5/15/2014
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
タンパク質(プロテイン)の種類によって消化吸収の速度に差が出るというのは広く知られるようになってきていて、サプリメントメーカーもホエイとカゼインを混ぜたファストとスローの両面アプローチを謳う製品を出したりしている。(余談だけど、日本のメーカーのカゼインプロテインパウダーは多くがカゼイネートを使っている。カゼインプロテインの消化吸収の遅さを示す研究で使われるのはミセラーカゼイン。カゼイネートの消化吸収速度はどのくらいだろう? あとで調べた→カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度)
この研究は、タンパク質の消化吸収速度の違いによって、体内でのタンパク質の利用のされかたがどう変わってくるかを調べている。
Hydrolyzed dietary casein as compared with the intact protein reduces postprandial peripheral, but not whole-body, uptake of nitrogen in humans
http://ajcn.nutrition.org/content/90/4/1011.full
比較したタンパク質は以下の2種類。
・IC(intact casein): 未加工カゼインプロテイン(ミセラーカゼイン)
・HC(hydrolyzed casein): 加水分解されたカゼインプロテイン。消化吸収が速い。
摂取の仕方は、カゼインプロテイン(IC/HC)+カーボ(マルトデキストリンとスクロース)+大豆油
上の一つ目の画像は摂取後の血清アミノ酸濃度の変化。加水分解されたカゼインプロテインは消化吸収が速いのでアミノ酸濃度がすぐ上がってすぐ下がる。
それで、今回の目玉が2つめの画像のデータ(TABLE 3)。
- Splanchnic retention : 内臓部分に回されるタンパク質量。
- Peripheral uptake : 周縁部分・・・つまり主に骨格筋に摂取されるタンパク質量。
未加工カゼインプロテインのほうが Peripheral uptake が多い。従って、骨格筋にタンパク質を送り込みたいなら、消化吸収が遅いタンパク質を摂取した方が有利。
この研究は食事直後の身体変化を調べたもの。それではレジスタンストレーニングをしながら長期間に渡って違う種類のタンパク質を摂取した場合は筋肥大に差が出るのだろうか。
これについては、ミルク(ホエイ2割+カゼイン8割)とソイプロテイン(消化吸収が速い)の摂取を比較した研究があって、ミルクの方がより筋肥大したという結果になっている。
Consumption of fat-free fluid milk after resistance exercise promotes greater lean mass accretion than does consumption of soy or carbohydrate in young, novice, male weightlifters1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/86/2/373.long
細かいことを言うと、ミルクとソイプロテインではミルクの方がアミノ酸組成が骨格筋の合成に有利な気がするので、吸収速度のみがファクターになっていないと思うけど、タンパク質摂取量とカロリーは等しくしてあるし、筋肥大に結構差が出てるから吸収速度の影響が大きいのだろう。
レジスタンストレーニング後のミルクとソイの摂取による筋合成反応の違いの研究(acute研究)もあって、アミノ酸供給が続いていた方が筋合成に有利だという結果になっている。
Consumption of fluid skim milk promotes greater muscle protein accretion after resistance exercise than does consumption of an isonitrogenous and isoenergetic soy-protein beverage1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/85/4/1031.full
以上よりタンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響をまとめると、
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方が骨格筋により多くのアミノ酸を届けられる。
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方がより長い時間アミノ酸を身体に供給でき、筋合成を長く続けることができる。
消化吸収が速いタンパク質(ホエイやソイプロテインパウダー)のみを摂取する場合は、3時間おきくらいに多めに摂取するといった方法にすれば、レジスタンストレーニングによる筋肥大効果を十分に享受することが出来るだろう。食事回数を増やしたくない人は、固形物の食事かカゼインプロテインパウダーを摂取すると良い。
あと、骨格筋へのデリバリー効率を考えると、タンパク質単価(g/円)だけでは高たんぱく質食品やプロテインパウダーのコスパは決まらないなあと思った。
関連記事: タンパク質について
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