7/04/2014
筋肥大についてのレビュー論文
A Brief Review of Critical Processes in Exercise-Induced Muscular Hypertrophy
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4008813/
筋肥大についてのレビュー論文。2014年時点の筋肥大についての科学研究の大まかなまとめいったところ。以下、抄訳。(*n)は私のコメント。
★筋肉のタンパク質の更新メカニズム
- 筋繊維の肥大は、筋肉におけるタンパク質バランスの超過と、筋繊維へのサテライト細胞の付着の結果である。
- 筋肉におけるタンパク質バランスの超過は、筋合成が筋分解を上回ることによってもたらされる。
- 運動なしの普通の生活では、食後に筋肉のタンパク質のネットバランスがプラスになり、空腹時にマイナスになり、長期的には筋肉量は一定の水準を保つ。
- レジスタンストレーニングと、食後の血中アミノ酸濃度の高まりの両方が筋合成を刺激する。
- レジスタンストレーニングによる筋合成の増加は少なくとも48時間は続き、トレーニングボリュームが大きければより長く続く。
- 運動後のインスリンレベルの上昇は、筋合成を増大させるというよりも、筋分解を抑制する。
- レジスタンストレーニングは、食事によるタンパク質の合成反応を一時的に増幅させる。運動終了から時間が経つにつれ、食事(アミノ酸供給)への筋合成反応の程度は低下する。(Fig.1)
★タンパク質摂取による筋合成の反応。
- 運動後の時間帯は、血中アミノ酸濃度の高まりが筋合成を大きく増加させる。
- 若い男性がタンパク質を摂取した実験での筋合成の飽和点は、20-25g(必須アミノ酸8.5-10g)程度。(*1)
- 超過分のアミノ酸は酸化される。ただ、筋合成が最大になる前でもある程度は酸化される。
- 血中アミノ酸濃度の上昇は、運動後の筋分解を抑制する。
★タンパク質のクオリティ
- 筋合成のプロセスを推進するのは必須アミノ酸。特にロイシンは筋合成のトリガーの役割を果たす。
- ソイに対するミルクのタンパク質の筋合成優位性は、含有ロイシンの量によってもたらされる。
- ホエイは、カゼインや加水分解されたカゼインよりも大きな筋合成を示した。(*2)
- Fig.2 はロイシンが筋合成のトリガーであるという仮説の概念図。運動はロイシンへの感受性を改善する、すなわち筋合成のトリガーとなるロイシン閾値を下げる。加齢や運動不足はロイシン閾値を上げる(アナボリック抵抗性)。
- 従って、筋合成速度を最大化するには、ロイシン含有率が高く、素早く消化吸収されて血中のロイシン濃度とアミノ酸濃度を急騰させるタンパク質を、運動後に摂取するのが望ましい。
- ただ、ミルク(ホエイ+カゼイン)の摂取が良い結果を出していることは、ファストとスローのプロテインを合わせて摂取することも効果的であることを示している。
★減量時の高タンパク質摂取
- カロリー不足が体重減を決定するというのにはほとんど疑いはないが、体重減には体脂肪と除脂肪体重の減少の割合がどうかというクオリティの問題がある。
- 長期間の自由な食事では高タンパク質の食事でも体重減のクオリティには差がないという研究結果になっている。(*3)
- コントロールされた短期間の実験では、カロリー不足下での高タンパク質の食事は筋肉を維持し体脂肪を多く減らすという結果になっている。
- 運動を伴った減量では、高タンパク質と乳製品の摂取は筋肉を維持し、状況によっては筋肉量の増加をもたらすという結果。
- ただし高タンパク質の食事でも、減量スピードが速いと筋肉量を維持するのは難しい。
★筋合成を増大させるための付加栄養素
- 十分なタンパク質を摂取している場合、それに加えて炭水化物やグルタミンやアルギニン(いわゆるNO系)を摂取しても、筋合成を増加させるというエビデンスはこれまでのところ無い。(*4)
- アルギニンの筋合成への影響を調べた実験では、一時的な成長ホルモンレベルの上昇が観察されたが、他の研究でも示されているように、一時的な成長ホルモンレベルの上昇は筋合成を増加させない。
(*1)消化吸収の速いホエイプロテインパウダーやアミノ酸を摂取すればそうなる。血中アミノ酸濃度が急騰し、筋合成速度の上限に達し、数時間で筋合成レベルが元に戻る。ホールフードならもっと多くのタンパク質を摂取してもゆっくり消化吸収され、長時間筋合成が続くだろう。
(*2)この手の実験はカゼインの消化吸収が終わる前に計測を終えてるのが多いし、筋分解の抑制度合いについては計測していないので、あまりフェアな比較ではない。個人的には、ロイシン含有率が高いほうが筋肥大には優れたタンパク質だと思うけど、消化吸収速度は遅いほうが良いと思う(関連記事参照)。ミルクタンパク質の摂取がソイプロテインの摂取よりも良い結果が出ているのは、カゼインの消化吸収速度が遅いことも影響しているだろう。
(*3)食事内容は自己申告だろうからあまりあてにならない。
(*4)この論文では言及されていないがクレアチンは筋肥大(と運動パフォーマンス)に効果がある。
<感想>
プロテインパウダーやアミノ酸を使ったacuteの研究が多いので、現実へそのまま適用するのはあまり自然ではない。長期的な筋肥大を目指す場合、炭水化物を摂取してグリコーゲンを補充するのと、カロリーを十分に摂取する必要がある(関連記事参照)。それとホールフードの食事では長時間に渡って栄養が供給されるので、運動と食事のタイミングにそれほどシビアになる必要はない。ロイシン含有率については、含有率が低い食品はそのぶん多く摂取すれば良い
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