1/05/2025

PEDs使用ボディビルダーと非使用ボディビルダーのトレーニング方法の違い

(1)Self-Reported Training and Supplementation Practices Between Performance-Enhancing Drug-User Bodybuilders Compared with Natural Bodybuilders
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36165879/

競技ボディビルダーにアンケート調査をし、PEDs使用ボディビルダーと、非使用ボディビルダーで、トレーニング方法にどのような違いがあるのかを調べた研究です。おそらく前回の記事と同じデータを使って分析した論文です。

前回記事:競技ボディビルダーのトレーニングを調べた研究

187名がオンラインアンケートに回答。アンケート期間は2018年4月~2020年2月。


使用割合の高いPEDsは、testosterone (85.0%),drostanolone propinate (57.5%), stanozolol (47.5%),trenbolone
acetate (45.0%), boldenone undecylenate (42.5%), oxandrolone(37.5%), clenbuterol (37.5%),nandrolone decanoate (32.5%), methenolone enanthate(20.0%).


トレーニング内容

<分割法の実施>
PEDs使用ボディビルダー97.5% 非使用ボディビルダー82.7%


<週のトレーニング日数>
4-5日 PEDs使用ボディビルダー50.0% 非使用ボディビルダー45.6%
6-7日 PEDs使用ボディビルダー42.5% 非使用ボディビルダー50.3%


<一回のトレーニング時間>
60-90分 PEDs使用ボディビルダー57.5% 非使用ボディビルダー57.1%
50-60分 PEDs使用ボディビルダー30.0%
90分以上 非使用ボディビルダー24.5%


<部位あたり頻度>
胸、上背部、太もも、ハムストリングスは、両グループの60%以上が週2回トレーニング。両グループの30%以下が週1回か週3回トレーニング。

肩と下背部は、両グループの52.5%以上が週2回トレーニング。両グループの約30%が週3回トレーニング。

尻、腕、カーフは、PEDs使用ボディビルダーの35.0-45.0%、非使用ボディビルダーの54.4%以上が週2回トレーニング。

腹筋は、PEDs使用ボディビルダーの45.0%が週1回トレーニング、非使用ボディビルダーの35.4%が週2回トレーニング。


<一回のトレーニングの内容>











<オフシーズンの有酸素運動>





<上級者テクニック>
PEDs使用ボディビルダー97.5%、非使用ボディビルダー89.1%が、何らかの上級者テクニックを取り入れている。

スーパーセットが両グループで最も人気(75.5%以上)。

ネガティブ、パーシャル、プレ・イグゾースト、特定のテンポでレップを行う、については、PEDs使用ボディビルダーのほうが実施率が高かった。


<ピリオダイゼーション>
PEDs使用ボディビルダー50%、非使用ボディビルダー74.1%が、何らかのピリオダイゼーションをオフシーズンに導入。



<コンテスト準備期間>
コンテスト準備期間ではレップレンジが少し上がって、有酸素運動の頻度と時間が増加するのは、両グループとも同じ。有酸素運動を週5回以上する割合は、PEDs使用ボディビルダーのほうが高い。


<サプリメント>
主要なサプリメントの中では、PEDs使用ボディビルダーの方が使用割合が高いのは、EAA、BCAA。非使用ボディビルダーの方が使用割合が高いのは、クレアチン、カフェイン。



コメント

PEDs使用ボディビルダーと非使用ボディビルダーで、トレーニング方法に大幅な違いは無いようです。全体的に見れば、PEDs使用ボディビルダーのほうが、部位あたりの種目数とセット数が多いので、高ボリュームのトレーニングをする人が多いと言えます。PEDsで回復をブースト(タンパク質の同化が促進されるため筋肉のダメージが速く回復)できるため、高ボリュームのトレーニングに耐えられるのでしょう。

レップレンジはPEDs使用ボディビルダーのほうが高めですが、ボリュームゾーンは7-12レップで、多くの選手が一般的な筋肥大目的のレップレンジでトレーニングしています。アナボリックステロイドを使用すると、大幅な筋肥大で筋力が高まるため腱のへの負担が増し、腱の断裂リスクが高くなります。研究によると、アナボリックステロイドの反応が良い(筋肥大しやすい)上半身で、腱断裂リスクが高まります(2)。PEDs使用ボディビルダーは、怪我予防のために、非使用ボディビルダーよりもレップレンジが高めになっていると思われます。ちなみに、アナボリックステロイドが直接的に腱の弾力を低下させて断裂しやすくする説もあるのですが、これについては動物実験では確認されていても、ヒト対象では確認されていないようです。

セット間インターバルは、PEDs使用ボディビルダーのほうが短めです。また、上級者向けテクニック(筋肉を追い込んで代謝ストレスを上げるテクニックが多い)を使用する割合もPEDs使用ボディビルダーの方が高いです。アナボリックステロイド使用で筋グリコーゲン貯蔵量が増え、短いインターバルで次々とトレーニングを行えるようになっているからかもしれません。(アナボリックステロイド使用で筋グリコーゲンが増えるというエビデンスがあるのか調べてみましたが、20年前のラット実験の研究くらいしか出てきませんでした。腓腹筋、ヒラメ筋で、アナボリックステロイド使用ラットのほうがグリコーゲン貯蔵量は増えています(3))。


(2)Ruptured Tendons in Anabolic-Androgenic Steroid Users: A Cross-Sectional Cohort Study
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5206906/

(3)Influence of high-intensity exercise training and anabolic androgenic steroid treatment on rat tissue glycogen content
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15904936/


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