11/23/2025

ホエイとソイの比較

ホエイプロテインの価格上昇が続いています。現在の最安値をAmazonで調べてみると、3kgで8000円くらいです。一方、ソイプロテインだと、3kgで5000円くらいで買えます。安いソイだと、ノンフレーバーで4000円を切るものもあります。

ホエイが1kgあたり2000円程度で買えた時代なら、ホエイとソイの価格差は小さく、「とりあえずホエイ」で良かったのですが、価格差が1.5倍~2倍になった現在では、ホエイの地位は揺らいでいます。ゴールドジムでも、最近はソイプロテインを店頭でプッシュしています。まあ、あそこのプロテインはソイでもやたらと高いですが。

今回は、ホエイとソイの筋肥大効果について調べた研究を見ていきます。筋肉の餌としてのパフォーマンス比較です。


以下のレビュー論文で言及されている論文を中心に見ていきます。

(1)Review: Comparison of the effect of whey protein and soy protein supplementation combined with resistance training.
https://www.researchgate.net/publication/370672052_Review_Comparison_of_the_effect_of_whey_protein_and_soy_protein_supplementation_combined_with_resistance_training




BCAA含有率比較

筋肥大には、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が重要で、中でもとりわけロイシンが重要です。

タンパク質は消化吸収過程でアミノ酸に分解され、小腸と肝臓を経由してから血液に放出され、それから筋肉にたどり着きます。小腸ではアミノ酸は一時的に蓄えられたり、身体内で使われるタンパク質やホルモンの材料になったりします。肝臓では酸化されたり、分解されて他の物質の材料になったりします。そのため、食べたタンパク質のアミノ酸組成がそのまま血液中に放出され、筋肉にたどり着くわけではないです。BCAAは肝臓で代謝されにくく、そのまま血液中に放出されやすいです。またロイシンは筋合成のスイッチを入れる働きがあると考えられています。


食品成分データベースで、チーズホエイパウダーと分離大豆たんぱくのアミノ酸組成を比較をしてみると、BCAAとロイシンの含有量は、ホエイがソイの約1.3倍です。


食品成分データベース
乳類/<牛乳及び乳製品>/(その他)/チーズホエーパウダー
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=13_13050_7

豆類/だいず/[その他]/大豆たんぱく/分離大豆たんぱく/塩分無調整タイプ
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04057_7




ちなみに今回取り上げたいつくかの論文でも研究に使用したホエイとソイのアミノ酸組成を分析しています。ホエイがソイの何倍のロイシン量になっているか計算してみると、(2)の研究だと1.3倍、(3)1.8倍、(6)1.5倍、(7)1.4倍、(8)1.4倍、となっています。製品によってばらつきはありますが、ホエイにはソイの約1.5倍のロイシンが含まれていると考えられます。



タンパク質が筋肉に変わるまで

摂取したタンパク質が筋肉に変わるまでのプロセスは、


1. 小腸からアミノ酸(もしくはペプチド)として吸収される。

2. アミノ酸は血液に乗って体中の筋肉へ運ばれる。

3. 筋肉に運ばれたアミノ酸がタンパク質へ再合成される。


一般的に、筋肥大においてはホエイ優位とされ、その根拠として、


・血中アミノ酸濃度(特にロイシン濃度)が高いと筋合成速度が大きくなる。
   ↓
・ホエイはロイシン含有量が多く、摂取後に血中アミノ酸濃度と血中ロイシン濃度が高くなる。
   ↓
・だからホエイのほうが筋肥大しやすい。


という筋肉三段論法があります。しかし、摂取直後の筋合成の大きさが、そのまま長期の筋肥大つながるとは限りません。実際に研究結果を見てみると、ホエイのほうが摂取後の筋合成速度は大きいのは事実ですが、ホエイのほうが筋肥大しやすいかは微妙なところです。

筋肥大研究については、個人差が大きいことと、測定精度の問題があるため、はっきりしたことは言いにくいです。さらにプロテインパウダー絡みで面倒なのが、関連企業が出資している研究が多いため、結果にバイアスがかかっている可能性があることです。





タンパク質摂取後の筋合成研究


(2)Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.00076.2009?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org

被験者:
トレーニング歴のある若い男性 各グループ6名

プロテイン:
- ホエイ・ハイドロリゼート 21.4g
- ソイ・アイソレート 22.2g
- ミセラー・カゼイン 21.9g

各グループ必須アミノ酸10gで揃えた。


実験手順:
血液採取→片脚だけ筋トレ→プロテイン飲む+トレーサーのフェニルアラニン注射→血液採取、トレーニングした脚の筋肉組織採取、トレーニングしていない脚の筋肉組織採取


測定項目:
- 血中の必須アミノ酸濃度、ロイシン濃度
- トレーニングした脚の筋合成速度
- トレーニングしていない脚の筋合成速度


結果:
- 血中の必須アミノ酸濃度とロイシン濃度は、「ホエイ>ソイ」





- 筋合成速度(3時間後組織採取)は、「ホエイ>ソイ」



備考:
乳製品関連の機関から資金提供を受けている。



(3)Myofibrillar and Mitochondrial Protein Synthesis Rates Do Not Differ in Young Men Following the Ingestion of Carbohydrate with Whey, Soy, or Leucine-Enriched Soy Protein after Concurrent Resistance- and Endurance-Type Exercise
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6561602/

被験者:
若い男性36名 普段活動的に過ごしている

プロテイン:
- ホエイ・コンセントレート 20g
- ソイ・アイソレート 20g
- ソイ+ロイシン(ホエイとロイシン含有量が同等になるよう調整) 20g

各プロテインに加えて45gの炭水化物も同時に摂取


実験手順:
血液採取→筋トレ(レッグプレスとレッグエクステンション)→血液採取→持久トレ(自転車漕ぎ30分)→血液採取、筋肉組織採取、プロテイン+炭水化物のドリンク摂取


測定項目:
- 血中のロイシン濃度
- 筋原線維合成速度
- ミトコンドリアタンパク質合成速度


結果:

- 血中のロイシン濃度 「ホエイ ≒ ソイ+ロイシン > ソイ」


- 筋原線維合成速度 各プロテイン同等



- ミトコンドリアタンパク質合成速度 各プロテイン同等



備考:
ペプシコからサポートを受けている。具体的には、研究に関わった一人がペプシコの従業員、もう一人がペプシコから資金提供を受けている。

コメント:
この論文は2019年のもの。最近ペプシコは高タンパク食品・飲料分野へ進出しており、その調査のために研究に関わったと考えられる。ペプシコの製品に用いられているタンパク質は、乳製品も植物性タンパク質もあり、特定のタンパク質へのバイアスは無いと思われる。



長期の筋肥大研究


(4)Effect of whey and soy protein supplementation combined with resistance training in young adults 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16948480/

被験者:
若い男女(女性18名、男性9名) トレーニング歴無し グループ分けは男女比均等

プロテイン:
- ホエイ
- ソイ
- プラシーボ(マルトデキストリン)

それぞれ1.2g/体重kg/day+ショ糖0.3g/体重kgを摂取


期間:
6週間 全身の筋トレ


結果:
除脂肪体重 ホエイ+4.7% ソイ+3.1%(両グループ間での有意差無し)、プラシーボ+0.5%



(5)Effect of protein source and resistance training on body composition and sex hormones
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1997115/

被験者:
若い男性 20名 トレーニング歴ありなし両方 グループ間にトレーニング歴の有無でバランスとれるようにグループ分け


プロテイン:
- ソイ・アイソレート
- ソイ・コンセントレート
- ホエイブレンド(ホエイ・コンセントレート50%、ホエイ・アイソレート50%)
- ソイ・ホエイブレンド(ソイ・アイソレート50%、ホエイブレンド50%)

25gをトレーニング後に摂取、25gを夜に摂取
トレーニングない日も、25gを2回摂取
(それぞれのプロテインパウダーのタンパク質含有率は60%程度)



期間:
12週間 全身の筋トレ


結果:
全グループ合わせれば、除脂肪体重の増加は有意差ありだが、個別のグループだと実験前後で除脂肪体重の増加は有意差なし。



各グループともに5名と少人数で、初期の体脂肪率が大きく違い、実験期間中の栄養摂取変化も大きく違う(ソイ・ホエイブレンドグループは摂取カロリーが1558kcal/day低下!?となっている)。結果のバラツキが大きいと思われる。



どのプロテインも、実験前後でのテストステロンの変動は有意差なし。

ソイ・コンセントレートグループは、イソフラボンを138 mg/day摂取したが、テストステロンの変動は有意差なし。




備考:
論文著者たちは大豆関連企業のサポートを受けたと書かれている。具体的にどのようなサポートなのかは不明。




(6)Whey Protein Supplementation During Resistance Training Augments Lean Body Mass
https://www.researchgate.net/publication/256477939_Whey_Protein_Supplementation_During_Resistance_Training_Augments_Lean_Body_Mass

被験者:
トレーニング歴無し 若い男女


プロテイン:
- ホエイ・コンセントレート タンパク質21.6g/day 19名(男12 女6)
- ソイ・アイソレート タンパク質20.0g/day 22名(男11 女11)
- プラシーボ(カーボ) 22名(男13 女9)


期間:
9ヶ月 全身筋トレ


結果:
3ヶ月後の時点で、除脂肪体重がホエイ+3.1kg、ソイ+1.9kg、カーボ+2.4kgで、ホエイはソイとカーボよりも有意に除脂肪体重が増加していた。6ヶ月時点、9ヶ月時点では、3ヶ月時点とあまり変わらず(体重変動が大きくならないように指示していたので、それ以上除脂肪体重も増えなかったと思われる)。

摂取カロリーの変動は無し。タンパク質摂取量は、ホエイとソイが1.3-1.4g/体重kg/day、カーボが1.1g/体重kg/dayで推移。


備考:
乳製品関連の機関が資金提供をしている。


コメント:
ホエイとカーボに比べて、ソイグループは女性率が高く、除脂肪体重の増え方で不利になった可能性がある。



(7)No Significant Differences in Muscle Growth and Strength Development When Consuming Soy and Whey Protein Supplements Matched for Leucine Following a 12 Week Resistance Training Program in Men and Women: A Randomized Trial
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7312446/

被験者:
若い男女(男17 女31) トレーニング歴なし


プロテイン:
- ホエイ・アイソレート 21g 男10 女16
- ソイ・アイソレート 26g 男7 女15 

ロイシンが同じ量(2g)になるようにプロテイン量を調整


期間:
12週間 全身の筋トレ


結果:
除脂肪体重の増加にグループ間の有意差は無し

除脂肪体重
ホエイ +1.5kg ES=0.17
ソイ +1.2kg ES=0.11

体重
ホエイ +0.7kg
ソイ +0.6kg




大腿四頭筋の厚みも測定しているが、実験前後で両グループとも変動の有意差なし

タンパク質摂取量は、両グループとも1.3g/体重kg/day


コメント:
サプリメント企業からの資金提供は無い。



(8)Effects of Whey, Soy or Leucine Supplementation with 12 Weeks of Resistance Training on Strength, Body Composition, and Skeletal Muscle and Adipose Tissue Histological Attributes in College-Aged Males
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5622732/

被験者:
若い男性 トレーニング歴なし


プロテイン:
- プラシーボ(PLA) マルトデキストリン 15名
- ロイシン(LEU) 14名
- ホエイ・コンセントレート(WPC) タンパク質26.3g 17名
- ホエイ・ハイドロリゼート(WPH) タンパク質25.4g 14名
- ソイ・コンセントレート(SPC) タンパク質39.2g 15名

1パッケージあたりカロリーが200kcal、プラシーボ以外はロイシン量が3g弱になるように揃えている。これを一日に2回摂取。


期間:
12週間 全身の筋トレ


結果:
全身の筋肉量、筋肉の厚み、筋繊維の断面積を測定している。全体的に見て、プラシーボ含めて各グループ間で同等の結果になっている。

各グループとも実験前に比べて600-800kcalくらい摂取カロリーが増えた。プロテインパッケージの200kcal×2つ分が通常の食事に上乗せされたのだが、それ以上に摂取カロリーが増えている。お腹が空いていっぱい食べたのかな?

実験中のタンパク質摂取量は、プラシーボとロイシングループが1.3g/体重kg/dayくらいで、プロテイングループは1.8g-2.1g/体重kg/day。


 






 


備考:
ホエイプロテインを製造している企業から資金提供を受けている。

コメント:
ある程度のタンパク質を摂取し、カロリーを十分に取ることが最も重要という結果に。ホエイがサテライト細胞増加に有効と書かれているけど、これはバラツキが大きいからなあ。



考察

タンパク質摂取後の筋合成速度は、

・タンパク質が同量なら、「ホエイ≧ソイ」

・ロイシンが同量なら、「ホエイ≒ソイ」

と言えそうです。

ちなみに、血液中にアミノ酸が放出される速度は、(2)(3)の研究を見てもわかるように、ホエイとソイでほぼ変わりません。いまだに、「ソイは消化吸収が遅いプロテイン」と言われることがありますが、あれは間違いです。



タンパク質摂取後の筋合成速度はホエイが優位なのですが、それがそのまま長期の筋肥大の優位性をもたらすとは限りません。筋トレをしなくても、食後には筋肉は合成されます。筋肉は食間に分解されて、長期では筋トレをしなければ筋肉量は変わりません

筋トレを続けても、人間の身体で一日あたり増えるタンパク質の量はごくわずかです。例えば、3ヶ月で筋肉が2kg増えるケースを考えてみます。筋肉の大部分が水分で、タンパク質は15%程度です。90日間でタンパク質が300g増える(同化する)なら、一日に3.3g増えるペースになります。毎日150gといった量のタンパク質を摂取しても、少しずつしか筋肉は増えません。


長期の研究では、除脂肪体重の増加についてはホエイ優位の研究が多いですが、乳製品関連企業の出資を受けている研究もあるためバイアスがかかっている可能性があります。筋肉の厚みや筋繊維の断面積を測定した研究は少ないのですが、その研究だとホエイとソイに差はありません。

筋肥大の研究は、反応に個人差が大きいのに加えて、変化率に対しての測定誤差が大きく、なかなかはっきりしたことが言えません。トレーニングプロトコルの研究なら、被験者内(例えば、右脚と左脚)でグループ分けすれば、個人差の影響は無くすことができますが、栄養摂取の研究だとそれもできません。

関連記事:筋肥大研究の見方 


結論としては、プロテインパウダーがホエイかソイかは、個人的にはどちらでも良いと思います。現状の価格差だと、ソイのほうがコスパは良いです。筋肥大を目的とした場合、栄養面で最も重要なのは、トータルのタンパク質摂取量と摂取カロリーです。(8)の研究を見てもわかるように、ある程度のタンパク質摂取量とカロリーを確保できていれば、プロテインパウダーを摂取しても筋肥大に有意な差は出ません。動物性タンパク質と大豆タンパク質を中心に食べることを意識すれば、アミノ酸組成の細かい違いは気にしなくても良いでしょう。

プロテインパウダーは、タンパク質摂取量を満たすための補助ツールです。ソイを選択する場合にどうしてもアミノ酸組成が気になるなら、やや多めにソイプロテインパウダーを摂取するか、ホエイとブレンドすると良いでしょう。


若い人が効率的に筋肥大したい場合のポイントをまとめますと、以下のようになります。

・動物性タンパク質と大豆タンパク質を中心に、タンパク質を1.5g/体重kg/day以上摂取する。

・プロテインパウダーは、ホエイでもソイでもどちらでも良い。現状の価格差ではソイのほうがコスパが良い。

・カロリーオーバーになるように食べる。

・ハードな筋トレをする。


1.5g/体重kg/dayという数値に細かい根拠はありません。タンパク質のクオリティが高ければ1.2g/体重kg/dayでも十分かもしれませんし、タンパク質が大豆以外の植物性タンパク質中心になるなら2.0kg/体重kg/day以上必要かもしれません。



一方で、高齢者がサルコペニアを予防したい場合は、ホエイプロテインでタンパク質の摂取量を確保するのが良いと思います。高齢になると、タンパク質を摂取しても筋合成が起きにくくなるアナボリック抵抗性が出てきます。そのため、筋肉を維持するのにも、若い人よりも多くのタンパク質が必要になります。

しかし、高齢になると食が細くなるため、肉や魚や大豆製品をモリモリ食べるのは難しくなります。ホエイはロイシン量が多く、他のタンパク質よりも少量で筋合成されます。それに加えて、ホエイは飲みやすいので、高齢者でもタンパク質の摂取量を確保しやすいと思われます。ソイはやや飲みにくいですし、お腹が張りやすいです。

(9)Critical variables regulating age-related anabolic responses to protein nutrition in skeletal muscle
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11333332/



イソフラボン問題

ソイプロテインを摂取する場合の懸念点としては、イソフラボンの過剰摂取リスクがあります。

大豆イソフラボンは通常は糖と結合しているのですが、糖が外れた形を「アグリコン」と呼びます。このアグリコンは人の女性ホルモンであるエストロゲンに構造が似ていて、似た作用を示すことが知られています。


現在、ソイ、イソフラボン摂取による男性ホルモンへの影響は否定されています。ソイプロテインを摂取しても、男性ホルモンレベルが低下して筋肥大に影響が出たりすることはないでしょう。

(10)Neither soy nor isoflavone intake affects male reproductive hormones: An expanded and updated meta-analysis of clinical studies 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33383165/



食品安全委員会では、大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値を70〜75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)と設定しています。

関連サイト:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(平成18年5月16日更新)
https://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html#19


大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値70〜75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)は、どのようにして設定されているのですか。
 以下の2つの観点から設定しております。

[1] 食経験に基づく設定
 日本人が長年にわたり摂取している大豆食品からの大豆イソフラボンの摂取量により、明らかな健康被害は報告されていないことから、その量は概ね安全であると考えました。そこで、平成14年国民栄養調査から試算した、大豆食品からの大豆イソフラボン摂取量の95パーセンタイル値70mg/日(64〜76mg/日:大豆イソフラボンアグリコン換算値)を食経験に基づく、現時点におけるヒトの安全な摂取目安量の上限値としました。

[2] ヒト臨床研究に基づく設定
 海外(イタリア)において、閉経後女性を対象に大豆イソフラボン錠剤を150mg/日、5年間、摂取し続けた試験において、子宮内膜増殖症の発症が摂取群で有意に高かったことから、大豆イソフラボン150mg/日はヒトにおける健康被害の発現が懸念される「影響量」と考えました。摂取対象者が閉経後女性のみであることや個人差等を考慮し、150mg/日の2分の1、75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)をヒト臨床試験に基づく、現時点におけるヒトの安全な摂取目安量の上限値としました。

 上記[1]及び[2]から、現時点における大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値は、大豆イソフラボンアグリコンとして70〜75mg/日と設定しました。



以下の報告書で、個別の研究の概略が見られます。

大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方(2006年5月)
https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-singi-isoflavone_kihon.pdf

閉経前女性を対象とした試験報告について大豆イソフラボンの摂取量と内分泌機能への影響を検討した結果、大豆イソフラボンの生体影響を示唆するものとしては、血中のエストラジオール等の内因性エストロゲンやプロゲステロンの濃度が変動することと、月経周期が延長することの二点があった。

閉経後女性を対象とした試験報告について検討した結果、閉経後の女性では、大豆イソフラボンの比較的短期間かつ低用量試験においては、主に補充療法としての有効性に焦点が当てられており、安全性に関する情報がほとんど得られないと判断されたが、大豆イソフラボン 150 ㎎/日を 5 年間摂取させた試験報告において子宮内膜増殖症と診断された被験者が、摂取群において有意に多かったことは、大豆イソフラボンの多量かつ長期連用時における有害作用の可能性を示していると考えられる。

男性については比較的短期間の試験が多く、また血中ホルモン値を測定した大豆イソフラボン 74 ㎎/日までの摂取試験において、明白な有害事象は認められていない。ただし、男性にも恒常性維持機構は存在するものの内因性のエストロゲン量がもともと少ないため、外来性のエストロゲン量が、調節可能な量を容易に凌駕してしまい、大豆イソフラボンカプセル(398 ㎎/日:28 日間、796 ㎎/日:56 日間)を合計 84 日間摂取させた試験において女性化乳房の発現等が報告されているように、エストロゲンアゴニストとしての作用が引き起こされる可能性がある。その点で、大豆イソフラボンなどの外来性エストロゲンに対する感受性が閉経前女性あるいは閉経後女性と大きくは異ならない可能性が考えられる。

※女性化乳房の研究は異常な高用量のイソフラボンをカプセルで摂取していますし、再現されたのかも不明です。


ソイプロテインのイソフラボン含有量は、おそらく製品によってバラツキがありますが、こちらの製品だと以下のようになっています。

1食25gあたりのイソフラボン (アグリコン当量) 含有量は下記の通りです。
- プレーン味:46mg
- ココア味:42.6 mg
- カフェオレ味:41.5 mg
- 黒蜜きなこ味:36.2 mg



大豆イソフラボンアグリコン換算で75mg/dayを厳守するなら、ソイプロテイン由来のタンパク質の摂取量を一日に20~30g以内にするのが良いでしょう。納豆や豆腐などにもイソフラボンは含まれています。ただ、東アジアでは伝統的に大豆食品を多く食べる食生活をしてきたため、日本人は大豆タンパク質に適応していると考えられます。普通の食事に加えてサプリメントとして摂取する程度のソイプロテイン量なら、イソフラボンは気にしなく良いと思います。


関連記事:プロテインパウダーの選択 

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