6/12/2015
腰痛について1~基礎知識~(Low Back Disorders)
腰痛についての記事をいくつか書こうと思います。ネタ元は Stuart McGill著の Low Back Disorders です(Amazonリンク)。お値段が結構します。私は中古で購入しました。私はこの分野についてほぼ予備知識無しなのですが、エビデンスベースで論理的に書かれていますし、自分自身の腰を痛めた体験と照らし合わせても納得がいく内容なので、信頼できる著作ではないかと思います。Low Back Disorder は正確に訳すと下背部の障害ですが、この記事では大雑把に腰痛と記述します。
★腰痛とはなにか
腰痛といっても、椎間板に問題がある場合や靭帯にダメージがある場合や椎間関節に問題がある場合など様々なケースがある。診断が難しい。腰痛の85%が原因不明という話があるが、正確な診断できなくて(匙を投げるように)原因不明とされているケースが多いと思われる。
★下背部の障害が発生するプロセス
一回のイベントが怪我につながるケースは稀。障害発生のきっかけとなる出来事がフォーカスされやすく、それまでの蓄積ダメージはなかなか目につきにくい。目立つ出来事に目を奪われ、それまでのプロセスを理解しないと正しい対処ができない。
★障害発生の基本的な考え方
身体に障害発生の許容量を越える負荷がかかると、障害が引き起こされる。
1. 一発の大きな負荷で障害が発生するケース。
例:乗り物やスポーツで腰に大きな衝撃が加わる。
2. 小さな負荷が何度も繰り返し加わることで障害許容量が低下し、障害許容量が負荷を下回ることで障害が発生するケース。
例: 荷物を何度も持ち上げ続けて疲労が蓄積していき、障害許容量が低下して障害発生する。
3. 同じ姿勢を続けることで一定の負荷がかかり続け障害許容量が低下し、障害発生するケース。
例: 農作業などで中腰の姿勢を続ける。
★負荷と休息と適応
身体組織の健康維持のためにはある程度の負荷が必要。適切な負荷とその後の休息により、身体組織に適応反応が起こり障害許容量が上昇する(丈夫になる)。
★腰痛発生のリスクファクター
心理社会的な変数と生体力学的な変数の両方が重要なリスクファクター。身体組織のダメージは過大な負荷により引き起こされ、ダメージは痛みを引き起こす。痛みは心理社会的な変数によって知覚のされかたが変わってくる。この本では生体力学的な面の分析が中心。
[疫学調査により特定されたリスクファクター]
- 同じ姿勢を続けること。特に長時間腰を曲げたり捻ったり横に傾けたり。
- 座っりぱなし。
- 胴体を頻繁に動かす、脊椎を速く捻る、捻り過ぎる。
- 頻繁に物を持ち上げたり押したり引いたり。
- 振動が加わり続ける。特に座った状態で全身に振動が加わり続ける(例えば振動が続く乗り物を運転)
- 腰へのせん断力、圧縮方向の力、伸ばす方向へのモーメント、これらの一発の大きな負荷と繰り返し負荷。
- 滑って転んで腰を打つ。
[身体組織への影響を調べた研究により特定されたリスクファクター]
- 腰を可動範囲いっぱいに曲げることを繰り返す。これをやるとヘルニアになる。
- 寝起き。寝てる間に椎間板が水分を引き込んで膨らみ脊椎がキツキツになる(それで寝起きは背が少し伸びている)。日中は重力による圧縮方向の力が加わって水が抜ける。朝起きてすぐは腰を曲げる運動はしない方が良い。
- 腰へのせん断力、圧縮方向の力、これらの一発の大きな負荷と繰り返し負荷。ねじれ方向のズレとモーメント。
- 負荷が少なすぎて身体組織が弱くなる。
- 急に大きな負荷がかかる。
[リスクファクターとなる個々人の特徴]
- 脊椎の可動範囲。可動範囲が広いとそれだけリスクが高くなる。
- 体幹の筋肉の持久力。持久力が低いとリスクが高くなる。
- 筋肉の動作の乱れ。体幹の筋肉がうまく協調して動かないと脊椎の安定が崩れ怪我のリスクが高くなる。
- 年齢。年齢が高いと脊椎は脆くなる。
- 性別。女性の方が脊椎が脆い。
- 腹回り。太いとリスク高い。
関連記事:
腰痛について2~予防~(Low Back Disorders)
腰痛について3~リハビリとトレーニング~(Low Back Disorders)
腰痛について4~推奨エクササイズ~(Low Back Disorders)
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