(1)Dietary protein intake in midlife in relation to healthy aging – results from the prospective Nurses’ Health Study cohort
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002916523662823
中年の女性看護師を対象としたコホート研究です。
30年間の追跡調査で、タンパク質の摂取量・種類と健康状態の関連をアンケートで調べています。
健康状態の調査項目は大きく分けると以下の4点です。
・慢性疾患(がんや糖尿病など)
・記憶力(物忘れがひどくないか)
・身体機能(日常生活に支障がないレベルに動けるか)
・メンタルヘルス
タンパク質の摂取量(摂取量カロリーに占めるタンパク質の割合)で5階層にグループ分けをして、各階層のタンパク質の摂取量・種類と健康状態の相関関係を分析しています。
結果の数値をグラフにまとめたので見ていきます。
まずは全体的な健康状態を見ると、タンパク質の摂取量は多いほうが良いという結果になっています。ただこれは、摂取カロリーに占めるタンパク質の割合が14%~22%のレンジでの話であって、30%や40%でさらに良くなるかは不明です。
健康度の相対比は、タンパク質の摂取量が最も少ない階層を1.0として、それを上回ると健康状態が良い、下回ると健康状態が悪いという見方をします。
タンパク質の種類別に見ていくと、乳製品を除く動物性タンパク質は、摂取量が多いほうが全体的に見れば健康にやや良いという結果です。
乳製品のタンパク質も、摂取量が多いほうが全体的に見れば健康にやや良いです。
植物性タンパク質は、摂取量が増えるとかなり健康に良いです。
次は健康の種類別に見てみます。ここでの健康度の相対比は、総摂取カロリーに占める当該タンパク質の摂取カロリーが3%増えるごとの健康度の相対比の変化です。これが1.0を上回っていれば、そのタンパク質を多く食べたほうが健康に良い、1.0を下回っていれば、そのタンパク質を多く食べると健康に悪いという意味になります。
トータルのタンパク質の摂取量が増えていくと、身体機能の健康度は上がりますが、慢性疾患の健康度は下がります。筋肉量が減りにくくなることでフレイルになりにくく、身体機能の健康度が上がるのでしょう。その一方で、慢性疾患の面では健康度が下がります。主に心血管疾患リスクが上がるためと考えられます。乳製品を除く動物性タンパク質も同様の傾向です。
乳製品のタンパク質は、摂取量を増やしても慢性疾患のデメリットはあまり無さそうです。
植物性タンパク質は、記憶力、身体機能、メンタルヘルスで高い健康効果を示しています。論文の考察によると、植物性タンパク質は慢性疾患リスクが低いため、病気による入院を避けやすかったり、生活の質が上がったりして、多面的に健康効果をもたらす可能性があるのと、植物性タンパク質の多い食生活をする人は野菜や果物も積極的に食べる傾向があるので、それらの健康効果も加わっているとのことです。
コメント
植物性タンパク質は健康効果が高いです。タンパク質の摂取量を増やすなら、植物性を中心に増やしたほうが良さそうですね。乳製品タンパク質もデメリットは少なそうなので、多めに食べても問題ないでしょう。肉中心の食生活だと、筋肉量は維持しやすくても、慢性疾患リスクが上がります。
それと、トータルのタンパク質の摂取量ですが、20%超えの階層が最も健康度合いが高いです。
摂取カロリーに占めるタンパク質の割合が20%の場合、具体的にどのくらいの量のタンパク質になるか計算してみますと、
女性 50歳 身長158cm 体重56kg(日本人女性の平均)
運動レベル:軽い運動。週に1~2回の運動。
この条件で、こちらのサイトを使って消費カロリーを計算すると、約1700kcalです。
1700kcalの20%をタンパク質で摂取すると、340kcalのタンパク質なので85gです。体重1kgあたりの1日のタンパク質摂取量は、約1.5g/kgになります。厚生労働省やWHOなどの推奨だと、1日のタンパク質摂取量の目安は0.8~1.0g/kgとなっていますが、これだと中高年女性の健康を維持するには少ないでしょうね。
今回の研究は中年以降の女性が対象ですが、フレイルの研究では男女入り混じったものでも、タンパク質の摂取量が増えるとフレイルリスクが低下する傾向があるので男性でも同じでしょう。タンパク質とフレイルの話は、このブログを読んでくださる人には直接関係ないと思いますが、親御さんなど年配の方に教えると良いかなと思います。
(2)たんぱく質摂取量と Frailty との関連を検討した研究の文献レビュー
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182031/201809030B_upload/201809030B0007.pdf
フレイルリスクのない若い人だと、タンパク質を多めに摂取しても健康にプラス効果はないでしょう。肉を多く食べると慢性疾患リスクが上がるので、筋トレのためにタンパク質の摂取量を増やす場合は、乳製品や植物性タンパク質でタンパク質の量を増やすと健康へのネガティブな影響を避けられると思います。ただ、肉中心の場合も、加工肉や脂身の多い肉を避け、赤身肉を食べすぎないようにし、野菜や果物を多く食べれば、健康に悪くはないと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿