7/23/2016

筋肥大トレの変数調整

Brad Schoenfeld の新著から(ハードカバー/PDF版)。筋肥大を目的としたトレーニングにおいて、ボリュームや頻度や負荷といった変数をどのように調整するのが良いか。

この本は筋肥大について詳しく知りたい人には非常にお薦めです。Pratical Applications と Key Point と Take-Home Points の欄に結論が簡潔にまとまっているので、そこだけ読んでも参考になると思う。

Lyle McDonald もレビューでexcellentと言っている。


★ボリューム
基本的にはボリュームが多いほうが筋肥大効果は高い。ただしやり過ぎるとオーバートレーニングになり効果が低下する。ボリュームと筋肥大効果の関係は逆U字を描く。

オーバートレーニングを防ぐために、ボリュームを徐々に増やしていき、定期的にボリュームを減らす期間を入れるピリオダイゼーションでトレーニングを行うと良い。

トレーニング経験があまり無い人は、一回のトレーニングセッションで各部位を計40-70レップ(例えば4セット×10レップで計40レップ)。上級者はその倍くらいまでやる必要があるかもしれない。筋肉量が多くなるほど、さらに筋肉量を増やすためには多くのボリュームが必要になる。


★頻度
各部位を週に2-3回トレーニングするのが良いだろう。分割してトレーニングすることでセッション当たりの各部位のボリュームを増やすことが出来る。


★負荷
負荷の強さをレップレンジで3つに分けると、
高負荷・低レップ: 1-5RM
中負荷・中レップ: 6-12RM
低負荷・高レップ: 15RM以上

どのレップレンジでも十分なボリュームのトレーニングを行えば、ほぼ同等の筋肥大効果が得られる。

高負荷・低レップはほぼATP-CP系の運動になるので、その筋肥大効果はメカニカルテンションによるものになる。高負荷・低レップを筋肥大目的で行うとなると、各種目3レップ×10セットとかをやることになり、トレーニング時間が長い、怪我のリスクが高い、疲労感が強いといったデメリットがある。ただ神経系を適応させ高重量を扱えるようにしておくと、中負荷・中レップでも扱える重量が伸び、より質の高いトレーニングを行うことが出来る。ある程度は高負荷・低レップもやっておくと良いだろう。

低負荷・高レップは解糖系の寄与が高くなり、その筋肥大効果は主に代謝ストレスによるものになる。メカニカルテンションはそれほど与えられない。低負荷・高レップのトレーニングを行うことで遅筋の発達が狙え、また代謝物質への耐性を上げることで中負荷・中レップのトレーニングでより多くのレップをこなすことができるようになる。従ってこのレップレンジでもある程度のトレーニングを行ったほうが良いだろう。

中負荷・中レップは、メカニカルテンションと代謝ストレスの両方を筋肉にバランス良く与えることが出来る。時間が長くならない、怪我のリスクが低い、高負荷のような疲労感もなく低負荷のような追い込みのキツさもない、といったメリットがある。筋肥大目的ではこのレップレンジを中心にトレーニングを行うのが良いだろう。


★種目の選択
神経系が適応し各モーターユニットが協調動作をするようになり十分な負荷を筋肉に与えることが出来るようになってから、本格的な筋肥大が始まる。従って、初心者はまずは少ない種目を繰り返し練習し、安全に効率よく筋肉に負荷をかけられるフォームを身につける必要がある。フリーウェイトのフォームが難しい場合は、まずはマシンでトレーニングを行い、後でフリーウェイトに移行するのも良い。

各種目のフォームを身につけたら、多角的に色々な種目で、マシンもフリーウェイトも単関節も複合関節も行いながら、全身の筋肉を包括的に鍛える(ボディビル目的の場合)。


★コンセントリックとエキセントリック
コンセントリックとエキセントリックは筋肥大のシグナルの経路が異なり、筋繊維の適応の仕方にも違いが見られる。従ってコンセントリックとエキセントリックの両方をトレーニングに組み入れた方が良いだろう(重りをコントロールしながら普通に挙げて下ろせばOK)。アイソメトリックも加える必要があるかは現状の研究からはわからない。


★セット間インターバル
短いインターバルと長いインターバルの筋肥大への効果を比較した研究では、長いインターバルの方が筋肥大効果が大きいという結果が得られている。これは長いインターバルの方がセット間に回復でき、トータルのトレーニングボリュームが大きくなったからだと思われる。コンパウンド種目は少なくとも2分はインターバルをとったほうが良いだろう。

代謝ストレスを与えるには60-90秒程度の短いインターバルの方が良いと考えられる。また短いインターバルのトレーニングを続けていると適応が起こり、短いインターバルでもボリュームを維持できるようになる可能性があるので、短いインターバルのトレーニングを部分的に組み込むのも良いだろう。


★挙上テンポ
現状のエビデンスでは、下ろしてから挙げるまでの時間が0.5-6秒の間なら筋肥大への効果はほとんど違いが無い。10秒を越えるゆっくりとした動作になると筋肥大効果は低下する。


★種目の実施順序
一般的に大筋群からトレーニングを行うべきと言われているが、小筋群を先に行った場合に比べて優れた筋肥大効果を得られるとは研究では示されてはいない。

トレーニングを最初に行った部位がより筋肥大効果を得やすいので、特に鍛えたい部位や発達が遅れている部位を最初にトレーニングすると良いだろう。


★動作範囲(フルレンジかパーシャルか)
アームカールやニーエクステンションといった単関節の動作であっても、関節の角度によって負荷が強くかかる筋肉の部分が異なってくる。フルレンジで動作を行った方がより広範囲の筋肉に負荷をかけ高い筋肥大効果を得られるだろう。

また筋肉が引き伸ばされた状態での負荷は筋肥大効果が高い。これもフルレンジで高い筋肥大効果を得られる要因になる。パーシャルを組み込むなら筋肉が引き伸ばされるレンジで行うと良いだろう(ストレッチ度が強いレンジでは低負荷でやるのが安全。例えばダンベルフライ)。


★セット毎の追い込み度(限界までやるべきか)
85% 1RMといった高い強度のトレーニングでは、限界の1レップか2レップ手前で止めても高い筋肥大効果を得られるようだ。高負荷ではセットの序盤からモーターユニットがフル動員され、筋繊維に強いメカニカルテンションがかかる。

低負荷・高レップでは限界近くまでやった方が良いだろう。低負荷では限界に近づくにつれてモーターユニットの動員率が高まり、代謝ストレスも強くなる。

高負荷・低レップと中負荷・中レップも限界までやった方が筋肥大効果はいくらかは高いだろうけど、常に全セットを限界までやり続けるとオーバートレーニングのリスクが高まる。(コストに見合った利益を得られない)

限界までやるのは、セットや期間を限定して行うのが良いだろう。例えば、最初の期間は全セットを限界の1レップか2レップ手前で止める、次の期間は最後のセットだけ限界まで行う、そして次の短い期間に大部分のセットを限界まで行う。


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