(1)Low carbohydrate intake correlates with trends of insulin resistance and metabolic acidosis in healthy lean individuals
https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2023.1115333/full
横断研究で、一時点での食事調査と血液検査をして分析しています。
<実験概要>
クウェートで実施。
被験者は平均32歳の男女。
本人が糖尿病の人、家族に糖尿病の人がいる人は除外。
BMI25以下の人を募集。平均BMIは22.7kg/m2
グループ分けは、摂取カロリーに占める炭水化物の割合に基づいて行っている。
低炭水化物グループ:45%未満
中程度炭水化物グループ:45-65%
高炭水化物グループ:65%より上
測定した各指標の説明
・HOMA-IR:インスリン抵抗性の指標(インスリンへの反応性)
・HOMA-β:インスリン分泌能の指標(どれだけインスリンを出せるか)
・Cペプチド:インスリンを分泌するときに一緒にできる物質。インスリン分泌能の指標として使われるが、インスリン抵抗性の指標(抵抗性があるとインスリンをドバドバ出すから)でもあり、最近は炎症反応を促進するという研究もある。
結果は、病的なレベルではないけど(そもそも病的な人は除外している)、数値のトレンドとしては、低炭水化物グループはインスリン抵抗性が高まる方向になっています。高炭水化物食もインスリン抵抗性が高まる方向の数値です。中程度の炭水化物グループが数値は最も良いです。インスリン抵抗性リスクのカーブは、両端の高炭水化物グループと低炭水化物グループが高めで、中央の中程度炭水化物グループが低めのU字型になっています。
グループごとの回帰分析でも、つなげて見るとU字型ですね。極端な低炭水化物食もしくは高炭水化物食を続けると、インスリン抵抗性が増すリスクがありそうです。
論文中に書かれている推定メカニズムは、高脂質だとケトン体濃度が高くなりインスリン分泌が増えて代謝ストレスが蓄積する。脂質分解が増え、遊離脂肪酸がクエン酸回路に流れ込み、活性酸素の産生を促し、β細胞の機能を抑制する。とのことですが、高炭水化物食でもインスリン抵抗性が増す傾向があるので、他にも様々なメカニズムがありそうです。
(2)Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6339822/
こちらの論文はコホート研究で、長期間に渡って集めたデータを分析しています。炭水化物の摂取割合ごとに相対的な死亡リスクを算出して比較しています。この研究でも、炭水化物の摂取割合と死亡リスクのカーブがU字型になっていて、中程度の炭水化物摂取が最も死亡リスクが低くなっています。
ただ、低炭水化物グループは、炭水化物の摂取カロリー分を植物性の脂質・タンパク質に置き換えていた場合は死亡リスクが下がるという結果になっています。逆に、動物性の脂質・タンパク質に置き換えると死亡リスクが上がります。したがって、低炭水化物食を続ける場合では、例えば炭水化物の代わりに豆類やナッツ類でカロリーを確保するようにすると死亡リスクが下がりそうです。
健康に良い低炭水化物食と、健康に悪い低炭水化物食の違いは、以下の点にあると推測されます。
・脂質の質:飽和脂肪酸が多すぎると健康にはあまり良くない。
・繊維質:豆類やナッツ類は繊維質が豊富。
・野菜の摂取量:ビタミン、ミネラル、フィトケミカル、繊維質は健康に重要。
コメント
マクロ栄養素のみを見ると、極端な低炭水化物食も高炭水化物食もあまり健康には良くなく、摂取カロリーの半分くらいを炭水化物で摂取するのが最も健康に良さそうです。
低炭水化物食をするなら、植物性のタンパク質・脂質を多めに食べ、野菜もふんだんに食べると健康に良いでしょう。米やパンやイモ類は禁止で、肉は好きに食べても良いといった糖質制限食は健康に悪いですね。ケトジェニックダイエットのような極端な食生活を長期間続けるのも止めたほうが良いでしょう。高炭水化物食も、精製度の低い穀物や芋類を積極的に食べ、動物性タンパク質をしっかり摂取すれば、健康に良さそうな気はします。一般的な高炭水化物食は、精製度の高い米やパン、糖分の多い菓子類や飲料が大部分を占め、肉や魚が足りない状態だと思われます。
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