイエットについてネット検索するとトレーニング面も栄養面も変な記事ばかり出てくるし、メディアなんかも無駄に労力とお金がかかる方法が宣伝されてたりするし、この本ほどコア層向けじゃなくて良いから、ライト層向けのまともで安価な日本語本があれば良いのになと思う。


※2021年9月追記

最近、このページのアクセスがあるので、どうしたのかなと思ったら翻訳本が発売されたようですね。

現時点の評価を追記しておきます。

今読んでも良い内容だと思いますが、2016年時点でこの本がエポックメイキングだったのは、

・エビデンスベースで書かれている。
・トレーニングと栄養に関して広範囲のトピックがまとまっている。
・優先順位がピラミッド型でわかりやすく書かれている。

ことでした。これを1冊(形は2冊ですが)で実現した本はそれまで存在しませんでした。

2021年時点だと、エビデンスについては新たな研究が出てきているトピックもあり、広範囲をカバーする本は他にも出てきています。したがって、本の内容は今見ても良いものだと思いますが、価格もそれなりにしますし、今は他にも選択肢があります。出版元のアスリートボディさんの記事を見ると、内容はエビデンスに合わせてアップデートされていないと思います。

飢餓モード対策:チートデイ vs. リフィード
「これまでにリフィードの効果に特化した研究は行われていませんが、減量中にカロリー消費量が落ちてしまうのを和らげるという狙いはダイエット休みと共通しています。」

→2020年にリフィードの研究が出ています。

関連記事:リフィードの研究

それと、私は海外の文献漁りをLyle McDonaldから入ったので、彼の書いているものを基準にしてしまうのですが、「The Muscle and Strength Pyramid 」は栄養分野についてはそれほど強くないという印象です(トレーニング分野は強いと思います)。ただ、Lyle McDonaldは栄養方面最強で個人的にはとても尊敬していますが、著書は文章が長くて読みづらく、1冊あたりのカバー範囲が狭い(そのぶん異常に深い)ので、マニア以外におすすめするのは気が引けます。


自分の本を宣伝するための長い前フリみたいになってしまいましたが・・・2016年に書いた「この本ほどコア層向けじゃなくて良いから、ライト層向けのまともで安価な日本語本があれば良いのにな」という思いは、2020年に自分で本を書くことで実現しました。目次のところを見てもらえばわかりますが、栄養の項目については「The Muscle and Strength Pyramid 」よりもカバー範囲が広く詳しい内容にしています。リフィードやリーンゲインズの最新研究の結果も踏まえて書いています。

電子書籍「ボディメイクガイド」リリース!

10/22/2014

[書籍] The Ketogenic Diet

Lyle McDonald の The Ketogenic Diet を読んでのメモ。自分用のメモなのであまりわかりやすいようには書いてないです。

糖質制限ダイエットに興味がある人には参考になる情報が多くあると思います。出版1998年なので一部outdatedな情報もあるかも。本の後半は運動生理学の教科書的な内容なので割愛して、前半部分だけメモしてます。

Lyle McDonald の本は amazon.comでも買えますが、Lyle McDonald のサイトから買った方が安いです。購入を考えている人には、amazonのレビューが参考になるかも。



★基礎知識
人間の身体のエネルギー源:グルコース、タンパク質、遊離脂肪酸、ケトン
どのエネルギー源を使うかは、炭水化物の可用性(ホルモンレベルに影響)、肝グリコーゲンの状態、ある種の酵素のレベル、次第。

エネルギーの身体内の貯蔵量は、脂質>>タンパク質>炭水化物

一般的に、身体の組織は血液中濃度の比率に沿ったエネルギー源を使う。例えば血中のグルコースが増えれば、それを優先的に使う。逆に炭水化物の可用性を低下させることで、脂質を優先的に使うようにできる。

炭水化物が不足すると、タンパク質が糖新生で使われる。炭水化物を多く取れば糖新生は起こりにくくなるけど、同様に脂質もエネルギー源になりにくくなる。

炭水化物不足の状態の初期は糖新生が起こりやすいので、身体のタンパク質が分解されないようタンパク質の摂取量を増やす必要がある。身体がケトーシスに適応すると脂質とケトンでエネルギーを賄うようになり、タンパク質が分解されにくくなる。

ほとんどの身体組織は遊離脂肪酸をエネルギー源に出来るが、脳、赤血球、腎髄質、骨髄、TypeⅡ骨格筋は遊離脂肪酸を使えない。

ケトーシス適応後は、脳は消費エネルギーの75%までをケトンでまかなうことが出来る。残りはグルコース。

ほとんどの身体組織はケトンをエネルギーとして利用できる。例外は肝臓で遊離脂肪酸を利用。

ケトーシスの三日目にはタンパク質以外のエネルギー源は全て遊離脂肪酸とケトンになる。ケトーシスが進むにつれて、脳以外の組織はケトンを利用しなくなっていき、3週間後以降は遊離脂肪酸を主にエネルギー源とするようになる。ケトンを脳に使わせるため。

身体組織による遊離脂肪酸の利用が高まるとケトンも増えて利用されるようになる。

遊離脂肪酸をエネルギー源として利用できるようになれば、それだけグルコースの必要量も減少する。


★エネルギー利用に影響を与えるファクター
・摂取栄養素の質: グルコースを多く摂取するとグルコースの利用が増える(少ないと減る)。タンパク質の摂取を増やすとある程度はタンパク質の酸化が増える(少ないと減る)。脂質は摂取量を増やしてもエネルギー源としての利用割合が顕著に増えるわけではない。炭水化物とアルコールの摂取が増えると、脂質のエネルギー利用は低下する。筋グリコーゲンのレベルが筋肉での脂質の利用を調整する。運動か炭水化物制限により、筋グリコーゲンと肝グリコーゲンのレベルを低くすると、脂質の利用が増える。

・ホルモンレベル: インスリンは貯蔵ホルモンで、血中のグルコースは筋肉か肝臓に貯蔵され、脂質の合成・貯蔵も刺激される。脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出は、わずかなインスリンでも抑制される。インスリンの主な役割は血糖レベルを一定のレンジに保つこと。炭水化物の摂取でインスリンレベルは大きく上昇するが、タンパク質の摂取でも上昇する(一部のアミノ酸がグルコースに転換されるため)。遊離脂肪酸もわずかにインスリンレベルを上昇させる。血糖値が下がるとインスリンレベルも低下し、グルカゴンなどの他のホルモンレベルが上昇し、貯蔵されたエネルギーが血中に放出される。脂肪細胞から遊離脂肪酸とグリセロールが、筋肉などのタンパク質組織からアミノ酸が、肝グリコーゲンからグルコースが放出される。グルカゴンはインスリンの逆の役割で、通常レベルでは肝グリコーゲンの分解を促進、炭水化物制限や運動によりインスリンレベルが非常に低くなると、筋グリコーゲンや脂肪細胞内の脂質の分解放出も。肝臓でのケトン体の生成にも関わる。絶対レベルよりも、インスリンとグルカゴンの比率が重要。他のホルモンは、GH、IGF-1、甲状腺ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、カテコールアミン。

・肝グリコーゲン: 肝グリコーゲンのレベルは、身体全体の栄養貯蔵or分解の傾向を決定する主要因。

・酵素のレベル: 摂取する栄養とホルモンレベルによって決まる。

以上まとめると、炭水化物の摂取が多いと炭水化物がエネルギーとして利用され貯蔵され脂質はあまり使われない。炭水化物の摂取が少ないとその逆。


★ケトン生成
インスリンレベルが高いと脂肪分解が抑制される。
カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)は脂肪分解を促進。グルカゴンや成長ホルモンやコルチゾールも脂肪分解効果があるが効果は小さい。まれなケースではなるが、インスリンレベルが高いと、カテコールアミンレベルが高くても脂肪分解は抑制される。普通は運動といったカテコールアミンの分泌を促す刺激は、同時にインスリンレベルを低下させる。

脂肪細胞のトリグリセリドが分解されると、グリセロールと遊離脂肪酸になる。遊離脂肪酸は血液中を流れていき身体の組織でエネルギーとして利用される。大量の遊離脂肪酸があって、肝臓が準備ができていると、ケトン体に変換され、それが血液に放出される。

ケトンは通常でも微量作られて身体で利用されている。肝グリコーゲンが枯渇すると肝臓はケトジェニックモードになりケトン体をどんどん生成するようになる。この状態では遊離脂肪酸のアベイラビリティがケトン生成レートを決定する。カーボカットしてから12-16時間程度で肝グリコーゲンは枯渇する。カーボカットしてから三日後に肝臓はケトン・フル生産体制になる。


★ケトーシスとケトアシドーシス
ケトーシスとは、グルコースベースの代謝から脂質ベースの代謝に完全移行すること。絶食や高脂質食や運動直後に起きる。タイプⅠ糖尿病やアルコール依存症でのケトアシドーシスは命に関わる。通常のケトーシスとケトアシドーシスの主な違いは血中のケトン濃度。絶食や低炭水化物高脂質食では身体システムにフィードバックループが存在するので危険なレベルまではいかない。
血中のケトン濃度が0.2 mmol/dlを超えるとケトーシス
血中のケトン濃度が7 mmol/dlを超えるとケトアシドーシス
ケトニミア(血中のケトン濃度が高まっていく)
ケトヌリア(尿中のケトン濃度が高まっていく)


★ケトーシスへの適応
ケトーシスは、絶食(飢餓状態)の研究で色々と調べられている。ケトジェニックダイエットは、身体の適応の面では飢餓状態と大まかに同じである。タンパク質と脂質の摂取により、飢餓状態で失われる分のタンパク質と脂質の減少が抑えられる。

飢餓への適応(5段階)
1. 絶食開始後8時間は最後の食事の消化吸収。10時間以内に身体のエネルギー消費の半分が遊離脂肪酸から。
2. 1,2日で遊離脂肪酸と肝グリコーゲンの分解に頼るようになる。12-16時間で肝グリコーゲンは枯渇する。
3. 最初の1週間は、身体はタンパク質や乳酸塩などからのグルコース生成を増やす。脳以外の組織はグルコースの使用量を減らし遊離脂肪酸とケトンの使用を増やす。
4. 3,4日後からケトーシスが始まり、脳はケトンを利用するようになる。
5. 2週目から糖新生が減る。3週間でケトン濃度はプラトーに達する。

絶食後三日目までにエネルギー消費の90%が遊離脂肪酸とケトンで賄われる。3週間後には93%。
3週間後以降は脳以外のほとんどの組織はケトンを使わず遊離脂肪酸をエネルギーとして使うようになる。脳にケトンを回すため。脳は絶食開始直後はケトン利用に適応していないが、じきに適応する。

脳と中枢神経は一日に約100gのグルコースを使うが、飢餓に適応すると、エネルギー消費の75%までをケトンで賄うようになる。残りはグルコースで。

絶食時(炭水化物ゼロ)だと12-16時間で肝グリコーゲンが枯渇。肝臓は糖新生により、グリセロール、乳酸塩、ピルビン酸塩、アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)からグルコースを生成する。絶食が続くと腎臓もグルコースを生成するようになる。グリセロールは脂肪細胞のトリグリセリドを分解して得られる。乳酸塩とピルビン酸塩はグリコーゲンとグルコースを分解して得られる。アミノ酸は筋肉から。アラニンは肝臓で糖新生、グルタミン酸は腎臓で糖新生。


★タンパク質の分解
絶食1週間は尿に一日に12gの窒素、75gのタンパク質が75gのグルコースを作るのに使用されたことを示す。1週間を過ぎるとタンパク質の分解は抑制されてくる。3週間後には3-4gの窒素損失、約20gのタンパク質。

トリグリセリドの質量の約1割がグルコースに(グリセロールを糖新生)。150ポンドの人だと一日におおよそ160-180gの脂肪を分解、そこから16-18gのグルコースを生成。

ケトジェニックに脳が適応するまでは1日100gのグルコースが必要。最初の1週間は、タンパク質由来と脂肪由来で合わせて約100gのグルコースを生成。

3週間で脳がケトン利用に対応し最大75%のエネルギーをケトンで賄う、残りを脂肪由来とタンパク質由来のグルコースで賄う。従ってタンパク質の分解が抑制される。


★ケトーシスとタンパク質消費節約
ケトーシスがタンパク質の消費を抑える4つのメカニズム
- 身体のグルコース必要量を低下させる
- 腎臓での窒素排出を減少させる
- ケトン自体がアンチカタボリックの効果の可能性
- 甲状腺ホルモンT3のレベルが急低下することでタンパク質分解が抑制される。


★甲状腺ホルモンの変化と甲状腺機能について
甲状腺機能に関する以下の2つの症状は区別される必要がある。
・甲状腺機能低下症(hypothyroidism):通常より高いレベルのTSHと、低いレベルのT3、T4。症状は倦怠感と代謝低下。
・甲状腺機能正常性ストレス症候群(euthyroid stress syndrome):T3レベルの低下と、通常レベルのT4、TSH。ケトジェニックダイエットで見られる症状。甲状腺機能低下症で見られる代謝撹乱とは異なる。ここでのT3レベルの低下はケトジェニックダイエットで見られる代謝低下とリンクしていない。他の要因で代謝低下が起きる。(ここでは書かれてないけどレプチンかな)。


★各栄養素のケトジェニックダイエットへの影響
- 炭水化物は100%ケトジェニック阻害効果。1日あたり100g以下の炭水化物だとケトジェニックダイエットになる
- タンパク質は摂取し過ぎるとグルコース転換によりケトジェニックダイエットを阻害。一方でタンパク質はグルカゴンの分泌効果がありケトジェニックダイエットを促進。それと身体のタンパク質分解を防ぐ効果。
- 脂質は利用されたトリグリセリドの10%分がグルコース転換されるので、部分的にケトジェニック阻害効果。


★protein sparing modified fast (PSMF)
除脂肪体重1kgあたり1.5gのタンパク質とビタミンミネラルのみ摂取。かなり過激で身体へのリスクも高いので、病的な肥満の人向け。


★ケトジェニックダイエットと、カーボを取るバランス型ダイエットの体組成変化への影響
- ケトジェニックダイエットは水分が抜けやすい。
- 水分が抜けたあとの体重減少は両方のダイエットで同じ程度だろう
- 体組成(除脂肪体重と体脂肪)の変化への影響についての研究は、結果がまちまち。タンパク質摂取量が不十分だったり、カロリー摂取が低すぎたりで、現実のダイエットでどうなるのかよくわからない。カーボ摂取量が減るにつれて脂肪減・除脂肪体重維持の傾向がでる研究もあるが・・・。個人差もあるしケトジェニックダイエットが有利とははっきりとは言い切れない。研究では運動もしてないし。

ダイエットの種類によって体脂肪の変化や食欲への影響に個人差があるので、自分に向いているのをやればいいだろう。消費カロリー>摂取カロリーにすることが大原則。


★ケトジェニックダイエットの諸々の影響
・幼児のてんかん患者の治療としてのケトジェニックダイエットはよく研究されてる。最大3年間。副作用は、血中脂質の上昇、便秘、水溶性ビタミンの欠乏、腎結石リスクの増加、成長抑制、病気時の酸血症。この本で提案されているケトジェニックダイエットのやり方とは同一ではないので、そのまま当てはめることはできない。ただ、この本で提案されているやり方を長期間続けた場合の影響についてはまったくわかっていないので、ずっと続けることは推奨されない。

・インスリン抵抗性
- ケトジェニックが続いたあとカーボを入れるとインスリン抵抗性が増す傾向。酵素の働きが変化することが要因で、数時間から数日で身体は再びカーボのある状況に適応する。カーボの入れ始めは肝臓が適応しておらず血中にグルコースをリリースし筋グリコーゲンが補充される傾向。

・食欲抑制
- ケトジェニックダイエットは食欲が抑制される傾向。

・コレストロールレベル
- 体重減少だとコレストロールレベルが低下する傾向。体重維持だと上昇する傾向。動脈硬化には長期間のコレストロールレベルの上昇が必要なので、ケトジェニックダイエットで一時的にコレストロールレベルが上昇してもすぐさま動脈硬化になることはないだろうけど、念のためコレストロール測定しておいて、悪い反応が出たら対処する。

・エネルギーレベルの低下
- だるさや立ちくらみが起こる。ナトリウムを十分に摂取(4-5g/day).どうしても合わない場合は少量カーボ摂取か中止

・脳への影響
- てんかん患者の研究では認知能力の低下は見られない。開始数週間は疲労感がある傾向がある。個人差もある。

・尿酸レベル
- ケトンと尿酸は腎臓での処理プロセスが競合。ケトン処理が多いと、血中の尿酸レベルが高まる。ケトジェニックダイエット開始後数週間で元のレベルに戻る。遺伝的に痛風リスクの高い人は、トータルカロリーの5%のカーボ摂取するか、ケトジェニックダイエットは行わないことを推奨。

・腎臓結石と腎臓へのダメージ
- 短期の実験では腎臓への影響なし。てんかん患者で結石リスクがやや高まったのは脱水気味だったのが要因かもしれない。ただ、長期間の影響は不明である。

・肝臓へのダメージ
- 短期での研究では影響なし。長期間は不明。

・便秘
- 食物繊維の摂取量が減るので便秘気味に。カーボの少ない野菜を沢山食べるか繊維サプリを摂取するかしたほうが良い。

・ビタミンミネラル
- カロリー制限するとどうしてもビタミンミネラルの摂取は不足してくる。マルチビタミン剤の摂取を推奨。それと厳しくカーボ制限すると野菜をあまり食べられなくなるので、長期間はやらない方が良いだろう。

・電解質
- ケトジェニックダイエットでは脱水&電解質不足の傾向。食物に含まれる分に加えて、ナトリウム3-5g、カリウム1g、マグネシウム300mgの摂取を推奨。

・カルシウム損失・骨粗しょう症
- カルシウムを十分に摂取すること。特に精製されたプロテインパウダーを飲む場合は。

・リバウンド
- ケトジェニックダイエットの特徴として、水分とグリコーゲンの変化による体重変動が激しいので、炭水化物を再び入れた時の体重増加に落胆しないようにする。体重変動と体組成変動を分けて考えること

・免疫システム
- 維持カロリーでのケトジェニックダイエットだと免疫システムへの影響は見られない。アンダーカロリーかタンパク質不足だと免疫システムに悪影響だろう。

・視神経症
- ビタミンミネラル不足が要因

・抜け毛・爪の変化
- 要因はわからないが・・・タンパク質・ビタミン・ミネラルの不足では。抜け毛((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


★カロリー設定
- 1日の摂取カロリーが1000kcal以下になると代謝が急低下する。
- 推奨は、食事制限・運動により維持カロリーから10-20%のカロリー不足を作り出す。一般的に12-13 calories/lb程度。
- このカロリー設定で週に1-1.5ポンド体脂肪を減らせる。減少が週に1ポンド以下なら摂取カロリーを減らすか運動を増やす。- 週に2ポンド以上減ると筋肉減少リスクが高まるので摂取カロリーを増やすか運動を減らす。
- 代謝低下をあまり起こさずに体脂肪減できるカロリー不足量は1日1000kcal。体重が軽い人はそれ以内。
- 増量は維持カロリー+20%が目安


★The Standard Ketogenic Diet(skd)
炭水化物カットをずっと続けるスタンダードなケトジェニックダイエット。

炭水化物は食べない・タンパク質と脂質は好きなだけ食べて良いというダイエットををすると、多くの人は自動的に摂取カロリーを減らし、結果として減量できるケースが多い。もちろんカロリーオーバーすれば太る。

炭水化物一日100g以下でケトジェニックになるはずだけど、実際は一日30g以下にしないと目立ってケトーシス状態にならない。タンパク質摂取量や運動量によって個人差があるが。

最初の数週間は炭水化物30g以下で、身体が適応したらある程度は炭水化物摂取量を増やせる。

インスリンリリースをなるべく抑えてケトーシスを続けるために、炭水化物はGI値の低い食べ物から摂取、つまり野菜。デンプンはだめ。

・タンパク質摂取量
ケトーシスに適応するまでの最初の3週間は、0.8g/lb か 150g の多い方。体重が軽いと150gになる。これは運動しない場合。運動する場合は0.9g/lb
どれくらい多くのタンパク質摂取でケトーシスが止まるかは個人差がある。筋グリコーゲンのレベルによるのかもしれない。筋グリコーゲンが枯渇してると、入ってきたグルコースは筋グリコーゲンとして補充される。
タンパク質は動物性のものが基本。

脂質はケトーシスにニュートラル。摂取カロリーが低すぎると代謝低下や除脂肪体重の減少が起きやすくなるので、脂質の摂取量でカロリー調整を行う。
普段低脂質の食事をしている人は、急に脂質の多いケトジェニックダイエットを始めると胃に違和感が出たり吐き気がしたりすることがあるので、徐々に脂質の摂取量を増やしていく移行期をもうける。繊維質を多く摂取するのも良い。
必須脂肪酸は摂取すること。必須脂肪酸の多く含まれるオイルの摂取が体脂肪減につながりやすいという報告例も。


★他の飲食物のケトーシスへの影響
水: 健康のため十分に飲むこと。理屈の上では血中のケトン濃度が高くなるすぎるのを防ぐことで脂肪分解を妨げない効果が考えられるがエビデンスは無い。

アルコール: ケトーシス状態になった後はアルコールはケトーシスを深める傾向があるが、アルコール自体のカロリーがあるので、アルコールを飲むとその分の脂肪分解が減る。アルコールもケトンに転換される。

カフェイン: アドレナリンとノルアドレナリンと遊離脂肪酸の血中レベルを上げる。アドレナリンとノルアドレナリンのレベルが上昇することで肝グリコーゲンの分解を促し血中のグルコース濃度を上げてインスリンレベルが上がる。ケトーシス確立後は肝グリコーゲン空っぽなのでインスリンレベルは上がらない。

アスパルテーム クエン酸: クエン酸はケトーシスを阻害する可能性

繊維質: 炭水化物に分類されるけど消化できないのでケトーシスに影響なし。摂取してOK。炭水化物の摂取量にはカウントしない。


★炭水化物とケトジェニックダイエット
ウェイトトレーニングを行わなずにダイエットをすると、体脂肪だけじゃなく除脂肪体重もかなり減るので、除脂肪体重を維持したい場合はウェイトトレーニングが必須。

強度の高いウェイトトレーニングをするには炭水化物を摂取する必要がある。

ある程度筋グリコーゲンレベルが下がると脂肪燃焼しやすい。各ダイエットでのグリコーゲンレベルは図参照(p121)

運動後に炭水化物を摂取しないと筋グリコーゲンはわずかしか回復しない(乳酸塩由来のグルコースでわずかに回復する)
運動前に炭水化物を摂取しておくと、運動後に筋グリコーゲンはかなり回復する。


★The Targeted Ketogenic Diet (TKD)
トレーニングに合わせて炭水化物を摂取する。

TKDは、SKDとCKDの間の妥協策。CKDは強度とボリュームが高くて上級者向け。

トレーニング前のカーボ摂取。なぜトレーニング前の摂取がパフォーマンスを上げるのかよくわかっていない(グリコーゲン充填には時間がかかるし)。血糖値の上昇が筋繊維の動員率を上げるのかも。持久運動にもトレーニング前中のカーボ摂取は有効。

トレーニング30分前に25-50gのカーボ摂取。カーボの種類は問わない。自分に合うのを試そう。
トレーニングボリュームが多くて50g以上摂取する場合は、30分前と直前に分割摂取。

トレーニング後のカーボ摂取はケトーシスを長い時間中断させやすいので、25-50g必要があれば摂取する。その場合はフルクトースが入ってるのは避ける。肝グリコーゲンが補充されやすくケトーシス中断が長引くので。

トレーニング後のプロテイン摂取推奨

トレーニング後の脂質の摂取は推奨されない。タンパク質・炭水化物の消化吸収を遅らせるのと、インスリンレベルが高い時に脂質摂取すると脂肪貯蔵されやすいので(アンダーカロリーなら長期的にはネットで脂肪減になると思うけど・・・まあ頑固な脂肪は分解がボトルネックになるが)


★The Cyclical Ketogenic Diet (CKD)
(後に The Ultimate Diet 2.0 としてブラッシュアップされてるので、やり方についてはあまり詳しくメモしていないです)

CKDは1-2日の高炭水化物摂取フェーズを取り入れる。いったんグリコーゲンを枯渇させるので、高ボリュームのトレーニングが出来ない人には無理。上級者向け。ケトジェニックフェーズはSKDと同じやり方。

週の前半はそこそこグリコーゲン減らして週の後半に枯渇させてからカーボいれてグリコーゲン超回復してウェイトトレーニング。

筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード開始24時間以内に通常レベルまで筋グリコーゲンは回復。36時間で超回復。運動後6時間がグリコーゲン合成速度が高い。

24時間で2時間おきに50gのカーボでグリコーゲン合成最大化、体重70kgの人の場合。24時間で8-10g/除脂肪体重kg。睡眠などで食事間隔が空く場合はまとめて摂取でもOK。その後の24時間はグリコーゲン合成速度は低下し、多くの人にとって体脂肪増加のリスクに見合わない。

カーボの種類はグルコースベースかスクロースを推奨。フルクトースは筋グリコーゲンの回復が鈍い。最初の24時間はGI高めの方が良い傾向、その後の24時間は低GIの方が良い。

トレーニング直後にカーボとプロテイン摂取。トレーニング前中から摂取しても良い。

摂取カロリーはケトジェニックフェーズでの摂取カロリーの2倍。カロリーの70%が炭水化物、タンパク質と脂質が15%ずつ。タンパク質は1g/lbで十分

筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード局面24時間は、炭水化物をたくさんとってもそれはグリコーゲン補充とエネルギー消費に使われ、また体脂肪の燃焼も続き脂質が蓄積されにくい。その後の24時間は脂質が体脂肪として蓄積されやすい。


★カーボロードとケトーシスへの適応
CKDでリフィード局面を入れると、ケトーシスへの適応がやや遅れるようだ(エビデンスなし、経験ベース)。


★カーボロードとアナボリック
生物学的な意味においては、アナボリックとは小さな物質から大きな物質を構築することである。

全身のアナボリック/カタボリックを司るのは肝臓。肝臓のグルコース代謝の酵素レベルが通常に戻るまで5時間かかる。なのでカーボロード前の最後のワークアウトの5時間前に25-50gのカーボ摂取。

肝グリコーゲンのレベルも重要。マウス実験だと肝グリコーゲンの補充にはグルコースとフルクトース合わせたのが有効だった。最後のワークアウト2時間前に摂取。

ここで示されているのはあくまでガイドライン。色々と試して自分の身体で良い結果が出るパターンを探す。


★ケトジェニックダイエットでの停滞期の越え方
- 飽和脂肪酸ではなくて不飽和脂肪酸を多く摂取する。熱としてカロリーが消費されやすくなる。
- 一日のトータルカロリーは同じで、食事回数を減らす。食事と食事の間に体脂肪が燃焼されやすくなるかも。
- 一週間維持カロリーに戻す。ケトジェニックのままでもカーボ入れてもOK。4-6週間ごとに1-2週間のブレークが多くの人にワークするようだ。
- 低カロリーと高カロリーの日を作る。平均して設定した摂取カロリーになるようにする。

CKDの場合
- リフィードの時間を24時間に減らす
- リフィードで食べる食事の質を良くする。ジャンクフードや甘いものを減らす。
- リフィード日の翌朝に有酸素運動してケトーシス開始を早める。
- 10日サイクル(うち1日リフィード)にしてケトーシス期間を長くする。

できれば一度に一つだけの戦略を使って、効くか効かないか判断する。


★ケトジェニックダイエットの終わらせ方
減量を終えて体重維持を続ける際は、運動を習慣にすると体重維持しやすい。

長期でのケトジェニックの影響はわかっていないので、この本ではケトジェニックの食生活を永続することを推奨しない。

炭水化物を再び摂取する際の注意点
- グリコーゲンと水による体重増加を体脂肪増加と混同しない。
- インスリン抵抗性による血糖値の乱高下と高インスリン血症。長期間炭水化物の摂取を制限すると、グルコース燃焼に関係する酵素の働きが低下。また血中の遊離脂肪酸濃度が高いとグルコース運搬を阻害。リフィード開始後、肝臓では5時間、筋肉では24-48時間でグルコース処理の働きが回復する。

・SKD/TKDの終わらせ方の推奨方法
炭水化物を再び摂取するようにする場合は、徐々に量を増やしていく、野菜も同時に摂取する(消化吸収を遅らせるため)、といった方法をとると移行がスムーズ。

・CKDの終わらせ方の推奨方法
- 炭水化物多めのバランス型食事に移行する。これがお薦め。
- CKDのサイクルを続けつつ、摂取カロリー増やす、カーボロードの時間を伸ばすといったやり方で、体重維持・増量フェーズにすることもできるが、長期でのCKDの健康への影響はわからないので、CKDをずっと続けることはこの本では推奨されない。


★検討と選択
ダイエットが有効であるためには、身体面だけではなく精神面でもその人に合ったものでないといけない。ダイエットを続けられないと、どんなダイエット方法も有効にはならない。

・ケトジェニックダイエットをバランス型ダイエットと比較
- 食材の制限: 食事の楽しみといったメンタル面に影響。個人差があって、食事の選択が楽になるという人もいる。あと野菜や果物が制限されるので、それらにのみ含まれる微量栄養素が不足する。CKDなら問題をだいぶ回避できるが、リフィード期間に抑制無く食べまくるタイプの人は食習慣にも健康にも良く無いだろう。
- 体組成変化: 体脂肪を多く減らし、筋肉の減少を抑えるというケトジェニックダイエットのセールスポイントは、強固なエビデンスがあるわけではない。経験ベースは、バランスダイエットに比べて体脂肪が減りやすく筋肉が残りやすいという多くの報告があり、とりわけボディビルダーにそういうケースが多いようだ。

・どのタイプのケトジェニックダイエットを選ぶか
- standard ketogenic diet (SKD): 運動をしない、もしくは低中強度の有酸素運動のみする人向け。
- cyclical ketogenic diet (CKD): 高い強度とボリュームのトレーニングをこなせる上級者向け。健康上の理由(高インスリン血症や高血圧)でケトジェニックダイエットをしている人はリフィード期間の高炭水化物摂取が健康上の問題を引き起こる恐れがあるので向いていない。
- targeted ketogenic diet (TKD): ほとんどの人に有効

・ケトジェニックダイエットを避けた方が良いケース
- 腎結石が出来易い人
- タイプ1糖尿病の人はインスリン必要量が変わるので医師と相談。タイプ2糖尿病で高インスリン血症・低血糖の人は血糖値が下がり過ぎるのに注意。それとタイプ2糖尿病や肥満の人はケトーシス状態を確立しにくい傾向がある。
- 冠状動脈の疾病・高コレステロールの人は血中脂質レベルの推移をチェックして、ケトジェニックダイエットがネガティブな影響を及ぼすようであれば中止する。
- 痛風の人。
- 妊娠中の人。
- てんかん患者。子供のてんかん患者治療に用いられるケトジェニックダイエットはここでのやり方とは異なるし、医師の監督の下に行われないといけない。
- 青年期の人。

4/23/2014

[書籍] Starting Strength: Basic Barbell Training


著者: Mark Rippetoe

バーベルトレーニングを直接習う環境になく、独学で学びたい人にお薦めの本。1種目あたりのページ数が多く、とても詳しく説明されている。英語に抵抗がないなら、非常にお薦め。和訳は出ていないと思う。私は紙の本を米アマゾンから購入したけど、キンドル版はかなり安く手に入る。

内容は以下のとおり

★スクワット 67ページ
関連記事:スクワットの基本ポイント

★プレス 25ページ
関連記事: プレスの基本ポイント

★デッドリフト 49ページ
関連記事: デッドリフトの基本ポイント

★ベンチプレス 33ページ
関連記事: ベンチプレスの基本ポイント

★パワークリーン 55ページ
関連記事: パワークリーンの基本ポイント

★補助種目
- パーシャルのデッドリフト/スクワット/プレス/ベンチプレス
- オリンピックスクワット、フロントスクワット
- クロースグリップ/ワイドグリップでのベンチプレス、インクラインベンチプレス
- ルーマニアンデッドリフト、スティッフレッグドデッドリフト
- グッドモーニング
- プッシュプレス
- 順手/逆手懸垂
- ディップス
- バーベルロウ(地面からバーベルをローイングする)
- バックエクステンション、グルートハムレイズ
- バーベルカール
- トライセップスエクステンション

★トレーニングプログラムの組み方
- 別の著書にトレーニングプログラムの組み方は詳しく書いてあるとのこと。ここでは簡単に例を紹介。
- 具体的には、5レップ3セット程度を推奨。週三回のトレーニング日、スクワットは毎回、プレスとベンチプレスを交互、デッドリフトとパワークリーンを交互など(下背部の疲労管理のためデッドリフトは1セットにする)。例えばSL5X5もこの系統なので、ネットで調べてみたい人はこのサイトなどを参考に。

2/26/2014

The Ultimate Diet 2.0 メモ

★Ultimate Diet 2.0(UD2.0)について
- アスリートやボディビルダーと違って、遺伝的に恵まれているわけでもなく、薬物も使わない人向けのプロトコル。遺伝的に恵まれていない人が、いかに筋肉を残しながら(できれば少し増やしながら)低い体脂肪率を実現するか。
- このプロトコルの対象は体脂肪率12-15%くらいの人(女性はこれに+7%くらいを基準として考える)。このくらいの体脂肪率までは、オーソドックスなダイエットで落とせる。このへんから下は、筋肉を残しながら体脂肪を落とすのが難しくなってくる。


★内分泌系と体脂肪の基礎知識
- インスリンは貯蔵ホルモン。エネルギーを貯蔵する。筋肉のインスリン感受性が高いと、糖質が筋肉に送り込まれやすい。体脂肪のインスリン感受性が高いと脂質が貯蔵されやすい。
- 体脂肪の分解。トリグリセリドとグリセロールにする。分解速度の鍵は hormone sensitive lipase (HSL).
- インスリン(炭水化物摂取でもタンパク質摂取でも出る)も、血中トリグリセリドもHSLの活動を抑制する。つまり何を食べても体脂肪の分解は抑制される。
- カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)がHSLを活性化する。正確にはcAMPがHSLの活動を決定、インスリンやカテコールアミンはcAMPに影響。
- インスリンとカテコールアミンのレベルが同時に上ったら(例えば運動中にカーボ摂取するとか)、インスリンの影響が勝つ(脂肪分解が抑制される)
- アドレナリンレセプター:alpha-2が脂肪分解抑制。beta-2が脂肪分解促進。 
- アンドロゲンと甲状腺ホルモンはbeta-2の感度を上げる
- 頑固な脂肪エリアは血行も良くないので、脂肪が分解されたとしてもそれを燃焼させる組織へなかなか運ばれず再合成されてしまう。
- ファスティングで脂肪細胞への血行がよくなる。ファスティングを続けると筋肉も落ちるので、低炭水化物・ケトジェニックダイエットでそれに近い状態にする。
- 甲状腺ホルモンレベルが高いと脂肪細胞への血行が良くなりやすい。
- エクササイズでも脂肪細胞への血行が良くなりやすい。
- 肝臓や筋肉に分解された脂肪が運ばれ燃焼される。肝臓・筋肉のグリコーゲンレベルが低いと燃焼されやすい。


★筋肥大の基礎知識
・主に二種類の筋肥大:筋原線維と筋小胞体
- 筋原線維の肥大→繊維のサイズとタンパク質量の増加。ホルモンなど様々な要因と、繊維への強いテンションが肥大を開始させるシグナルになる。
- 筋小胞体の肥大→繊維以外(グリコーゲン、水、ミネラルなど)のサイズと量の増加。高レップのトレーニングを続けると、毛細血管の密度やミトコンドリアの密度や他の筋収縮以外のサイズアップに貢献する要素が増加する。あまり顕著に肥大しない。

・普通は筋原線維の肥大を目的とする
- 筋原線維の肥大のプロセスは、高負荷のテンションが繊維にかかる(ダメージも付随)→細胞内の核がmRNAを生成→リボゾームに入り→リボゾームがアミノ酸を掴んで→それをくっつけて新たな収縮用タンパク質を作り出し→既存の筋繊維に統合する。
- 細胞のエネルギーレベルが低いと(グリコーゲンが枯渇していたりクレアチンリン酸のレベルが低かったり)、タンパク質合成はあまり起こらない。mRNAが続く時間は36時間程度。リボゾームの活動レベルが筋合成速度の鍵。アンドロゲンはリボゾームを活発にする。


★三種類のトレーニング
・Volume Training
- 高レップ・多セット・短インターバル(パンプトレーニングともいう)。
- 筋グリコーゲンを枯渇させる。普通の人(遺伝的に恵まれておらず、薬物も使用していない人)は、トレーニング後の栄養補給では、筋グリコーゲンの再充填が筋合成よりも優先され、筋合成が効率的に起こらない。だからUD2.0では、筋肉の成長を目的としてはこのトレーニングを行わない。
- このトレーニングの目的は以下の通り。
- グリコーゲン枯渇させてからのグリコーゲン超回復。
- グリコーゲンを枯渇させることで、脂肪の分解燃焼を促す。
- 乳酸レベルを上げて成長ホルモンの分泌を促す。成長ホルモンは脂肪分解に関わる。
- カテコールアミンなどのホルモン反応が脂肪分解を促す。
- カロリー消費が大きい。トレーニング後のカロリー消費は脂質の燃焼で賄われる割合が高い。
- いつも高負荷のトレーニングだと関節にダメージがたまる。高レップトレで関節に休息を与える。また血行や乳酸レベルの上昇が関節強化にも繋がる。
- UD2.0では低炭水化物・低カロリーのフェーズでこのトレーニングを行う(めちゃくちゃキツイとのこと)

・Tension training
- 6-12レップ インターバルは1.5-2分
- 基本は、重いウェイトを使って限界(付近)までやる。
- リスクは、怪我と神経系の疲労。
- 筋肉と神経系の疲労と回復のタイミング。神経系に大きな疲労が残ると、筋肉は次の刺激を受け入れられる状況になっても、神経系の回復に時間がかかってトレーニングできず非効率。
- UD2.0ではカーボロードスタートの際に行ってグリコーゲン超回復とリボゾーム増加を促して、パワートレーニングの効果を高める。

・Power training
- 3-5レップ 3-10セット 3-5分休憩
- ATP/クレアチンリン酸を主に使うので筋グリコーゲンをあまり消費しない。筋肥大に有利。
- UD2.0ではグリコーゲンを十分に充填した状態で行って筋肥大を目指す。


★体脂肪を減らすには。
- 低カーボでインスリンを抑える。カテコールアミンレベルが上がる。ウェイトトレーニングと有酸素運動でもカテコールアミンレベルが上がる。
- ファスティングか低カーボケ・トジェニックで脂肪細胞への血行が良くなる。有酸素運動でも良くなる。
- alpha-2 receptorsを抑制するにはどうするか。ヨヒンビンがその効果があるが・・・
- 血中の脂肪酸濃度を上げるとalpha-2 receptorsが抑制される。カーボをトータルカロリーの20%以下にすると、血中の脂肪酸濃度が上がる。ついでにエクササイズへのカテコールアミンの反応も上がる。
- 3-4日間、血中の脂肪酸へさらされるとalpha-2受容体が抑制される。低カーボをこのくらいの期間続けると良い。
- グリコーゲンを枯渇させることで、筋肉と肝臓での脂肪酸燃焼を促進。


★ケトーシスとは
- 脂肪酸燃焼が増えて肝臓がそれ以上エネルギーとして使えなくなると起こる。絶食、低カーボ、長時間の持久運動で起こる。脂肪酸が部分的に酸化され、余ったacetyl-CoAがケトンに転換される。ケトンの濃度がある一定レベルを越えると、身体がケトーシス状態であると言う。ケトーシスが起こり、血糖レベルが低いと、ケトンは多くの組織で優先的に燃料になる。
- 太ってる人なら、ケトーシスでエネルギーを賄うことでタンパク質(筋肉)分解を抑えられる。痩せている人は体脂肪分解が難しくなってくるので、ケトーシスでタンパク質分解を抑えるのは無理。
- ケトンは同量の脂質よりもややエネルギー効率が低い。変換ロス?
- 痩せている人にとっては、ケトーシスは脂肪燃焼を手早く行うことに伴う副作用と考えた方が良い。ケトーシス自体を目的とはしない。


★UD2.0を始めるにあたって
- 体脂肪を減らすフェーズでは筋肉の減少は避けられない。
- 週末に2-3日のリフィードを行う。グリコーゲン枯渇とテンショントレーニングで筋肉のインスリン感受性が高まっているので、摂取した炭水化物は筋グリコーゲンとして蓄えられる。内分泌系・神経系もある程度回復する。
- それまで別のダイエットをしていたら、UD2.0を始める前に2週間の維持期を入れる。
- 高炭水化物・低脂質のダイエットをしていたら、炭水化物と脂質を適度に摂る2週間の期間を挟む。
- UD2.0の実行は6-8週間以内にすること。続けたかったら2週間の維持期を入れる。


★UD2.0の具体的プロセス。一週間で一サイクル。
・月曜と火曜:低カーボの食事。高レップ短インターバルのトレーニング実施。
- 脂肪減少を最大にしたい場合は、維持カロリーの半分の摂取カロリーにする。ただし1200kcal/day以下にはしないこと。タンパク質と微量栄養素の摂取量が確保できない。
- カロリー不足を大きくしたい場合は、有酸素運動を行う。
- 体脂肪を増やさない筋肥大が目的の場合は、維持カロリーから10-25%減らす。
- 炭水化物の摂取は総カロリーの20%以下にすること。一日あたり65-70グラム程度以内。
- 除脂肪体重1ポンドあたり1-1.5gのタンパク質摂取。
- 残りのカロリーは脂質で調整。オメガ3脂肪酸は摂取すること。
- 筋分解が増えない程度までグリコーゲンを枯渇させる。各部位あたり10-12セット(種目を変えていろんな方向から筋肉を動かした方が良い)。60% 1RMの重量。15-20レップ。60-90秒インターバル。吐き気やめまいやバーン感が出るレベルまでやること。トレーニングを月曜火曜の二日に分ける(部位で分けても、全身のセット数半々で分けても良い)。

・水曜:月曜火曜と同じ低カーボの食事。ウェイトトレーニングはやらない。やりたければ有酸素運動を。

・木曜:(一日4食として)最初の3食は低カーボの食事。夜のトレーニングの30-60分前に25-30グラムの炭水化物と15グラムのホエイを摂取。
- テンショントレーニング各部位2-4セット、6-12レップ(70-85% 1RM)。二日後のパワートレーニングに支障が出ないように限界一歩手前まで。全身をトレーニングすることで、全身の筋肉にグリコーゲンを一気に送り込む。
- 強度の高いトレーニングと適切な炭水化物の摂取で、24時間以内にグリコーゲンを100%まで回復させられる。
- 正しくグリコーゲン枯渇させてたとして。除脂肪体重1kgあたり12-16グラムの炭水化物を木曜夜から金曜夜までに摂取。それと1ポンドあたり1グラムのタンパク質と、総カロリーの15%の脂質。合わせると総カロリーは維持カロリーの2倍くらいになる。グリコーゲンの再貯蔵に優先的に回されるため、脂肪貯蔵されにくく、グリコーゲン貯蔵中は脂肪燃焼が続きやすい。
- 筋グリコーゲン補充のために、フルクトースは大量に摂取しない。肝臓で代謝されるので。ただ50グラム程度(スクロースなら100グラム)摂取するとカーボロードが効果的になるようだ。
- グリコーゲン合成速度に上限があるだろうから、24時間で8-10回に分けて摂取。1000グラムを10回に分けると一回100グラム。
- 水も十分に飲むこと。1グラムのグリコーゲンあたり3-4グラムの水が蓄えられる。
- クレアチンを併用するのも効果的。
- カフェインは控える。

・金曜:木曜夜の続きで、夜までひたすら食べて休む。

・土曜:パワートレーニングの日
- トレーニングの2-3時間前にほどほどの炭水化物とタンパク質の食事。30分前に30グラムの炭水化物と15グラムのホエイを摂取。
- 各部位につき、3-6セット、3-6レップ。
- 2-4秒掛けて下ろして、全力で挙げる。
- 3-5分のインターバルを取る。
- この日のトータルの栄養摂取は、除脂肪体重1kgあたり4-5グラムの炭水化物、2gのタンパク質、40-50グラム程度の脂質。だいたい維持カロリーくらいになる。減量重視の場合は10-20%炭水化物減らす。

・日曜
- 筋肥大を重視する場合は維持カロリーくらい。
- 減量を進める場合は除脂肪体重1kgあたり2-3gの炭水化物。
- 朝のうちは複合炭水化物を食べても良い。午後は低GIの野菜中心。


★なるべく体脂肪を増やさず筋肥大をさせたい場合のUD2.0の応用
- 低カーボの日(月曜~木曜午前)は、維持カロリーかマイナス10-25%程度のカロリー摂取、炭水化物を100g以内にして、高レップのテンショントレーニングを行う(ボリュームトレーニングより重量をやや上げて、レップ数とセット数を減らす)。
- 週末のカーボロードとトレーニングは同じ。
- 土日は維持カロリーかプラス10%程度のカロリー摂取。


参考: The Ultimate Diet 2.0 / Lyle McDonald

1/19/2014

The Sutubborn Fat Solution メモ

体脂肪率が10%付近まで減量して、そこからさらに筋肉を残しつつ頑固な脂肪を落としたい場合。体脂肪率10%付近までは普通の減量で落とせ。(女性は17%くらい?)

 頑固な脂肪。男の下背部、脇腹、下腹部の脂肪。女の尻・太もも。


HSL(hormone sensitive lipase)の活動レベルが脂肪分解速度に影響を与える

テストステロンやコルチゾールやエストロゲンや成長ホルモンもHSLに影響を与えるが、カテコールアミンとインスリンが重要。

インスリンはHSLを不活性化する。血中のトリグリセリドもHSLを抑制する。何か食べればHSLは抑制される。

カテコールアミンはHSLを活性化する。カテコールアミンはアドレナリンで、副腎皮質から分泌され血液に乗って脂肪細胞に届けられる。

HSLの調整は、cAMPが行う。

アドレナリン受容体が重要。beta-2受容体にカテコールアミンがくっつくとcAMPレベルがあがり脂肪分解が進む。alpha-2受容体にカテコールアミンがくっつくとcAMPレベルが低下し脂肪分解が妨げられる。体脂肪の場所によって、このアドレナリン受容体の分布が異なり、脂肪分解が起きやすい場所と起きにくい場所が出てくる。

血行が良ければ、分解後の遊離脂肪酸が流れていく。悪いとまた脂肪細胞に戻る。筋肉や肝臓に運ばれた遊離脂肪酸は、グリコーゲンが少ないと盛んに燃焼される。

beta-2受容体は脂肪組織の血流増加にも影響。alpha-2受容体は逆。

成長ホルモンは筋肥大に関係ない。脂肪分解に関係ある。

コルチゾールは高いレベルが続くと身体に悪い影響。

甲状腺ホルモン

レプチンは通常より高いレベルにしても痩せる効果はない。低いレベルになると痩せを妨げる効果がある。非対称。
ダイエットの際にレプチンのレベルが下がらないようにするのはダイエットをスムーズにする効果がある。
レプチンは脂肪の分解や燃焼に影響を与える。また甲状腺ホルモンやテストステロンなど他のホルモンにも影響を与える。
体脂肪率が10%を切るとレプチンとても低下。

 atrial natriuretic peptide
《生化学》心房性ナトリウム利尿ペプチド◆【略】ANP

落ちにくい場所の脂肪細胞はアドレナリンalpha-2受容体の割合が高い。
落ちにくい場所の脂肪組織は血行が悪い。

体脂肪の脂肪酸が多価不飽和脂肪酸だと分解されやすい。不飽和脂肪酸だと分解されにくい。

agonistがレセプターにつくと活性化、antagonistがレセプターにつくと非活性化(ブロック)

脂肪分解促進には
- betaレセプターにagonist
- alphaレセプターにantagonist
頑固な脂肪組織はalphaレセプターが多いのでこれをブロックしたい。

4日以上のローカーボ(炭水化物の占めるカロリー割合20%以下)で、alphaレセプターが抑制される。

サプリならヨヒンビンでalphaレセプターが抑制される。

低強度運動 ノルアドレナリン出やすい 落ちやすい脂肪には効くが、頑固な脂肪には効かない。
高強度運動 アドレナリンも出てきて頑固な脂肪を分解しやすい。が、高強度運動では遊離脂肪酸を使いにくい。また乳酸が出て分解を阻害する。運動やめて乳酸濃度低下すると分解されてくる。

インスリンレベル低下、グリコーゲン枯渇時に運動すると頑固な脂肪分解されやすい。

男ならカーボベースの食事と朝食前の有酸素運動で体脂肪を落とせるが、女性の下半身の脂肪はそうはいかない。


★ 頑固な脂肪を落とすプロトコル4つ。組み合わせても良い。SFPは週に2回まで! オーバートレーニングに気をつける!

1. ローカーボ&低強度有酸素運動
ローカーボでalpha-2レセプターを抑制して脂肪組織の血流を上げて、その状態で低強度有酸素運動で脂肪燃焼。運動時間は45-60分。心拍130-140程度。

2. ヨヒンビン&低強度有酸素運動

3. オリジナルの頑固脂肪プロトコル(SFP1.0) 週に2回程度。
- 朝食前に行う(インスリンレベル低い)
- 運動の30分前にカフェイン、ヨヒンビンなどを摂取
- 5-10のウォームアップ
- 10分間のインターバルトレーニングを行う。
- 5分間休憩して、遊離脂肪酸を血中に放出させる。
- 20-40分の低強度有酸素運動を行う。
- 運動終了して一時間後に食事。(
改訂版のSFP1.0
- 一日のどの時間帯でも良い。食事から3時間以上開けるのが理想。
- カフェイン、ヨヒンビンなどのサプリメントは摂らなくても良い。
- 5-10のウォームアップ
- 10分間のインターバルトレーニングか、20分以内の高レップ・短インターバルのウェイトトレーニング
- 5分間休憩
- 20-40分の低強度有酸素運動を行う。
- 運動後すぐ食事して良い。インターバルトレーニング後はインスリンあっても脂肪燃えるらしい
脚の高強度トレの日に、SFP1.0をやるのがいい。脚の回復期間を取れるので。
メニューを無理にこなそうとせず、疲労具合と相談しながらやるのがいい。

4. SFP2.0
- 食事から少なくとも3時間空ける
- できればカフェイン、ヨヒンビンなどのサプリメント
- 5-10のウォームアップ。インスリンレベルを下げる。
- 5分のインターバルトレーニング。10-15秒の最高強度運動と45-50秒の回復目的の低強度運動を5回繰り返す。
- 5分間休憩
- 20-40分の低強度有酸素運動を行う。
- 5-10分のインターバルトレーニング。30-60秒の高強度運動と30-60秒の回復運動。
- 3-5分のクールダウン。
- 運動後すぐ食事して良い。


参考: Lyle Mcdonald / The Stubborn Fat Solution