https://www.researchgate.net/publication/387411261_Do_cheaters_prosper_Effect_of_externally_supplied_momentum_during_resistance_training_on_measures_of_upper_body_muscle_hypertrophy?ck_subscriber_id=699589358
stronger by scienceのメルマガで紹介されていた研究です。
チーティングは、ターゲットの筋肉以外を使い、勢いや反動をつけて筋トレをするテクニックです。ストリクトは、できるだけターゲットの筋肉のみを使い、勢いや反動を使わずに筋トレをするテクニックです。
この研究では、チーティングとストリクトの筋肥大効果を比較しています。
<実験内容>
被験者:若い男女、トレーニング歴なし
種目:バイセップスカール、トライセプスプッシュダウン
ストリクト実施方法:肘関節だけをフルレンジで動かす。エキセントリック約2秒、コンセントリック約1秒。
チーティング実施方法:腕以外も使って勢いをつけてフルレンジで行う。エキセントリック約2秒、コンセントリックは最速で爆発的に行う。
グループ分け:被験者内でグループ分け。片腕がストリクト、もう片方の腕がチーティング。
実験期間:8週間
頻度:週2回
トレーニング内容:4セット、8-12RM
筋肥大測定:上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋肉の厚みを超音波測定
<結果>
全体で見れば、グループ間で筋肥大に差は無し。
チーティンググループのほうがボリューム(重量×レップ数×セット数)が多かった。約1.9倍のボリュームをチーティンググループは行った。
考察
今回の研究では、ストリクトグループとチーティンググループとで筋肥大効果は変わらなかったという結果になりました。
①勢いをつけると主働筋から負荷が抜けて筋肥大効果が下がる可能性
②ストリクトよりも高重量・高ボリュームを扱えることで筋肥大効果が上がる可能性
の2通りが考えられます。
①の筋肥大効果が下がる可能性については、筋肥大に重要なファクターである動作テンポと動作レンジが適切な条件で行われていたことから、筋肥大効果が低下しなかったと考えられます。
現在のエビデンスベースの考え方だと、
・エキセントリックフェーズは速く下ろしすぎず、2秒くらいはかけたほうが筋肥大効果は高い。
・筋肉が伸ばされたレンジで負荷をかけると筋肥大効果が高い。
実験でのチーティンググループは、エキセントリックフェーズは2秒程度かけて下ろし、フルレンジで行ったため、筋肥大効果が低下しなかったのでしょう。
関連記事:レップ速度・挙上テンポが筋肥大とストレングスに与える影響
関連記事:パーシャルとフルレンジの筋肥大効果の比較
関連記事:上腕三頭筋の筋肥大効果を調べた研究(オーバーヘッドvsプッシュダウン)
②の筋肥大効果が上がる可能性については、チーティンググループはストリクトグループよりも高重量を扱い、総ボリューム(重量×レップ数×セット数)はストリクトグループの約1.9倍にもなりましたが、主働筋以外の筋肉を動員することで、この重量とボリュームを達成していたと考えられます。主働筋にどれだけの負荷がかかるかが筋肥大には重要であるため、総ボリュームの大きさがさらなる筋肥大につながらなかったのでしょう。
チーティングの意義
今回の研究では、チーティングとストリクトに筋肥大効果の差は無いという結果になりましたが、種目によってはチーティングを上手く取り入れると、トレーニングがやりやすくなるケースもあります。
チーティングを使うケースの1つ目は、動作レンジの中で、出力の高低差が大きい種目・筋肉を鍛える場合です。この場合、出力の低いレンジがボトルネックになり負荷を上げられず、出力の高いレンジでの負荷が足りなくなります。出力の低いレンジでチーティングを入れて出力をサポートすることで、動作レンジ全体で強い負荷をかけられるようになります。実際の種目だと、出力カーブは様々ですし、負荷がレンジによって変動する場合もあります。例えば立位でのアームカールだと、モーメントアーム(肘関節とダンベルの間の水平距離)が変動するので、動作レンジ中で負荷も変わります。
もう一つのケースは、レップ終盤で出力が下がってきた時に、チーティングで出力サポートすることで、余力の残ってるレンジを最後まで追い込む場合です。
他には、厳密にはチーティングと言えるのか不明ですが、動作中に関節の位置を微妙に動かしてモーメントアームを変化させて、筋肉への負荷を調整するテクニックもあります。筋肥大トレーニングが上手い人の場合、各種のチーティングを感覚的にミックスして使っていると思います。
チーティングが有効に働いているか判断するには、主動筋にしっかり負荷が乗っているかを意識すると良いでしょう。動作レンジ全体で主働筋にしっかり負荷が乗るなら良いチーティング、主働筋から負荷が抜けるなら悪いチーティングです。
感覚的には、ロウ系種目とレイズ系種目は、軽くチーティングをいれると、動作レンジ全体で負荷を乗せやすくなります。
チーティングの考慮点
初心者の頃からチーティングを取り入れると、筋肉に負荷が乗らず、関節に負荷が乗ってしまいやすいです。具体的には、エキセントリックフェーズが自由落下気味になり、腱に弾性エネルギーを溜めてそれを利用して挙げがちになります。
初心者のうちはストリクトを意識し、ボトムで1,2秒止め、トップで収縮する種目はトップでも止め、を意識すると、筋肉に負荷を乗せる感覚を身につけやすいと思います。
また、チーティングは重量が上がることと、勢いをつけることで怪我リスクが上がる可能性があります。筋肉が伸びた時に勢いよく負荷を乗せると筋肉の断裂リスクが上がったり(上腕二頭筋やハムストリングスのストレッチ種目)、関節への負担が過度になったり(レッグエクステンション、レッグプレスなど大腿四頭筋種目)、レップ中に背骨が動いてしまったり(RDLなど)といったことが考えられます。「主働筋に適切な負荷を安全にかける」という点を意識して、トレーニングを行っていくと良いでしょう。
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