3/06/2014
Alan Aragon に聞く栄養の基礎
1. 筋肉を増やしたり体脂肪を減らしたりといった身体組成の変化を扱う場合、マクロの栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物の割合)とカロリーが同じならば、どんなものを食べるかは問題にはならないか? 例えばハンバーガーとプロテインシェイクの食事と、チキンとブロッコリーとオリーブオイルとアーモンドといった健康的な食事を比べた場合、筋肉と体脂肪について言えば結果は同じか?
A. 身体組成についていえば、食事内容は問題にはならない。食物繊維の摂取量や、固形物か流動食かといったことに伴う満足感の問題が起こる可能性はあるが。健康意識をそれなりに持ち、ジャンクフード中毒者のようには食べない人は気にしなくて良い。
2. 夜に食べると不必要に体重が増加するか? 特に炭水化物を食べると?
A. 脂肪燃焼が、起きている間に多いか寝ている間に多いかは問題にはならない。問題になるのは24時間での脂肪のバランス、つまり脂肪合成と脂肪燃焼の差である。もし昼間あまり食べず、夜多く食べた場合、脂肪燃焼は昼間に多く起こる。逆の食事パターンだったら、夜に脂肪燃焼が多く起こる。結果、24時間での脂肪のバランスは同じになる。その時間帯に何らかの活動をすることでエネルギー摂取の増加が必要になるのでない限りは、昼に多く食べて夜に少なく食べることは、身体組成の変化にとって本質的には役に立つわけではない。
3. ワークアウト後の炭水化物摂取は必要か? タンパク質と脂質を含む食事は同じくらい効果的か? インスリンレベルの急騰が役に立つといった考えは正しいのか。
A. ワークアウト後がアナボリックの好機であるという考え方は、とても誤用され乱用されている。一日に複数回のグリコーゲン枯渇を伴う活動をする持久運動のアスリートでない限りは、ワークアウト前の栄養摂取によりワークアウト後の栄養摂取の緊急性はほぼ無くなる。最近の研究によれば、45gのホエイ・アイソレートの投与は、血中アミノ酸レベルをピークにするのに約50分かかり、それに伴うインスリンレベルの上昇はホエイ投与から40分後にピークになり、投与後120分間は筋分解を抑制する水準を超えたままであった。この投与では、インスリンとアミノ酸レベルが元に戻るまで3時間かかった。炭水化物をこれに加えれば、インスリンとアミノ酸のピークレベルを高くし持続時間をより長くするだろう。
アナボリックチャンスはワークアウト後のごく短い時間だとか、トレーニング中にアミノ酸を摂取しなければならないといった戯言はもうやめよう。ワークアウト前に栄養摂取をしておけば、トレーニング中から血中に栄養素が出回り、それはトレーニング終了後も続く。ワークアウト前の栄養摂取がない場合でさえ、ワークアウト後の食事のアナボリック効果は、ワークアウト前の栄養摂取がないことを補う形で増加する。また最近の研究では、ワークアウト後のタンパク質と炭水化物の投与は、タンパク質のみの投与に比べてネットでの筋肉量をより増やすことは無かった。炭水化物を加える事が逆効果になると言うわけではないが、最適の結果を得るためにはワークアウト後すぐに炭水化物を大量摂取しないといけないという考えは疑わしい。
多くの人が認識していないことは、ワークアウト後に短い時間だけ起こる魔法のようなアナボリックのタイミング(日本だと所謂ゴールデンタイム)なんてものは存在しないということだ。トレーニングを行えば、タンパク質摂取に対する筋肉の反応は少なくとも24時間は続く。
4. 多くの人は、炭水化物の摂取が日々の活動や、ジムでのトレーニングに必要なエネルギーを与えるのに必要であると考えている。脂質とタンパク質で主に構成された食事でも、同じようにエネルギーを与えるのだろうか?
A. 何を目標とするかによる。ざっくりとした言い方をすれば、個人の好みと許容度次第だ。気晴らし程度の運動目的なら、単純に一日のマクロ栄養素の目標を守ることが重要だ。
5. ケトジェニック・ダイエット(厳しい糖質制限ダイエット)は、体脂肪燃焼をより効果的に行うのか? それとも維持カロリー以下の摂取カロリーにすることが最も重要なのか?
A. ケトジェニック・ダイエットは体脂肪減少についてに何ら特別な効果はない。これはコントロールされた長期の研究で繰り返し示されている。よくあるデザインの悪い研究は、タンパク質の摂取量を揃えていないものだ。
タンパク質の摂取量を揃えれば、代謝上わずかに優位性があるのは、炭水化物が多いダイエットだ(理由は書いていないが食事誘導性体熱産生やDNL変換でのロスやレプチンレベルが関係していると考えているのだろうか)。まあともかく、炭水化物中心か脂質中心かについては、どっちかに極端に偏った食事にするのでなく、大雑把な中間的な立場が良いだろう。個人の炭水化物の必要性は許容度や好みや目標によって大きく違う。ある人にとっては炭水化物が少ない方が効果的だし、他の人にとってはそうではない。
6. 複雑な炭水化物と二糖類などのシンプルな炭水化物について。体組成変化を扱う場合になにか違いはあるか。満足感とか。GI値の違いとか。
A. 炭水化物の複雑さと満足感にははっきりとした関連性があるわけではない。しかしながら、含まれる微量栄養素の観点からnon-milk extrinsic sugars(砂糖など)の摂取割合は抑えた方が良いだろう。
GI値についていえば、以下の条件を全て満たさない限りは、糖尿病患者を含む全ての人にとって関係ない。
- 高炭水化物/低タンパク質/低脂質/低食物繊維の食事
- 慢性的なオーバーカロリーの状態
- 座ってばかりで運動せず
7. 玄米や全粒粉にはビタミンやミネラルの吸収を阻害する物質が含まれていて、吸収される栄養的には精製された食品に比べて単に高価格なだけであるというのは本当か?
A. 本当だ。玄米は窒素保持に劣り、生体の利用できる微量栄養素の観点では優位性が無い。
8. 一日の食事回数について。カロリーとマクロ栄養素を満たした場合、一日の食事回数に最善の方法はあるか。
A. 結論から言えば、食事回数は個人の嗜好や許容度や目標に沿って決められるべきだ。食事回数を多くすることに代謝上の優位性は無い。コントロールされた研究で繰り返し示されている。
9. 全卵を食べるとコレステロール値に影響するか?
A. 全卵を食べるとLDL値とHDL値が上昇する傾向がある。しかしこのLDL値の上昇は動脈硬化に対してニュートラルな副画分でのものだ。だからリラックスして良い。全卵に含まれる脂質はちゃんとマクロ栄養素にカウントするように。
10. 一回に吸収できるタンパク質の量に上限はあるのか? そうだと仮定すれば、タンパク質を摂取するベストのタイミングはワークアウト後と朝なのだろうか?
A. いいえ。一日のトータルの摂取量を満たせば、それでうまくいく。
Intermittent Fastingで良い結果を出している人々は一部の成功者なのか、それとも人間の身体は一定時間内の食事で残りの一日を効率的にやっていくことが出来るのか?
A. IFの成功例は、食事を効率的に消化し同化する身体の能力を示している。すごいカラダをしている人は多い食事回数によるものだと人々は思い込んでいるが、それは正しくない。IFの成功例は、人間の身体は我々が認めているよりも賢いという事実を強固にするものだと私は考える。
その他のQA
- もしたくさん飲み食いしてしまったら、どのようにリカバーして元のペースに戻すのがベストか?
A. くよくよせず、目標に向かってこれまでどおりのことをやれ。
- 寝る前にカゼイン摂取は必要か? 他のタンパク質は?
A. 高品質の様々な食材を適切な量食べていれば、寝る前のカゼインは成功にとって重要ではない。どのような高品質のタンパク源も有効。どのみちトータルのタンパク質摂取の一部分でしか無い。
- トータルのタンパク質摂取量が十分な場合、BCAAの摂取は効果があるか?
A. トータルのタンパク質摂取量が十分なら、追加で摂取するBCAAはプラシーボ効果はあるだろう。
- Nutrient-Partitioners(筋肉にエネルギーを送り込んで、脂肪を分解すると謳うサプリメント)は試す価値があるか?
A. 個人的には、人間を対象として体組成やパフォーマンスにポジティブな効果があることを示すエビデンスを見たことがない。ただ全部チェックしたわけではないので、もし見る価値のあるデータがあるなら送ってほしい。
参考:
Nutrition Facts 101: Alan Aragon
http://fitnfly.com/learn-about-food/nutrition-facts
http://fitnfly.com/learn-about-food/nutrition-facts-2
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