9/08/2023

フリーウェイトとマシンのトレーニング効果の比較研究

フリーウェイトとマシンのトレーニング効果の比較について、メタアナリシスと、新しい研究が出てきたので紹介します。

トレーニングにフリーウェイトとマシンをどのように取り入れるかは、実践面では体幹の疲労のマネジメントといった問題も出てきますが、研究では扱いません。研究で扱う、筋力(1RM、nRM、アイソメトリックの最大筋力)、筋肥大、スポーツパフォーマンス(ジャンプ力)への効果を見ていきます。


長いので結論を先に書きますと、

・全体的に見れば、フリーウェイトでトレーニングすればフリーウェイトの1RMが向上しやすく、マシンでトレーニングすればマシンの1RMが向上しやすいです。特異性の原理に従っています。

・動作がフリーウェイトに近いマシントレーニングは、フリーウェイトの1RM向上効果がフリーウェイトでトレーニングした場合と遜色ないです。具体的には、スミスマシンスクワットやハックスクワットは、バーベルスクワットの1RM向上効果がスクワットでトレーニングした場合と同じくらいです。

・アイソメトリックの筋力向上効果は、フリーウェイトもマシンも同等です。

・筋肥大効果は、フリーウェイトもマシンも同等です。

・ジャンプ力向上効果は、全体的に見ればフリーウェイトのほうが高いですが、スミスマシンスクワットやハックスクワットは、ジャンプ力向上効果がフリーウェイトと同じくらいです。




フリーウェイトとマシンを比較したメタアナリシス

(1)Effect of free-weight vs. machine-based strength training on maximal strength, hypertrophy and jump performance – a systematic review and meta-analysis
https://bmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13102-023-00713-4


ベンチプレスとチェストプレスなど、動作が近いフリーウェイトとマシンで、セット数やレップ数を揃えて同じようにトレーニングを行い、効果を比較した研究を集めて解析しています。

内容を見ていきます。各画像の右側にあるチャートはフリーウェイトVSマシンの効果量を表したもので、0より右側だとマシン優位、0より左側だとフリーウェイト優位です。個別研究の効果量が■、まとめたものが一番下の◆です。

<マシンの筋力>

マシンの筋力(1RMやnRM)は、マシンでトレーニングしたグループのほうが伸びやすいです。



<フリーウェイトの筋力>

フリーウェイトの筋力(1RMやnRM)は、フリーウェイトでトレーニングしたグループのほうが伸びやすいです。ただバラツキがあって、個別に見ていくと、ダンベルベンチプレスとスミスマシンベンチプレスの比較(ダンベルベンチプレスの筋力の伸びが評価対象)、スクワットとレッグプレスの比較(スクワットの筋力の伸びが評価対象)では、フリーウェイトのほうがずっと効果が高くなっています(下図の赤丸部分)。ダンベルベンチプレスとスミスマシンベンチプレスでは安定性に大幅に違いがあること、スクワットとレッグプレスでは体幹への負荷に大きな違いがあることが、差に繋がったと思われます。ベンチプレスとチェストプレスの比較、スクワットとスミスマシンスクワットの比較だと、フリーウェイトの筋力の伸びに差は出ていません。




<アイソメトリックの筋力>

アイソメトリックの筋力の伸びは、フリーウェイトとマシンで効果に差は無し。個別の研究のバラツキも無し。



<垂直跳び>

垂直跳びの伸びは全体で見れば、フリーウェイトとマシンで効果に差はないです。特定の研究(スクワットとハックスクワットの比較)を除くと、フリーウェイト優位です。

個別に見ると、スクワットとスミスマシン、スクワットとハックスクワットマシンでは、垂直跳びの伸びは同程度ですが、スクワットとレッグプレスの比較だとスクワットのほうが垂直跳びが伸びています。スクワット1RMの伸びでもレッグプレスは効果が低かったので、スクワットを伸ばしたい、垂直跳びを伸ばしたいといった人にはレッグプレスは向いていないです(筋肥大目的ならレッグプレスは良い種目です)。



<筋肥大>

フリーウェイトとマシンで筋肥大効果に差は無し。






新しい研究

(2) Free-Weight and Machine-Based Training Are Equally Effective on Strength and Hypertrophy: Challenging a Traditional Myth
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37535335/


最近出た研究で、メタアナリシスには入っていません。被験者がトレーニング歴有りで、フリーウェイトと動作が近いマシンを比較していて、実践面で参考になると思うので紹介します。被験者は、スクワット1RMが体重の1.5倍くらい、ベンチプレス1RMが体重の1.0倍くらいです。

比較する種目は、
・スクワットとハックスクワット
・バーベルプローンロウ(シールロウ)とシーテッドロウ
・バーベルオーバーヘッドプレスとマシンオーバーヘッドプレス
・ベンチプレスとシーテッドチェストプレス

フリーウェイトグループは、スクワット、バーベルプローンロウ、バーベルオーバーヘッドプレス、ベンチプレスを実施。マシングループは、ハックスクワット、シーテッドロウ、マシンオーバーヘッドプレス、シーテッドチェストプレスを実施。

結果は、傾向としては、フリーウェイトのほうがフリーウェイトの1RMが伸びやすく、マシンのほうがマシンの1RMが伸びやすかったです。ただ有意差は出ていません。

バーベルスクワット1RM
 フリーウェイトグループ+13.4%
 マシングループ+9.8%
ハックスクワット1RM
 フリーウェイトグループ+15.2%
 マシングループ+18.1%

バーベルプローンロウ1RM
 フリーウェイトグループ+7.6%
 マシングループ+5.8%
シーテッドロウ1RM
 フリーウェイトグループ+10.0%
 マシングループ+13.2%

バーベルオーバーヘッドプレス1RM
 フリーウェイトグループ+14.9%
 マシングループ+11.1%
マシンオーバーヘッドプレス
 フリーウェイトグループ10.6%
 マシングループ+13.1%

バーベルベンチプレス1RM
 フリーウェイトグループ+9.6%
 マシングループ+7.1%
チェストプレス1RM
 フリーウェイトグループ+9.6%
 マシングループ+10.8%


筋肥大については、大胸筋と大腿四頭筋と腹直筋の断面積を測定していて、フリーウェイトグループとマシングループで筋肥大効果に有意差は無しでした。




フリーウェイトとマシンをどう選択していくか

まず、フリーウェイトとマシンのメリット・デメリットについてですが、

・フリーウェイトのメリット:動作が日常生活やスポーツでの動きに近いのでパフォーマンスアップを期待できる。

・フリーウェイトのデメリット:フォーム習得が難しい。慣れていないと出力を出しにくい。フォームが悪いと怪我をしやすい。


・マシンのメリット:バランスを取る必要が無いので筋肉が強い力を発揮するのに集中できる(特にフリーウェイトのスキルレベルが高くない場合)。初心者でも比較的安全にトレーニングできる。

・マシンのデメリット:日常生活やスポーツで使う動作から乖離したマシンもあるので、パフォーマンスアップ効果が期待できない場合がある。人によって、使いづらくて合わないマシンがある。


実際にトレーニングしていく上での考え方は、

・どちらか片方を選ばないといけないわけではない。フリーウェイトとマシンを両方やっていい。

・パワーリフティングやウエイトリフティングを競技としてやるなら、フリーウェイト中心のトレーニングは必須。

・日常生活で使う筋力をつける目的なら、フリーウェイトでもマシンでも好きな方でOKです。

・スポーツパフォーマンス目的でも、それほどレベルが高くないアスリートは、フリーウェイトにこだわらなくても良いと思います。メタアナリシスでは垂直跳びのみが解析対象ですが、個別の研究を見るとスプリントやアジリティも測定しているものがあって、スクワットとハックスクワットマシンでは効果に差がありませんでした。

・フリーウェイトのフォームは身につけるのは時間がかかりますし、フォームが悪いと怪我をしやすいです。そして適切に教えられる人が近くにいる必要があります。少し前に、桐蔭高校野球部の危険な筋トレフォームが話題になっていました。プロ選手ですら「酷いフォームだな・・・」と思うことがあります。危険なフォームでフリーウェイトをやるくらいなら、マシンのほうが良いでしょう。

・レベルの高いアスリートはフリーウェイトのほうが良いかは・・・ケースバイケースですかね。イチロー氏のように特殊なマシントレーニングで最高のパフォーマンスを続けたケースもあります。ただ、スプリント用のハムケツ、クリーン動作、体幹の強さなどはフリーウェイトでないと鍛えにくいので、競技によってはフリーウェイトのスキル習得が必要になる感じはします。

・筋肥大が目的で、大雑把に筋肉が大きくなれば良いなら、フリーウェイトでもマシンでも好きな方でOKです。

・同じ筋肉でも種目が違えば筋肥大しやすい箇所が微妙に異なってくるので、ボディビル系の競技をやる上級者は種目を使い分けたほうが良いでしょう。それと、上級者になってくるとバーベル種目は全身疲労がきつくなってくるためトレーニングボリュームの大部分を占めることは難しくなり、マシンとダンベル中心のトレーニングになると思います。

・BIG3中心にトレーニングしている人は、その日の器具の空き状況や体調面でフリーウェイトが難しいときは、目的のフリーウェイト種目に近い動きのマシンに代替しても十分なトレーニング効果が得られるでしょう。スミスマシンやハックスクワットマシンは優秀なトレーニングマシンです。私は苦手なのですが、チェストプレスマシンも優秀だと思います。


当たり前のことを書いているように思えるかもしれませんが、調べてみた個人的な感想は、

・マシンも思ったよりも効果が高い。ガチ寄りの筋トレ界隈だとBIG3信仰みたいなものがあって、「まずはBIG3」「デカくなるにはBIG3」みたいなことを言う人が多いですが、そこまでこだわらなくてもいいんじゃないかなと。もちろんBIG3を正しいフォームで出来るにこしたことはないですが、そこに至るまでが大変です。

・マシンにも色々な種類があって、フリーウェイトの1RMを伸ばす効果が高い種目と低い種目があります。スターティングストレングスみたいに、「マシンはクソ」と切り捨てるのはもったいない。

2 件のコメント:

  1. 普段はフリーウェイトでデロードウィークはマシンとかの使い分けも良さそうですね

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    1. Daiさん、

      いいアイデアですね。体幹の疲労を抜けますし、局所的な筋肉・関節の疲労も微妙にずらせます。

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