たぶんデロードの研究は初めてです。途中で3週間休止してトレーニング再開するという研究はあったのですがデロードというよりもリトレーニングの研究です。1週間のデロード期間の研究は世界初だと思います。ただ、一般的に行われるデロードと違って、完全にトレーニングを休んでいます。
(1)Gaining more from doing less? The effects of a one-week deload period during supervised resistance training on muscular adaptations
https://sportrxiv.org/index.php/server/preprint/view/302/604
<被験者>
トレーニング歴有りの若い男女。男性率7割強。平均体重78kgでスミスマシンスクワットの1RM平均が100kg付近なので高いレベルのトレーニーというわけではなさそう。
<トレーニング内容>
トレーニングメニューは両グループで同じ。いずれの種目も2分インターバルで8-12RMを5セット実施(全セット限界まで)
上半身 週2回
・ショルダープレス
・ラットプルダウン
・チェストプレス
・バイセップスカール
・トライセプスプッシュダウン
下半身 週2回
・スミスマシンスクワット
・レッグエクステンション
・膝を伸ばしたカーフレイズ
・膝を曲げたカーフレイズ
通常トレーニンググループは、9週間ずっと同じメニューでトレーニング
デロードグループは、4週間トレーニング+1週間完全オフ+4週間トレーニング
<結果>
筋肥大は両グループで差は無し。
筋力については通常グループのほうがやや有利。
ジャンプ力は両グループで差は無し。
<その他>
ディスカッション欄に書かれていることが興味深いです。
・デロード後は、リフレッシュ感よりもむしろ怠さを訴える被験者がいた。
・4週目から9週目にかけて、通常グループは筋肉痛が減って、デロードグループは筋肉痛が増えた。
・4週目から9週目にかけて、デロードグループはモチベーションが低下して、通常グループはモチベーションは変わらず。
他には、ファンディング欄にRenaissance Periodizationの名前があります。日本でも人気の高いMike Israetelのチームですね。よく見たらMike Israetelは研究者欄にも名前がありました。他に有名な人だと、Brad J. Schoenfeldも関わっています。
コメント
ボリュームや強度を落としてトレーニングを継続する一般的なデロードと違って、1週間の完全オフにしています。論文の仮説を読むと、デロードで疲労を抜くことでトレーニングがやりやすくなり、また一時的に身体がデトレーニングされることでトレーニング刺激への感受性が回復して、より筋肥大しやすくなると予想していたみたいなので、感受性の回復が起こるのかを調べるためにも、完全オフにしたのかもしれません。Mike IsraetelやBrad J. Schoenfeldは、筋肥大の感受性回復理論を支持していたのですかね。個人的には、デトレーニングしてもリピーテッド・バウト・エフェクトが消失して筋肉痛の感受性が高まるだけだと思っていますが・・・。
最初この研究を見たときは、実践的ではない1週間完全オフのデザインにしたのが残念に感じたのですが、「完全オフにするとトレーニング再開時がツラくて、トレーニングが軌道に乗りにくい」という経験則が確認されて、その点では良かったなと思いました。
基本的にデロードは、「長期的に持続不可能なレベルのトレーニング刺激を与える必要のある中級者以上の人」向けのものです。次のトレーニングまでに十分回復できる程度のトレーニング刺激で伸びる状態なら、デロードは必要ないです。
実践面では、デロードの手段として完全オフは不適切です。デロードが必要な中級者以上の人だと、徐々にトレーニングに慣れていって、持続不可能なトレーニング刺激をこなせるようになるまでに、そこそこ時間がかかります。徐々に加速していってトップスピードにもっていくイメージでトレーニングを積んでいきます。完全オフだと、せっかく助走でついた勢いがリセットされてしまうのでトレーニング再開時がキツイですし、高強度・高ボリュームのトレーニングをこなせるようになるのに再び時間が必要になります。半年に一回などのスパンで、完全オフにして骨休みをするのは良いですが、4-8週間ごとに完全オフはやらないほうが良いでしょう。
個人的なデロードの目安を書きますと、強度・セット数・レップ数をそれまでのトレーニングから1-3割減らします。考えるのが面倒だったら、5レップ×3セット@60%1RMでも良いです(5/3/1のデロードがこのくらいです)。
あまりプログラムを組まず、身体の調子を見ながらデロードを入れていくなら、疲労のキャパシティを超えている要素を優先的に減らしたほうが良いです。もし高ボリュームを続けて全身が怠い感じになってきたらボリュームを大きく落としたほうが良いですし、高強度で関節が軋んでくるようなら強度を大きく落としたほうが良いです。
予備的にデロードを入れたプログラムを組んで、特定の能力を高めたい場合は、その能力のトレーニング負荷を大幅に落とすと調子が崩れやすいので、例えば強度を75%、80%、85%、90%と上げていくプログラムなら、プログラム途中のデロードでは80%くらいは持っておいたほうが良いと思います。プログラムが一通り終わったら、疲労を抜くのを最優先で適当にデロードします。
イメージとしては、デロード後もトップスピードのトレーニングを続けたい場合は、デロードではいかにトレーニングペースを落とさず適度に疲労を抜くかを意識して、トレーニングを一区切りしてもいい場合は、疲労を抜くのを最優先でデロードですね。
もし次にデロードの研究をするなら、もっと実践的なやり方で、例えばトータルボリュームを揃えてデロード期間を完全オフにしない方法で比較すると面白いと思います。
通常グループ:100%×9週間
デロードグループ:105%×4週間+60%×1週間+105%×4週間
他にはデロード期間のメニューを
重量50%・セット数100%・レップ数100%(主に強度を減らす)
重量100%・セット数50%・レップ数100%(主にボリュームを減らす)
重量100%・セット数100%・レップ数50%(主に追い込み度を減らす)
みたいにして、重量とセット数とレップ数で何を減らすとうまくいきやすのかを比較すると面白そうです。
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