8/28/2016

プラトー打破とピリオダイゼーション


★トレーニングへの適応モデル
(1) 下図の左側のバケツが運動能力を表す。運動能力には様々な面がある。ストレングス、パワー、スピード、アジリティ、筋持久力、全身持久力など。その他にもそのスポーツ独自のスキル、チームプレイのスキルなど。

右側のジョウロがワークキャパシティを表す。ワークキャパシティとは、トレーニングセッションでどれだけトレーニングをこなせるか、次のトレーニングセッションまでにどれだけ回復できるか。ジョウロの中の水が体力で、図では体力が十分に満ちている状態。

(2) 運動能力のバケツを満たすだけのトレーニングを継続的に実施する。バケツに水(体力)を注ぎ込むイメージ。

(3) 運動能力が向上する。バケツのサイズが大きくなるイメージ。

(4) さらに向上し続けるには、強度とボリュームを上げたトレーニングを実施する必要がある。これにはより多くの体力を必要とする。

レジスタンストレーニングの例だと、スクワット3セット×8レップで向上しなくなったら(重量が伸びなくなったら)、スクワット5セット×8レップにしたり、レッグプレス2セット×8レップを加えたりする。順調に向上が続いている間は、ボリュームは無理に増やさない方が良い。その時点の運動能力の向上に必要な水準を大幅に越えるボリュームをこなしても、次のトレーニングセッションまでに体力が回復せず、長期的なトレーニング効果が低下する。





★プラトー
ある程度運動能力が向上すると、ワークキャパシティが足りなくなり、さらなる向上が難しくなる。この運動能力の向上が停滞した状態をプラトーと言う。






◇◇◇プラトーを打ち破るには◇◇◇


★運動能力の分割
運動能力を分割することで、それぞれの運動能力の向上にワークキャパシティが足りるようになる。一般的なスポーツ、例えばサッカーだったら、最初はゲームをプレイし続けることで、サッカーに必要な運動能力はある程度は向上する。しかしそのままでは上達が止まるので、持久力やアジリティなどの基礎能力を向上させる練習、パスやドリブルやシュートなどボールを扱うスキルを向上させる練習、チームプレイのスキルを向上させる練習などに分けて、それぞれの運動能力を向上させていく。(スポーツでは分割して反復練習した方がスキルの習得が容易という理由もある)

レジスタンストレーニングの例だと、最初は毎回のトレーニングセッションでBIG3+αを行い全身をトレーニングしていたのを、例えば上半身と下半身に分割して別の日にトレーニングする。そうすることで、各部位の強度とボリュームを上げることができ、向上を続けることが出来る。






★期間を分けて各運動能力を強化
数週間~数ヶ月の期間に分けて、それぞれの運動能力を集中的に強化していく。強化対象ではない運動能力は、何もしないと衰えていくので、維持のためのトレーニングを並行して行う。運動能力の維持に必要なトレーニングは、向上に必要な量よりもずっと少なくて済む。スポーツでは一般的には、土台となる基礎体力から始めて、基礎スキル、高度なスキル、コンディションを整えて試合に臨む、といった順番になる。

レジスタンストレーニングの例だと、中レップ(6-12レップ)のトレーニングを高ボリュームで行って筋肥大を目指す期間と、低レップ(1-5レップ)のトレーニングを行いストレングスの向上を目指す期間に分ける。また体力や時間の制約で全身の筋肉を同時に成長させるのが難しい状況では、特定の部位を集中的に強化し、他の部位は維持を目的として軽くトレーニングする方法もある。





★ワークキャパシティの拡大
プラトー打破の手段としては、運動能力を分割する以外にも、ワークキャパシティを大きくするというアプローチもある。運動能力を細かく分割しすぎても、各運動能力のトレーニング頻度が下がりトレーニング効果を得られなくなるので、いずれにせよ継続的な向上のためにはワークキャパシティを大きくする必要がある。ワークキャパシティを大きくするには、一般的に低強度・高ボリュームのトレーニングを行う。

レジスタンストレーニングでは、中レップと高レップ(15レップ以上)のトレーニングを多く行ったり、有酸素運動を行うことでワークキャパシティは大きくなる。低レップ中心のトレーニングをしている人は、プラトーが訪れたらワークキャパシティの拡大を意識すると良い。



★トレーニングの強弱
運動能力が向上するにつれ、さらなる向上にはよりハードなトレーニングが必要になる。しかしハードなトレーニングを連続すると体力の回復が追いつかなくなり、運動能力を向上させられるだけのトレーニングが行えなくなる(下図(3))。これを避けるために、トレーニングの強度とボリュームを下げる期間を挟んだり、休息を入れたりする。例えば、2週間はハードにトレーニングを行い、1週間は軽いトレーニングを行う、または一週間のうちでハードにトレーニングする日と軽くトレーニングする日を設ける。

体力を回復させずにハードトレーニングを続けると、そのトレーニングは体感ではハードだが実際には運動能力を向上させるほどハードではないので、停滞が続くことになる。体感でハードなトレーニングを行えているかどうかではなくて、運動能力のバケツを満たすだけのトレーニングを行えているかを考える必要がある。






関連記事:
筋肥大トレのピリオダイゼーション

8/20/2016

増量と減量の移行期

増量から減量に移行するときも、減量から増量に移行するときも、すぐに切り替えるのではなくて2-4週間の移行期を入れると上手くいきやすい。

元ネタ
 ↓
The Transition Phase Between Dieting and Gaining
http://www.bodyrecomposition.com/fat-loss/transition-phase-between-dieting-gaining.html/


★増量から減量への移行
・目的
- ハードなトレーニングを止めた後も、増量期のトレーニング効果はある程度は続いているのでそれを回収する。
- 有酸素運動など減量期に行うトレーニングに慣れておく。

・期間
- 2-4週間

・食事
- 維持カロリーにする。
- タンパク質摂取量を少し増やす。ここでは体脂肪率15%以下の男性で除脂肪体重1ポンドあたり1.2gが推奨されている。
- 炭水化物と脂質はほどほどに摂取。

・トレーニング
- 高レップトレや有酸素運動など、減量期に取り入れるトレーニングに慣れておく。
- 高強度トレ(低中レップ)のボリュームを減らして疲労を抜く。減量期は回復力が弱まるので疲労を抜いておいたほうが良い。

移行期の後は、摂取カロリーを減らせばそのまま減量期が始まる。


★減量から増量への移行
・目的
- 減量により代謝が低下しているので、いきなりオーバーカロリーにすると体脂肪が増えやすい。
- 維持カロリーにし体脂肪を増やさないようにしつつ、内分泌系を回復させる。内分泌系が回復してくると代謝も戻ってきて消費カロリーも上昇していく。

・期間
- 2-4週間

・食事
- 維持カロリー。ただし減量前よりも消費カロリーは低下しているので気をつけること。体重から想定される消費カロリーに0.9を掛けた摂取カロリーにするか、減量中のカロリーから徐々に摂取カロリーを増やしていく。体脂肪が増えない限りは、摂取カロリーを少しずつ増やしていく。
- 最初の数日間はグリコーゲンと水分が蓄えられることで一気に体重が増えるが、体脂肪が増えているわけではないので焦らないように。体脂肪を1kg増やすのには7500kcal程度のカロリー超過が必要。どか食いしない限りは、短期間にそんなにカロリー超過しない。
- タンパク質の摂取量について。維持カロリーでは身体が必要とするタンパク質摂取量は減るが、タンパク質摂取量を多めにすることで食欲の爆発を抑えやすくなる。減量終了後に摂取カロリーを増やすときは食欲が爆発しやすく、コントロールを失ってどか食いすると一気に体脂肪が増えてしまう。減量後の移行期は減量中と同程度のタンパク質摂取量にするのが推奨される。
- 炭水化物は最低でも120-150gは摂取すること。レプチンと甲状腺ホルモンの回復のため。
- 体脂肪が蓄えられやすくなっているので、脂質は少なめ。総カロリーの20-25%程度が目安。

・トレーニング
- 減量中にHITをやっていた場合は、回復のために止める。高レップトレも無くしても良い。
- 有酸素運動を減らす。ただ有酸素運動をある程度は続けておくと、食欲のコントロールを失った場合の摂取カロリー増加を相殺できる。
- 低中レップトレのボリュームを徐々に増やしていく。強度(重量)は下げても良い。維持カロリーに戻しているので、強度を下げても筋肉は減りにくい。強度を下げることで疲労を抜き、増量期でのハードトレーニングに備える。移行期の終盤に向けて再び強度を上げていく。

8/13/2016

増量の考え方

★増量の基本
摂取カロリー>消費カロリー にする。カロリーの余剰分が体重増加になる。体重増加は、除脂肪体重の増加と体脂肪の増加によって起こる。


★増量時の消費カロリー増加の要素
・トレーニング量
多くトレーニングをすればそれだけ多くカロリーを消費する。それまで特に運動習慣が無く新たにトレーニングを開始する人は、トレーニングで増える消費カロリー分を食べる必要がある。

・筋肉合成
初心者ほどカロリーが必要。適応しないといけない組織が多いし、筋肉が増えるスピードが速い。

・カロリー超過による無駄消費
摂取カロリーを増やすと消費カロリーも増える。研究では1000kcal超過で、平均で500kcal程度の消費カロリー増加が見られた。まず食事誘発性熱産生で5-10%くらいが消える。基礎代謝も少し増える。あとの大部分はNEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)による無駄消費だけど、これがかなり個人差がある。NEATで無駄消費しやすい体質の人が体重を増やすには、より多くのカロリーを摂取する必要があるだろう。


★初心者
筋肉量が少なく体脂肪が多い初心者の場合は、筋肉増加と体脂肪減少を同時に行える。トレーニング開始前と同じかやや多めのカロリー摂取にすると良い。体脂肪率が低い初心者が本格的にトレーニングを開始する場合は、カロリー摂取を1日あたり1000kcal以上増やす必要があるだろう。


★中級者以降
摂取カロリーを維持カロリーから300-1000kcal程度増やすと良いだろう。上級者になるほど筋肉の増加ペースが下がるので、カロリー超過も少なくする必要がある。


★マクロ栄養素
ボディメイク目的の筋トレのみ行うのなら、タンパク質は一日に体重1kgあたり2gで十分。カロリー超過は炭水化物と脂質の摂取をを増やすことで行う。

ハードな筋トレを行うには炭水化物を摂取してグリコーゲンを蓄えておく必要があるので、炭水化物を十分に摂取する。また適切なホルモンレベルを保つのにある程度の脂質が必要なので、脂質もある程度は摂取しないといけない。肉や魚や卵や乳製品といった高たんぱく質食品は脂質が付随するものが多いので、これらを食べていれば脂質は十分に摂取できているはず。

グリコーゲン貯蔵を満たし力の入ったトレーニングが行えているなら、あとは炭水化物と脂質の割合は適当で良いが、一般的には炭水化物多めの方がやりやすいと思う。カロリーを足す時の計算も楽。例えば米1合で約500Kcal、パスタ乾麺100gで400kcal弱。


★トレーニングを行わない日にもカロリー超過すべきか
トレーニングの翌日も筋合成は続くし、EPOC(Excess post-exercise oxygen consumption)により消費カロリーも増加している。週に3日以上トレーニングを行うなら、トレーニングを行わない日もカロリー超過した方が良い。トレーニングを行う日から少し減らす程度で良いだろう。


★体重増加ペースの目安
筋肉の増加するペースについて、Lyle McDonaldやAlan AragonやEric Helmsの出している数字を参考にすると、

一ヶ月あたりの筋肉増加ペース
初心者: 体重の1.0-1.5%
中級者: 体重の0.5-1.0%
上級者: 体重の0-0.5%

なるべく速く筋肉を増やすには、体脂肪もある程度は増える覚悟でカロリーを増やす必要がある。その場合はこの筋肉増加ペースを1.5~2倍したペースで体重が増えると良いだろう。体脂肪をなるべくつけないようにするにはゆっくり増量した方が良いが、その場合の筋肥大速度はポテンシャルよりも低くなる。

これらの数字は、週に3日以上のトレーニング日を設け、コンパウンド種目主体で全身を本格的にトレーニングする人の場合。身体の一部分しかトレーニングしなかったりトレーニングボリュームが少なかったりする場合は、このペースで体重を増やすと体脂肪がつきすぎる。

同程度のトレーニング歴であっても、筋肥大速度には個人差がある。自分の身体の変化とトレーニング重量の伸びを観察しながら調整していくのが良い。体重増加ペースが速過ぎると、体重増加の大部分が体脂肪増加によるものになってしまう。悪くとも、除脂肪体重と体脂肪が1:1のペースで増えていくようにしたい。


★ウェストでの判断
個人的には男性は一ヶ月あたりのウェスト増加が1cm以内を目安にするのが良いと思う。男性はウェストに体脂肪率が如実に表れる。ウェストが増えないで体重がどんどん増えていくならそれがベストだけど、体重が増えないようだったら摂取カロリーを増やしてウェストを増加させる。

体重とウェストは毎日同じコンディションで測定する。起床して排尿を済ませた後が一般的だろう。過去1週間の平均値で増減を判断すると良い。


★ボディメイクの体脂肪率範囲
ボディメイクは体脂肪率12-15%のレンジでやるのが多くの人にとって良いだろう。体脂肪率の判断は、下のようなよくある画像を参考にして、見た目でのざっくりした判断で良い。もしくは体脂肪率の下限を自分が楽に減量できるところまで、体脂肪率の上限を自分が見た目的に許容できるところまで、でも良いだろう。下限と上限の体脂肪率とリンクした自分のウェストサイズを覚えておくと、管理がしやすいと思う。



体脂肪率が高いとインスリン感受性の低下などで筋肉が増えにくく、体脂肪が増えやすくなる恐れがある。また見た目も悪いし、健康にも良くない。逆に自分の身体が無理なく維持できる水準よりも体脂肪率を低くすると、身体が飢餓に抵抗することで、体脂肪が増えやすく筋肉が増えにくくなる。一般的には、無理なく維持できる体脂肪率の下限は10-12%くらい。体質に恵まれている人は10%以下でも無理なく維持できるだろうけど、そういう人は少数。

体脂肪率が高めの人は10%台前半まで落としてから増量⇔減量サイクルに入ると効率が良いと思う。ただ、体脂肪率がかなり高い状態が何年も続いていると、無理なく維持できる水準が上がっていて、10%台前半まで落とすのがきついかもしれない。

中級者以降の人も、カロリー収支ギリギリでも筋肉は増えていくだろうけど、長期的に見て筋肉量を出来るだけ速く増やすなら、増量⇔減量サイクルを繰り返すのが良いだろう。体脂肪率12-15%のレンジだったら減量はサクッと終わる。


関連記事:増量に必要なカロリー

8/05/2016

増量に必要なカロリー

増量に必要なカロリーの参考として、レジスタンストレーニングとカロリー超過を組み合わせた研究を見てみる。研究の数が少なく、とりあえずこれしか見つからない。

研究の限界としては、トレーニング期間が2,3ヶ月で、この期間での除脂肪体重の増加量が誤差の大きい体組成測定でまともに検出できるのだろうかという点。除脂肪体重と体脂肪の変化が有意差があるかどうかだけではなく、傾向としてはどうなのかを見ていく。

またいずれの研究も通常食のマクロ栄養素と摂取カロリーの算出は、自己申告の食事内容を元にしている。食べ物の量り方を指導はしているが、研究者側が管理しているわけではないので摂取カロリーは正確ではない。追加のカロリーとして与えられている分は管理されているので正確。


★初心者
Effects of high-calorie supplements on body composition and muscular strength following resistance training
https://www.researchgate.net/publication/11281926_Effects_of_high-calorie_supplements_on_body_composition_and_muscular_strength_following_resistance_training

被験者:トレーニング歴の無い人。全員が若い男性。
平均は身長170cm台、体重70kg後半

トレーニングは週に4回。1回あたり60-90分。コンパウンド主体で全身を二分割法でトレーニングする本格的な内容。
トレーニング期間は8週間

通常食の摂取カロリーは2200-2500kcalくらい。これに2000kcalを加える。
グループ1:通常食+2000kcal(タンパク質+炭水化物)
グループ2:通常食+2000kcal(炭水化物のみ)
グループ3:通常食

炭水化物のみ加えたグループ2もタンパク質を計1.7g/kg/day程度摂取しているのでタンパク質は十分な摂取量。

身体組成変化


カロリー超過グループは両方とも除脂肪体重が3kg前後増えて、体脂肪量はほぼ変わらずという結果になっている。ただ体組成測定の方法は水中体重測定法なので誤差が結構ありそう。ウェストが1cm前後増えているので実際には体脂肪がそれなりに増えていると思われる。

体重3kg増やしてウェスト+1cmなら良いペースだと思う。スタートラインの体脂肪率が低くて(15%以下)、体格が良い若い男性が本格的なトレーニングを始めるなら、このくらいのカロリー超過でも良いかもしれない。プラス2000kcalだと体脂肪もそれなりに増えそうなので、普段の食事にプラス1500kcalでも良いかも。

かなり大雑把な数字だけど、消費カロリーが新たに始めたトレーニングで500kcal増え、オーバーカロリーによるNEATなどの無駄消費で500kcal増え、筋肉の修復や増加で500kcal増えるとすると、合わせて1500kcalは消費カロリーが増えてもおかしくない。ただこの研究のトレーニング内容はトレーニング歴が無い人にはハードな内容だと思うので、そんなにトレーニングしない人はもっと摂取カロリーを減らした方が良い。

カロリーを足してないグループは除脂肪体重+1.4gで体脂肪-0.8kg、ウェストが-0.2cm。筋肉をなるべく増やすという点ではカロリー超過グループに劣るけど、筋肉が増えて体脂肪が減ってるっぽいので、体組成の組み換えはうまくいっている。


★中級者
この論文は書いていることが色々と変なんだけど、データだけ参考にさせてもらう。

Daily Overfeeding from Protein and/or Carbohydrate Supplementation for Eight Weeks in Conjunction with Resistance Training Does not Improve Body Composition and Muscle Strength or Increase Markers Indicative of Muscle Protein Synthesis and Myogenesis in Resistance-Trained Males
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4763837/

被験者:少なくとも1年はトレーニング歴のある若い男性
平均は身長約180cm、体重80kg台

トレーニングは週に4回
トレーニング期間は8週間

通常食のカロリーは2500kcal前後。これに1248kcalを加える。
グループHPC(11人):通常食+1248kcal(タンパク質+炭水化物+少量の脂質)
グループHC(10人):通常食+1248kcal(炭水化物のみ) 

身体組成変化

体重
グループHPC:+3.83kg
グループHC:+1.42kg

体脂肪量
グループHPC:+1.36kg
グループHC:+1.51kg

除脂肪体重
グループHPC:+2.28kg
グループHC:+0.25kg

被験者数が少ないせいか、両グループともに除脂肪体重の増加は有意差無しだけど、HPCグループは除脂肪体重が増加傾向。しかし体脂肪も結構な増加。カロリー超過はもっと少なくて良いと思う。HCグループはタンパク質摂取量が1g/kg/day程度になっていてこれではタンパク質が足りない。このためか除脂肪体重もほぼ増えない傾向となっている。


★上級者
Effect of nutritional intervention on body composition and performance in elite athletes
http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17461391.2011.643923

対象
ノルウェーのエリートアスリート。男性9割。3分の2がアイスホッケー選手。
平均は身長約180cm、体重70kg台。

週に体重が0.7%増えることを目標とした。栄養指導グループ(NCG)と自己管理グループ(ALG)に分け、栄養指導グループは専門家の指導を受け、自己管理グループは各自自由に食べた。

レジスタンストレーニングは週に4回(それ以外に各々の競技のトレーニングを行っている)
トレーニング期間は平均9.9週間

結果として栄養指導グループは通常食(約3000kcal)に約500kcalのカロリーが加わる形になった、自己管理グループはカロリーは変わらず。

身体組成変化

体重
栄養指導グループ+2.7kg
自己管理グループ+1.2kg

除脂肪体重
栄養指導グループ+1.7kg
自己管理グループ+1.2kg

除脂肪体重脚
栄養指導グループ+0.5kg
自己管理グループ+0.0kg

除脂肪体重上半身
栄養指導グループ+1.1kg
自己管理グループ+1.1kg

体脂肪
栄養指導グループ+1.1kg
自己管理グループ+0.2kg

1RMの伸びは両グループで有意差無し

全身の除脂肪体重と体脂肪の変動を見ると、栄養指導グループの方が体重と体脂肪量が増えた。除脂肪体重は有意差無しだが、栄養指導グループの方が増える傾向があった。自己管理グループはほぼ除脂肪体重だけ増えているので、効率が良いと言える。ただ自己管理グループは脚の除脂肪体重が増えていない。アスリートなので脚は鍛え込まれていて、体脂肪増加覚悟のカロリー超過にしないと増量が難しいのかもしれない。
論文の結論は、アスリートでは500kcalの超過だと体脂肪が増えやすいみたいだから、200-300kcalの超過が良いかもとのこと。


関連記事:増量の考え方 

7/27/2016

遅発性筋肉痛について

遅発性筋肉痛(運動後に起こる普通の筋肉痛)について

ネタ元
 ↓
The Science of Sore – DOMS explained
http://strengtheory.com/doms/


★遅発性筋肉痛とは
- 不慣れな運動をすると起きやすい。程度にもよるが、痛みは運動後早いと8時間後くらいから出て、ピークは48-72時間後。
- 主に遅筋の筋繊維のダメージ。それほど深刻なダメージが起きているわけではない。(深刻なダメージがあれば即座に強い痛みが出る)
- 筋繊維のダメージが関係はしているが、筋繊維の実際のダメージと痛みの強さの相関は強くない。めちゃくちゃ痛いからといって、筋繊維がズタズタになっているわけではない。
- エキセントリック運動で筋繊維のダメージは起きやすい。筋肉痛を扱った研究の多くは、トレーニング歴のない被験者にたくさんのエキセントリック運動をやらせている。
- 代謝ストレスによっても筋肉痛は起こるようだ。代謝ストレスといっても乳酸のことではなくて、水素イオンと活性酸素種が筋肉痛を引き起こす可能性がある。これらの物質が筋鞘(細胞膜)にダメージを与え、細胞内に水分を引き込むことで細胞が膨張し炎症を起こす。
- 研究者の間では、一つの要因が遅発性筋肉痛を引き起こすのではなくて、いつくかの複合的な要因が遅発性筋肉痛を引き起こすと考えられている。


★筋肉痛は成長の指標?
- 激しい筋肉痛になったからといって筋肉がもりもり増えるわけではない。長距離のランニングでも激しい筋肉痛になるが、ランニングでは筋肉もりもりにならない。
- 激しい筋肉痛になると次のトレーニングに悪影響が出て長期的な筋肉の成長を妨げる。フォームが変わったり、筋肉に負荷をかけられなかったりする。従って筋肉痛を目指してトレーニングはしない方が良い。
- 筋肉痛の間に運動を行ってもダメージを悪化させるわけではないようだが、回復を遅らせるかもしれない。


★なぜ痛みを感じるのか
- 侵害受容器が刺激をキャッチすると痛みの信号を脳に伝える。
- 筋肉組織においては、侵害受容器は炎症といった化学的な刺激や血管への微小循環の撹乱を感知する。
- 侵害受容器は筋肉の内側には無い。なぜなら筋肉細胞が死んでも痛くないから。
- 一方で、筋肉が断裂するとものすごく痛い。これは侵害受容器が存在する場所へ筋肉内の基質が放出されることによる。
- 以上から遅発性筋肉痛は筋肉細胞内の収縮器官に関連して起こるものではないだろうと考えられる。


★筋肉痛を減らすには
- 慣れていない運動をするときは、最初は軽めにして徐々に慣らしていく。
- 運動前のウォームアップやストレッチは、運動後の筋肉痛を減らしはしない。(もちろん怪我のリスク低減やパフォーマンス向上のためにウォームアップやストレッチはやったほうが良い)
- フォームローラーはマッサージと同じ効果があり、筋肉痛からの回復を早める効果があるかもしれない。


★筋肉痛を減らすサプリメント
- 運動の1時間前のカフェイン摂取で、運動後の筋肉痛の程度が低くなったという研究がある。ただ体重1kgあたり5mgという多量のカフェイン摂取が効果的とのこと。
- オメガ3脂肪酸は炎症を抑える効果があり、筋肉痛を和らげるのにも効果があるようだ。
- タウリンも効果があるかも。
- クライオセラピー(冷却療法)は筋肉痛を減らしたり回復を早めたりはしないようだ。運動後に冷水に浸かる(摂氏10度の冷水に10分間)と筋肉の成長が鈍くなるという研究もあるので、運動後に筋肉を冷やすのは筋肥大目的の場合は止めておいたほうが良さそう。

7/23/2016

筋肥大トレの変数調整

Brad Schoenfeld の新著から(ハードカバー/PDF版)。筋肥大を目的としたトレーニングにおいて、ボリュームや頻度や負荷といった変数をどのように調整するのが良いか。

この本は筋肥大について詳しく知りたい人には非常にお薦めです。Pratical Applications と Key Point と Take-Home Points の欄に結論が簡潔にまとまっているので、そこだけ読んでも参考になると思う。

Lyle McDonald もレビューでexcellentと言っている。


★ボリューム
基本的にはボリュームが多いほうが筋肥大効果は高い。ただしやり過ぎるとオーバートレーニングになり効果が低下する。ボリュームと筋肥大効果の関係は逆U字を描く。

オーバートレーニングを防ぐために、ボリュームを徐々に増やしていき、定期的にボリュームを減らす期間を入れるピリオダイゼーションでトレーニングを行うと良い。

トレーニング経験があまり無い人は、一回のトレーニングセッションで各部位を計40-70レップ(例えば4セット×10レップで計40レップ)。上級者はその倍くらいまでやる必要があるかもしれない。筋肉量が多くなるほど、さらに筋肉量を増やすためには多くのボリュームが必要になる。


★頻度
各部位を週に2-3回トレーニングするのが良いだろう。分割してトレーニングすることでセッション当たりの各部位のボリュームを増やすことが出来る。


★負荷
負荷の強さをレップレンジで3つに分けると、
高負荷・低レップ: 1-5RM
中負荷・中レップ: 6-12RM
低負荷・高レップ: 15RM以上

どのレップレンジでも十分なボリュームのトレーニングを行えば、ほぼ同等の筋肥大効果が得られる。

高負荷・低レップはほぼATP-CP系の運動になるので、その筋肥大効果はメカニカルテンションによるものになる。高負荷・低レップを筋肥大目的で行うとなると、各種目3レップ×10セットとかをやることになり、トレーニング時間が長い、怪我のリスクが高い、疲労感が強いといったデメリットがある。ただ神経系を適応させ高重量を扱えるようにしておくと、中負荷・中レップでも扱える重量が伸び、より質の高いトレーニングを行うことが出来る。ある程度は高負荷・低レップもやっておくと良いだろう。

低負荷・高レップは解糖系の寄与が高くなり、その筋肥大効果は主に代謝ストレスによるものになる。メカニカルテンションはそれほど与えられない。低負荷・高レップのトレーニングを行うことで遅筋の発達が狙え、また代謝物質への耐性を上げることで中負荷・中レップのトレーニングでより多くのレップをこなすことができるようになる。従ってこのレップレンジでもある程度のトレーニングを行ったほうが良いだろう。

中負荷・中レップは、メカニカルテンションと代謝ストレスの両方を筋肉にバランス良く与えることが出来る。時間が長くならない、怪我のリスクが低い、高負荷のような疲労感もなく低負荷のような追い込みのキツさもない、といったメリットがある。筋肥大目的ではこのレップレンジを中心にトレーニングを行うのが良いだろう。


★種目の選択
神経系が適応し各モーターユニットが協調動作をするようになり十分な負荷を筋肉に与えることが出来るようになってから、本格的な筋肥大が始まる。従って、初心者はまずは少ない種目を繰り返し練習し、安全に効率よく筋肉に負荷をかけられるフォームを身につける必要がある。フリーウェイトのフォームが難しい場合は、まずはマシンでトレーニングを行い、後でフリーウェイトに移行するのも良い。

各種目のフォームを身につけたら、多角的に色々な種目で、マシンもフリーウェイトも単関節も複合関節も行いながら、全身の筋肉を包括的に鍛える(ボディビル目的の場合)。


★コンセントリックとエキセントリック
コンセントリックとエキセントリックは筋肥大のシグナルの経路が異なり、筋繊維の適応の仕方にも違いが見られる。従ってコンセントリックとエキセントリックの両方をトレーニングに組み入れた方が良いだろう(重りをコントロールしながら普通に挙げて下ろせばOK)。アイソメトリックも加える必要があるかは現状の研究からはわからない。


★セット間インターバル
短いインターバルと長いインターバルの筋肥大への効果を比較した研究では、長いインターバルの方が筋肥大効果が大きいという結果が得られている。これは長いインターバルの方がセット間に回復でき、トータルのトレーニングボリュームが大きくなったからだと思われる。コンパウンド種目は少なくとも2分はインターバルをとったほうが良いだろう。

代謝ストレスを与えるには60-90秒程度の短いインターバルの方が良いと考えられる。また短いインターバルのトレーニングを続けていると適応が起こり、短いインターバルでもボリュームを維持できるようになる可能性があるので、短いインターバルのトレーニングを部分的に組み込むのも良いだろう。


★挙上テンポ
現状のエビデンスでは、下ろしてから挙げるまでの時間が0.5-6秒の間なら筋肥大への効果はほとんど違いが無い。10秒を越えるゆっくりとした動作になると筋肥大効果は低下する。


★種目の実施順序
一般的に大筋群からトレーニングを行うべきと言われているが、小筋群を先に行った場合に比べて優れた筋肥大効果を得られるとは研究では示されてはいない。

トレーニングを最初に行った部位がより筋肥大効果を得やすいので、特に鍛えたい部位や発達が遅れている部位を最初にトレーニングすると良いだろう。


★動作範囲(フルレンジかパーシャルか)
アームカールやニーエクステンションといった単関節の動作であっても、関節の角度によって負荷が強くかかる筋肉の部分が異なってくる。フルレンジで動作を行った方がより広範囲の筋肉に負荷をかけ高い筋肥大効果を得られるだろう。

また筋肉が引き伸ばされた状態での負荷は筋肥大効果が高い。これもフルレンジで高い筋肥大効果を得られる要因になる。パーシャルを組み込むなら筋肉が引き伸ばされるレンジで行うと良いだろう(ストレッチ度が強いレンジでは低負荷でやるのが安全。例えばダンベルフライ)。


★セット毎の追い込み度(限界までやるべきか)
85% 1RMといった高い強度のトレーニングでは、限界の1レップか2レップ手前で止めても高い筋肥大効果を得られるようだ。高負荷ではセットの序盤からモーターユニットがフル動員され、筋繊維に強いメカニカルテンションがかかる。

低負荷・高レップでは限界近くまでやった方が良いだろう。低負荷では限界に近づくにつれてモーターユニットの動員率が高まり、代謝ストレスも強くなる。

高負荷・低レップと中負荷・中レップも限界までやった方が筋肥大効果はいくらかは高いだろうけど、常に全セットを限界までやり続けるとオーバートレーニングのリスクが高まる。(コストに見合った利益を得られない)

限界までやるのは、セットや期間を限定して行うのが良いだろう。例えば、最初の期間は全セットを限界の1レップか2レップ手前で止める、次の期間は最後のセットだけ限界まで行う、そして次の短い期間に大部分のセットを限界まで行う。


関連記事:
筋肥大のメカニズム

下のSchoenfeldのタグにいくつか関連記事あり。

7/15/2016

人間ドック結果

減量終盤に受けた人間ドックで気になった点を考察。

★腎臓
BUN(尿素窒素)
基準値:8-20mg/dl

1回目
測定タイミング:前日の夜9時以降に食事禁止で昼まで何も食べられないということなので、カゼイン中心にタンパク質を100gくらい摂取。減量中のため炭水化物はほとんど無し。この時点で肝グリコーゲンはほぼ空。採血は食後13時間くらいのタイミング。
BUN:29.6
eGFR:97.8
考察:eGFRは正常値でBUNが異常値。前日からの窒素(タンパク質)供給量が多く、また筋肉由来の糖新生によっても窒素が供給されていたと思われる。そのため腎臓の濾過が間に合わず、血中の尿素窒素が高いレベルのままであったと考えられる。

2回目
測定タイミング:昼食にタンパク質70gくらい食べてから3時間後くらい。1回目の結果説明の時に、異常値が出たのでもう一度測定しましょうとなってその場で採血された。
BUN:34.0
eGFR:124.9
考察:直前のタンパク質摂取が多く、窒素の濾過が間に合わず、血中の尿素窒素が高いレベルのままであったと思われる。推定の濾過速度(eGFR)も上昇している。高タンパク食では濾過速度が上昇することが多くの研究で示されていて、その通りの挙動になっている。

3回目
測定タイミング:前日から低タンパク質・高炭水化物の食事にして、当日朝にタンパク質10gくらいと炭水化物多めに食べてから7時間後に採血。
BUN:16.1
eGFR:95.7
考察:前日から低タンパク質・高炭水化物の食事にしたおかげで、仮説通りにBUNが正常値になった。高炭水化物にしたのは糖新生を防ぐため。私の場合、血清クレアチニン値から算出されるeGFRは正常で、尿蛋白など他の指標も引っかかっていなかったので、高タンパク食による一時的なBUNの上昇だと考えてこの対策を行った。犬の実験だけど、肉を多く含むドッグフードを与えたら、食後にBUNがベースラインから2倍くらいまで上昇したという研究があるので、正常な腎臓の人間でも高タンパク食の後はBUNが一時的に上昇すると考えられる(人間を対象とした食後BUNのデータは見つからなかった)。

Postprandial changes in plasma urea nitrogen and plasma creatinine concentrations in dogs fed commercial diets
http://users.ugent.be/~jwbauwen/08022016/003.pdf

普段から高タンパク食の人は、健康診断の前は低タンパク質・高炭水化物の食事にすれば、BUNが引っかからなくなると思う。腎臓関連の他の指標も引っかかっていたら腎臓に問題がある可能性が高いので、医師の指示に従いましょう。

あとクレアチンをサプリメントとして摂取していると、クレアチニン値が高くなる(eGFRが低くなる)ことがあるので、これも偽陽性の要因になる。心配な場合はクレアチニン・クリアランス検査を受けると良いでしょう。

Elevated plasma creatinine due to creatine ethyl ester use.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21411845

How we estimate GFR--a pitfall of using a serum creatinine-based formula.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17969491


★白血球数
基準値:3200-8599

1回目(減量中)
3100

2回目(普通食)
4510

考察:エネルギー不足の状態だと、不必要だったりダメージを受けたりした免疫細胞がリサイクルされ、白血球の総数が減る。1回目は減量中だったので白血球数が減っていた。2回目は維持カロリーに戻した後だったので、白血球数が回復していた。エネルギー不足にして白血球数を一度減らしてから再びカロリーを入れると、免疫系がリフレッシュされて健康にいいかも・・・という話もある。

Fasting triggers stem cell regeneration of damaged, old immune system
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-06/uosc-fts060214.php


★食後120分血糖値
基準値:70-139mg/dl

1回目
44(空腹時78)

考察:グリコーゲンが枯渇していたため、食後血糖が急低下していた。


★腹部CT
このボディメイク記録の一週間くらい前に計測。お腹側の皮下脂肪はだいぶ薄くなっているけど、脇腹の後ろ側の皮下脂肪が残っている。ここはなかなか落ちない。あと尻の皮下脂肪もなかなか落ちない。




関連記事:
高タンパク食の健康への影響 

7/13/2016

筋肥大のメカニズム

The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training.
http://www.lookgreatnaked.com/articles/mechanisms_of_muscle_hypertrophy.pdf

Schoenfeldの2010年の論文から、筋肥大のメカニズムについての部分を抄訳。

ただ、Schoenfeldの新著が昨日届いて、最新の情報が詳しく書かれているようなので、読み終わったらこの記事は加筆訂正するかも。PDFだと安くなる。

この分野に限らず、海外の一流科学者が一般向けの書籍を書いてくれるのはありがたい。

私の知識が足りないため、訳がわかりにくかもしれないです。詳しく知りたい場合は、元の論文やリファレンスにある論文を読むか、Schoenfeldの著作を読むと良いと思います。


★筋肥大と過形成
・筋肥大(hypertrophy)
- 収縮要素(筋繊維)が大きくなり、細胞外マトリックス(骨格筋の場合は筋膜)が拡張する。筋繊維の肥大は、筋節が直列または並列に付着することで起こる。
- 骨格筋が過負荷を受けると、筋原線維の収縮タンパク質であるアクチンとミオシンの量とサイズの増加をもたらし、平行方向に並ぶ筋節の数を増やす。その結果、筋繊維の断面積が大きくなる。
- 直列方向の筋節の増加は、筋肉を伸ばしっぱなしで長期間固定(ギプスなど)したり、ラット実験だと下り坂トレーニングを続けたりすることで起こる。逆に縮めっぱなしや上り坂トレーニングを続けたりすると筋節が減る。つまり環境に合わせて筋繊維の長さが調整される。
- 筋肥大は、非収縮性要素と水分の増大によっても起こる。これは筋形質の肥大と呼ばれる。筋形質の肥大は機能を持たないとよく言われるが、慢性的な細胞の膨張はタンパク質合成を手助けし、収縮要素のより大きな成長をもたらす可能性もある。

・過形成(hyperplasia)
- 筋繊維の数が増える。
- 筋繊維の数の増加については、動物実験で起こる、特に伸張性の負荷(エキセントリック動作)で大きく起こることが報告された。しかし後の研究でこれは数え間違いによるものではないかと論じられている。人間において過形成が起きるというエビデンスは無く、もし仮に起こるとしても筋肥大への寄与は非常に小さいものであろう。


★サテライト細胞と筋肥大
- 筋肉は分裂終了細胞なので、細胞の置き換わりはほとんど起きない。タンパク質の合成と分解の動的な平衡を通じて、細胞の状態を保つ。筋肥大はタンパク質の合成が分解を上回る時に起きる。
- サテライト細胞は、基底膜と筋鞘の間に存在する筋原幹細胞。通常は非活発だが、十分な力学的な(メカニカルな)刺激が骨格筋に加わると活発になる。活発になったサテライト細胞は増殖し、既存の細胞にくっつき、筋肉組織の修復や成長に必要な前駆体を提供する。
- サテライト細胞は筋繊維に新たな細胞核を提供し、収縮タンパク質を新たに合成するキャパシティを増やす。筋肥大の際の筋肉の細胞核と筋繊維量の比率は一定なので、筋繊維量の上限を引き上げるには細胞核を増やす必要がある。
- サテライト細胞は、筋肉の修復や成長を促進する調整機構にも関わる。


★筋肥大シグナルの経路
・メカニカルなストレスがかかると化学的なシグナルが発現
- Akt/mTOR
- MAPK
- Ca2+

・ホルモンとサイトカイン
多くのホルモンが関わるが、研究されることが多いのを三つ。

[IGF-1]
筋肉にメカニカルなストレスがかかると筋肉組織で生成される。また肝臓で生成された体内を循環しているIGF-1を、より多く利用するようになる。いくつかのアイソフォームがある。運動後に筋肉組織でIGF-1のレベルが高まり、筋繊維への効果が72時間続くことが確認されている。IGF-1は筋合成速度を上昇させるだけでなく、筋肉組織でのIGF-1はサテライト細胞を活性化させ、増殖と分化を手助けする。またサテライト細胞の筋繊維への付着も促進する。Ca2+の筋肥大経路も活発にする。

[テストステロン]
血液中のテストステロンは大部分がアルブミンかグロブリンと結合している。2%が遊離テストステロンで、これが各組織のアンドロゲンレセプターと結合して効果を発揮する。筋肉へのテストステロンの効果は運動なしでもあるが、メカニカルな負荷があるとよりいっそう大きな効果をもたらす。タンパク質の合成促進と分解抑制の両面から、筋肥大をもたらす。また成長ホルモンの分泌を刺激するといった間接的な効果でも筋肥大をもたらす。サテライト細胞の複製と活性化も促進する。テストステロンの抑制はレジスタンストレーニングへの反応を大幅に減らすことが示されている。

[成長ホルモン]
アナボリックとカタボリックの両方の効果がある。脂肪細胞を分解し、筋肉を含むタンパク質へのアミノ酸の取り込みを促進する。免疫機能や骨などにも関わる。脳下垂体前葉で分泌される。運動無しでは睡眠中に最も多く分泌。運動により分泌。運動後の成長ホルモンの上昇は、筋繊維の肥大と相関するという研究もある。レジスタンストレーニングに加えて成長ホルモンを投与しても、より一層の筋肥大は起こらなかった。ただこれは運動直後の成長ホルモンの急騰とは異なるので、運動直後の急騰が筋合成に関わっていないかどうかの結論はまだ出せない。

・細胞の膨張
- 細胞が水分を多く含んで膨張すると、タンパク質合成の促進と分解の抑制の効果が発揮される。
- 詳しいメカニズムははっきりとはわかっていないが、細胞膜への圧力の増大が細胞への脅威と認識され、それが超微細構造の強化につながる反応をスタートさせるのではないか。
- レジスタンストレーニングは細胞内外の水分のバランスを変化させる。特に解糖系のトレーニングで、細胞の膨張は最大化される。乳酸塩の蓄積が骨格筋の浸透圧の変化をもたらす。速筋は特に浸透圧の変化に敏感。
- 筋グリコーゲンの貯蔵量を増やすトレーニングも、細胞の膨張を増大させる可能性がある。グリコーゲン1gは水3gとともに貯蔵される。

・筋肉の低酸素状態
- 運動なしであっても筋肥大の効果があることが示されている。寝たきり状態で、一時的に血流を止める施術を行うと筋肉の萎縮を抑制できる。
- 血流を止めた状態で低負荷トレーニングを行うと(いわゆる加圧トレーニング)、高負荷トレーニングと同等の筋肥大効果が得られたとする研究がある。
- なぜ効果があるのかは理論がいくつかあって、乳酸塩の蓄積の増大と除去速度の低下、それによる細胞の膨張や成長ホルモンやIL-6などの上昇、産生された酸化窒素(NO)がサテライト細胞の増殖を促進したりMAPKシグナリングを活性化させたりする、虚血後の充血でサテライト細胞の活動が活発になる、など。


★レジスタンストレーニングでの筋肥大反応を開始する3つの要素
メカニカルテンション
筋肉へのダメージ
代謝ストレス

・メカニカルテンション(力学的な張力)
筋繊維の収縮で力を生み出すことによるものと、筋繊維が引き伸ばされる(エキセントリック)ことによるものがある。これらのメカニカルな張力は、筋肉の成長に必須だと考えられている。
- レジスタンストレーニングによるメカニカルなストレスが化学的な反応に転換され、筋繊維とサテライト細胞での分子的で細胞レベルの反応を引き起こすと考えられている。
- エキセントリック収縮での受動的な張力による筋肥大反応は速筋に特有のもので、遅筋では見られない。

・筋肉へのダメージ
- 弱い筋節は筋原線維の異なった箇所に存在していて、不均一な繊維の伸張が筋原線維のせん断を引き起こす。これは細胞膜を変形させ、カルシウムホメオスタシスの混乱とダメージをもたらす。
- ダメージが身体に検知されると、免疫機能が働き、これによりサテライト細胞の増殖と分化を調整する成長ファクターが働く。
- また神経筋接合部にはサテライト細胞が多く存在し、ダメージを受けた筋繊維へ神経が作用し、サテライト細胞を活性化させる可能性もある。
- エキセントリック動作で起こりやすく、特に速筋に起こりやすい。同じトレーニングを続けると起こりにくくなる。

・代謝ストレス
- ボディビル的なトレーニング、いわゆるバーン感が出るトレーニングで起こる。
- 無酸素解糖運動により、乳酸塩、水素イオン、無機リン酸塩、クレアチンといった代謝物質が蓄積される。これによるホルモン環境の変化、細胞の膨張、フリーラジカルの発生、成長関連の転写ファクターの活性化、酸性環境による筋繊維の分解の増大と交感神経の刺激がもたらす適応的な筋肥大反応の増大、といった経路で筋肥大が起こると考えられている。

 

関連記事:筋肥大をもたらす刺激(2019年版)



7/06/2016

ダイエットでは夜に炭水化物を集中的に食べよう

Greater Weight Loss and Hormonal Changes After 6 Months Diet With Carbohydrates Eaten Mostly at Dinner
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1038/oby.2011.48/full

夜に集中的に炭水化物を食べるダイエットと、朝昼晩に分散させて炭水化物を食べるダイエットを比較した研究。


★背景
レプチンは食欲に影響をおよぼす。一般的には日中に低くなり、夕方から夜にかけて高くなり、午前1時にピークをつける。ラマダン中のムスリムはこのパターンが変わることが過去の研究で示されている。また、炭水化物を食べてから6-8時間後にレプチンレベルの上昇が始まることが示されている。夜に炭水化物をたくさん食べることで翌朝からレプチンレベルの上昇が始まれば、日中にレプチンレベルを高く保つことができ、空腹感を抑えてダイエットを成功させやすくするのではないか。


★被験者
年齢25-55歳 BMI>30 平均体重は90kg台 持病なし 職業は全員がイスラエルの警官
スタート時78名 完走63名
実験グループ30名
コントロールグループ33名


★方法
期間6ヶ月

・食事
1日のトータルカロリーとマクロ栄養素のバランスは両グループで同じ
- 1日1300-1500kcal
- タンパク質20%、脂質30-35%、炭水化物45-50%
- はっきり書かれていないけど栄養士の指導を受け自分で用意だと思う
- 実験グループは、夜に大部分の炭水化物を摂取
- コントロールグループは、一日を通して炭水化物を摂取


・身体測定
- 体重、体脂肪率、腹囲

・空腹感満腹感評価
1-10の10段階。数字が大きいほど満たされている。8時、12時、16時、20時、それぞれ食事前に調査票に記入。

・血液検査
- インスリンや血糖や中性脂肪やコレステロールなどメタボ関連指標
- 炎症マーカー
- レプチンとアディポネクチン


★結果
・身体測定
- 夜に大部分の炭水化物を摂取した実験グループの方が、体重が大きく減った(ただし実験グループの方が平均体重が重い)。
- BMI、腹囲、体脂肪率は実験グループの方が減る傾向にあった(有意差は無し)


 ・空腹感満腹感
- 一日を通して炭水化物を摂取したコントロールグループは、より空腹感を感じ満腹感が低かった。特に12時の調査で強い空腹感を感じた。
- 実験グループでは日中のレプチンレベルの低下が抑えられたことが、日中の空腹感の抑制につながったと考えられる。


・血液検査
- インスリンとグルコースは実験グループの方が改善
- 中性脂肪とコレステロールは同程度。HDLは実験グループの方が良い。
- 炎症マーカーは実験グループの方が良い結果

・ホルモン
- 日中レプチンは実験グループの方が減少率が小さい傾向(有意差なし)
- 日中アディポネクチンは実験グループの方が高い。
※アディポネクチンは、脂質と炭水化物の代謝に関わり、血中の糖と脂質を減らし、インスリン感受性を改善し、抗炎症作用がある。肥満の人においては、一日を通してアディポネクチンレベルは低い。普通の体脂肪率の人や減量をしている肥満の人はアディポネクチンレベルが上昇し、昼間にピークをつけるようになる。アディポネクチンレベルが高いほうが健康に良いと考えられる。



☆コメント
90kg台の体重でそれなりの活動量がありそうな職業なので、1300-1500kcalの食事なら一日のカロリー不足は1000kcalを越えるだろう。1ヶ月に4kgは減るはず。ダイエットを続けるにつれて消費カロリーが低下するとしても、中盤以降でも1ヶ月に2kgは減っていくはず。半年で10kg前後しか減っていないのは、カロリー摂取量については厳格には守れていなかったためだと思われる。従ってこの研究は、炭水化物を食べる時間帯によって代謝上の有利不利があるかではなくて、「夜に集中的に炭水化物を食べるというざっくりとしたガイドラインに沿ったダイエットをするとどうなるか」というものになる。夜に炭水化物を集中的に食べたほうが日中の空腹感を抑制でき、食事量を抑えやすかったのだろう。

体重減少に占める体脂肪と除脂肪体重の割合を計算すると、

- 実験グループ 体脂肪91.8% 除脂肪体重8.2%
- コントロールグループ 体脂肪83.7% 除脂肪体重16.3%

実験グループの方が除脂肪体重の減少が抑えられ、体脂肪が多く減った。体脂肪率の測定は常に誤差問題がつきまとうが、腹囲の減少も実験グループの方が大きい傾向があるので、夜に炭水化物を集中的に食べたほうがより良い結果が出ていると考えられる。

除脂肪体重の減少が抑えられた要因としては、おそらく夕食に炭水化物を多く食べることで、食事間隔が空いている間でも筋肉の分解が起きにくかったのだろう。夕食から翌朝の朝食までの食事間隔が最も大きい。肝グリコーゲンが少なくなると、脳へのグルコース供給のためにアミノ酸からグルコースへの転換が活発に行われるようになる。外部からアミノ酸の供給が無ければ、自分の体内のタンパク質(主に骨格筋)を分解してアミノ酸を調達し、グルコースを作り出す。詳しくは、食事回数と量の配分の[アンダーカロリー]の項目に。

他の研究でも、夜にたくさん食べた方が体脂肪の減少が大きく除脂肪体重の減少が小さいという結果が出ている。この研究は食事が厳格に管理されているのは良いけど、被験者数が10名と少なく体組成の計測があまり正確でない方法なのが弱点。

インスリンや血糖は起きている間だけ測定しているので食事パターンの影響がありそうだが、炎症マーカーでも良い結果が出ているので、健康にも良い影響がありそう。

日中のレプチンレベルの低下が抑えられているのは、分泌パターンが変わったからだと思う。しかし、仮に24時間のレプチンレベルの低下が抑えられているとしたら、減量に伴う消費カロリーの低下も抑えられている可能性がある。


栄養素の貯蔵と引き出しでも書いたように、どの時間帯に食べようが、トータルのカロリー収支のマイナス分の体重が減っていく。体重の減少は体脂肪の減少と除脂肪体重の減少によって起こる。体脂肪を減らし、除脂肪体重は減らさないのが良いダイエット。

ダイエットで夜に炭水化物を集中的に食べることのメリットは、
- 除脂肪体重が減りにくい。
- 昼間に空腹感を感じにくい。
- 満たされた状態で床に就けるのでぐっすり眠れる。睡眠不足だと太りやすい。
- 家族や友人や同僚と同じ夕食を食べることができる。

最近は糖質制限が流行っていて、特に夕食で糖質カットするやり方をしているのを見かけるけど、これは逆効果だから止めたほうが良いですね。

強度の高いウェイトトレーニングを組み合わせるケースでは、夜にウェイトトレーニングをするならそのままトレーニング後に炭水化物をたくさん食べるのが良い。朝や昼にトレーニングをする場合は、トレーニング後の炭水化物摂取を優先し、夕食など次の食事まで間隔が空く食事では消化吸収の遅いタンパク質を多めに摂取するのが良いと思う。

6/29/2016

高タンパク食の健康への影響

[前提]
人間を対象とした長期のコントロール実験を行い実際に発病するかどうかを確認するのは予算的にも倫理的にも無理なので、長期の疫学調査と、短期の実験で病気と関連のある指標が変化するかを見て、それと動物実験の結果を見て、健康への影響を推測している。

明確な共通の定義がないが、高タンパク食というのはだいたい1.5 g/kg/day以上。


★腎臓
まとめ:既に腎臓に問題がある人は、高タンパク食を避けることで病状の進行を抑制できる。健康な腎臓の人は高タンパク食でも問題ないだろう。健康な腎臓は高タンパク食に適応できると思われるが、タンパク質摂取量を増やす場合は、一気に増やさず徐々に増やし段階的に適応させるのが良いだろう。

・既に腎臓に問題がある人
- 高タンパク食を避けることで病状の進行を抑制できる。これはほぼ確実。
- 日本腎臓学会のガイドラインだと、ステージ3以降(GFR60以下)でタンパク質の摂取量が制限される。
- 高タンパク食が悪影響を及ぼす経路の一つとして、機能低下した腎臓には酸負荷が問題になるようだ。

・健康な腎臓の人
- タンパク質の摂取量を増やすことが腎臓の仕事量を増やし、腎臓の機能を損なうという主張がある。しかし腎臓片方摘出後や妊娠時には腎臓の仕事量が増えるが、それで腎臓病になるわけではない。
- 高タンパク食では腎臓の仕事量の指標であるGFRが上がったり腎臓が肥大したりするが、これは高タンパク食への正常な適応だと思われる。
- アスリートは一般的に高タンパク食だが、アスリートが腎臓病になりやすいというエビデンスは無い。
- 脂質異常症、肥満、高血圧といった腎臓病になるリスクの高い人を対象とした高タンパク食ダイエットの実験でも腎機能の低下は報告されていない。
- 健康な腎臓の人においては、長期(疫学調査)でも短期でも高タンパク食による腎機能の低下を示した研究は無い。
- 比較的長期の動物実験でも、健康な動物が高タンパク食で腎臓を壊すという研究は無い。

・酸負荷
- 高タンパク食と高ナトリウム食は、腎臓の酸負荷を増やす。
- 病気(アシドーシス)と判断されるレベルまでいかなくても、体内のわずかなphの傾きでも健康に悪影響を与える可能性がある。
- 野菜や果物を十分に食べた方が良い。

・GFR:糸球体(Glomerular)の濾過(Filtration)速度(rate)
- 腎機能の指標。健康な腎臓は血液をどんどん濾過して要らないものを尿として排出できる。これが低下してくると濾過が進まなくなるので、体内に要らない物質が残り続け健康に悪影響が出る。
- 健康診断の腎機能の項目にあるeGFRは、血清クレアチニン値と年齢と性別から算出される推定のGFR。濾過機能に異常があるとクレアチニンの排出が滞り血清クレアチニン値が上昇するので、血清クレアチニン値からGFRを推定することができる。正確なGFRはイヌリンを使って計測されるが、一般的にはクレアチニン・クリアランス検査で測定する。


★腎臓結石
まとめ:おそらく体質によって結石の出来やすさが異なる。結石が出来やすい体質の人は高タンパク食を避けるのが安全だろう。

・結石が出来やすい体質の人に推奨される、結石の種類別食生活。
- シュウ酸カルシウム結石では、動物性タンパク質とシュウ酸とナトリウムを減らし、カルシウムの摂取量は維持し、クエン酸とカリウムの摂取量を増やす。
- リン酸カルシウム結石では、ナトリウムを減らす。
- 尿酸結石では、インスリン抵抗性が最大の問題なのでまず体重を減らす。野菜を多く食べる。あとプリン体を多く含む動物性タンパク質を減らす。
- どの種類の結石でも水分を十分に取った方が良い。


★骨
まとめ:高タンパク食の場合は、カルシウムとビタミンDを十分に摂取することで骨を強くするだろう。また果物と野菜を多く食べることも重要だろう。

- 高タンパク食では尿からのカルシウムの排出が増える。これが高タンパク食は骨を脆くするという主張につながっている。
- しかし、高タンパク食ではカルシウムの吸収率が上がることで尿からの排出量も増え、骨由来のカルシウムの排出が増えているわけではないことを示す研究がある。
- タンパク質には、骨基質の材料を提供する、カルシウム吸収率を上げる、IGF-1の生成を促進するといった骨の健康にプラスになる効果がある。IGF-1は骨芽細胞の活動を活発にし、腎臓でのリン酸塩の再吸収を促進する。
- 中和のために骨が分解され、カルシウムが放出されるという酸負荷による悪影響が仮にあるとしても、果物と野菜の摂取を増やすことで防ぐことが出来るだろう。(腎臓が健康なら酸は問題なく処理できると思うが)


★肝臓
まとめ:健康なら問題ないだろう。ただ絶食後に大量のタンパク質を摂取するのは避けたほうが良いだろう。

- 肝硬変ではタンパク質摂取量を減らす。
- マウス実験で48時間の絶食後に高タンパク食を与えたら肝臓にダメージが出た。


★大腸がん/心臓病/健康全般
まとめ:脂質の多い加工肉は食べ過ぎないようにする。果物と野菜を食べ、運動をするのも大事。

- タンパク質摂取量の多い人は、脂質の多い加工肉を多く食べ、野菜や果物はあまり食べず、運動せず、太っている傾向がある。疫学調査で高タンパク食が数々の健康リスクにつながるという結果が出るのは、これらの他のファクターが影響している可能性が高い。
- 脂質の少ない加工されていない肉には健康にポジティブな効果がある。



参考:
Controversies Surrounding High-Protein Diet Intake: Satiating Effect and Kidney and Bone Health
http://advances.nutrition.org/content/6/3/260.long

Dietary protein intake and renal function
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1262767/

Protein Controversies
http://www.bodyrecomposition.com/nutrition/protein-controversies.html/

Can eating too much protein be bad for you?
http://examine.com/faq/can-eating-too-much-protein-be-bad-for-you/

知ればなるほど! CKD患者の電解質・酸塩基平衡
http://www.kayexalate.jp/report/pdf/kayexalate_REPORT07.pdf

慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル 〜 栄養指導実践編
http://www.jsn.or.jp/guideline/pdf/H25_Life_Diet_guidance_manual.pdf

Nutritional aspects of stone disease
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12474643

Optimum Nutrition for Kidney Stone Disease
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1548559512002212

Self-Fluid Management in Prevention of Kidney Stones
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26166074


関連記事:
タンパク質摂取量の目安