3/29/2020

背中の伸展ポジションからの脱却

スクワットやデッドリフトで、背中の筋肉(主に脊柱起立筋群)で体幹を支える力の入れ方の問題点について書いていきたい。だいたいが背骨、特に腰椎がニュートラルポジションより反って(伸展して)、骨盤が前傾して、顎が上がっている。こういうやり方をしている人が多いので問題点を色々と書いていく



★背中の伸展ポジションの問題点
背中を伸展させて動作を行う問題点を羅列していくと、
- 骨盤前傾により股関節の屈曲が制限されるので、股関節を深く曲げにくい。
- 骨盤前傾でしゃがむと鼠径部で骨がゴリゴリ当たることがあり気持ちよくしゃがみにくい。
- 床引きデッドリフトは股関節の屈曲が足りないと、背中を丸めて無理に届かせることになるので腰に危険な負荷がかかる。
- 体幹がコントロールできていないのでスクワットでbutt winkしやすい。
- デッドリフトではハムストリングが伸びた状態で強い負荷をかけることになるので、ハムストリングを痛めやすい。
- 腰を反りすぎてトレーニング中に痛めるケースはあまりないとは思うが、脊柱起立筋群が緊張しっぱなしで常に腰が反ったポジションにあることで慢性的な腰の痛みになりやすい。

身体機能面で言えば、背中の筋肉に力をいれて背中を反って体幹を支える問題点は、矢状面のプル方向(デッドリフトやスクワット)でのみ辛うじてスタビリティを得られるが、矢状面のプッシュ方向(ベアクロールやプランク)、そして横断面、前額面では全くスタビリティが得られないこと。



多くのスポーツの動作だけでなく、普通に歩くことでさえも、矢状面だけでなく横断面や前額面での複雑な動作が必要なので、背中を反って体幹を支える癖をつけると、他のことに全く使えない身体の使い方を覚えてしまう。

もちろん背中の筋肉は体幹を支えるのに重要な筋肉だけど、胴体周り360度で体幹を固める身体の使い方を覚えると、機能的に身体を動かせるようになるし、スポーツにも応用が効くし、怪我しにくい。




★背中の伸展対策トレーニング
基本の体幹の固め方は以下参照

関連記事:体幹トレーニング

背中のストレッチのストレッチをして背中の反りを緩和しておくと良い

関連記事:背中のストレッチ

体幹の前側の筋肉を動員して体幹を固める練習でやりたいエクササイズは、デッドバグ系、ベアクロール系。肋骨を締めて体幹を固めるのを意識するのだけど、同時に腕と脚が体幹の前側の筋肉とリンクするようにすると良い。体幹の前側の筋肉は腹直筋だけじゃなく腹斜筋などお腹周り全体。手の平と足の裏が地面や重りに接していると良い(特に母指球・母趾球に負荷を感じると良い)。

デッドバグ系やベアクロール系の基本は、骨盤後傾で腰椎フラットにする。息を吐ききると肋骨を締めやすい。腕は強く突き出す。

ベアクロールはこんな感じで姿勢を作って前後左右に適当に這い回る。ジムで這い回るのが恥ずかしい場合は、「右手左足を浮かせる→左手右足を浮かせる」を交互にやると良いと思う。

動画:HighPerformanceHandbook.com: Dead Bug
https://www.youtube.com/watch?v=rbemelnkHag
デッドバグ。腰椎フラットで腰が床に付くように。肋骨が上がらないように。


動画:3 Month PNF Patterns with Bottoms Up Kettlebell Hold
https://www.youtube.com/watch?v=G7pneju5wIg
手が膝に近づく時に息を吸い、腕を伸ばす時に息を吐く。重りを持った腕は高く突き上げるイメージで。腰が反らず、胸が開かないよう注意する。


動画:Reverse Inch Worm
https://www.youtube.com/watch?v=RoM-81TFuLM
身体を曲げる時に息を吸って、伸ばす時に息を吐く。腰が反らず、胸が開かないよう注意する。


あと最近気づいたのですが、空手の三戦がいいんじゃないかと。
空手エアプですが、見様見真似で三戦の姿勢を取ってみると体幹を固めやすく、腕と脚と体幹がリンクしている感覚がある。足裏は床にべったりつけて、踵の骨の内側の接地を意識、脚、臀筋、体幹に力が入り、肘を内側に絞ることで腹斜筋のあたりが強く収縮し肋骨が締まる。呼吸はよくわからないので体幹トレーニングの記事で書いたPRIの呼吸法を使って、口から息を吐ききって肋骨を締めて腹回りの緊張を保ったまま鼻から息を吸ってバルサルバで息を止めて腹圧を高めてみた。


★デッドリフト
腕と脚と体幹のリンクができたら、デッドリフトをやってみる。バックスクワットよりもデッドリフトのほうが体幹の前側の筋肉に力を入れての動作がやりやすい。

(今後また変わるかもしれないけど今現在)個人的にやりやすいやり方を書いていくと、

バーベルの前に立ち、直立した状態で腕をキョンシーみたいに前に突き出し、口から息を吐ききってお腹周りの筋肉が収縮し肋骨が締まるのを感じる。お腹周りの筋肉の緊張を解かずに鼻から息を吸って適当なところで息を止める。

そのまま屈んでいき、体幹と尻に緊張を感じながらバーを握る。足の裏は母趾球と踵の骨のやや内側が地面に接しているのを意識する。アシンメトリーがある人は、重心が乗りにくい側の足の踵の内側接地を特に意識すると良い。

バーを軽く握ったら親指を内側に折り曲げる。母指球を押し出しながらバーを強く握り込み手首を軽く返すように力を入れる。同時に腹圧を最高レベルに引き上げる。この時点でバーベルが少し浮くのでそのまま足の裏で床を押し、バーが膝を超えたら上体を起こしてロックアウト。こうやると、胸が開かず肩甲骨が前傾せず体幹が安定する感じがする

パワーリフティング系のデッドリフト・スクワットのやり方解説だと膝を外側に押し出す、踏み込んだ足を両側に押し開くイメージで、と解説しているところが多いのだけど、これだと背中の伸展の筋肉に力を入れやすくなるけど体幹の前側に力を入れにくくなる感じがする。スクワットもデッドリフトも、膝とつま先はもちろん外側に開くのだけど、踵の骨の内側の接地、大腿骨はどちらかというと内旋方向に力を入れる(実際に内旋はさせない)イメージでやると、腕と脚と体幹の前側の筋肉がリンクし、骨盤が安定し、体幹を固めやすい。



★空気の入れ方
胸を水平面360度膨らませて息を吸い込む。肋骨の乳首より下のあたりを、前後左右360度膨らませるイメージで行うとやりやすいと思う。息を吸い込む時に肩が上がらないよう注意する。

 バックスクワットは腕とバーのポジションの問題で、上背部に空気を入れにくいので、息を吸うときに意識して上背部に空気を入れるようにすると体幹が安定すると思う。背中のストレッチで上背部に空気を入れる練習をすると良い。



★コンディショニング
背骨ニュートラルでトレーニングを行っても、デッドリフトやスクワットを熱心にやると背中の筋肉にはどうしても強い負荷がかかる。背中のストレッチやフォームローラーころころして背中の筋肉の緊張を取ってやると良いと思う。

関連記事:背中のストレッチ

動画:背中の筋膜リリース(コア フォームローラー編)
https://www.youtube.com/watch?v=1YVUjPEQQT0